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J/53  作者: 池金啓太
十三話「その森での喪失」
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三人で森の中へ

明利の作った朝食を平らげ、調理室に保存してあった軍用の携帯食料を各自いくつか拝借し、軽く身支度を整えた後、三人は宿舎を出発していた


まずは明利の索敵の確認


森の中の状況がどれほどのものか


奇形種の存在や、犯人の所在、今わかってしまえばそれこそ在り難いことこの上ないが、そう簡単にはいかないようで明利は小さく首を振る


「目標は見つからないけど、奇形種の姿もあまり確認できないよ、巣穴の中にこもっているのをいくつか確認できるけど・・・出てくる様子はなさそう」


「なら、さっさと行動開始しましょうか、明利、ナビよろしくね」


宿舎から少し離れた雑木林の中で鏡花は能力を使って地下へと続く穴を作っていく


突然崩れだしたりしないようにそれなりの強度を持って作られた穴を素早く、なおかつ確実に作っていく


穴を作って同時に穴をふさぐ、常に空間のできている体積を小さくすることで異常を悟られないようにしているのだ


その代り空気も限られているために定期的にここにある空気を酸素などに変換する作業も同時並行で行わなければならない


十数分ほどかけて穴の中を移動した時点で、明利はもう上昇しても構わないという合図を送る


たった二百メートルほど移動するだけでずいぶん時間をかけてしまったが、これで気づかれるということはないだろう


その移動中、陽太だけが気付いていた、鏡花の能力の精度が著しく低下しているのだ


形状変換と定期的な酸素への構造変換が必要だとしても、たった二百メートルを移動するだけでこれだけの時間がかかるのは、普段の鏡花ならばありえない


気丈に振る舞っているが、彼女の精神的動揺は大きいのだ


普段彼女の能力を間近で見ている陽太だからこそ気づけたことだ、もしかしたら鏡花でさえ、自身の異常に気付けていないのかもしれない


余計なことを考えないように、集中し続けてもどうしても脳裏にあの光景が及ぶのだろうか


当然と言えば当然だ、いくら天才などと言われようと鏡花はただの少女なのだ


人の死体など見たことがなかったし、それが友人のものだったであろう腕であれば動揺するのは当然なのだ


一人欠けただけで、こうまでも班員が崩れるとは誰も思っていなかった、それだけ静希の存在は大きかったのだ


樹海の中に入ると、やはり表よりだいぶ暗い印象を受ける


だがさすがに夜明け近いということもあって少し明るい


持ってきたライトを使わなくてもそれなりに行動はできそうだった


「それじゃあ移動開始しましょう、明利、索敵のできていないところを重点的に移動して索敵範囲をどんどん広げていくわよ、そうすればいつかは見つかる」


「わかった、じゃあ移動するね」


そういって明利は最前線に出て移動を開始しようとする


さすがに戦闘能力のない明利を先頭にするのはまずいと思って止めようとするが、その前に鏡花の肩を陽太がつかんだ


「鏡花、俺と明利の動きに注意しといてくれ」


鏡花にしか聞こえないような小さな声を耳元でつぶやく


鏡花は一瞬意味が分からなかった


「なんで?あんたはともかく・・・なんで明利も?」


「俺は能力の暴走的な意味で・・・明利は・・・あいつが目標を殺さないようにだ」


その言葉に、鏡花は目を見開いた


明利が目標を殺す?考えられない、少なくとも鏡花の記憶の中にある明利はそんなことはしない


「明利が人を殺すはずないじゃない、だって明利は」


「普段の明利なら絶対しないだろうな・・・でも今の明利はいつもの明利じゃない」


陽太の言葉にそれ以上何も言えなくなってしまった


確かに、陽太と同じく、明利も今異常な状態にある、何をしてもおかしくないという意味では陽太以上に危ない


「途中までは普通に俺の対処をしといてくれ、だけどもし相手を追い詰めたら、そん時は明利の行動に注意してくれ」


「・・・明利が誰も殺さないように?」


鏡花の言葉に、陽太はうなずく


静希もそれを望んでいるだろという言葉とともに、陽太は明利よりも先を歩いていく


明利は欠片も動揺せずに陽太に道を指示し続けている


何時もと同じように、努めてそうしているということが理解できた


そして鏡花は、陽太の言葉をほぼ正しい意味で理解していた


もし、犯人と遭遇したら、恐らく陽太は能力を暴発させる


それは、今まで鏡花が見たことのない姿がそこにあるだろう


それがどんなものなのか、静希に何度か聞いたくらいで実際に想像するのは難しい


何せ陽太は今まで能力を理性的に操ることができていた


その証拠が陽太の槍だ


長い訓練の結果、自らの能力の特性を把握し、少しずつそれをものにしてきている


だからこそ、暴走すると言ってもただ人の話を聞かない程度だと、そう思っていた


だが、以前静希から聞いた話はそんなものとはかけ離れていた


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