「裏切られた」という思いを抱く定年目前サラリーマンたち

定年が視野に入ってきたタイミングの従業員に対して実施される、キャリア相談や企業での研修を通してよく聞く言葉が、「会社に裏切られた気分だ」「長く会社のために尽くしてきたのに」です。なかには、「これはひどい仕打ちだ」と言う方さえいます。

一方で、企業としても相当な努力を払っていることを筆者(宮島)は知っています。にもかかわらず、なぜこのような認識の相違が起きてしまうのでしょうか。

企業側の問題点

定年目前サラリーマンたちの本音

社会人材コミュニケーションズ(以下、「当社」と表現)が運営しているキャリアマネジメントスクール(知命塾)などのミドル・シニア従業員(以下、「ミドル・シニア」)に対するキャリア支援活動で聞かれる「会社に裏切られた気分だ、ここまで尽くしてきたのに」、そして、「恩を仇で返されたようだ」という発言、これは彼らの本音だと思います。

実際に会社が裏切っているかどうかはともかく、そう感じていることは事実です。当社の知命塾受講経験者等に調査したところ、「会社はミドル・シニアに期待をしていない」「会社の施策に不満足」というような声が上がっています。

出所:社会人材コミュニケーションズ
[図表1]ミドル・シニアの活躍や人材活用を目的とした会社の制度や施策に満足していますか? 出所:社会人材コミュニケーションズ
出所:社会人材コミュニケーションズ
[図表2]現在の会社に満足していますか? 出所:社会人材コミュニケーションズ
出所:社会人材コミュニケーションズ
[図表3]現在、やりがいを感じていますか? 出所:社会人材コミュニケーションズ

実際、多くのミドル・シニアを含め従業員は会社に貢献する意欲を有しています。家族など私生活を犠牲にして、会社のために時間を費やしてきた方も多いでしょう。「いつでも、どこでも、いつまでも」という昭和型の働き方が当たり前の世代、無限定正社員(勤務地・職務・労働時間が制限されていない社員)として、会社から求められれば、いろいろな職務にも対応し、勤務地も選ばずにやってきました。

実は、多くのミドル・シニア社員のマインドは会社に向いており、もともと会社に対する満足度は高く、やりがいも感じています。研修中の姿を見ていても、やりがいのある仕事の経験はほとんどの人が明確に語れますし、それを語る姿には、人生に占める仕事の“重さ”を窺わせるものがあります。通常の会話でも、自然に「“ウチ”の会社は」という言葉が出てくるように、「自分=会社」と捉えるほど、帰属意識はとても高いといえます。

そのような状態にあって、会社から「より積極的に仕事をしてもらいたい」「後輩にそういう後ろ姿を見せてもらいたい」と言われても、ミドル・シニアからすれば、「急にそんなことを言われても……では、今までの働き方に何の問題があるのだ」となるのは当然のことといえるでしょう。

宮島 忠文
株式会社 社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長

小島 明子
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト