作家で妖怪学者の荒俣宏さん(78歳)は、日本有数の奇書の蒐集家としても知られる。『帝都物語』などのヒット作を世に出しながら、世界中の幻想文学の翻訳を手がけ、『トリビアの泉』『出没!アド街ック天国』などのテレビ番組では、博識な解説役として活躍してきた。
今年7月に2万冊もの蔵書の大半を処分して、戸建てからマンションへと引っ越した荒俣氏。半生をかけて蒐集してきたコレクションを手放したことで、肉体的、そして精神的な「死」を見つめているという。
前編記事『約2万冊の大半が「ゴミ」に…知の怪人・荒俣宏が蔵書を処分して感じたこと』より続く。
「本を持っていることがハンデになる」
僕の幻想文学の師匠でもある作家・紀田順一郎先生はかつて、「本を持っていることがハンデになる」と言っていましたが、本というものは、重いし場所を取るし、とにかく厄介な財産なんです。19世紀の稀覯本なんてとんでもなく大きいから、78歳の高齢者では運ぶことすらままならない。
そのうえ処分しようと思っても、価値をわかってくれる人はほんの一握り。ありがたいことに僕の場合は、アドバイザーを務める角川武蔵野ミュージアムなどに引き取ってもらったり、付き合いがある海外の古書業者が買い取ってくれたりしたので、1万冊ほどは目途がつきました。