ENGカメラマンを目指す若手スタッフ向けの「25マス練習ドリル」
タイトルにもあるように、この記事はENGカメラマンを目指す若手スタッフ(VEさん)のみに向けた記事です。
基本のカメラワークを身に着けるため、機材室にいるときなどいつでもできる練習方法に「接写」(再撮)があります。
接写の小さな動きは、ロケの際の大きな動きをするための原型となる基本中の基本です。小さな動きをマスターすることで、体全体を使った大きな動きにつなげていきます。
それでは、自分が新人の頃、練習するために自分で作った5×5=25マスの数字が書かれた紙と、その練習方法を公開します。
セッティング
まずはセッティングです。
▽三脚のバランスはとれているか?
▽カメラの高さは適切か?
▽紙に対してライトのバランスはとれているか?
▽レンズと紙の角度が正対して合っているか?
それぞれしっかりと確認しましょう。
1.撮影の基本
練習の際でもテストディスクなどで撮影することをお勧めします。
手先の練習と、レックボタンを押したときでは自分にかかるプレッシャーが違います。
さらに「止めは10秒」を意識することができます。カメラワークの前後(特に後)は、きっちり10秒数えて止めましょう。落ち着いた接写の時にできなければ、ロケ先では絶対にできません。
また「キメ(安定した構図)からキメ」にカメラワークする習慣をつけることにもつながります。カットの基本はフィックスor1ワークです。何を表現したいのか明確に分かるカットを撮れるように練習しましょう。
2.センターズーム
まずは三脚のパン・ティルト共にロックして、ズームのみの練習です。
ズームイン・ズームアウト共に行ってください。
最初はゆっくり動き始めて → スムーズにワーク → ゆっくりスピードを落としてキメで止まる
以上が基本的なズームです。
クイックズーム・ゆっくりとしたズーム(じわズー)など、スピードを変えて練習しましょう。
3.パン
横に動くパンの練習です。
右から左へのパン・左から右へのパンどちらもやってみてください。
資料の接写など「文字追い」では、読むスピードに合わせたカメラワークが必要となります。スピードを変えてみましょう。
パン棒の角度や持つ場所を変えてみるのもいいかもしれません。
手で三脚を持つ場所はパン棒だけとは限りません。三脚の雲台(お釜)を持ってパンするなど工夫してみましょう。
4.パンとズーム
次にパンをしながらズームイン・ズームアウトをやってみて下さい。
ズーム前と後、どちらもキメ(安定した構図)を意識して、狙ったところでしっかり止めます。
カメラのセンターマーカーをどう利用するかの意識も大切です。
また、パンとズーム同時だけでなく、時間差をつけてやってみて下さい。
どちらかが早いとどういった効果があるのか、実際に録画したものを見てみると違いが分かると思います。
5.ティルトとズーム
前項目の上下移動バージョンです。
ティルトをしながらズームイン・ズームアウトをしましょう。
6.斜めの動きとズーム
パン・ティルトともに三脚のロックを外して、斜めにカメラワークをしてみましょう。ズームイン・ズームアウトともやってみて下さい。
右上・右下・左上・左下、と全ての方向をやってみることで、自分が苦手な方向が分かると思います。
大切なのは、パン棒を持った右手で全てを制御するのではなく、三脚そのものがカメラワークをするのを、あくまでも右手で少しサポートするような意識です。
7.見えないところにズーム
今までの練習項目は、カメラの上手いディレクターなどプロカメラマンでなくても、カメラによく触れている方なら比較的すぐできます。
せっかくなのでプロらしいカメラワークを練習しましょう。
「見えないところ」とは、カメラワーク前のファインダーに映っていない場所という意味です。
気候の話題では太陽へズームイン、場所の説明では看板からズームアウトと、プロなら毎日当たり前にやるカメラワークですが、これがスムーズにできるかできないかで大きく違います。
スピードを変えて、ズームイン・ズームアウト共にやってみましょう。
8.応用編
接写は大きく分けて「貼り」と「置き」があります。
今までは壁などに固定した「貼り」だったので、次は床に置く「置き」で練習してみましょう。
貼りの場合と大きく違うのは、角度がついている(正対していない)ことです。置きの場合は、無理に正対させるよりも、初めから角度をつけた方がバランスが良く見えることが多いです。
それだけに文字追いのパンなどもレベルが上がるので、しっかりと練習していきましょう。ズームとフォーカスの同時操作など、貼りの時とは違ったスキルも必要となります。
「黒布の黒からズームアウトして資料全体」など、置きの接写でよくあるカメラワークも練習しましょう。
まとめ
接写ができないプロカメラマンは存在しません。
練習すれば誰でもできるようになります。
反対に言うと、練習しなければ絶対に(絶っっ対に!)できるようになりません。
箸の使い方や自転車の乗り方のように初めはできないのが当たり前なので、1度や2度でなく、何度も何度も練習を重ねることでできるようになります。
「どれだけ真剣に取り組んだか」以上に、大切なのは「何回やったか」という回数だと思います。「40回・400回の法則」という言葉を知っていますか?
何となく練習してしまうと身につくまで400回掛かる練習も、適切な練習方法で真剣に取り組めば40回で身につく、という意味なのですが、「どんな天才でも身につくまでには40回掛かる」という意味でもあります。毎日真剣に練習したとして1ヶ月以上費やして、やっと身につくのがテクニックです。
さぁ、練習です。出勤直後や帰宅前に、ほんの少しの時間でいいです。今日から毎日練習する習慣をつけましょう。
そうして身についた技術は、お金や地位と違って誰からも絶対に奪われません。
努力の結果は、一生ずっとあなたのそばにいて支えてくれるはずです。


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