- 要旨
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日経平均株価は先行き12ヶ月49,000円程度で推移するだろう。
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USD/JPYは先行き12ヶ月150円程度で推移するだろう。
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日銀は利上げを続け、2026年前半に政策金利は1.0%に到達しよう。
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FEDはFF金利を26年前半までに3.5%へと引き下げ、その後は様子見に転じるだろう。
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金融市場
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前営業日の米国市場は、S&P500が+0.4%、NASDAQが+0.7%で引け。VIXは20.6へと低下。
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米金利はツイスト・フラット化。予想インフレ率(10年BEI)は2.30%(▲0.7bp)へと低下。実質金利は1.725%(+0.2bp)へと上昇。長短金利差(2年10年)は+52.9bpへとプラス幅縮小。
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為替(G10通貨)はUSDが全面安。USD/JPYは151近傍へと下落。コモディティはWTI原油が58.3㌦(▲0.4㌦)へと低下。銅は10641.0㌦(+63.0㌦)へと上昇。金は4176.9㌦(+38.2㌦)へと上昇。
注目点
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補助金や給付金といった物価高対策は「バラマキ」とも揶揄され、経済政策としては「悪手」とされることが多い。本来インフレに講じるべきは財政引き締めであり、インフレ下における歳出拡大はインフレという「火に油を注ぐ」結末になりかねないとの批判は多い。
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もっとも、現実に目を向けると政権(岸田、石破)が直面した状況において、教科書に忠実な財政引き締めを講じることは非現実的であった。支持率が低く政権基盤が揺らぐ可能性がある中で「不人気政策」が採用できないのは火を見るよりも明らかであった。静観を続ける手もあっただろうが、野党が支持を伸ばす中では「無策」と捉えられた可能性が高い。
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現在、消費者物価上昇率は3年超にわたって日銀の物価目標である2%を上回っている。背景には物価上昇を抑え込むのではなく、物価上昇に負けないための財政支出拡大を続けてきたことがあるだろう。事実、ここ数年は度重なる低所得者向け給付金、エネルギー補助政策、定額減税といった政策が間断なく進められてきた。そのためインフレによって実質賃金がマイナスにもかかわらず、個人消費は横ばいを維持した。需要を抑えて物価上昇を沈める構図には至らなかったことになる。
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この間に賃上げが進んだことも相俟って、企業は価格転嫁が容易となり、積極的に値上げを進めた。そこで日銀短観における企業の物価見通し(全規模全産業)に目を向けると、1年後の販売価格見通しが物価見通しを上回った状態にあることがわかる。9月調査では、日本全体の物価見通し+2.4%に対して、自社の販売価格を+2.8%が見込まれていた。この差は企業の価格決定力を疑似的に表していると考えられる。コロナ期以前においてマイナス圏が常態化していた疑似価格決定力指数が2022年頃からはっきりとしたプラス圏にあるのは、企業の価格決定力の強まりを象徴しているだろう。上述したように物価高対策として悪手とされる政策支援が企業の値上げを可能にしたことが効いていたとみられる。
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バラマキ型の物価高対策が悪手とされる理由は、端的に言えば「その分だけ企業が値上げをするから」である。企業の価格転嫁が容易になることを通じてインフレが加速するのは自明の理とも言える。もっとも、それが逆効果と言えば、必ずしもそうではないだろう。企業の積極的な価格転嫁は、企業収益を膨らませる効果があり、それは賃金上昇を促進させ、家計の購買力を維持・増加させる方向に作用する。政策当局からみれば、家計に直接届けたかった政策支援効果が企業を経由して届くことになるだけで、所期の効果は発現する。こうして考えると、企業収益拡大、名目賃金上昇、物価上昇が併存する現在の構図の裏には、バラマキ型の物価高対策の効果があったと言うこともできる。
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ここで付加価値の単価とも言うべきGDPデフレーターに注目すると、2022年以降はっきりとした上昇傾向にあることがわかる。インフレ指標としてのGDPデフレーターが優れているところは、交易条件の変動が加味されていることであり、インフレの質をある程度評価できることにある。たとえば原油の輸入価格が上昇しても、それを国内価格に転嫁できない場合はマイナス方向に動く(原油輸入量と輸出価格は不変と仮定)。事実、過去の原油価格急騰局面においてGDPデフレーターはマイナス方向に推移することが多かった。翻って現在のGDPデフレーターがはっきりとしたプラス基調にあることは、コスト増が価格転嫁され、企業の採算改善すなわち企業収益が拡大基調にあることと意味する。
- インフレ対策として間違った処方箋とされる財政支出拡大は、このようにしてあらゆる名目値を嵩上げしてきた側面がある。インフレに直面する家計には逆効果かもしれないが、議論の対象を名目値で評価される株式に置き換えれば、強力な栄養剤であるとも言える。現在の株価が名目GDPの急拡大によって説明可能であることを改めて認識しておく必要があるだろう。
藤代 宏一
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