それからもうひとつ、私が大使の時に「最大の爆弾」だという危機意識を持って取り組んでいたのが、日本人の親による「子供の連れ去り問題」です。
日本人は国際結婚をしても、結婚生活が破綻すると、配偶者の同意を得ることなく、子供の手を引いてそのまま日本に帰ってしまいます。これは特にお母さんが日本人である場合に多い話なのですが、当然、残された父親は子供との接触を断たれて悲嘆にくれることになります。
つまり、父親側からすると「我が子が日本に連れ去られた」という認識であり、子供が日本にいる限り外国の裁判所の返還命令が執行できないという問題が生じていたのです。
これに対して、国際社会、特にアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリアなどの欧米諸国からの批判が高まりました。そして、その圧力から、日本は2014年にハーグ条約(正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。国境を越えた子供の不法な連れ去りや、国際的な子供の返還に関する問題を解決するための国際条約)に加入することになったのです。
この問題もまた「日本人はなんて非人道的なんだ。なぜ裁判で争わず子供を勝手に連れ去るのか。やはり日本人は異質だ」という議論に結びついていきました。
まずは「世界標準」のルールを知るべき
このように国際社会では日本異質論がいまだに残っていて、個別具体的な問題をきっかけに一気に燃え上がることがあります。捕鯨問題もまさにその一つだったわけです。
以前からこういう物事の捉え方をしていれば、日本の異質性を強調するような議論をもっと有効にハンドリングできていたと思います。しかし、日本では真正面から「鯨肉を食べて何が悪いのか」「日本の伝統的な食文化を壊すな」と感情的に反論してしまう人がよくいます。