撮影:岡田康且

世の流れに抗った福沢諭吉のように

本なんてなくとも、必要な知識はAIに聞けばいい――昨今ではそう考える人も増えているだろう。しかしそのような風潮に対して、荒俣さんは警鐘を鳴らす。

現代社会は「即座に答えが出ること」に重きを置くきらいがあります。でも往々にして、すぐ役に立つものはすぐ役に立たなくなる。そもそも僕が蒐集していた稀覯本に書かれている知識なんて、ネット上にはそうやすやすと転がっていないから、現在のAIではたどり着くことすら難しいでしょう。

世の流れはAI礼賛に傾きつつあるものの、まだ僕はなんとか抗っていますし、死ぬまでそうありたいと思っている。でも一方で、「大勢には逆らえないんじゃないか……」という不安もつねにある。だからこそ、西南戦争後に福沢諭吉が西郷隆盛を擁護するために書いた『丁丑公論』が、身にしみるんです。

福沢諭吉
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この本で福沢は、明治政府に抗って死んでいった西郷の「抵抗の精神」を高く評価しています。およそ勝ち目がないにもかかわらず、彼は自分の意志を貫き通した。戦争後、日本中が西郷を「逆賊」と非難しましたが、福沢はそんな世論に反論したわけです。

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