撮影:岡田康且

約3万冊を処分した師の経験

戸建ては体の負担が大きいので、この機会に引っ越しも決めました。前の家は地上3階・地下1階建ての杉並の一軒家。車が3台入る大きなガレージまであったため、そこを書庫にしていました。買った当時は「白亜の殿堂」という売り文句だったけれど、いざ売るとなったら、「土地だけ欲しいから建物は取り壊す」と買い手に言われましたが。

そこから慌てて整理し始めたわけですが、本当に大変でした。これでもかと本が詰め込まれたガレージの書庫を前にして、どうしようかと頭を抱えたものです。

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そんなとき蔵書整理の参考にしたのが、今年7月に90歳で亡くなった紀田順一郎先生でした。推理小説を手がける作家でありながらメディア論に詳しくて、ワープロソフト「一太郎」の監修も務めた方です。僕の幻想文学の師匠であり、2人で『世界幻想文学大系』を編集しました。

紀田先生の著書『蔵書一代』には、大量の本を処分して一軒家を売却し、マンションに転居された経緯が認められていて、涙なしには読めません。ここ数年は直接お目にかかる機会が減り、とくにこの数ヵ月はメールの返事がなくて心配していたら、少し前に訃報が届きました。

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