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フリック入力を売った話

*ここに書けないことも著書に詳しく書いたので、そちらを読んでね! 

フリック入力発明秘話」思った以上に好評いただきありがとうございます。一発目のnoteにたくさんリアクションいただいて燃えてきました!
冷めやらぬうちに、「フリック入力を売った話」を書きます。

大金持ちになったらどうしよう

2007年からいくつか出願したフリック入力の特許が最初に登録になったのは2011年。そこから2103年までに5つの特許が登録になりました。
世の中はすっかりスマホの時代。iPhone、Android、Windows Mobileにも僕の特許は使われていて、みんなもうフリック入力は手放せない!となっていたので、さぁ、どうしようかと。
とんでもない特許を取ってしまった。ゴルゴ13に狙われるんじゃないかと思ったり・・

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出典:NEWSポストセブン

でもせっかくだからマネタイズしよう。
すげー金持ちになったらクリーン電力オンリーの電力会社を作ろうと。
思いました。

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出典:CNET Japan

泥沼訴訟に耐えられるのか

よく、「毎年莫大なお金が入ってくるんでしょ」と言われますが、特許って、そう簡単じゃないんです。
おとなしくお金を払いたい企業なんてないわけで。
対抗してくるんです。
対抗手段としては
・つぶす
・かわす

があります。

つぶすというのは、特許を無効審判という行政手続きや裁判によって、なかったことにしてしまう手段です。
当時、無効審判の成立率は40%ほど。

日本情報201710-03_特許無効審判の最終処分件数


出典:創英国際特許法律事務所

僕がスマホ作っている各社にライセンスを要求したら、ほぼ確実に無効審判を請求されるでしょう。潰されなくても、泥沼裁判に持ち込まれたら、資金も相当必要でしょう。さらにApple、Google、Microsoftなどから同様の無効審判をされるでしょう。
お金と、時間と、労力も、かなり必要です。
負けた場合はゼロなので、出費だけが残ることになります。
もちろん弁理士としての自分の能力には自信があるけど、
個人の規模で、体力が持つのか

かわすというのは、特許を侵害しないように設計変更するということです。
前回の投稿とちょっと矛盾するけど、僕の特許のキモは「ガイド表示と実際の当たり判定が異なる」ということなので、「ガイド表示と実際の当たり判定が同じ」なように設計変更されたら(使いづらそうだけど)特許をかわすことも可能です。

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知られざる弱点

そして、僕は自分がまさに発明者で担当弁理士だからこそわかる、この特許の弱点を知っていました。

ひとつは、「ガイド表示と実際の当たり判定が異なる」という技術が外国などで公開されていた場合、それを証拠として無効にできる、ということ。
特許庁もサーチできない証拠が、世界企業なら見つけられるかも

もうひとつはちょっと専門的な話ですが、キモとなる部分は、当初の出願より後のタイミングに国内優先権を使って出した明細書に書かれていた部分です。このような部分が当初の出願のタイミングで進歩性判断されるか、意見が分かれるような判例がちょうど出ていました。
最初の出願が2007年4月11日。優先権出願が2008年1月18日。
優先権主張の出願もiPhoneの日本上陸前ですが、当初の出願日で判断されない場合は少し不利になります。先使用権の主張もあり得ます。

このようなことを考えて、僕がもし相手方(Appleとか)の弁理士だったら・・・この特許を潰せる可能性はけっこうある

売るという選択肢

ライセンスすれば、特許の存続する20年間にわたり、ライセンス料を受けられる。でも、その前に潰されて借金まみれになるかも。売って一括でもらった方がよいのでは?
どうでしょう。この状況。オール・オア・ナッシングか、もらえるものをもらうか賞金制のクイズ番組の終盤みたいです。

僕は、ライセンスするより、売る方が良いと判断しました。
販売の方法としては、オークションにかけることにしました。
自分のものになるかも知れない特許を潰してくる企業はないでしょう。
知り合いの弁護士、弁理士の大先輩2人、税理士2人にチームに入ってもらって、作戦を考えました。
それで、Apple、Google、Microsoftほか10社ぐらいに弁護士名で手紙を書き、いくら出せるかをクローズドで提示してもらい、一番高い値段をつけた会社に売ることにしました。

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出典:Apple

各社の本社から知財担当が来日し、英語での交渉。残念ながらジョブス氏は亡くなった直後だったので会えませんでしたが・・
その結果、AppleとMicrosoftが最終的に同額をつけました。
節税対策で、特許だけ売るのではなく会社ごと売るという作戦を税理士さんたちに授けていただいたのですが、
Appleは会社の買い取りではなく特許だけ欲しい、とのことだったので条件が合わず、最終的に、Microsoftに会社ごと譲渡しました。

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出典:Microsoft

企業同士は特許の持ち合いがあり、体力もお互いあるので、なかなか特許の無効審判合戦はしません。それもあってか、フリック入力の特許は未だに残っています。

誰にも言ってない話

初めて明かしますが、僕は、この特許を確実に潰すことのできる資料をずっと持っています。これは僕が仕込んだもので、機密保持義務のある公証人を除き、誰にも見せたことがありません。もしどうしてもお金が必要になったりしたらAppleにでも売ろうかと思っていますが、せっかく自分で生んだ特許を潰すのは忍びないので、なるべく使わないで墓まで持っていこうと思っています。
→有料記事にしました!気になる人はぜひ

あと、気になる譲渡金額は、機密保持契約もあり、秘密です。
今まで働いてきたのがアホらしくなる金額ではありました。
でも、未だに電力会社は作れていません

正直、売らずに守り抜いてパテントトロールになってライセンスを毎年もらうのも良かったよな、と思う時もあります。
フリック入力は日本語の構造に依拠しているので日本でしか特許取らなかったけど、PCTで世界で取っておいたらよかったなとか、も思います。
とはいえ、その時々で最良の判断をしたとは思っています。
なので、僕に頼ってくれる企業には、発明する弁理士として、発明から特許化、マネタイズまで含めた最良の作戦を授けたいと思っています。

結果、僕は好きな音楽にしっかり取り組むことができたので、選択は間違いではなかったと思っています。
次回は僕がAKB48、ももクロ、パク・ヨンハ等に楽曲提供した話、今やっている音楽の話など、音楽の話を書いてみたいと思います。

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発明家ミュージシャン小川コータ お気持ちくだしゃんせ。

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