表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十二話「夢か現かその光景を」
455/1032

行動に対する結果

「それを含めて、お前は私に勝ったのだ、少しは嬉しそうにしたらどうだ?エルフに勝ったというのに」


「あからさまに手を抜いた相手に勝っても嬉しくないっての・・・まぁ手を抜かなきゃ戦いにもならなかっただろうけど・・・その気になれば最初の一撃で俺の剣吹っ飛ばしてただろ」


「そこまで気づいていたか・・・いやすまん、さすがに少し見くびっていたようだ」


静希の言葉が予想外だったのか石動は本当に意外そうな声を出して静希への称賛を惜しまなかった


さすがに毎日のように剣の達人である雪奈との訓練をしているのだ


初撃が恐ろしいほどの重さと鋭さだったのに、それ以降どんどんと威力が落ちていけばさすがに気づくというものだ


鋭さと速さこそ変わらなかったものの、刃に込められる重さに気づけないほど静希は未熟ではない


「明利、治療してやってくれ、両手と足と尻だ」


「う、うん、任せて」


明利が石動の体に触れて同調を開始するとその傷口の状況を正確に把握したのか、わずかに驚いていた


あれだけ傷をつけられてから長い間傷を放置していたのにもかかわらず雑菌の類がまったく入っていない


血流操作の賜物だろうか、これならば傷口をふさぐだけで済みそうだった


「石動さん、血の流れを操れるなら傷付近の血の流れを速くできる?そうすれば早く治せるけど」


「わかった、やってみよう」


人間の自己治癒能力というのは血の行き交う量に依存する


例えば腕などよりも血管などの集中し、なおかつ血の流れの速い頭のほうが傷の治りが早いように、血の流れを速くすれば自己治癒力も高まる


明利の治癒能力は人間の自然治癒を強化している種類のものなので、石動の能力とは相性がいいのだ


「血を操るって、なんかすごい怖い能力ね、他人の血とかも操れるの?」


「不可能ではないが、自分の血のほうが出力は上がるな、血の量を増やせばそれなりの強さにはなるぞ?」


石動の戦いは自分が傷ついても、相手が傷ついてもアドバンテージになるようなものだ


自分の傷が増えれば増えるほどに攻撃手段は増え、相手の傷が増えれば増えるほど自分が使える血の量が多くなる


持久戦にこれほど向いている能力もないのではないかと思えてしまう


今回は条件が限定されていたが、もし彼女が全力だったならおそらく静希はその体に傷一つ付けられなかっただろう


「てかさ、血を操れるなら何で昨日のぼせたときにすぐ直さなかったんだ?」


陽太の言葉に静希と鏡花がそういえばと石動のほうを向く


人間が風呂に長く浸かって起きるのぼせという症状の原因は基本的に貧血に近いとされている


湯に長時間浸かることで血管の内径が広がり頭に行く血の量が減るために発生するのが基本である


長時間風呂に入っていると同時に脱水症状も起こしやすい


陽太の言うように石動が血液を操ることができるのであれば貧血などになるはずはないのである


「いや・・・その・・・恥ずかしい話だが、話に夢中になっていてな・・・そこまで気が回らなかったというのが原因だ・・・」


本来、能力を使う際にはそれなりに集中力が必要である


能力者は訓練によって、集中しなくても能力を使えるように訓練するのだが、石動のように体内の血流を操るとなるとかなり高いレベルでの集中が必要だろう


話に夢中になっている状況ではもちろんそんな集中を引き出せるはずもなく、同じように意識がもうろうとなってしまう貧血状態で集中できるはずもない


「ふぅん、いったい何話してたんだか」


「い、いやその・・・ははは、なんでもいいじゃないか、なぁ幹原」


「う、うん、そうだよ・・・ガ、ガールズトークってやつだよ!」


明利の渾身のフォローに陽太はどうでもよくなったのか、何の疑問もなく納得して見せた


さすがに猥談を許容するようなガールズトークも何もないと思うが、それを知るのは静希のみである


「はい、治ったよ、傷跡はないようにしたからたぶん大丈夫だと思う」


「おぉ、すまないな、感謝する」


自分の手と足を眺めながら傷跡がないのを確認していく


さすがに尻をこの場で見るわけにもいかないために確認はできないようだった


「んじゃそのお尻の穴直しちゃうわね、ちょっとじっとしてて」


今度は鏡花が静希の釘によって開けられた服の穴をあっという間に修復してしまう


生き物なら明利が、物質なら鏡花が


この班ならば大抵のものは修復できるだけに便利なものである


「おぉ、重ね重ねすまないな・・・というかお前たちは本当に優秀だな・・・」


その言葉に別に褒められていないはずの陽太と雪奈が胸を張るが、誰もそのことに突っ込もうとはしなかった


静希は人外への対応や状況判断に


明利は索敵や治療に


陽太は前衛としての戦闘能力に


鏡花は変換を用いた補助や後始末に


それぞれやれることが決まってしまっているだけに不便ではあるが、班としての性能は非常に優秀であると言えるだろう


「それで?静希が一人残ることは了承するわけ?」


今回の戦いの原因ともいえる静希の単独行動への了承


そういやそんなこともあったなと陽太がつぶやいている中石動は首を縦に振る


「もちろんだ、こうも叩きのめされては従うほかあるまい」


「叩きのめされるって・・・妙な言いかたをすんなよ」


間違ってはいないだろう?などと得意げに言っているが、石動の静希に対する評価はかなり高いようだった


手加減しているとはいえ、エルフである自分に勝ったのだ


それも前衛の人間ならばまだ理解できるが静希は中衛から後衛の人間だ、だからこそほぼ接近戦でのせめぎ合いで打ち勝ったのだ、評価を低くできるはずもない


もっとも、静希は自分の能力が低いからこそ前衛の真似事をしなくては周りの実力についていけないため、致し方なしにやっているだけなのだが


能力の低さが故に本人の実力を伸ばすというのはよくあることである


陽太や鏡花は自身の能力が強いためそんなことをしなくても問題ないが、能力が弱い静希や明利は自分の体だけでできることを増やさなくてはならない


静希なら接近戦や射撃、その他工作技術


明利なら医学や狙撃、本人の体力強化も行っている


雪奈も自身の能力が強いためにまったくと言っていいほどその他技能を取得していない


石動の評価が妥当かと言われれば微妙かもしれないが、それでもできることを最大限に活かすことができるという意味では正確な評価であると言えるだろう


「で?お前たち、じゃれ合いは済んだか?」


その声が聞こえた瞬間に静希達一班の人間が凍り付く


首をゆっくりと山崎家のほうに向けるとそこには担任教師城島が腕を組んで仁王立ちしていた


「まさかこんな場所で能力戦をやろうとはな・・・私もずいぶん驚かされた・・・しかも石動、お前まで参加していようとはな」


そういえば城島に許可をとるのをすっかり忘れていたなと、今さらながらに後悔しながら全員体の震えと冷や汗が止まらなかった


よくて正座、悪ければ教育指導という名の暴力が待っていること請け合いだ


「せ、先生、これには訳がありまし」


て、と陽太が言いかける瞬間にその顔面めがけて拳がめり込む


顔面を強打され後方へとのけぞる陽太は鼻血を垂らしながら倒れないようにこらえていた


「じょ、城島先生!体罰はさすがに行き過ぎでは」


「お前もだこの仮面バカ」


石動の注意の言葉も聞かずにその脳天めがけて拳が振り下ろされ鈍い痛みを刻み付ける


他のクラスの生徒だろうとまったくお構いなしに振るわれる教育指導という名の暴力に静希達は戦慄する


もはや救いはない


「せ、先生!私たちはこいつらが面倒を起こさないように見張ってました!私たちは無罪です!」


「そ、そうです!ね、明ちゃん!見張ってたよね!?」


「え?え!?えっとあの」


「黙れポンコツども」


一切の区別なく、手加減なく振るわれる拳に女子全員がその頭に鈍い痛みを刻みながらのたうち回る


能力を使わないただの拳でこの威力だ、本気を出したらこんなものではないだろう


「さぁ五十嵐、お前ほどの奴が私に何の断りもなく私闘とは・・・覚悟はできているか?」


今すぐに逃げたいという欲求が静希の脳裏に過るが、それ以上に目の前にいる圧倒的強者の放つ殺気に全身がすくんで動けない


拳を鳴らしながら近づいてくる城島を前にある意味覚悟を決めると、次の瞬間に腹に拳を一発、その後屈んだところに脳天めがけて踵落としを受け静希は地面にうつぶせに倒れる


「全員今回の件が終わったら反省文を提出すること、期限は一週間以内だ、忘れるなよ?」


蛇のように鋭い眼光を向け、山崎の家に戻っていく城島を見送って、その場に残った生徒たちは自らの体に刻まれた痛みに悶えながら何とかその状況から復帰しようと体を動かしている


特に重症なのは静希だ


主犯だったこともあってか腹と頭に一撃ずつもらっている


しかも踵落としの際に地面に顔面から叩き付けられたために意識がもうろうとしながら悶絶している


「ちょっと静希・・・あんた大丈夫?」


「こ・・・これが大丈夫に見えるか・・・!?」


腹を押えながらも鼻から血を流している静希を気の毒そうに眺めながら、鏡花はため息をつく


自業自得とはいえ、この扱いはひどい、いや叱られるのは妥当だと思っているが、よもやここまできつい罰を食らうとは思っていなかった


「うぅぅ・・・痛ったぁ・・・!久しぶりに殴られたぁ・・・!明ちゃん大丈夫かい?」


「うぅ・・・痛い・・・」


雪奈も明利もかなりの痛みを覚えているのか頭を押さえながら悶絶している

さすがの雪奈も殴られることに耐性があるとは言えないようだった


「んだよお前ら情けないな・・・あのくらいで」


「そ、そうは言うがな響・・・何の強化もしていない状態でこれはきついぞ・・・!」


完全に前衛人間であり、鏡花の指導もあってか打たれ強くなっている陽太は軽く鼻血をぬぐうだけでまったくダメージを残していないようだ


無駄に頑丈なだけはある


対して石動は強化が間に合わなかったのか、声を震わせながら頭を抱えている


さすがのエルフも痛いものは痛いらしい


誤字報告が五件たまったので複数まとめて投稿


ストックと今の話の位置からもう少し投稿数を増やすことを考えています


実際にやるのはもう少し後になるかな


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ