「女も子供も片端から突き殺す。一度に五十人、六十人」「人殺しをした後はかえって飯がうまい」日本兵たちの陣中日記につづられた残虐な所業と、戦後の沈黙【映画『豹変と沈黙 日記でたどる沖縄戦への道』】
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名もなき兵士たちの言葉を歴史に刻む
しかし日中戦争は泥沼化し、迎えた1941年12月8日。 《対米英宣戦布告。来たるべきものは遂に来た》(12月8日) 《僕は沖縄が空襲されはせんかと案じている》(12月9日) 故郷の家族を案じながらも、やがて学徒出陣へ。戦地へ赴くことを悩みながらも、陸軍の情報部門に配属され優秀な情報を上げたという。しかし大戦末期の1945年5月、中国での戦闘で戦死する。 《犬死にはしたくない。生きられるだけ生きて、俺の、(東亜同文)書院に来た日本人としての、従って俺個人としての仕事をやれるだけやって、諦観して死にたい》 日記の朗読が心に響く。戦地で綴られた文字も静かな迫力がある。映画の締めくくりに紹介される金城の悪夢は、戦争に翻弄された運命を象徴するようだ。 《夢だ。夢だ。俺はほんとによくうなされる》 名もなき兵士たちの陣中日記を「社会の記憶」として歴史に刻む作品だ。戦後80年の今、戦争の実相を伝える貴重な「財産」として噛みしめたい。 『豹変と沈黙 日記でたどる沖縄戦への道』 監督:原義和/出演:橘内良平、宮城さつき、西尾瞬三/2025年/日本/104分/©Yoshikazu Hara2025/上映予定:Denkikan(熊本・公開中)、第七藝術劇場(大阪・10/17まで)、シアターセブン(大阪・10/18〜)、シネマ・ジャック&ベティ(神奈川・11/15〜)、深谷シネマ(埼玉・11/16〜)、ナゴヤキネマ・ノイ(愛知・11/29〜)、桜坂劇場(沖縄・12/6〜)など。
相澤 冬樹/週刊文春CINEMA オンライン オリジナル
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