「もう、用済みですか?」定年目前サラリーマン、長年尽くした会社への忠誠心を踏みにじる〈残酷な現実〉
「いつでも、どこでも、いつまでも」会社のために身を粉にして働いてきたミドル・シニア世代。会社への忠誠心はどの世代よりも強く、私生活を犠牲にして仕事に打ち込んできた人も少なくありません。しかし、定年が近づくにつれ、彼らから噴出する「裏切られた」という叫び。一体なにが彼らをそう感じさせるのでしょうか? 本記事では、宮島忠文氏・小島明子氏の著書『定年がなくなる時代のシニア雇用の設計図』(日経BP 日本経済新聞)より、会社と従業員の間に生じている深刻な断絶を探ります。 【肩書別】大卒サラリーマンの給与推移…役職なし/係長/課長/部長<令和4年賃金構造基本統計調査>
「裏切られた」という思いを抱く定年目前サラリーマンたち
定年が視野に入ってきたタイミングの従業員に対して実施される、キャリア相談や企業での研修を通してよく聞く言葉が、「会社に裏切られた気分だ」「長く会社のために尽くしてきたのに」です。なかには、「これはひどい仕打ちだ」と言う方さえいます。 一方で、企業としても相当な努力を払っていることを筆者(宮島)は知っています。にもかかわらず、なぜこのような認識の相違が起きてしまうのでしょうか。
企業側の問題点
定年目前サラリーマンたちの本音 社会人材コミュニケーションズ(以下、「当社」と表現)が運営しているキャリアマネジメントスクール(知命塾)などのミドル・シニア従業員(以下、「ミドル・シニア」)に対するキャリア支援活動で聞かれる「会社に裏切られた気分だ、ここまで尽くしてきたのに」、そして、「恩を仇で返されたようだ」という発言、これは彼らの本音だと思います。 実際に会社が裏切っているかどうかはともかく、そう感じていることは事実です。当社の知命塾受講経験者等に調査したところ、「会社はミドル・シニアに期待をしていない」「会社の施策に不満足」というような声が上がっています。 実際、多くのミドル・シニアを含め従業員は会社に貢献する意欲を有しています。家族など私生活を犠牲にして、会社のために時間を費やしてきた方も多いでしょう。「いつでも、どこでも、いつまでも」という昭和型の働き方が当たり前の世代、無限定正社員(勤務地・職務・労働時間が制限されていない社員)として、会社から求められれば、いろいろな職務にも対応し、勤務地も選ばずにやってきました。 実は、多くのミドル・シニア社員のマインドは会社に向いており、もともと会社に対する満足度は高く、やりがいも感じています。研修中の姿を見ていても、やりがいのある仕事の経験はほとんどの人が明確に語れますし、それを語る姿には、人生に占める仕事の“重さ”を窺わせるものがあります。通常の会話でも、自然に「“ウチ”の会社は」という言葉が出てくるように、「自分=会社」と捉えるほど、帰属意識はとても高いといえます。 そのような状態にあって、会社から「より積極的に仕事をしてもらいたい」「後輩にそういう後ろ姿を見せてもらいたい」と言われても、ミドル・シニアからすれば、「急にそんなことを言われても……では、今までの働き方に何の問題があるのだ」となるのは当然のことといえるでしょう。 宮島 忠文 株式会社 社会人材コミュニケーションズ 代表取締役社長 小島 明子 株式会社日本総合研究所 創発戦略センター スペシャリスト
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