『新しい学校のリーダーズ』公演延期で賛否 「お大事に」「2日間無駄に」ファンは複雑…問われる情報発信
●遠征費の補償は難しい
──いったん公演が中止になった場合、チケット代の返金を求めることができますか。 返金を希望する人にはチケット代は返金されますが、現場までの交通費や宿泊費は補償されない可能性が高いと思われます。 一般的に、チケット販売時の規約には「公演中止になった場合でも交通費や宿泊費については補償できない」という免責条項があり、法律的にも有効とされています。
●全国を回る「ガチファン」と「1公演に魂かけるファン」でも温度差
──ファンの落胆は、いかほどのものでしょうか。 全国ツアーであれば、全国各地のファンに楽しんでほしいという主催者や芸能事務所側の考えがあると思います。 ただ、熱心なファンの中には、ツアーの全日程に参加するという人も少なくありません。 特にアイドル系のアーティストのファンではその傾向は顕著です。客席の3分の1くらいが大体いつも同じファンで埋まることもあります。 距離の遠さをまったくいとわない熱心なファンは、公演中止になったとしても、すでに何度もツアーに参加しているのですから、「1、2回見られなくても仕方ない」と中止を受け入れやすいかもしれません。 一方で、地方の1公演に「一発入魂」していたファンもいるはずです。それに、どこから来たのかにかかわらず、最前中央席を引いたファンの落胆はすさまじいものであると想像できます。 ──公演中止に関してSNSの声をどうみますか。 さまざまなファンの思いが交錯する中、SNS上では比較的寛容なファンの声が目立ちます。 これは、ファン同士は普段からSNSで意思疎通していることもあり、"推し"に対するネガティブな発信をしにくいということも背景にあると思います。
●芸能事務所や主催者の情報発信が重要「企業の危機管理と同じ」
──熱心なファンは公演中止に寛容ということですね。 おそらくアーティストに対する期待や信頼があるように思います。 たとえば、チケット代について、ファンの中には「コンサートを見ることの対価」だけではなく、推すこと(応援・支援)の対価も広く含んでいるという人もいるでしょう。 しかし、実際に、公演が中止になれば落胆はもちろんのこと、遠方、ときに海外から来ているファンにとって金銭的負担は小さくないのは事実です。 ──アーティスト側や主催者はどのように対応すべきでしょうか。 芸能事務所や主催者にとっては、公演を中止せざるを得ない場合、危機管理対応として広報対応が重要です。 ファンや関係者の納得を得られるような情報発信をすることが求められます。 必要とされるのは、現状どこまでの事実を把握していて、なぜ中止の決定に至ったのか、今後はどのように対応していくのか、という事実に基づく具体的な発信です。 これは企業の危機管理の広報対応と同じ考えになります。 過去には、公演の中止理由としては次のようなものがありました。 ・出演者本人の体調不良 ・出演者の不祥事 ・屋外ライブでの天候不良 ・降雪、台風による交通機関の乱れで出演者足止め ・機材トラブル ・演出スタッフ側の準備不足 自然災害や天候不良に伴う公演中止は誰の目にも明らかです。情報発信の必要性は高くないかと思われます。 それ以外が原因である場合、ファンとしては中止の原因がわからないと納得できず、SNS上で憶測が飛びかい、虚偽の情報が拡散するリスクも起こりえます。 アーティストの体調不良であれば、プライバシーに関わるので発表内容に配慮が不可欠ですが、ファンの気持ちに配慮するためにも可能な範囲での対応が必要でしょう。 アーティスト、事務所、ファンが一緒にトラブルを乗り越えたということで、ファンが離れていかないようにすることが重要だと思われます。 【取材協力弁護士】 河西 邦剛(かさい・くにたか)弁護士 「レイ法律事務所」、芸能・エンターテイメント分野の統括パートナー。多数の芸能トラブル案件を扱うとともに著作権、商標権等の知的財産分野に詳しい。日本エンターテイナーライツ協会(ERA)共同代表理事。「清く楽しく美しい推し活〜推しから愛される術(東京法令出版)」著者。 事務所名:レイ法律事務所 事務所URL:https://rei-law.com/
弁護士ドットコムニュース編集部