ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

48 / 160
あらすじ

シロコの奮闘
レイヴンの内在闘争

そろそろ話数ストックが無くなりつつあるので、その内、一日一回更新が出来なくなるかもしれませんが、ご理解くださりますようお願いします


EP-46 シュレディンガーの鳥

銀行を飛び出したセリカは、アヤネの案内の元、レイヴンの元へと急ぐ。

 

『セリカちゃん!多くの風紀委員はレイヴンとホシノ先輩のところに集中していますが、幾つか巡回している反応があります!警戒を!』

 

「オッケー!全く、すっかり我が物顔って感じね!まぁ、私も文句を言えるような立場じゃないけど!」

 

裏路地から建物の合間をセリカは駆け抜ける。

 

『セリカちゃん!この先の十字路の左手方向でシロコ先輩と風紀委員の人が戦っています!一応、見付からないように注意してください!』

 

「分かったわ!」

 

セリカは件の十字路に辿り着き、建物の陰から左側へと続く道の奥を確認する。

 

アヤネが言っていた通り、その先ではシロコと風紀委員──イオリが戦っている。

互いに激しい銃撃の応酬の中、銃弾が掠めるのも厭わずに相手へと突進する。

 

イオリがこちらに背を向けた隙に、セリカは素早く対岸へと渡る。

 

『上手く見付からずに済みましたね!』

 

「アヤネちゃんのお陰よ。ありがとう」

 

建物の壁を背に、セリカはひと息つく。

 

『ですが、セリカちゃん、この先は複数の風紀委員が巡回して見張っています。同じように見付からずに通り抜けるのは難しいかもしれません…!』

 

「うーん…それは面倒ね。早くレイヴンのところに辿り着きたいんだけど…」

 

セリカは何か無いものかと周囲を見渡す。

 

「あ、アレなら使えるかも」

 

何かを見付けたセリカは、先の状況を確認する為に進む。

 

進んだ先で、建物の陰から覗き込むと、五人程度の風紀委員が哨戒にあたっていた。

 

状況を把握したセリカは一旦、来た道を戻り、とある場所で明後日の方向へと銃を撃つ。

 

「銃声!?」

 

「近くからだ!」

 

「こっちだ!」

 

五人の風紀委員からはそれほど離れていない位置であり、銃声を聞き付けた五人が建物の陰から姿を現す。

 

「まんまと釣られたわね!」

 

セリカは遮蔽に隠れつつ、現れた風紀委員へと銃撃する。

 

「こいつ、敵か!?」

 

「バカな!主要な敵性人物の場所は押さえているはず!」

 

「関係ない!攻撃するぞ!」

 

風紀委員が反撃の射撃を開始する。

 

銃弾を遮蔽で防ぎ、銃撃の合間にセリカが反撃する。

 

いくつかの銃弾が一人の風紀委員に当たり、撃破する。

 

「よし!」

 

セリカは遮蔽を飛び出し、走り出す。

 

「逃げたぞ!追え!」

 

「ゲヘナ風紀委員に楯突いたことを後悔させてやる!」

 

その後を残る四人が追う。

 

走っている最中、セリカは背後に銃を向け、射撃する。

 

銃撃の合間から、セリカは一人に狙いを定め、ARを撃つ。

 

セリカの狙い澄ました銃撃は、またもや一人を脱落させる。

 

「くそっ!良い気になるなよ!」

 

「これならどうだ!?」

 

二人が銃撃でセリカを牽制したところに、一人が手榴弾を投擲する。

 

『セリカちゃん!手榴弾の爆発に注意してください!』

 

「くっ…!」

 

セリカは咄嗟に飛び退くが、爆風に煽られて吹き飛ばされ、地面を転がる。

 

「大人しくしろ!」

 

「これで終わりだ!」

 

追い詰めたセリカに風紀委員が距離を詰める。

 

「──終わりは…あんた達の方よっ!!」

 

どうにか受け身を取って体勢を立て直したセリカは、片膝立ちの状態で、風紀委員──の頭上に銃を向ける。

 

引き金を弾き、放たれた銃弾が垂れ下がる金属の看板を支えている鎖を切る。

 

支えを失った看板は、そのまま重力に従って落下し、その下に立っていた風紀委員の三人を巻き込んで潰す。

 

「お、の…れ…」

 

上半身を出していた風紀委員は這い出ようと手を伸ばし、力尽きた。

 

『やりました!セリカちゃんの作戦成功ですね!』

 

セリカは、頭上にぶら下がっている看板を見付けると、風紀委員の気を引くのと同時に、看板を支える二本の鎖の内、片方を切るために敢えて直接、攻撃はせずに、銃声で誘き出した。

 

その後、風紀委員の数を減らしつつ看板の真下に誘導し、隙を見てもう片方の鎖を千切る。

 

思いの外、上手く行った。

 

「これで先に進めるわね!」

 

セリカは制服に着いた砂埃を払い、駆け出した。

 

『セリカちゃん、この先なんですが、レイヴンを包囲する包囲網の端に辿り着きます。なので──』

 

「なるほど、つまり数が多くて危ないって訳ね」

 

『はい、そう言うことになります…』

 

「…それでも、私は…!」

 

話している間に、先程、足止めを食らった場所を通り過ぎ、アヤネの言う、レイヴンを取り巻く包囲網の末端付近に近付く。

 

包囲網は、レイヴンを中心に半円の弧を描くように広がっていた。

 

セリカは言わば、半円を後ろから見て弧の左翼部分の背後を取る位置の建物の陰から様子を窺っていた。

 

人の壁が厚い為、中心のレイヴンがどうなっているのか見えない。

 

「アヤネちゃん、どう?」

 

『はい、間違いなく、その部隊の向こう側にレイヴンが確認できます…ですが…』

 

このまま突っ込んでも、最初は不意打ちで何人かは倒せるかもしれないが、その後は数の暴力で蹂躙される事になるだろう。

 

それでも──。

 

『セリカちゃん、どうしましょう…潜り込む隙間も無さそうです…』

 

セリカは無言で生唾を飲み込む。

 

「…アヤネちゃん、隙間が無いなら──」

 

改めて、覚悟を決め、セリカは建物の陰から飛び出す。

 

『セリカちゃん!?』

 

セリカはそのまま、風紀委員の包囲網を形成する部隊へと突っ込んだ。

 

「自分の手で切り開くだけよっ!!」

 

レイヴンに意識を向けている背を向けている風紀委員へと、背後から奇襲する。

 

「ぐあっ!?」

 

「な、なんだ!?奇襲!?」

 

「背後からだと!?」

 

セリカの奇襲によって、一時的に風紀委員部隊は混乱に陥る。

 

その混乱のお蔭で、三人程度を一気に纏めて撃破することが出来た。

 

だが、相手もただ撃たれ続ける訳もなく、すぐにセリカに対して陣形を立て直し、対応して来る。

 

「相手は一人!アビドスの生徒だ!」

 

「危険人物には該当しない!」

 

「落ち着いて対処しろ!」

 

風紀委員の言葉に、セリカは歯を噛み締める。

 

分かっている。

自分はレイヴンどころか、ホシノやシロコ、ノノミにすら届かない、弱い存在だと。

 

それでも、タダではやられない。

例え手足を使えなくなっても、噛み付いてでも、こいつらに自分の力を刻み付けてやる。

 

「舐めるんじゃ、ないわよぉッ!!!」

 

両手のARを乱射する。

 

だが、二、三人を倒す間に、こちらは向こうの弾幕に晒され、徐々に傷付き、後ろへと押し込まれていく。

 

結局、自分一人では、何も出来ないのか──。

 

「諦めるんじゃないわよっ!!」

 

聞き覚えのある声が届いた直後、無数の銃撃がセリカの背後から放たれ、目の前の風紀委員の部隊を崩して行く。

 

「良かった〜。まだ無事みたいで安心したよ、バイトの黒猫ちゃん♪」

 

セリカの横に並んだのは、他でも無い、便利屋68だった。

 

『便利屋68の皆さん!?』

 

「あ、あんた達、何でここに…?」

 

彼女たちは、ホシノと共に、銀行前でゲヘナ風紀委員の部隊を相手にしていたはず。

 

「小鳥遊ホシノにお願いされてね。ここは良いから、あなた達を助けてあげて、って」

 

「せ、セリカさんのお陰で、楽にここまで来れました。あ、ありがとうございます…」

 

セリカが何気無しに巡回部隊を撃破していたのも功を奏したようだ。

 

「ま、そういうことよ。私たちとしても、このままレイヴンがやられるのを黙って見ている訳にはいかないからね!ここは、助け合いの精神で行くとしましょう?」

 

「くふふ♪次に柴関ラーメン行ったら、サービスしてね、バイトちゃん♪」

 

便利屋68はセリカと並び立ち、風紀委員と睨み合う。

 

「便利屋68…!貴様ら…良くも抜け抜けと…!」

 

「ふふっ、それがハードボイルドなアウトローだからね。それであなた達風紀委員に嫌な思いをさせられるなら、一石二鳥ね」

 

アルは風紀委員を見下すように、薄ら笑いを浮かべる。

 

「お前たちも纏めて叩き潰してやる!」

 

「あら?あまり強い言葉を使わない方が良いわよ?弱く見えるから…なんてね」

 

便利屋が加わり、風紀委員との銃撃戦は更に激化する。

 

「死んでください死んでください死んでください!!!」

 

ハルカが被弾も厭わず、風紀委員へと突っ込む。

 

同時に、SGを近距離で連射し、次々と風紀委員が倒れて行く。

 

「あっはは♪ハルカちゃん相変わらずだねぇ。それなら私も、楽しんじゃおっかな〜♪とっておきだよっ!!」

 

ムツキはMGの銃撃で確実に数を減らし、虎の子の爆弾を放る。

 

派手な爆発が風紀委員を吹き飛ばす。

 

「はー、これでもう私の爆弾は完全に品切れ〜」

 

「それならムツキ、下がってな」

 

カヨコが前に出て、銃声を轟かせる。

 

音に気を取られ、振り向いた風紀委員がカヨコと目を合わせ、動きを止める。

 

「ナイスよカヨコ!!」

 

そこへ、アルが狙撃し、無数の爆発が風紀委員を吹き飛ばす。

 

「ふふーん、どんなもんよっ!!」

 

だがそこへ、遠方から狙撃が襲い掛かる。

 

「わわっ!?ちょっ、狙撃部隊までいるの!?」

 

「これはちょっと…マズいかもね…!」

 

「嘘でしょ嘘でしょ嘘でしょ!?」

 

次々と襲い掛かる銃弾を便利屋はどうにかこうにか躱す。

 

しかし、いつまでも続くような状況ではない。

 

「み、皆さん…!!」

 

ハルカが他のメンバーを庇おうとするが、それを目の前の前衛部隊が許さない。

 

無数の射撃がハルカに殺到する。

 

どうにか持ち前の頑強さと回避で持ち堪えるが、余裕は無い。

 

そうしている内にも、便利屋は狙撃に晒され続ける。

 

「ッ…!このままじゃ…!」

 

銃撃を躱し、攻撃しながら、セリカは歯噛みする。

 

便利屋が加わってくれたが、このままでは数に圧殺される。

 

折角、彼女たちが身を挺して助けに加わってくれたのに──。

 

その直後、セリカの視界の端で、“赤”が瞬く。

 

「なっ…何だっ!?」

 

「わ、分からない!?」

 

「急にレイヴンのヘイローがっ…!」

 

「ヘイローが光って形を変えて──」

 

眩い光が放たれ、この場の誰もが目を奪われる。

 

ほんの一瞬、刹那とも呼べる僅かな時間、光が収まったと思ったその直後、“真紅の火”が周囲の風紀委員達を纏めて吹き飛ばした。

 

それはギリギリ、セリカや便利屋を巻き込まなかった。

 

真紅の火は、球状の爆炎のドームを形成した後、綻びるように宙に四散する。

 

真紅の火が収まった後には、激しく脈打ち、煌めく、刺々しいヘイローを頭上に戴く、赤みがかった白髪を揺らすレイヴンが立っていた。

 

レイヴンはゆっくりと閉じている瞼を開く。

 

その瞳は、ヘイローと同じような真紅に染まっていた。

 

レイヴンはセリカに気付くと、穏やかな微笑みを浮かべるのだった。




レイヴン復活ッ!!

真紅の火の爆炎ドームは、アサルトアーマーのイメージです

セリカの戦闘シーンの落下物の活用みたいな環境を利用する戦い方好きです
モンハンの落石みたいな

そして、相変わらず並び立つことに定評がある便利屋の皆さん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。