ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

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あらすじ

シロコVSイオリ決着!!

今までにないレイヴンの無双をご照覧あれ☆


EP-48 舞い降りる災禍

意識が覚醒すると同時に、私は自身の変容を感じた。

 

力の高まり、とでも言うべきか。

 

先程まで、“歯車”を回して漸く引き出せていたような感覚が、既に身体中に、何の不調も無く、満ち溢れている。

 

色々と試してみたいものだが、先ずは周囲を片付けてからにしよう。

 

私は、満ち溢れる力を一点に集中させ、圧縮し、解放する。

 

炸裂──通り越して爆裂を引き起こしたのは、私が夢の世界とでも言うような、気を失っている時に認識した世界で目にした、真紅の火だった。

 

何処か、コーラルのような色合いをした炎だが、確信する。

 

これはコーラルではない。

 

爆裂した真紅の火は、指向性を持って球状に拡散し、その後、四散する。

 

真紅の火は、火炎でありながら、無差別に焼き尽くす訳ではなく、周囲の敵は吹き飛ばすが、周辺の地形を変えるようなものではなかった。

 

これは色々と試し、研究の余地がありそうだ。

 

ふと、視界の端に見知った姿を捉える。

 

セリカと便利屋の面々だ。

 

みんな、全身ボロボロの満身創痍だ。

 

この場所にいる事から察するに、私が倒れた事を聞き付けて、助けに来てくれたのかもしれない。

 

迷惑をかけてしまって申し訳なく思う。

 

挨拶代わりに軽く微笑みかけ、私は前を向く。

 

此処にいるセリカと便利屋だけじゃない。

 

他の誰もが、きっと私の為に戦ってくれたのだろう。

 

ならば、私はそれに応えなくてはならない。

 

残っている敵を全て私一人の手で、殲滅し尽くす。

 

私の復活を聞き付けたのだろう。

 

爆発で吹き飛ばした分の部隊が補充され、私の前に立ちはだかる。

 

小手調べ、と言ったところか。

 

眼前の風紀委員の部隊から、銃撃が襲い掛かる。

 

私はそれを躱さず、左手を前に翳す。

 

真紅の火が収束し、ハニカム構造で形成されたエネルギーシールドが前方に展開される。

 

それは、銃弾が触れると、それを真紅の火を纏わせて、反射する。

 

反射された銃弾は、着弾と同時に球状の小爆発を起こす。

 

リアクティブアーマーをイメージしたシールド。

 

強力だが、あっという間に効果が切れ、霧散する。

 

効果時間と言うよりは、受けたダメージによって効果時間が減少していくタイプだろう。

 

イメージとしては、パルスアーマーに近いか。

 

過信は出来ないし、そもそも連続使用は難しそうだ。

 

基本的には変わらず回避が主体となるだろう。

 

それでも、反射された銃弾の爆発に巻き込まれた風紀委員部隊は半壊しかけているが。

 

新しい力を分析していると、今度は狙撃部隊による銃弾が殺到する。

 

変容しても、相変わらず私にはホシノのような頑強さは持ち合わせていない。

 

躱すしかないが、その代わり、私にも出来ることがある。

 

スナイパーライフルを右手に持ち、銃に真紅の火を付与する。

 

“鴉の眼”によって、スナイパーの一人の位置を特定する。

 

かなり離れた場所にいるが、射線は通っているし出力が上がっている今なら、銃弾を掻い潜りながらでも狙いを定める事は容易い。

 

銃弾を見切り、掻い潜ると、狙いを定めたスナイパーへと真紅の火を付与したSRを向け、引き金を引く。

 

発射時の火花と共に真紅の火の粉が舞い散り、真紅の火を纏った銃弾がまるで砲撃のように瞬く間にスナイパーへと迫り、その直後、離れた場所からでも分かるほどの真紅の爆発を起こす。

 

これで先ずは一人。

 

スナイパーは推定十人。

 

だが、先ずは目の前の前線部隊の壊滅が先だ。

 

「この…バケモノがぁッ!!」

 

「撃て!撃て撃て!撃ちまくれぇ!」

 

苦し紛れに放たれた銃撃を前傾低姿勢で躱し、疾走で一瞬にして距離を詰める。

 

乱戦状態であれば、スナイパーも安易に狙撃出来ない。

 

激しく動き回れば、尚更だ。

 

左手のショットガンに真紅の火を付与し、引き金を引く。

 

銃口から花火のような鮮烈な紅い火の華が咲き、直後、それらは着弾と同時に小爆発を起こす。

 

半壊していた風紀委員が更に絶望的に追い込まれるが、それでも彼女らは諦めず、反撃の銃撃を放つ。

 

「こんなもので…我々ゲヘナ風紀委員は折れない!」

 

「《美食研究会》や《温泉開発部》の爆発に比べればこんなものぉ!!」

 

殺到するそれを跳躍して躱すと、右手の銃をSRからARに持ち替え、忽ち真紅の火が付与されたそれで、真下を円形に薙ぎ払うように掃射する。

 

私の真下で円を描くように小規模な連鎖爆発が起こる。

 

爆発が収まったところに着地し、私は続々と投入される風紀委員の部隊へと突撃する。

 

地面を蹴り、滑空するように突進し、その勢いが乗った蹴りを部隊の真ん中へと叩き込む。

 

三人程度がまとめて吹っ飛び、壁に激突する。

 

「今だ!囲え囲え!」

 

「自分から危地に飛び込んで来るとはバカめ!」

 

部隊の真ん中に突っ込んだ私に四方から銃口が向けられるが、私は近くの風紀委員を盾にする。

 

「なっ!?」

 

「貴様…!」

 

その風紀委員に銃弾が直撃し、風紀委員は力尽きる。

 

周りの風紀委員が同士討ちによって動揺している隙に、一人の風紀委員を捕まえ、後頭部を掴み、他の風紀委員へと頭突きさせる。

 

その後、一人、また一人と潰して行く。

 

一人は、銃口を向けて来たところに飛び掛かり、顔面を掴んで地面に叩き付ける。

 

一人は、銃を撃つ前に銃身を蹴り上げて顔面にぶつけて怯ませ、回し蹴りで吹き飛ばす。

 

一人は、銃撃を掻い潜り、銃床を腹に打ち込んで怯ませた後、銃床を振り下ろして地面に叩き付ける。

 

ひと通り、周囲の部隊は制圧した──そう思ったところで、新たな部隊第二波が襲い来る。

 

「部隊が全滅だと!?」

 

「くっ、なんて奴だ!レイヴン!」

 

「許さない!!」

 

そしていきなり、手榴弾が投げ込まれる。

 

咄嗟に飛び退き、爆発を逃れるが、そこに追加部隊の銃撃の弾幕が殺到する。

 

私は素早く周囲を確認する。

 

左右を建物に阻まれた直線の通路。

 

私は地面を蹴り、建物へと跳ぶ。

 

建物の壁を蹴って、瞬く間に建物の屋上すら超えて、上空に舞い上がる。

 

微妙に位置を調整し、追加部隊の上を取ると、空中で身を捻り、片脚を振り上げる。

 

集団目掛けて、落下しながら振り上げた脚を振り下ろし、重力を乗せた踵落としを見舞う。

 

振り下ろした踵──ブーツの底は、地面を砕き、叩き割り、その破壊力によって生じた衝撃波が周囲を纏めて吹き飛ばす。

 

土煙が晴れた後には、追加部隊は半壊していた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁああああああああ!!!」

 

錯乱した委員の一人が私に銃撃を浴びせるが、完全に動揺で狙いが定まっておらず、歩いてでも躱す事ができる。

 

歩きながら躱して近付き、その間に銃をそれぞれ、リロードする。

 

リロードし終えた私は、錯乱して乱射する風紀委員へと瞬時に距離を詰めて銃を持ち上げ、首を掴んで締め上げる。

 

「そ、そいつを放せぇ!!」

 

他の風紀委員が私に銃口を向ける。

 

私は望む通り、遠心力を乗せて締め上げた風紀委員を投げ付ける。

 

追加で風紀委員二人が纏めて壁に叩き付けられ、その後、爆発し、更に周囲の三人程度を巻き込み、吹き飛ばす。

 

締め上げた段階で、最後の手榴弾を忍ばせておいたのだ。

 

第二波の部隊は完全に壊滅、と言ったところで、第三波の部隊が追加される。

 

無数の手榴弾が投げ込まれ、重ねて銃撃が殺到する。

 

私はクイックブーストの要領でステップして銃撃を躱しつつジグザグ挙動で距離を詰めて行く。

 

その回避の合間に、SRの狙撃を挟み、真紅の火の付与による追加の爆発で部隊の一部を壊滅させる。

 

更に追い込むべく、銃撃を潜り抜けて接近し、SGの散弾と爆発で横並びの部隊の真ん中に穴を開け、そこに飛び込むと部隊の中心から周囲を薙ぎ払うようにARを掃射する。

 

銃撃と追加の爆発が華咲き、第三波の追加部隊も壊滅させたところで、私へと何かが落下して来るのを察知する。

 

それは、最初にやってきた迫撃砲による爆撃。

 

更に、周囲の建物の上から狙撃が私を狙う。

 

銃撃戦では無理と判断して、超遠距離からの攻撃に切り替えたか。

 

だが、その判断は少し遅かったな。

 

私は爆撃と狙撃を掻い潜り、建物の壁を蹴って上昇し、屋上へと登る。

 

そして、私は狙撃手と砲手を潰すべく、地面を蹴った。

 

****************************

 

復活、覚醒した真紅の火を纏うレイヴン。

 

まるで蟻のように蹴散らされる制圧部隊。

 

アコは、目の前の光景を現実とは受け入れられなかった。

 

これは夢なのだと、自分に言い聞かせてしまう。

 

悪夢でなければ、到底、あり得るはずがない。

 

以前でさえ、捉える事が困難だった回避力が遥かに上がり、目で捉えることすら至難。

 

こちらの銃撃は良くて躱され、最悪、赤いシールドのようなもので反射され、追加の爆発で追い討ちをかけられる。

 

近接格闘も圧倒的で、上空からの踵落としは爆炎が出ないだけで、それそのものが爆弾に匹敵する破壊力と衝撃を生む。

 

銃を撃てば、狙撃は超遠距離にまで届いた上で銃弾が爆発し、散弾も掃射も広範囲を連鎖する小爆発で吹き飛ばす。

 

ゲヘナでも、ほぼ敵無しの圧倒的な制圧力を誇る風紀委員会の実働部隊が全滅し掛けている。

 

絶望。

 

その言葉がふと脳裏を過ぎる。

 

涙を通り越して、笑いさえ込み上げて来そうになる。

 

“アレ”は、本当に人間なのか?

 

あんな力は、一個人が保有して良い限界を超えている。

 

まるで、闘争と殺戮の申し子。

 

厄災を超えた“災禍”そのものではないか。

 

「…レイヴン──“災禍の黒い鳥”」

 

人が戦っていい存在ではない。

 

人が抗える存在ではない。

 

“アレ”は、“天災”のような、過ぎ去るのを待つべき存在だ。

 

関わるべきではなかった。

 

触れるべきではなかった。

 

今更過ぎる後悔が湧いて溢れる。

 

レイヴンは今も、蹂躙を行っている。

 

建物の屋上を飛び、狙撃手の元へと赴き、手ずから撃破して行く。

 

一人は、突進の勢いを乗せた蹴りで吹き飛ばされ、建物から落下する。

 

一人は、銃床を振り下ろされ、地面に叩き伏せられる。

 

一人は、顔面を掴まれ、地面に叩き付けられ、建物から落とされる。

 

誰一人として敵わない。

 

一撃入れる事も出来ない。

 

狙撃手を全滅させたレイヴンは、迫撃砲の砲手たちの元へと辿り着き、アサルトライフルの掃射と付随する爆発で吹き飛ばす。

 

これで完全に、完璧に、ゲヘナ風紀委員会の実働部隊は文字通り全滅──崩壊した。

 

アコは、その光景をただ呆然と眺めている事しか出来なかった。

 

そして──レイヴンの視線は、ある方向へと向く。

 

それは、後方支援部隊。

 

その瞬間、アコは我に返る。

 

あそこは、あそこだけは、死守しなければならない。

 

アコは端末を操作し始めた。

 

*****************************

 

狙撃手も、迫撃砲の砲手も壊滅させた。

 

あと残るのは、“猟犬の耳”が捉えたのは遠くに集まっている部隊。

 

恐らく、後方の支援部隊だろう。

 

攻撃する手段はそれほど無いはずだ。

 

精々が護身の為のモノくらいだろう。

 

わざわざ、壊滅させる必要はない。

 

だが──そんなものは関係ない。

 

攻撃された以上は、徹底的に叩き潰す。

 

生半可な覚悟と甘い打算で手を出したらどうなるか、思い知らせる。

 

後方の支援部隊へと向かうべく、地面を蹴る。

 

その直前、私の眼前に、何の前触れも無く、人影が現れる。

 

それは実体のある姿ではなく、投射された幻影──いわゆる、ホログラムだった。

 

現れたのは見覚えの無い人物だが、おおよそ推測はできる。

 

ゲヘナ風紀委員会の頭、或いは、参謀的立場の人物だろう。

 

青い髪の、やや大人びた印象の少女。

 

やや特徴的服装の彼女は、緊張した面持ちをしている。

 

『…突然の挨拶、失礼します。私は、ゲヘナ風紀委員会 行政官の天雨アコと申します。シャーレ直属特務戦闘員レイヴン』

 

私は無言で要件を促す。

 

大方、予想は付いているが。

 

『単刀直入に申し上げます。これ以上の戦闘行為を辞めて、どうか身を引いて下さい。身勝手なお願いである事は、重々、承知の上です。どうか、ご容赦ください。お願いします…!』

 

そう告げると、天雨アコは、深々と腰を折って頭を下げる。

 

『謝罪で済むような案件では無いことは理解しております。この度のご迷惑の補填は、私の方でどうにか致します。ですからどうか、今回は尊大な御慈悲をいただきたく…!』

 

騙すような雰囲気も、この場限りの口約束という感じでもない。

 

誠心誠意、心からの謝罪と賠償の思いを感じる。

 

彼女は、きっと自ら口にした事は違えないだろう。

 

何らかの形で、その身を犠牲にしてでも、私に対しての償いをすることだろう。

 

「その必要はない」

 

だが、私はその申し出をスッパリと断る。

 

『…っ!ですが──』

 

天雨アコは、それでも諦めずに食い下がる。

 

そこへ私は、決定的な答えを言い放つ。

 

「私は、戦闘を辞めるつもりは無い。あなたは支援部隊だけでも助けたいのだろうけど、そうはさせない」

 

『ち、違います!私は心から、本当に申し訳なく──』

 

「うん。あなたはそうなんだろう。それは伝わった。でも、他の連中はどうかな?」

 

『…っ!』

 

「私が言いたいこと、分かるよね?」

 

『……一部の部下たちの、独断での、暴走……』

 

全ての人間が割り切れる訳ではない。

必ず、一部の者たちは報復を画策するだろう。

ゲヘナという、荒くれ者の巣窟と言われる場所の者であれば、尚更。

 

「そう。あなたに報復の気は無くても、あなたは部下の心まで掌握できる訳じゃない。あなたに、その部下たちの暴走を止められる?多分、止められない。何せ、その連中は秘密裏に動くだろうから」

 

そういう者たちは、一度でも走り出したら歯止めが効かない。

良心の呵責すらもかなぐり捨てて、私だけでない、他の無関係な人間まで巻き込むかもしれない。

 

『……』

 

「だから私は潰す。徹底的に心を折る。もう思い出したくもないと思える程まで」

 

私は歩き出し、天雨アコの横を通り過ぎる。

 

『ま、待っ──』

 

天雨アコが振り返り、私を止めようと声を掛ける。

 

私はそれを無視し、改めて支援部隊へと跳躍する。

 

──その直前、私の“耳”が、超高速で近付く気配を捉える。

 

瞬間、私の行手を阻むように、無数の黒紫のエネルギー弾が私の眼前に降り注ぐ。

 

私に直撃しない、ギリギリの範囲を精密に狙っていながら、単発の銃撃ではなく、連射。

 

その時点で、かなりの技量を感じさせる相手だった。

 

そうして、私の前に降り立ったのは、豊かなきめ細かい白髪を靡かせ、身の丈よりも幅広く伸びる漆黒の双翼を持つ小柄な少女だった。




ついにゲヘナシロモップことヒナちゃん登場!

という事で次回!
『ゲヘナシロモップVSルビコンシロドッグ』(嘘だけど嘘じゃない予告)
!!

次回もあなたのハートに終幕:イシュ・ボシェテ☆

お楽しみに!!
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