いまの小学生が大人になるころには、僕たちの仕事はAIに取って代わられるかもしれません。小説家をはじめクリエイターたちの立場はすでに苦しくなっています。それでもなお、いやだからこそ、僕たち老人は痩せ我慢をしなくてはいけないんです。
勝つことだけがすべてではありません。勝ち負けや成功・失敗の定義は時代や状況によっても変わるし、西郷のように「負けたけど愛される」ことだって考えられる。僕も負けた先人たちの本を読んで、感動してきた人間ですから。
苦労と世間からの冷たい目を栄養にして、雪の下でもっと甘くなる――そうやって育つ人参のように、これからも生きていきたいですね。
「週刊現代」2025年10月27日号より