北鎌倉「緑の洞門」、閉鎖解除の出口見えず 撤去か保存か、市は板挟み
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「緑の洞門」とも呼ばれ、JR横須賀線北鎌倉駅(鎌倉市山ノ内)脇の尾根を素掘りした「北鎌倉隧道(ずいどう)」。2015年に安全上の理由で閉鎖され、10年が経過しているが再開通のめどは立っていない。市は当初、開削工事によるトンネル撤去の方針だったが、市民の反対運動で一転、トンネル保存にかじを切った。しかし、この方針転換が今度は近隣住民の反発を招き、その後は開削工事を求める地権者との交渉も長く膠着(こうちゃく)している。早期開通を求める住民の声は強いが、板挟み状態の市は結論を出せていない。 【写真で見る】10年以上封鎖された北鎌倉隧道の入り口=9月、鎌倉市山ノ内 「この10年、行政は何も動いてこなかった。地域の安全を守る責任が自分たちにはある」 トンネルが掘られた尾根の一部を所有し、円覚寺(同市山ノ内)の塔頭(たっちゅう)として知られる「雲頂庵」の前住職・殿谷一成さんは訴える。市がトンネルを小型車まで通行可能とする計画案を検討しているのに対し、雲頂庵は「救急車や消防車などの緊急車両が通行できるようにしてほしい」と開削工事を求めてきた。 かつて県道までつながっていた参道は1951年、駅ホームが延伸したことで寸断。山と線路に挟まれた住宅地にとってトンネルは外につながる数少ない生活路だった。住宅地の路地は車両が入り込めないほど細い場所もあり、救急車も傷病者の自宅前まで乗り付けることができず、数百メートル離れた踏切前に止めた救急車までストレッチャーで運ぶことになる。2008年、周辺の住宅で足の不自由な高齢女性が亡くなる火災も起きており、殿谷さんは「鎌倉の中で最も消火活動が難しくて危険な場所と言われている」と指摘する。 ■複雑な権利関係、交渉を難しく 長さ約10メートル、高さ2メートルのトンネルは、北鎌倉駅が開業した1927年ごろに掘られたとされる。トンネルの通る市道はトンネルの入り口が近隣住民の私有地で、尾根部分は円覚寺と雲頂庵が所有。トンネル下には横須賀市の水道管が埋設され、権利関係が複雑に入り組み交渉を難しくしている。 市は2014年、地元町内会などとの話し合いで一度は開削工事によりトンネルを壊すことで合意。一方で近隣住民の中から景観保全の立場からトンネルの保存を求める声も上がり、2万筆の署名が集まった。 文化庁は市に尾根の文化財的価値を検討するよう指導。尾根は円覚寺の14世紀の絵図にも描かれ、市文化財専門委員会も「将来的に史跡指定を目指すべきだ」とする立場を取ったため、市は16年、一転してトンネルの保存を決めた。
神奈川新聞社
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