一件落着かと思いきや…?
謎の爆撃による襲撃
新たな襲撃者の正体は如何に!?
俺は、カイザーコーポレーション所属、プレジデント直属の特殊部隊のリーダーだ。
俺は今、二人の部下を連れ、とある任務に当たっていた。
プレジデント直々の極秘任務であり、気合いが入ろうと言うものだが、それとは別に、気に入らないものもあった。
この任務は、我らがプレジデントが発案したものではないことだ。
“あの女”の企みに依るもので無ければ、この僅かな雑念すらも晴れると言うのに。
それはそれとして、任務は任務。
公私を混同せず、清濁併せ飲んで任務を遂行する。
それこそが、我々に課せられし使命なれば。
我々は今、極秘任務遂行の為に、姿をマーケットガードのものに偽装している。
此処に来るまで、レイヴンの襲撃に巻き込まれ、中々、銀行に近付けなかったが、追い詰められたマーケットガードは全軍での突撃を敢行した。
レイヴンがこれほどの戦闘力を有していたことには驚き──否、正直言って恐怖を感じた。
個でありながら、群を圧倒する、類稀なる戦闘能力。
ヤツに対し、正面切っての戦闘を挑むなど愚の骨頂だ。
だが、最終的にこうして無事に目的地に到達することが出来た。
マーケットガードは単なる隠れ蓑に過ぎないと思っていたが、最後の最後に、こうして我々の役に立ってくれた。
レイヴンは“シャーレの番犬”などとも呼ばれていたが、何と言うことはない。
戦闘面では特異存在と言えるだろうが、任務とは何も戦うだけが全てではない。
如何に敵を欺けるか、周囲の環境を利用するかが肝要なのだ。
こうして任務達成も目前だ。
そうなれば、あの女の思い通りになるのは癪だが、レイヴンもその力を発揮できる場所を失う。
ヤツは所詮、シャーレ専属傭兵。
先生が捕まり、その居場所が無くなれば、ヤツは首輪が外れた野良犬に成り下がる。
何なら、我らがその力を見込み、雇い入れ、カイザーコーポレーションの傭兵として、キヴォトスを手中に収め、支配する足掛かりとなるだろう。
そうして、キヴォトスは“学園都市”から“企業都市”へと姿を変える。
思わず笑いが込み上げて来そうになりながら、思考を切り替える。
マーケットガードの最後の突撃に紛れ、我々はその中から抜けて、建物の屋上を渡り、銀行に辿り着いた。
周辺を警戒しながら、速やかに屋上から侵入する。
「こちら、目的地内部に侵入した」
『了解。ターゲットは一階エントランスに居ると思われる。また、護衛の生徒も配置されているだろう。気を抜くな』
「了解」
銀行内部は、照明が落とされて暗闇に閉ざされていた。
周囲を警戒しながら、階下へ下る階段を見付ける。
「ん!?」
ふと、階段とは垂直に交わる通路の奥に、人と同じ大きさの影が写り、咄嗟にサブマシンガンを向ける。
通路の先の暗闇から浮かび上がったのは──舌を垂らした白い鳥のような姿のデフォルメされた等身大の人形だった。
あれは、確か《モモフレンズ》とか言う…。
「リーダー、どうしました?ん?あれは…人形?」
「気にするな。ただ警戒し過ぎていただけだ」
少し、リラックスした方が良いかもしれない。
どうしてこんな場所に、という疑問は浮かぶが、今は任務優先だ。
敵でなければそれで良い。
階段を降って行き、暗闇の銀行を下へ下へと降りていく。
ターゲットがいると連絡を受けた一階に至るまで、特に邪魔が入ることはなかった。
だが、それと同時に、先生や護衛の生徒がいると言う割には、銀行内は嫌に静まり返っていた。
それに、気配のようなものも全く感じられない。
例え口を閉ざしていたとしても、動く際の衣擦れや足音など、それらは意識しない限り、完全には消すことは出来ない。
まさか、向こうに計画がバレた?
もしくは、侵入の一部始終を見られたか?
いや、そんなハズはない。
向こうは今、マーケットガードの対処に追われている。
それに、侵入がバレていたならバレていたで、我々をマーケットガードの別働隊として迎え撃とうとするハズだ。
我々が先生を拉致する目的で動いているとは露も思わないはずだ。
そんな考えに至るはずがない。
とは言え、こうして目標地点に到達しても、ターゲットである先生の姿は影も形も無い。
ふと、エントランスの中心に先程、階段の上で見かけた奇妙な鳥の人形の姿が浮かび上がった。
「り、リーダー、ターゲット、居ませんね…」
そんな筈はない。
此処の何処かには居るはずだ。
苛立ちを込め、人形を蹴り倒す。
だが、人形はまるで起き上がり小法師のように元の状態に戻る。
それが何処か、気味が悪く思えた。
「一階から移動したのやも知れん。場所を移動するぞ」
人形から視線を外し、来た道を戻ろうと振り返る。
「り、リーダー…あ、アレ…」
振り返った先で、部下二人が何かに釘付けになっている。
その内の一人が指差す方向にはーーこちらを見ている気味の悪い白い鳥の人形があった。
その瞬間、俺の脳内に一つの結論が浮かび上がる。
「
それに気付いたのとほぼ同時に、背後に何者か──誰かが静かに降り立つ。
肩越しに振り向く。
暗闇で揺れるのは、二房の黒髪。
ふざけた覆面で変装したつもりのようだが、間違いない、アビドスの生徒だ。
黒髪の生徒は着地して直ぐに、その手の銃──アサルトライフルの銃口をこちらに向ける。
だが、こんなものは我々、特殊部隊にとっては日常茶飯事。
対策のしようは幾らでもある。
俺は落ち着いて振り向き様に向けられた銃口を蹴り上げる。
狙いが外れ、明後日の方向を向いた銃口が虚空に火を噴き、銃声を轟かせる。
「惜しかったなぁ、小娘。あと少し、撃つのが早ければ、俺を撃ち倒せていたと言うのに」
体勢を戻し、アビドスの小娘へとSMGを向け、即座に引き金を引く。
無数の弾丸による銃撃が小娘に襲い掛かるが、小娘は悪趣味な人形を遮蔽にしてやり過ごす。
弾薬の無駄撃ちとなる為、銃撃を止めると、遮蔽から小娘が反撃の銃撃を見舞う。
それは読めていた。
小娘が利用する遮蔽の反対側の側面に回るように銃撃を振り切り、俺は背後の部下に声を掛ける。
「お前ら!俺がこの小娘の相手をする!今の内に先生を探せッ!!」
指示を出し、小娘に再び銃撃する。
小娘は銃撃を止め、遮蔽に身を隠す。
──だが、部下からの返事は一切、返って来ない。
部下がいた方向に恐る恐る振り向く。
その先にはーーいつの間にか新しい鳥の人形があり、それが不気味に揺れながらこちらを見ていた。
その周囲には、倒れて床に転がる部下の姿があった。
その直後、俺の心の底から湧き上がったのは恐怖。
得体の知れない存在、意味不明な状況、それらが目の前の人形を通じて点と点が繋がり、限界を超え、溢れ返った。
その恐怖を振り払うように、俺は腹の底から叫んだ。
「何なんだ…一体何なんだお前はぁぁぁぁぁああああああああああああーーーーッ!!!?」
一心不乱に、鳥の人形へと銃を連射する。
だが、鳥の人形は、口元の舌を揺らし、全身を震わせ、どれだけ銃弾を受けようと、まるで起き上がり小法師のように元の状態に戻る。
その姿は、恐怖で錯乱する俺を嘲笑う道化のようだった。
やがて、弾薬が尽きた頃、俺は背後から後頭部に打撃を受けた。
恐らく、気が動転している内に、意識から外れた小娘が忍び寄って銃床で殴り付けたのだろう。
だが、お蔭でこの恐怖から解き放たれる。
そんな安心感を抱き、俺は意識を手放した。
****************************
『侵入者、沈黙しました!制圧完了です!』
アヤネの声と同時に、銀行内に明かりが点く。
気を失ったオートマタを適当*1に縛り上げ、柱に括り付ける。
「やりましたね!でも、オートマタの皆さん、どうしてあんなに怖がっていたんでしょう…?ペロロ様、こんなに可愛いのに…」
不服そうに頬を膨らませるヒフミだったが、先生はそれを宥めるに相応しい言葉を持っていなかった。
「いや、私も暗闇からこれが出て来たら流石に怖いわ…」
セリカがボソリと呟くが、ヒフミには聞こえていない様子だ。
[“みんな、お疲れ様。お蔭で助かったよ”]
先生がお礼を言うと、ヒフミは勢い良く振り返る。
「いえ、あんなに強そうな人たちを無傷で制圧出来たのは先生の作戦のお蔭です!──…ところで先生?ペロロ様の扱いについて、ちょっとお話が」
ヒフミは笑顔だったが、目が一切、笑っていなかった。
「そ、それにしてもコイツら、まさか先生を直接狙うなんてねー!」
先生の窮地を救ったのは、他でもないセリカのわざとらしい大声での感想だった。
「あ、それはそうですね。いち早く侵入に気付けて良かったです」
アヤネのお蔭で、ヒフミは元に戻った。
[“あ、アヤネもありがとね!ドローンでこの人たちを見付けてくれて!”]
先生もそこへわざとらしい大声で更に便乗する。
『あはは…ホシノ先輩のお蔭です。ホシノ先輩がお二人を先生の護衛に付けるように言わなければ、私も他のマーケットガードに意識を取られていたでしょうから…』
アヤネとヒフミがこの場に残ったのは、ホシノの提案を受け手のものだった。
[“そうだね。あとでホシノにもお礼を言わなきゃ”]
もし、ホシノの提案を受け入れていなかったら、果たしてどうなっていたのか。
「こっちは一件落着かしらね。アヤネちゃん、他のみんなはどう?」
『はい!少しお待ちください……あ、イヴさんがクルセイダーを撃破しています!そちらに集まっていたマーケットガード部隊も加勢に行ったシロコ先輩が撃退した模様!敵軍、撤退して行きます!』
「逃げてるんですか?全軍突撃ーって感じで襲って来た割には呆気ないですね?」
『便利屋68とホシノ先輩、ノノミ先輩の方も、大軍勢でしたがどうにか撃退したようです!こちらも残党が撤退して行きます!』
「これで向こうも終わりかしらねー」
セリカが一安心と言う風に安堵の溜め息を吐く。
『はい、そうだと思い──いえ、待ってください!』
アヤネが発言を撤回し、鋭く叫んだ直後、爆音が外から響き渡り、衝撃が建物を揺らした。
「うわわっ!?何!?何ですかぁ〜!?」
ペロロリュックを抱き締めながら、ヒフミは建物の揺れに怯える。
「──ったく、今度は一体何なのよ!?またマーケットガードの悪足掻き!?」
[“アヤネ、一体何が!?”]
『マーケットガードではない、
「アンノウンって正体不明って事よね!?ここでマーケットガードじゃないなら一体誰が!?」
『特定します!これは…制服を着た生徒です!ですが、このデザインはまさか…──』
アヤネはインカムの向こうで、アンノウンの正体に気付き、言葉を失っている様子だった。
「あ、アヤネさん…?」
不審に思ったヒフミが声を掛ける。
「アヤネちゃん?何処の誰だったの?」
セリカが心配そうに声を掛ける。
[“……”]
先生は緊張した面持ちで、アヤネの言葉を待つ。
そして、間も無く、アヤネの口から衝撃の言葉が飛び出した。
『──襲撃者の制服から特定しました。アンノウンの軍勢は…《ゲヘナ学園》の生徒たちです!!』
はい、襲撃して来たのはゲヘナの生徒でした
一体どういうつもりなんでしょうね?
こっちには覆面水着団のリーダー、ファウストさんがいらっしゃると言うのに…