ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

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あらすじ

レイヴンが倒れても、誰も諦めず、戦い続ける

そう言えば、44話公開時点でお気に入り登録400、しおり登録140、感想40を突破し、4がいっぱいでした
ありがとうございます(謎報告)


EP-45 魂の在処

「──なぁ、良い加減、諦めたらどうなんだ?あんたらの頼みの綱のレイヴンは落ちた。もうこれ以上、戦っても無駄だ」

 

イオリは銃を肩に担ぎ、対峙するシロコへ言い放つ。

 

シロコはイオリの言葉を受けても尚、闘志を燃やし、銃を構えているが、その全身は傷付き、息も上がっている。

 

対するイオリも同じような状態だが、幾分の余裕を感じさせる。

 

「諦めるとか、無駄だとか、そんなこと関係ない。レイヴンは最後まで戦ってくれた。それなら、私もそれに報いて最後まで戦う。レイヴンが倒れたとしても、私が戦いをやめて良い理由にはならない…!」

 

シロコは横に移動しながらイオリに銃撃を見舞う。

 

イオリはその銃撃を身を捻りながら滑るように横に移動して躱し、反撃の銃弾を放つ。

 

それを顔を横に逸らして躱し、距離を詰める。

 

イオリも同じように前に向かって地面を蹴り、二人の蹴りが衝突し、拮抗する。

 

「…分からないな。ちょっと小耳に挟んだ程度だけど、レイヴンとは最近、知り合ったばっかりなんだろ?そんな親しい訳でもないのに、なんでそこまで入れ込んでいるんだ?」

 

互いに弾かれたように脚を戻し、近距離で言葉を交わす。

だが、決して気を抜いている訳ではない。

 

「…うん、その通り。私は別段、レイヴンと親しい訳じゃない。レイヴンのことは詳しく知らない。多分、私がレイヴンの全てを知ることは出来ないと思う」

 

互いに、会話をしながらも攻撃のタイミングを窺っている。

 

「──それなら!!」

 

イオリが先んじて距離を詰め、シロコの顔面に向かって銃床を打ち込む。

シロコの顔面に、イオリのスナイパーライフルの銃床が直撃する。

 

「でも、レイヴンは私を戦友と呼んでくれた」

 

直撃したように見えたが、シロコは辛うじて、間に左手を割り込ませ、直撃を避けていた。

 

「…は?」

 

シロコは右手のアサルトライフルの上下を持ち替え、銃床で殴り付ける。

イオリはそれを頭を下げて躱し、背面宙返りで後方に飛び退く。

 

「戦いを通じてなら、私はレイヴンのことを知ることができると思った。戦いの中でなら、レイヴンと理解し合えると思った。だから──戦友って呼んでもらえて、嬉しかった」

 

飛び退いたイオリへと、シロコは銃口を向ける。

 

「……」

 

イオリは銃を抱えたまま、押し黙る。

シロコを警戒しているのもあるが、シロコに対する反論の言葉が即座には出なかった。

 

「イオリ、私は戦うよ。戦友(レイヴン)の為に、戦友(レイヴン)と共に…!戦場(ここ)が、私たちの魂の居場所だから…!!」

 

シロコは宣言し、真っ直ぐイオリへと突っ込んだ。

イオリは即座にシロコへと銃口を向ける。

シロコはイオリへと疾走しながら、ARによる銃撃を放つ。

同時にイオリはSRの引き金を引く。

 

シロコの銃弾がイオリを掠め、イオリの銃弾がシロコを掠める。

それでもシロコは止まらず、肉薄の直前に跳躍し、イオリの上を取る。

空中から真下に向かって、銃を撃ちながらシロコが落下する。

イオリは上から襲い掛かる銃弾が掠めながらも、飛び退いて回避する。

 

シロコが体勢を直して着地し、イオリも同時に着地すると、二人はほぼ同時に立ち上がる。

 

「…そうか。分かった。どうやら、最初から警告は無駄だったみたいだな。はぁ…全く、面倒なヤツだ…砂狼シロコ──お前を排除する!!」

 

その直後、二人が向かい合う場所から少し離れた場所で、爆発が発生する。

 

二人は一時的に戦いを忘れ、そちらに振り向く。

 

その方向は他でもない、レイヴンが居るはずの場所だった。

 

そして、二人が爆発と思い込んだものは、球状に炸裂した、血のように紅く煌めく、炎だった。

 

その球状の爆炎に巻き込まれた無数の風紀委員が宙を舞っている。

 

二人はただ、その光景を呆然と眺めていた。

 

「何だよ…アレ…」

 

「…イヴ…」

 

シロコは何処か、不安そうな険しい表情で、空中に四散する真紅の炎を眺めていた。

 

*****************************

 

私は、意識を取り戻す。

 

だが、そこは先程のブラックマーケットの市街地ではなかった。

 

暗闇に閉ざされた暗黒世界。

 

そこに、私は身一つで佇んでいた。

 

そして、目の前には、以前、夢の中で見た黒い私がいた。

髪も肌すらも漆黒に染まり、唯一、瞳だけが真紅に染まっている。

 

黒い私は、AC、ナイトフォールに腰掛け、虚空を見詰めている。

 

「あなたは──」

 

襲って来る様子がないと考えた私は、とりあえず声をかけてみることにした。

 

「お前は、自分が何をしているのか、分かっているのか?」

 

黒い私は、そのままの姿勢で、話し始めた。

その声は、私に比べて低い。

 

「お前が“歯車”と呼び、認識し、回しているモノは、かつて、ルビコンに於いて、お前(わたし)が“強化人間”としての能力の元に培い、磨き上げ、鍛えた“力”だ」

 

私は、黒い私の言葉を黙って聞き続ける。

 

「それには当然、強化人間という、“代償”を払って得た“力”が前提にして、根幹にある。言い換えれば、()()()()()()()()()()()()()力だ」

 

そこで漸く、黒い私は、私の方へ顔を向ける。

黒い瞳孔に紅い瞳。

それが私の視線と交わる。

 

「お前は、そういった力を“歯車”という概念に落とし込み、今の肉体から引き出している。それは当然、お前(わたし)の肉体を蝕むことに繋がる」

 

黒い私は、ナイトフォールから飛び降り、私と向かい合う。

 

「お前がルビコンでの戦いの経験と記憶を元に戦うのは良い。それだけであれば何ら問題は無い。だが、このまま“歯車”を回し続ければ──かつての“力”を求め続ければ、その代償としてお前は、相対的に脳を焼かれ、以前のようなあらゆる肉体機能を喪失し、戦うことしか出来ない存在に成り果てる。それは、お前(わたし)の主人が決して受け入れてはくれない結末だ」

 

私は、黒い私の話を聞いて納得した。

“歯車”の回転率を上げた高出力状態での頭痛や発熱は、私が自身の脳を少しずつ焼いていってる事から生じる症状だったのだと。

そして、今回のような出血は、より甚大なダメージを脳に刻み、その果てに私は、かつての戦う機能しか残っていない強化人間と同じような状態に至る。

 

以前は、強化人間になって力を手にしたが、今度は逆に、力を求めることで、強化人間へと成り果てる。

 

道理は通っている。

大いなる力には、代償を伴う。

 

つまりはそういう事だ。

 

そして、彼女の言う主人とは、ハンドラー・ウォルターの事だ。

 

確かに、彼は、せっかく普通に動ける肉体を手に入れた私に、再び、その機能の殆んどを失わせるような真似は許さないだろう。

 

それでも。

 

「──それでも、私は戦わなければならない。少なくとも、今だけは。“仕事”を果たす、その為に」

 

私の仕事、それは、アビドスのみんなや先生、便利屋をこの場から無事に帰らせること。

今もきっと、みんながそれぞれ、戦ってくれているはずだ。

先生やホシノたちアビドスのみんな、便利屋、そして、戦友──シロコ。

もしかすると、迷惑をかけてしまっているかもしれない。

そんな私の為に協力してくれたみんなをそれぞれの居場所に送り返す。

それが、この仕事に巻き込んでしまった私の責任であり、義務。

 

その為ならば、私は──。

 

私の傍に、機械仕掛けの猟犬が寄り添う。

 

今なら分かる。

 

この子が私にとって、何なのか。

 

「ずっと…ずっと、傍に居てくれたんだね。ウォルターの形見、私の半身のLOADER(ローダー)4」

 

機械仕掛けの猟犬が、遠吠えを上げる。

 

その直後、猟犬の姿が崩れ、だが、私を包み込み、形を成して行く。

 

そうして出来上がったのは、かつてルビコンで激闘を共に乗り越え、様々なアレンジを加えた末に愛用していた機体だった。

 

基本的な機体構成はLOADER4のまま、頭部のみ、EL-PH-00 ALBA──戦友、ラスティの想いを継ぎ、スティールヘイズ・オルトゥスのものを使用している。

 

一方、黒い私もまた、ナイトフォールに搭乗していた。

 

「…あなたは──」

 

「私はお前だ。お前が猟犬であり、私はレイヴン。二人で一人の表裏一体。ルビコンで出会い、戦った者達のお前に対する祈りや呪い、そういったものが積み重なって生じた幻影。独立傭兵レイヴンとしての概念が私だ」

 

「──それでも、私を止めようとするの?」

 

「止めるさ。それがきっと、お前(わたし)の主人の望みなのだから。主人は、お前がこの場所で、普通の体で、普通の生活を送ることを願うはずだ。お前が再び、身体機能を喪失するようなことがあれば、悲しむはずだ。だから、私はお前を止める。お前にこれ以上、何かを失わせない為に──」

 

ナイトフォールがアサルトブーストで突っ込んで来る。

 

それに対し、私はクイックブーストで横方向に飛びつつ、右肩武器の垂直8連装ミサイルを放つ。

 

ナイトフォールはギリギリまで引き付けた後、クイックブーストで躱し、反撃の小型3連装デュアルミサイルを放ち、右手のアサルトライフルを撃ちながら牽制する。

 

私は前へアサルトブーストで駆けてミサイルを躱し、ナイトフォールへと迫りつつ、右手のアサルトライフルを放つ。

 

ナイトフォールは銃撃を避けず、その場に立ち続ける。

 

そして、私が肉薄したタイミングで、左手のパイルバンカーを繰り出して来た。

 

私は直前で横に滑り、必殺の一撃を躱す。

 

以前に一度食らっていた経験が活き、功を奏した。

 

側面に回った私は、左手の重ショットガンをナイトフォールに浴びせる。

 

ナイトフォールはまたもや避けず、今度は近距離で二連グレネードキャノンを放った。

 

私は回避を試みるが、直撃は避けるものの爆風を受け、負荷の蓄積を感じる。

 

更にそこに畳み掛けるようにナイトフォールはミサイルを放ち、翼を広げるように弾頭が広がった後、その全てが私へと収束するように飛ぶ。

 

今、このミサイルを受ければ、確実に負荷限界(スタッガー)状態になる。

 

だが、私は敢えて、前に突っ込んだ。

 

ナイトフォール自身もアサルトブーストで突っ込んで来る。

 

ミサイルを間一髪で潜り抜ける。

 

しかし、今ナイトフォールの蹴りを食らえば、スタッガーには変わりない。

 

そうなれば、私は身動きが取れぬまま、パイルバンカーの一撃によって敗北するだろう。

 

だから私は、突っ込んで来るナイトフォールへと、ウェポンハンガーで装備し、重ショットガンと既に持ち替えていた、最大溜めのパルスブレードの一撃を叩き込んだ。

 

アサルトライフルに加え、重ショットガンを直撃し、負荷が蓄積していたナイトフォールは、その一撃で負荷限界に至る。

 

私はそこへ、至近距離からのアサルトブーストによる体当たりから、渾身のブーストキックを叩き込んだ。

 

蹴り飛ばされたナイトフォールは、崩れた柱に激突し、動きを止めた。

 

『──私の、負けだな…』

 

黒い私の声が聞こえ、私は戦闘状態を解除し、地面に着地する。

 

私はローダー4から降り、柱に背を預けて座り込む体勢のナイトフォールへと近付く。

 

ナイトフォールのコアから、傷付いた黒い私が姿を現す。

 

そこに私は、ずっと気になっていた質問を投げ掛ける。

 

「…初めて出てきた時、あなたは死ぬまで戦えと言っていた。あれは、あなたなりの優しさだったのかな?」

 

あの時の彼女はきっと、私が傷付くことを良しとしなかったのではないか。

私を守る為に、死ぬ気で戦えと、彼女なりに私へ発破を掛けてくれたのではないか。

私は、そう考えた。

 

機体から転がり落ちて来た黒い私は、地面の上に仰向けで倒れる。

その状態で、黒い私は不貞腐れるように視線を外した。

 

「買い被りすぎだ。あの時の私は、初めてこの地で姿形を成して意識を持った事で混乱していた。全てが敵であり、脅威だと思っていた。…だが、違った。お前はこの地で、多くの友人と、仲間を作った。だから、私はあれ以降、お前に戦いと殺しを強要しなくなった。ただ、それだけだ」

 

そう言うと黒い私はゆっくりと起き上がった。

 

「そう…ごめんね…」

 

私は、そんな彼女の想いを──ウォルターの気持ちを汲んだ願いを拒絶した。

 

「謝る必要は無い。お前が強く、私が弱かった。それだけのことだ。──受け取れ。これが、私が()()()()()()、お前が欲していた、“力”だ」

 

奪った力──そう言えば、私は以前、夢でこの黒い私との戦闘に負け、腹部に手を突っ込まれて、中身を引き摺り出された。

 

それが、今から手に入れる──否、取り戻す“力”なのだろう。

 

黒い私は、左手を伸ばす。

 

私はその手の指先に、触れる。

 

直後、そこから赤い──紅い灯火が生じる。

 

「これは…火?」

 

灯火は忽ち燃え広がり、炎となって拡散し、大火となって周囲の闇を払う。

 

私たちが立っているのは、かつてのルビコンの衛星軌道上の封鎖ステーションだった。

 

何故、この場所なのか。

 

何となく、理由は想像がつく。

 

此処が、私にとって決定的な訣別──別れの地だから。

 

お前(わたし)は、コーラルを燃やす為、かつての災禍を再び引き起こした。だが、お前はその中で生き延びた。燃え残った。これは、お前が再現した災厄の大火への()()であり、《レイヴンの火》の“残り火”だ」

 

私の手の中には、ひと握りの真紅の火が、揺らめいていた。

 

「これは、“歯車”とは異なる力だ。お前にこれ以上、“歯車”は回させない。だがこれは、また別の危険──代償を含んでいる。それは──」

 

黒い私が告げた内容は、そう簡単には受け入れ難いものだった。

 

「──!!」

 

「さぁ、選べ。過去に戻るか、それとも未来へ進むか。そして──」

 

「──火を点けろ、燃え残った全て(お前自身)に」




レイヴン、覚醒す

はい、という訳で、ゲヘナ風紀委員にはレイヴン覚醒のトリガーとなっていただきました

騙して悪いが、主人公なんでな

噛ませ犬になってもらう

では次回、『ゲヘナ風紀委員壊滅、アコちゃん撃沈』でお会いしましょう。(嘘だけど嘘じゃない予告)
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