福岡在住の男性Ｔ様から「生き方に悩んでいる。知り合いから坂爪さんを紹介された」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。Ｔ様は言った。大学に行ったが同級生の目がみんな死んでいて、ここにいたらダメになると思って辞めた。みんなからは辞めて何をするのと聞かれたが、やりたいことがあるから辞めたのではなく、辞めたいから辞めた。辞めたいをやりたかったから、辞めるをやった。坂爪さんの文章を読んだ時、この人は生きていると思った。生きている人に会いたいと思った。Ｔ様は、そのようなことを言った。

Ｔ様は礼儀正しく、綺麗な目をしていた。綺麗な目をしている人間には、今の世の中は薄汚れて見えるだろう。大人たちは「金じゃない」と言いながら、金以外の価値を見つけられていない。いい大学を出て、いい会社に入る。要するに、金だ。金があるのがいい人生で、金がない人生は失敗。自分が幸せになることよりも、他人から幸せだと思われることに命を燃やす大人たちを見て、こどもたちがガッカリするのは当然のことだ。俺たちが見たいは金じゃない。かっこいい人間の姿だ。

退屈と恐怖と怒りが、人間を窮屈な世界に閉じ込める。嘘ばっかりだと思う君の感性は間違っていない。これから世界はどんどんつまらなくなる。やってられるか、だよな。聞き分けのいい人間になるなよ。いい人間になんかなるなよ。悪い人間になれよ。悪い影響を与えるんだよ。俺たちは、面白くするために生まれたんだよ。金も飽きる。女も飽きる。これがあれば金も要らない、女も要らない、そう思えるものを見つけるんだよ。暗いと愚痴を垂れるより、自分が強烈に輝くんだよ。

死にかけた犬がいた。飼い主は慌てて、病気に効く薬を用意したり、犬に水を飲ませようとした。それでも犬は何も食べない。何も飲まない。死を覚悟した飼い主は「最後くらいは好きなものを食べさせてあげよう」と思って、ケンタッキーフライドチキンを買って来た。すると、犬はとんでもない勢いで食べ出して、がぶがぶと水を飲んだ。病気は治り、犬は、その後二年間元気に生きた。俺たちは、死にかけた犬にとってのケンタッキーになるんだよ。無感動の中に浸っている人々を、ジャンクの鉄槌で、ガツンと揺り動かすんだよ。

世界はどんどん清潔になり、世界はどんどん退屈になる。完熟した世界を突き崩す核心は、俺たち一人一人の未熟さの中にある。完熟した人間は何も変えない。未熟な人間だけが、世界を変える。たとえ世の中は変わらなくても、自分が変わる。自分の世界が変わる。求人情報誌を見ても、やりたい仕事なんて一つもないだろう。当たり前だ。君は、この地球上における最初で最後の人間だ。誰かのルールは要らない。レッドブルなんか飲むなよ。人間型のレッドブルになれよ。自分にとって「これが最高だ」と思える瞬間を生きろよ。何が正しいかなんて誰も知らない。ただ、今の自分はダサい。今の自分はかっこ悪い。そう思うならあがけよ。愚痴を垂れる暇があるのなら、自分が強烈に輝けばいい。つまらない人間になるなよ。最後くらいは、好きなものを食べさせてやれよ。