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2022年12月の記事

2022年12月30日 (金)

機関車工学:上巻(その205)過熱蒸気機関車の成績

第5章 過熱蒸気機関車の成績

1.取扱いに注意を要すること

 複式機関車は常にその諸部を完全にし、極めて細心に運転してはじめてその効能を発揮するものなり。この事実は過熱蒸気機関車にも全く適応す。

2.石炭及び水の節約

 飽和蒸気の固有する温度よりも、華氏200度以上過熱したる蒸気を利用するとき、相当の注意を施せば石炭の節約25「パーセント」を得べきも、これを怠れば15「パーセント」に落ち、なお顧みざれば10「パーセント」以下に下るべし。

 既に10「パーセント」以下の利益とすれば、過熱器の元利及び維持費等を控除せば、残る利益は若干もなかるべし。これ反対論者の反対する要旨なりと言えども、主張者も反対者も互いに極端に走るの弊あるをもって、著者は過熱器の現在における発達の程度に徴し、石炭15「パーセント」、水25「パーセント」の節約はこれを得るに難からずと信ず。

3.牽引力を増加すること

 蒸気使用量少なきをもって、汽缶の蒸気発生力は常に余力あり。普通の機関車は常にその蒸気発生力不足のために、牽引力を制限せらるるに反し、過熱蒸気機関車はこの憂少なく、充分にその粘着力を利用し得べし。

 また平均実効圧力の増加は、多くの場合において10「パーセント」以上なり。故に数多の実例に徴するに同種の飽和蒸気機関車に比し、30ないし40「パーセント」の牽引力を増加するに難からず。

4.高圧力の蒸気を使用するの必要なきこと

 機関車における蒸気の常用圧力は年々増加の傾向ありて、外国においては200ポンドの圧力は普通以下のものに属し、225ポンドないし240ポンドのものを使用するもの少なからず。

 けだし強大なる機関車においては、その力は汽缶の大きさに制限せらるるをもって、圧力を高むるはこれを償はんとするものにして、200ポンド以上の高圧力は好んでこれを用ふるにあらず。しかるに過熱蒸気の性質として熱の利用上より見るに、むしろ低圧の蒸気を過熱するを利益とし、150ポンドないし170ポンドの蒸気を用ふるを相当とす。

 また「シュミット」氏等の研究とプロイセン官有鉄道の実験とに徴すれば、過熱蒸気を使用するものは飽和蒸気を使用するものに比し、「シリンダー」の直径を増大するを利益とす。

 しかして「シリンダー」の大きさは、45「パーセント」の「カット・オフ」をもって最大牽引力を発生し得るよう設計し、20ないし30「パーセント」の「カット・オフ」をもって常用に供すべし。しかしてもし常用「カット・オフ」にて牽引力に余裕を来たすときは、適宜「レギュレーター・バルブ」にて蒸気を絞り圧力を減殺するを良しとす。

 けだし過熱蒸気は飽和蒸気と異なり、流動性に富むをもって圧力減少せらるるとも、「シリンダー」内に「ワイヤー・ドローイング」を起すことなく、且つ「レギュレーター・バルブ」にて絞られたる蒸気は、比較的乾燥せるをもって過熱器の効力を増進するの利益あり。

5.粘着力の割合

 「ガルベ」氏は連結車輪上の重量と、「シリンダー」及び動輪の直径との間に、左の関係を付与するをもって最も適当なりとせり。

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 d 「シリンダー」の直径(インチ)

 ℓ 「ストローク」(インチ)

 D 動輪の直径(インチ)

 W₁ 連結車輪上の重量(トン)

 この関係は常用速度において、20ないし30「パーセント」の「カット・オフ」を用ひて、「シリンダー」の馬力があたかも汽缶の供給する蒸発馬力と均衡するに至らしめ、40ないし50「パーセント」の「カット・オフ」においては、既に機関車の粘着力によりて制限せらるる、最大牽引力を発生するに相当するものなり。

6.汽缶修繕費の節約

 200ポンド以上の蒸気を使用する汽缶は、蒸気の漏洩、「ステー」の折損、「スケール」の堆積等故障多くして、得るところは失うところより少なきの批評さへ免れず。故に過熱蒸気機関車における圧力の低下は、著しく修繕費を節約すること論を待たず。

 また同じ圧力の場合にありても、蒸発水量において25「パーセント」を減ずるとすれば、汽缶の負担はそれだけ軽減せられ、汽缶大修繕の時期を延長し得るの理なり。総て機関車の大修繕は、汽缶の大修繕により決せらるるものなれば、機関車使用の点より見れば、機関車の数を総数の3分の1だけ増加したる割合と同じ。

 その他水量の節約に伴ふ利益は、洗缶度数を少なくすること。補水せずして長距離を走行し得ること。給水費を節約し得ること等にして、これらの利益を数え来れば、過熱器の修繕費は別に意とするに足らざるべし。

7.給油の困難

 給油の完不完は過熱器の死活問題なり。「サイト・フィード」給油器はその給油確実ならずして、必要の個所に油の供給を欠ぐことあり。故に100度以上も過熱したる場合には、強制圧力給油器にて給油するを必要とし、「カット・オフ」を遅くして運転するときは、特に多分の給油を行はざるべからず。

 しかも570度以上の温度を有する蒸気をもって、50「パーセント」以上の「カット・オフ」を永続して運転するときは、「シリンダー」の過熱はなはだしく、給油上充分の保証を得ず。故に給油問題は未だ改良の余地あるものなり。

8.汽缶蒸発力の減少

 過熱蒸気汽缶においては、石炭1ポンドに対し水を蒸発し得る分量が、飽和蒸気汽缶におけるものよりもやや減少せり。その割合はプロイセン及び米国における実験によれば、2「パーセント」ないし5「パーセント」の減少に当る。

 この主もなる原因は火焔が過熱管を温めたる後、なお相当の有用なる温度を保ちつつ「スモーク・ボックス」に逃出するに帰すべし。しかれども一般伝熱面の割合の適否、通風の強弱、または過熱器付属の「ダンパー」の改良等、未だ研究し尽さざるものあらんも知るべからず。

9.複式機関車に過熱蒸気を使用すること

 過熱蒸気単式機関車は、飽和蒸気複式機関車よりも経済にして、石炭の節約10「パーセント」内外なることは、各国の実験によりて証せられたり。しかれども複式機関車に過熱蒸気を応用することは未定の問題に属せり。

 「フォン・ボリス」氏は、氏の実験の結果に徴して、未来の機関車は過熱蒸気を利用する4個「シリンダー」複式機関車なるべしと予言し、「ガルベ」氏はこれに対して単式過熱蒸気機関車なるべしとし、なお特別急行列車用として4個「シリンダー」を使用する場合にも、総て単式過熱蒸気を使用すべきものなりと主張せり。

 意見異なると言えども、いずれも未来の機関車は過熱蒸気機関車なりと言うに一致し、その単式なるか果た複式なるかは吾人の研究を要する問題なりとす。

10.成績の比較

 第38表は普通の機関車、すなわち飽和蒸気機関車と過熱蒸気機関車との比較試運転、または実地仕業上の成績を集蒐したるものにして、もって読者の参考に供せり。

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 第39表は最近の設計に係る、「シュミット」式過熱蒸気機関車の明細を掲げたるものにして、第352図ないし第354図は2~3の略図を示す。

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2022年12月28日 (水)

機関車工学:上巻(その204)過熱蒸気使用に伴う機械部の改良

第4章 過熱蒸気使用に伴ふ機械部の改良

 華氏600度内外の温度を有する過熱蒸気を使用するとき、その蒸気に触接する部分、及び給油器等に付いての構造は特別の改良を要す。単に蒸気を高熱度に熱することは昔時においても行はれしと言えども、これに伴へる機械部不完全なりしをもって、過熱蒸気機関車は故障多しとて斥けられたるものなり。

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 この改良に最も力を尽くしたるはプロイセン鉄道なるをもって、目下同国に採用せる「シリンダー」(第336及び337図)、「スタフィング・ボックス」(第338ないし342図)、「ピストン・バルブ」(第343及び344図)、圧力平均装置(第345ないし350図)、給油器(第351図)に付き、その要点を説明せん。

1.「シリンダー」及び「スチーム・チェスト」の鋳物は、各部厚薄の差をかなり少なくし、且つ厚薄の境においても急にその厚さを変ずるを避けたり。

2.「シリンダー」と「スチーム・チェスト」とは、大部分は空間をもって隔離せらる。この設計においては「シリンダー」が「エキゾースト」の、冷かなる蒸気にて冷やさるる影響少なきをもって、「シリンダー」を全部一様に熱し得るの便利あり。

3.「ピストン」には最良の鋼を使用して、かなりその重量を軽くし、その両端の縁辺に鋭角を残さずしてこれをやや円くしたるは、油の循環を善良ならしむるの目的とす。「ピストン」の直径は「シリンダー」の直径よりも2「ミリメートル」小なり。

4.「ピストン・ロッド」は「ピストン」を貫通し、「テール・ロッド」を有す。「ピストン」はその「テール・ロッド」と「クロス・ヘッド」とにて支持せらる。

5.「ピストン・リング」は3個よりなり、その中央の分は普通の形なれども、前後の分は「リング」の外側に沿ふて一条の浅き溝を有し、且つ8分の1インチの孔6個を有せり。もって蒸気を「リング」の裏面に導き、適宜に「リング」を圧せしむ。

6.「スタフィング・ボックス」は、その周囲にある空気の溝にて常に冷却せらる。

7.「ピストン・バルブ」を使用するは、その内部より蒸気を送り得るが故に、「バルブ・スピンドル」の「スタフィング・ボックス」は、単に低圧「エキゾースト」の漏洩を防ぐに止まるの利益あればなり。

8.「ピストン・バルブ」の「リング」は切れ目なき円筒なり。周囲には浅き溝(これを「ラビリンス・パッキン」と言う)あるのみ。

9.「ピストン・バルブ」の直径は僅かに6インチにして、二重の「スチーム・ポート」を備ふ。直径小なるものを用ふるは、熱のため膨張すること少なきをもってなり。また「バルブ・シート」には「ジャケット」ありて、これを温むプロイセン官有鉄道の過熱蒸気機関車には、皆同一寸法の「ピストン・バルブ」を備ふ。

10.一般の「ピストン・バルブ」には「エア・バルブ」を備ふる必要あり。「エア・バルブ」の外に「エア・バルブ」とやや同じ働きを成すべき圧力平均管あり。これ内径2インチ8分の5の管にして、各「シリンダー」の前後両端に連ながり、その中央に「コック」を有するものなり。

 けだし蒸気を使用せずして運転するとき、その「コック」を開き「シリンダー」の前後をして相通ぜしむるときは、「シリンダー」内において空気を吸入圧搾するの害を避くることを得べし。蒸気を使用する際には「コック」を閉づる事もちろんなり。この「コック」は機関手室より手力をもって開閉せらる。

11.給油器としては第351図に示すがごとき、強制圧力給油器を使用するを要す。鉱油の引火点は華氏752度のものを選べり。注油個所は「ピストン・バルブ」に2個所(各「ピストン・バルブ」は前後2個より成るをもってなり)。「シリンダー」に1個所、左右合計6個所にして6本の油管を要し、これに対して給油器には6個の油「シリンダー」あり。

 給油管は機関手室内の火夫の側に在りて、後部動輪より1個の桿により運動を得。「ウォーム・ホイール」により「スクリュー・スピンドル」を回はし、これに連関せる「ピストン」にて油を圧迫するものなり。油の分量は桿に連接する「クランク」長を伸縮して加減し得べし。

 普通の「サイト・フィード」給油機は左の不便ありて結果好良ならず。

 (イ)油中に水分の混入し来ること

 (ロ)油はたちまち低圧の個所に向ひ流れ去ること

 (ハ)油が水と混じて細かに別れて来るために、蒸気のために容易く携帯せられ、必要の部分へ給せらるること少なくして浪費多きこと

12.以上の他、機関手室内には「バルブ・チェスト」における過熱の度を知り得べき「パイロ・メーター」。同じくその圧力を示すべき「プレッシャー・ゲージ」。及び「スモーク・ボックス」内の真空を測るべき「バキューム・ゲージ」。ならびに圧力平均管の取柄。過熱器「ダンパー」を加減する取柄等の付属品を必要とす。

 

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2022年12月23日 (金)

機関車工学:上巻(その203)過熱器の種類及び構造:ピーロック氏ボイラー・バレル式過熱器

【 「ピーロック」氏「ボイラー・バレル」式過熱器 】

 この過熱器は「シュミット」氏「スモーク・ボックス」式過熱器と共に、一時は大陸において流行せしも、近来新たにこれを採用するもの少なし。

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 この器は第332ないし335図に示すがごとく、汽缶の中腹を仕切りて1個の立方形を成せる筐を作り、総ての「チューブ」をしてこれを貫通せしむるものなり。

 筐内には「チューブ」に沿ふて5個もしくば6個の「デフレクティング・プレート」を設け、これに入り来れる蒸気をして矢の示せるごとく、順次にこれを経過流通せしむ。

 蒸気は総て「ドーム」より特別の蒸気管にてこれに導かれ、過熱せられたる上「レギュレーター」に赴くものとす。過熱器に属する両「チューブ・プレート」の孔は、前面の分は後面の分よりもやや大にして、「チューブ」は総て「スモーク・ボックス」側より挿入脱出せらる。しかもその際、常に「スケール」のために困難を感ずること少なからず。

 また「チューブ」の冷熱はなはだしきがために、その伸縮著しくして缶水の漏洩を来たし易し。故にこれに属する「ドレーン・コック」にて、時々溜り水を排出するを要す。また鉄製「チューブ」は筐内において、その外面腐蝕するをもって近来は特にその部分だけ、薄き真鍮をもってこれを被覆せり。

 その他蒸気を使用せざる場合において、過熱器を過度に熱するの恐れあるはこの器の短所とするところにして、これを予防するがためにその場合には、ことさら水を注入するの方法を講じたれども成功せざりし。

 総てこの種の過熱器において免るべからざる欠点は、いったん過熱器内において過熱したる蒸気を、さらに「レギュレーター」及び「スチーム・パイプ」内において、冷却して「シリンダー」に送ることなり。

 現に「セント・ルイス」博覧会における試験によれば、「ピーロック」氏式過熱器内においては蒸気の温度、華氏530度ないし570度に達したれども、この温度は「シリンダー」に至るまでに140度を失ひたり。

 プロイセン鉄道「ブレスロー」管理局において「ストロール」氏の実験によれば、4-4-0 形機関車において「ピーロック」氏過熱器を有するものは、同種飽和蒸気機関車に比して水16「パーセント」、石炭12「パーセント」3分を節約し、また同種複式機関車に比して水10「パーセント」、石炭 3「パーセント」5分を節約したりと言う。

 

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2022年12月22日 (木)

機関車工学:上巻(その202)過熱器の種類及び構造:ボークレーン氏スモーク・ボックス式過熱器

【 「ボークレーン」氏「スモーク・ボックス」式過熱器 】

 この過熱器は全部「スモーク・ボックス」内に在りて、普通の「チューブ」より排除せるガスを利用して過熱するをもって目的とす。

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 その構造は第328ないし331図に示すがごとく、弓形を成せる数多の 1インチ4分の1 直径の過熱管を「スモーク・ボックス」の両側に配列したるものにて、火焔は「デフレクティング・プレート」により左右に別れて過熱器を通過し、その前面より回りて「チムニー」に逃出する装置なり。

 過熱器の上下に在る蒸気室は小区割を有し、過熱器を通過する蒸気をして、止むを得ず数回上下迂回して「シリンダー」に達せしむ。

 すなわち汽缶より出でたる蒸気は左右に別れて、各々上部蒸気室の一通路を経て、まず「スモーク・ボックス・ドア」に最も近き過熱管の第一群に入り、これを下りて下部蒸気室の一室に達し、その室より通ずる第二群の過熱管を上りて上部蒸気室の他室に集り、さらに転じて第三群に入り第四群にて上り第五軍にて下り、もって初めて「シリンダー」に達すべし。

 かくのごとく蒸気は「スモーク・ボックス」の前部より順次後方に近付き、最後において最も熱きガスにて温めらるるは、熱の伝導上そのよろしきを得たるものなり。

 最近に米国「サンタ・フェ」鉄道会社の 4-6-2 形機関車に取付けられたるこの過熱器は、過熱管の総数576本にして総面積759平方フィートを有し、「チューブ」伝熱面の23「パーセント」に当る。

 この過熱器において過熱し得る温度は30度ないし50度にして、石炭の節約は5「パーセント」なりと称せらる。最近の試験によれば石炭11「パーセント」、水15「パーセント」を節約し得たりと言えども未だ明かならず。

 要するに廃除ガスを利用して過熱するの方法は、各国において種々の設計をもって試みられたりと言えども、常に成功せし事なくその得るところは、余分の手数と費用とを償ふに足らざるもののごとし。

 

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2022年12月20日 (火)

機関車工学:上巻(その201)過熱器の種類及び構造:シュミット氏スモーク・ボックス式過熱器

【 「シュミット」氏「スモーク・ボックス」式過熱器 】

 この過熱器は第326及び327図に示すがごとく、過熱管は三重になりて「スモーク・ボックス」の外板に沿ふて装置せられ、その両端は上部において各々蒸気室に結合せらる。

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 過熱管の全部は一体に鉄板の筐中に蔵せられ、これを熱すべきガスは全く汽缶の下部に在る直径14インチの大なる焔管より供給せらる。この焔管の道筋に当りて「スモーク・ボックス」内における過熱管の一部は、「アーチ」形を成して円錐形の焔道を作る事は図に示すがごとし。

 ガスは過熱管をその下方より温め、上昇して過熱管の上部より筐外に出づるものにして、その出口には「ダンパー」ありてその流出の多少を加減し得べし。

 しかして「レギュレーター・バルブ」より来りたる蒸気は、直に左方の蒸気室に入り、最も内側にある過熱管の一列を経て右側の蒸気室に入るべし。これよりさらに中央の列に在る過熱管に移り、左方の蒸気室に逆行し、さらに外側の列に在る過熱管に転じ右方の蒸気室に戻り、その間に充分過熱せられて初めて「シリンダー」に赴くものとす。

 プロイセン鉄道においては始めこの形式を使用したりしも、その装置複雑にわたり過熱管の継目多くして修理やや困難なると、蒸気過熱の度も前に陳べたる「シュミット」氏「スモーク・チューブ」式にしかざるとにより、近来はもっぱら「スモーク・チューブ」式を採用し、現存せる「スモーク・ボックス」式は地方列車用に供し居れり。

 「シュミット」氏式過熱器は、その「スモーク・ボックス」式及び「スモーク・チューブ」式を合わし、1907年末においては当時製造中のものを併せて、その総数2427両に達し78の鉄道会社にて使用せりと言う。

 

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2022年12月19日 (月)

機関車工学:上巻(その200)過熱器の種類及び構造:ボーガン氏及びホルセイ氏スモーク・チューブ式過熱器

【 「ボーガン」氏及び「ホルセイ」氏「スモーク・チューブ」式過熱器 】

 この過熱器は「コール」氏過熱器に類せり。その異なる点は第318ないし325図に示すがごとく、蒸気室を2個に分ちて過熱管の上下に置き、上下両室より各々脚を出して過熱管に連絡せしむるものにして、上部の室に属するものは飽和蒸気の往路にして、下部の室に属するものは過熱蒸気の帰路なり。

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 「ボーガン」氏は米国カナディアン・パシフィック鉄道会社の汽車課長にして、「ホルセイ」氏はその設計掛長なり。同鉄道には「シュミット」氏及び「コール」氏の過熱器をも使用せり。

 

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2022年12月16日 (金)

機関車工学:上巻(その199)過熱器の種類及び構造:コール氏スモーク・チューブ式過熱器

【 「コール」氏「スモーク・チューブ」式過熱器 】

 第315ないし317図に示すは、米国機関車会社の技師長「コール」氏の設計に係る過熱器にして、大体において「シュミット」氏式の一部の改造に過ぎず、その異なる点は過熱管に真直なる管を用ひたること。従って蒸気室に脚を付したること、及び一往復のみの過熱管を用ひたる事なり。

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 同氏は始めの設計においては過熱管を同一の中心にして、二本相重ねたるものを使用したれども、後これを廃して各々独立の管とし、その先端を「シュミット」氏式のごとく U 管にて連結せり。

 

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2022年12月15日 (木)

機関車工学:上巻(その198)過熱器の種類及び構造:シュミット氏スモーク・チューブ式過熱器

【 「シュミット」氏「スモーク・チューブ」式過熱器 】

 この過熱器は第294ないし314図に示すがごとし。汽缶の上半部には内径5インチの大なる「チューブ」24本を有し、その内に各一組4本の小なる過熱管(鋼管にして内径1インチ16分の3)を蔵す。

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 この4本の過熱管は結局1本の連続せる管にして、始りは飽和蒸気の蒸気室より出で、終りは過熱蒸気の蒸気室に帰るものとす。

 その「ファイア・ボックス」側の終りにおいては、屈曲せる鋳鋼管(第298ないし300図)によりて連ながり、「スモーク・ボックス」側の終りにおいては単に屈曲して輪を成し、再び大なる「チューブ」内に入る(第309ないし311図)。

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 しかして「レギュレーター・バルブ」より「スチーム・パイプ」を経て来れる蒸気は、いったん蒸気室に集まり、それより24本の過熱管に入りて各々大なる「チューブ」内を2往復し、過熱せられて再び他の蒸気室に戻り、もって「シリンダー」に赴くものとす。

 「ファイア・ボックス」内において生じたる火焔の一部は、普通の「チューブ」に入り、他部は大なる「チューブ」に入る。大なる「チューブ」を通じて流るる火焔の分量は、「スモーク・ボックス」内に装置せらるる「ダンパー」(第312ないし314図)を開閉して自由に加減せらるべし。

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 この「ダンパー」は蒸気室の下位に蝶番にて取付けられ、過熱管を熱して来りたる火焔の通路を制するものにして、その開閉は機関手室より手力をもって行ふことあり。

 また特別に小なる蒸気「シリンダー」を備へて「レギュレーター・バルブ」を開きつつある間は、その内にある「ピストン」の働きにより「ダンバー」を開放し、「レギュレーター・バルブ」を閉じたるときは弾機の力にて「ダンパー」を閉鎖せしむ。

 蒸気力を用ふる者にも、手力をもって加減し得るの装置あり。けだし蒸気を使用せざるときに過熱管を熱すれば、これを焦損するの恐れあればなり。

 「シュミット」氏は始め一往復の過熱管を用ひたりしが、近来これを改良して二往復の過熱管となせり。かくする時は伝熱面を増加する共に、蒸気流通の速度を増加して過熱面の効率を増進し過熱の度を高くし、且つ過熱管の使用年限を増加すと言う。

 過熱管の表面を掃除するには、蒸気または約150ポンドの圧力を有する圧搾空気を吹込みて行ふものとす。

 第294ないし314図は、プロイセン鉄道において多数の機関車に応用せらたる、「シュミット」氏「スモーク・チューブ」式過熱器の要部の構造を示すものにして最近式のものに属す。図に記載せる寸法の数字は「ミリメートル」とす。

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 第301ないし305図に示せるごとく蒸気室の構造に2種あり。その1は飽和蒸気を過熱管に導く通路が a にて示せるごとく、室の鋳物と共に形成せらるるもの。その2は b にて示せるごとく、「チューブ」を挿入して構成せるものこれなり。

 また第312ないし314図の A なる鉄板は15度の傾斜をなし、「チューブ」掃除の際は「ダンパー」と共にこれを水平の位置に置くを要す。B の寸法は200ないし250「ミリメートル」とす。

 

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2022年12月14日 (水)

機関車工学:上巻(その197)過熱器の種類及び構造:過熱器の伝熱面

【 過熱器の伝熱面(heating surface) 】

 湿潤せる飽和蒸気が含有する水分子の分量は、普通の場合において5「パーセント」ないし10「パーセント」なり。

 今これを平均7.5「パーセント」と仮定し、絶対圧力170ポンドの蒸気を、その固有の温度温度368度2分以上に200度だけ過熱するものとし、「チューブ」伝熱面の幾「パーセント」を割きて、過熱器の伝熱面に供すべきかを研究すれば左のごとし。

 7.5「パーセント」の湿気を含む飽和蒸気の重量1ポンドの内に含有する熱量は、

 汽缶にて

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 過熱器にて

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 故に過熱蒸気1ポンドに要するに熱量は

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にして、そのうち184熱単位、すなわち全熱量の14「パーセント」は過熱器において所要のものなり。

 いま普通の汽缶における伝熱面の蒸発力を「ファイア・ボックス」と「チューブ」とに別ち、「ファイア・ボックス」にては全水量の40「パーセント」を、また「チューブ」にては60「パーセント」を蒸発するものと仮定し、過熱蒸気機関車においては、「チューブ」伝熱面の幾分を割きて過熱器に与ふるものとせば、過熱器に要する伝熱面は「チューブ」伝熱面の 14×100÷60=23.3、すなわち23「パーセント」余に当たるべし。

 しかれども「チューブ」伝熱面の効率は、「スモーク・ボックス」に近付くに従い著しく減少するものなれば、「スモーク・ボックス」付近において「チューブ」伝熱面を利用して過熱器に供するとせば、少なくともこれを30「パーセント」以上に増さざるべからず。

 現に最近製造に係るプロイセン官有鉄道の 0-10-0 形「タンク」機関車の伝熱面は、「ファイア・ボックス」において120平方フィート、「チューブ」において1332平方フィート、過熱器において458平方フィートにして、過熱器の伝熱面は「チューブ」伝熱面の34「パーセント」4分に当たるを見る。

 

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2022年12月12日 (月)

機関車工学:上巻(その196)過熱器の種類及び構造

第3章 過熱器の種類及び構造

 過熱器は4種に分類し得べし。「スモーク・チューブ」式、「スモーク・ボックス」式、「ボイラー・バレル」式、及び「ファイア・ボックス」式これなり。

第1「スモーク・チューブ」式過熱器

 この形式は普通の「チューブ」の数を減じ、約5インチの内径を有する大なる「チューブ」を数十本挿入し、この大なる「チューブ」内にさらに小なる「チューブ」を導き、「レギュレーター・バルブ」より来れる蒸気は小なる「チューブ」を通過したる後、「シリンダー」に赴くものとす。

 この形式に属するものは、「シュミット」氏式、「コール」氏式、「ボーガン」氏式等にして、今日最も広く応用せらるる最近式のものに属す。

第2「スモーク・ボックス」式過熱器

 この形式は「スモーク・ボックス」内に多数の「チューブ」を装置したるものにして、これがために特別に高熱度の火気をこれに供給するものあり。「シュミット」式「スモーク・ボックス」過熱器これなり。

 または全く普通の「チューブ」より排除したる火気のみをもって、これを熱するものあり。「ボークレーン」氏式これなり。

第3「ボイラー・バレル」式過熱器

 この種の過熱器においては別に過熱管を設けず、普通の「チューブ」のある長さを仕切りて、これを筐中に収めて缶水と絶縁し、この筐中に「ドーム」より直接に蒸気を送り、その蒸気をして筐中の小区割内を順次に通過せしめたる上、「レギュレーター」に至らしむるの装置にして、「ピーロック」氏式これなり。

第4「ファイア・ボックス」式過熱器

 この形式は「ファイア・ボックス」の「クラウン・シート」の一部に U 形の多数の管を取付け、「ドーム」より特別の蒸気管にてこれに蒸気を入れ、その過熱せられたるものは、さらに他の蒸気管にて「レギュレーター」に還送するものにして、オーストリア「ランガー」氏式これなり。

 また「スモーク・チューブ」過熱器の過熱管を、「ファイア・ボックス」内まで延長したるものあり。プロイセン「リッテル」氏式これなり。しかれども「ファイア・ボックス」過熱器は、その効能極めて少きをもってこれを顧みる者ほとんど稀なり。

 

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2022年12月 9日 (金)

機関車工学:上巻(その195)過熱蒸気:シリンダー内平均実効圧力の増加

【 「シリンダー」内平均実効圧力(mean effective pressure)の増加 】

 第3編第201ページにも述べたるごとく、飽和蒸気は「シリンダー」において凝結のためその圧力落下すべく、且つ「ワイヤー・ドローイング」のため、また大いにその圧力を低減するものなれども、過熱蒸気にして華氏300度ないし350度だけ過熱せられたるものは、「シリンダー」内においてほとんど全く凝結することなく且つ流動性に富み、「ワイヤー・ドローイング」の作用少きをもって飽和蒸気の場合に比して、はるかに高き平均実効圧力を示すものとす。

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 第37表に掲ぐるは第112ページ第79図と同型なる、プロイセン官有鉄道所属の急行列車用過熱蒸気機関車、第193号の実地運転の際に採りたる気力図(indicator diagram)より算出したるものにして、これを第202ページ第27表に示せる飽和蒸気に対する平均実効圧力に比すれば、はるかに大なるを見るべく、高速度の場合において特に著し。

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 該機関車の「シリンダー」の「クリアランス」容積は、普通のものに比しやや大なるをもって、比較上多少精確を欠くのきらいありと言えども、またもって過熱蒸気が飽和蒸気に比して、はるかに高き平均実効圧力を呈することを知るに足るべし。

 

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2022年12月 8日 (木)

機関車工学:上巻(その194)過熱蒸気:過熱蒸気の利益

【 過熱蒸気の利益 】

 「ウィリアム・リッパー」氏が、小形なる「シュミット」式据付機関において実験せる結果によれば、飽和蒸気の場合においてその「カット・オフ」に至るまでに、「シリンダー」内において生じたる蒸気の凝結を防ぐには、蒸気の凝結が蒸気全量の1「パーセント」を増すごとに、7度半の過熱を要すべしと言う。

 故に30「パーセント」の凝結を防ぐために要する過熱の量は 7.5×30=225、すなわち225度なりとす。

 今「シリンダー」内にて、「カット・オフ」までに充満すべき蒸気の分量を重量1ポンドと仮定し、またその絶対圧力を170ポンドとし、給水温度を32度とせば、その蒸気を得るに要する熱量、すなわちその蒸気の全熱は飽和蒸気の表により 1194.25 熱単位なるを見出すべし。

 故に送入する蒸気総量の30「パーセント」が凝結するものとせば、この熱単位を残すがために送入すべき熱単位は

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となり、蒸気の分量は1ポンド7分の3となるべし。しかしてまた同圧力の蒸気の重量1ポンドを、前に陳べたるごとく225度だけ過熱するに要する熱量は、過熱蒸気の比熱を0.6とせば

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となるべし。故にその過熱蒸気の総熱量は

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なるを知る。すなわち飽和蒸気にして 1706.07 熱単位を有するものと、過熱蒸気にして 1329.25 熱単位を有するものとは「カット・オフ」の際に、同じく重量1ポンドの飽和蒸気の状態となりて存在するものなれば、過熱蒸気を使用するがために利得する熱単位は

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 すなわち22「パーセント」の利益となる。

 またこの例において、過熱蒸気は重量1ポンドの蒸気を要したるに対し、飽和蒸気は1ポンド7分の3を費やせり。故に水の節約は30「パーセント」に相当せり。

 前例においては、過熱蒸気もその「カット・オフ」の点に達したるときは、飽和蒸気に変ずるものと仮定したり。もしそれなお多く過熱して「カット・オフ」の点においても相当の過熱ありとし、「エキゾースト」せらるるまで蒸気を乾燥に保ち得るとせば、その利便さらに大なるべし。しかしてこれがためには、さらに50度ないし100度の過熱を追加するを必要とするがごとし。

 陸上据付機関においては割合に早く「カット・オフ」を行ひて、最も経済なる膨張を利用するがために、過熱の程度は「ストローク」の終りまで持続せらるること稀なれども、機関車においては常に「カット・オフ」を変更し、時としては長区間40「パーセント」以上の「カット・オフ」にて運転することあり。

 かかる場合においては「シリンダー」内の蒸気は、始めより終りに至るまで乾燥せらるるのみならず、なおいく分か過熱蒸気のままにて「シリンダー」より排除せらるること有り得べきの理なり。

 これ一見損失たるがごときも、過熱蒸気は過熱のために大いにその容積を増加し居るが故に、過熱蒸気のままこれを棄つるとも同じ場合において、飽和蒸気を充分に膨張し得ずして棄つるに比すれば利益なりとす。これ実例及び理論上において証明せらる。

 「シーマン」教授が「シュミット」氏過熱式据付機関にて実験したる所によれば、1実馬力に要する熱量は、過熱蒸気の温度の増進に伴ひて減少し、「エキゾースト」の温度増進するとも、その利益を害することなし。その測定の結果は左表のごとし。

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 「ガルベ」氏の数多の経験によれば過熱の度、100度以下にては利益の見るべきものなく、これ以上に至れば効果著しく増加す。しかれども実際は約200度加熱して、「スチーム・チェスト」内における温度をして570度以上に至らしめざれば、石炭の節約も著しきに至らずと称せり。

 故にプロイセン鉄道において最近に基本とせる過熱蒸気の温度は、「スチーム・チェスト」内において662度(摂氏350度)のものをもってせり。

 「ガルベ」氏はこの種の機関車をもって、同重量の飽和蒸気機関車に比すれば、平均25「パーセント」の石炭を節約し得べく、また2個「シリンダー」あるいは4個「シリンダー」複式機関車に比すれば、20「パーセント」の石炭を節約し得べく、水の節約もこれに伴ふて著しと称せり。

 水の節約は種々の実験において著しく相違し、20「パーセント」より50「パーセント」に至り、普通の場合において石炭の節約よりも10「パーセント」以上にあり。「ガルベ」氏は水の節約割合をもって予定し難き数字なりしとし、その差違あるは常に缶内より飽和蒸気と混合して出で来る、水分子の量いかんに関するものとせり。

 飽和蒸気は常に必ず水分子を携帯し来るものにて、その特に多量の水分子を含有したる場合を指して、ふつう「プライミング」と称すれども、実際は常に多少の「プライミング」あるものなり。これ特に機関車を劇しく使用する場合においてしかりとす。

 故に蒸気を過熱するに要する熱量は、前に陳べたる「シリンダー」内の凝結を防ぐに止まらず、併せて「プライミング」をなしつつ出で来りたる水分をも、ことごとく皆蒸発せしめざるべからず。これはなはだ必要なる事項にして、「スモーク・ボックス」内に取付けたる簡単なる過熱器にては、成功する事あたわざるものとす。

 

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2022年12月 5日 (月)

機関車工学:上巻(その193)過熱蒸気:比熱

【 比熱(specific heat) 】

 過熱蒸気の比熱、すなわち重量1ポンドの蒸気を華氏1度だけ上昇せしむるに要する熱量は、「レニョー」氏の実験によれば圧力一定の場合には0.48にして、近来まで皆この数字によりたれども、最近ドイツ「ミュンヘン」市高等工業学校における「ノブラウフ」及び「ヤコブ」両氏の精密なる実測によれば、その比熱は温度及び圧力に応じて変じ、絶対圧力156ポンド及び185ポンドの場合には左表のごとくなるべし。

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 しかして過熱蒸気機関車の応用に付いて有名なるプロイセン鉄道の「ガルベ」氏は、0.6をもって過熱蒸気の比熱として常に計算用に供し、また米国「カナディアン・パシフィック」鉄道会社の「ボーガン」氏は0.7を選べり。

 これを要するに過熱蒸気は熱の不良導体にして、飽和蒸気のごとく容易く熱を他に与ふることなし。

 この性質は「シリンダー」内における、冷却に基因する損失を減少するの効能あり。しかれども同時に過熱蒸気を作る場合に多量の熱を要するをもって、過熱器に適当なる特別の設計を必要とす。

 

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2022年12月 3日 (土)

機関車工学:上巻(その192)過熱蒸気:過熱蒸気の性質

第2章 過熱蒸気(superheated steam)

【 過熱蒸気の性質 】

 機関車に普通使用する蒸気は、いわゆる飽和蒸気なるものにして、その一般の性質は下巻に詳論すべしと言えども、ある圧力に対しては必ずこれに相当する温度を有するものなり。

 例えば1平方インチに付き160ポンド(絶対圧力174ポンド7分)の圧力を有する蒸気は、常に華氏370度3分の温度を有し、150ポンド(絶対圧力164ポンド7分)の蒸気は、常に365度7分の温度を有するがごとし。しかしてこの割合は常に一定し下巻飽和蒸気の表に示すがごとし。

 この飽和蒸気なるものは汽缶内において水と蒸気と接触し、缶水より直ちに発生したるままの蒸気にして、未だもって空気のごとき完全気体の状態に近づく事あたわず。わずかにこれを冷却するとも、その一部はたちまち変じて水に復帰するものなり。

 しかれどもこの飽和蒸気を他の装置によりてさらに熱するときは、いか程にもこれを熱することを得るものにして、かく熱せられたる以上はこれを冷却するとも、その温度が飽和蒸気固有の温度までに降下せざる間は決して水分の凝結を来たすことなし。

 かくのごとく飽和蒸気固有の以上に熱せられたる蒸気を過熱蒸気と称す。

 例えば華氏370度の飽和蒸気を熱して600度に至らしむるとせば、この蒸気は230度だけ過熱せられたる過熱蒸気と称せらる。

 「イルン」氏は大よそ華氏16度加熱せられたる蒸気を、多少ガス体と見なし得べき状態にありとし、それ以上過熱せられたるものを蒸気ガスと称し、「シュミット」氏同じく180度以上過熱せられたるものをさらに熱蒸気と称せり。

 しかしてこれらの過熱蒸気は一般気体に類し、温度を上昇するときは圧力一定の場合にはその容積を増加し、容積一定の場合にはその圧力を増加すべし。

 ただし機関車における過熱蒸気は、一方は缶内の蒸気と連ながり他方は「シリンダー」に通ずるをもって、過熱の結果はその圧力に変更を来たさずして容積を増加するものとす。

 「シュミット」氏の示すところによれば、多少ガスの状態に達したる過熱蒸気の圧力と容積との関係は左のごとくなるべし。

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 P  1平方インチに付き絶対圧力(ポンド)にして、「ゲージ」に示せる圧力に14ポンド7分を加へたるもの

 V  重量1ポンドの蒸気の占有する容積(立方フィート)

 t'  絶対温度(華氏)にして普通の温度に461度を加へたるもの

 飽和蒸気の表によれば、蒸気の圧力の160ポンド(絶対圧力174ポンド7)なるとき、その温度は華氏370度3分にして、その重量1ポンドに対する容積は2立方フィート57なりとす。

 しかるにこれを過熱して華氏650度に至らしむるときは、その重量1ポンドに対する容積は前式により左のごとくなるべし。

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