第43話 しっとり幼馴染とスク水土下座


『プールに湿気』という言葉を使えば、『頭痛が痛い』と同じように誤用になるのかもしれないが、ここはあえて使わせていただく。


 間違いなく、プールにとんでもない湿気が漂い始めたのだ。


 背後からかけられた耳馴染みのあるその声。


「青斗? 楽しそうだね」


 声の方へゆっくり振り向くと、俺の背後には……。


「は、春香……!? なっ、なんで!」


 そこには瑠璃色のオフショルバンドゥビキニを着た、とんでもなくスタイルが良い美少女——幼馴染の水瀬春香の姿があった。


「なんでも何も、こっちもびっくりだよー? まさか青斗たちが私たちと同じリゾートホテルに泊まってるだなんてー!」

「たち? 家族できたのか?」

「ううん、一緒に来たのはね——」


 春香が目配せすると、背後からひょこっとスク水の山田が顔を出す……は?


「なんでお前までいるんだよ山田!」

「だ、だって、春香先輩がゴールデンウィークにうちのお父さんのコネとかでここのホテルに泊まれないかって——」

「山田ちゃん? ちょっと黙ろっか」

「ひゃ。ひゃい」


 春香が山田の口を塞いで圧をかけ、山田は萎縮する。


 まさか春香のやつ……。


「山田ちゃんが誘ってくれたから来たの♡ 別に青斗の行く場所を検索かけて綿密に調べ上げたとかじゃないんだからねっ!」


 なるほど……つまり、山田に頼んでコネでなんとかして、ここへ泊まりに来た、と。


 山田の祖先は地元の有名企業の創業者であり、山田自身も小物感ロリでありながら一応、社長令嬢で金持ち一族の一員なのである。

 春香はそんな山田に陸上部時代から慕われており、山田は春香を尊敬するあまり、金魚のフンみたいに付き纏っていた記憶がある。

 つまり春香はその頃からの信頼関係を使って、山田の力を借りてここに来たのか……。


「もしかして兄さん、春香さんにここへ行くこと教えたっしょ」

「……ん、ああ、そういえば」


 結珠奈に言われて俺は思い出す。

 確かあの待ち伏せされてた帰り道で、ゴールデンウィークのことを話した記憶があった。

 しかし、まさか来るとは思わず……。


「あの、青斗先輩ちょっとお話が」

「お、おお。結珠奈、春香を頼む」

「はあ!?」


 今度は山田から話があると言われて、その場から少し離れる。


「あの、春香先輩なんですけど、1年ぶりに連絡してきたと思ったら、なんかやけにダークで重いというか……絶対これ青斗先輩のせいですよね」

「俺のせいじゃねえよ! なんでそうなる!」

「でも春香先輩、青斗先輩のことばかりで……」


 俺のことばかり? よ、よく分からないが、それは俺がゴールデンウィークの予定を話した時に、春香の誘いを断ってしまったからだろうか?


「まあ春香先輩には中学の頃からお世話になってばかりなので、別にこれくらいはいいですけど……問題はそこじゃなくて」

「問題?」


 山田は何やら複雑そうに言う。

 春香のこと以外にも何かあったのだろうか?


「春香先輩のお願いを聞くために、パパにこのリゾートホテルを用意してもらうことには成功したのですが、うちのパパったら、ホテルに彼氏と行くものと勘違いしてるみたいで……今夜、部屋でリモート通話を繋いで彼氏を紹介するように言われてまして……」

「……ん? じゃあ正直に春香だってそこでお父さんに伝えればいいじゃないか」

「……い、いやー、それが、パパが彼氏とじゃないと予約しないと言われまして。次の社長候補をしっかり見たいと」

「は?」

「だ、だから……あ、あのっ!」


 山田は急にしゃがみ込むと、プールサイドに頭をつける勢いでスク水土下座をする。

 なっ、何をしてんだ山田ァ!


「おっ、お願いします青斗先輩! 私の彼氏(役)になってお父さんに挨拶してくださいっ!!」


「「「はぁぁぁあああ!?」」」


 全員に聞こえるクソデカ声で山田はとんでもない懇願をしてくるのだった。





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