再生可能エネルギーがついに「いちばん安いエネルギー」に
再エネは燃料費がいらないから、初期投資が終われば電気代が安くなるはず。
「電気代が上がる一方」「再生可能エネルギーはコストが高い」という認識は、世界的に見るともはや過去のものです。国連が発表した特別報告書は、太陽光や風力を含む再生可能エネルギーの急成長とコスト低下が、経済的に「不可逆的な転換点」を突破したと宣言しています。
今や再エネは、新規の化石燃料発電所よりも安価かつ迅速に導入できる、もっとも経済的合理性の高い選択肢になり、世界のエネルギーに対する投資を劇的に変化させています。誰にも止められない再エネの時代が到来したと言えそうです。
エネルギー革命は経済的に必然だった
2025年7月、国連は『Seizing the moment of opportunity』と題する特別報告書を発表し、世界におけるエネルギーの未来の新たな方向性を示しました。
アントニオ・グテーレス国連事務総長は、再エネの急成長とコスト低下が、もはや後戻りできない「不可逆的な転換点」を突破したと宣言。
報告書が示すデータは、再エネへの移行が、単なる環境対策ではなく、強力な経済的必然性として捉えられるべきだと結論づけています。
この変化は、世界の投資トレンドにも顕著に表れています。クリーンエネルギーへの年間投資額は、2024年に初めて2兆ドル(290兆円)を超え、化石燃料への投資額を8,000億ドル以上も上回りました。再エネへの投資は、10年間で70%近く増加しています。エネルギーの未来は、すでに化石燃料からクリーンエネルギーへと確実にシフトしています。
再生可能エネルギーの驚異的なコスト破壊
再エネは「高コスト」というイメージが根強くありますが、これは過去の認識です。
報告書によると、2024年の新規事業規模の太陽光発電は、世界平均の発電コストがもっとも安価な新規化石燃料発電所よりも41%も安く、1kWhあたりわずか4.3セントにすぎません。同じように、陸上風力発電も新規化石燃料発電所より53%安くなりました。
これは、再エネが経済合理性の高い選択肢となったことを示しています。太陽光発電の導入コストは、2015年から2024年にかけて68%も低下しました。化石燃料と異なり、一度設置すれば燃料費はかからず、太陽や風は無料で利用できるため、長期的に見れば電気料金はさらに安定し、安くなる可能性があります。
2024年には、世界の新規発電容量の93%(約600GW)が再エネでした。再エネの導入が進み、経済合理性の低い化石燃料が置き換わっていけば、再エネの電気料金は下がります。新規に建設される風力発電所と太陽光発電所の約75%が、既存の化石燃料発電よりも安価なエネルギーを提供しているといいます。
再エネ導入の勢いが止まらないアメリカ
アメリカでも、再エネへの移行はハイペースで進んでいます。2025年にアメリカで計画されている新規発電容量64GWのうち、半分以上が太陽光発電で占められる見込みです。また、64GW中93%を再エネと大規模蓄電バッテリーで占めており、化石燃料発電の新規発電容量は天然ガス火力の4.7GW(7%)で、原発の新規導入はゼロです。
特にテキサス州は、新規の事業用太陽光発電と蓄電バッテリーの導入が顕著で、カリフォルニア州を抜いて州別で全米最大の導入量を誇るようになりました。
蓄電バッテリーの導入拡大は、再エネの課題である変動性を克服するための重要なソリューションです。バッテリー技術の急速な進化とコスト低下によって、再エネはより安定した電力供給が可能になります。また、再エネと蓄電バッテリーの技術がコンビを組むことで、さらに迅速かつ大規模な再エネの普及が実現すると考えられています。
再エネは導入までが速い
再エネの合理性は、コストだけでなく、プロジェクトの導入速度にも見られます。国連報告書によると、産業規模の太陽光発電と陸上風力発電は、計画・開発・建設を含めて平均1~3年で完成します。小規模な太陽光発電に至っては、さらに短期間で設置が可能です。
一方、石炭やガス火力発電所は最長で5年以上、原子力発電所は10~15年もの期間を要します。日本の太陽光発電の工期は、規模によりますが数週間から数ヶ月で完了し、運用開始までには半年から1年程度ですみます。
この速度の差は、再エネがエネルギー需要の変動に柔軟かつ迅速に対応できることを示しています。
災害に強い分散型電源としての再エネ
日本は災害が多いため、災害時の電力確保は重要な課題です。再エネは、この課題を解決する鍵になります。
国連報告書が利点とする「分散型エネルギーシステムがレジリエンスを高める」という考え方は、特に日本に当てはまりそうです。
例を挙げると、千葉市、千葉県木更津市、岩手県陸前高田市、京都府福知山市といった自治体は、すでに民間企業などと連携して、避難所に太陽光発電設備と蓄電バッテリーを整備する事業を進めています。災害によって広い地域で停電が発生しても、避難所が電力供給源として機能するため、市民の安全な生活を支えることができます。
大規模な送電網に依存しない分散型電源は、災害時に供給網が寸断するリスクを低減し、エネルギーの安定供給につながります。
再エネで地域社会の経済を活性化
再エネは、地域経済に新たな活路をもたらす可能性を秘めています。その代表例が「営農型太陽光発電」です。農地の上部に太陽光パネルを設置し、発電と農業を同時に行なうこの取り組みは、農業経営の改善に貢献します。
宮城県気仙沼市では、大規模なトマト栽培施設が隣接する農地に営農型太陽光発電を導入し、年間600万円もの電気代削減を実現しました。他にも、茶や米の栽培でも、営農型太陽光発電が利用されています。
また、遊休地やゴルフ場跡地の活用も進んでいます。三重県津市では、ゴルフ場跡地に大規模なメガソーラーを建設し、一般家庭2万世帯以上に相当する電力をしています。再エネは、土地の有効活用と経済活性化を同時に実現します。
日本の未来はペロブスカイト太陽電池にあり?
「日本は国土が狭く、太陽光発電を増やすための土地が足りない」という懸念は、再エネ拡大を阻む根強い誤解のひとつ。しかし、この課題を解決するブレークスルーが、日本が強みを持つペロブスカイト太陽電池です。
この次世代太陽電池は、軽くて柔らかい特性を持っているため、従来の太陽電池では設置が困難だった建物の壁面や曲面にも設置可能です。国土の狭さを乗り越え、都市部での太陽光発電を飛躍的に拡大させる可能性があります。
さらに、ペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素の生産量は、日本が世界で2番目に多く、推定埋蔵量は世界の78%を占め、圧倒的1位です。海外からの輸入に依存することなく、安定したサプライチェーンを国内で構築できる戦略的なメリットがあります。
東京都は、ペロブスカイト太陽電池の導入に積極的で、すでに実証実験を開始しており、8月にはペロブスカイト太陽電池を「Airソーラー」と名付け、さらなる普及拡大を目指しています。
環境と気候、お財布に優しい未来はここにある
再エネは、もはや気候を安定させるために必要な「負担」ではありません。圧倒的な経済合理性、災害時のレジリエンスの高さ、そして地域経済を活性化させる原動力として、私たちの社会に不可欠な存在になり得ます。
世界の投資トレンドはすでに不可逆的なエネルギー革命の時代に突入しています。化石燃料への回帰を試みる政治的な動きが見られる国においても、その勢いは衰えていません。
日本も世界的な追い風に乗って、光の差す方へ向かって進んでいきたいですね。
Source: United Nations
Reference: Clean Technica, 環境省, 農林水産省, 日経BP, エネテク, 東京都(1, 2)