便利屋も頑張ってる
レイヴンとクルセイダーの対戦から始まります
凄まじい勢いで大型の戦車が突っ込んで来る。
通常の戦車よりも巨大にも関わらず、目の前の大型戦車はそれを感じさせない速度で突進し、ドリフトまで駆使して縦横無尽に駆け回る。
その圧力たるや、以前に戦ったパワーローダーにも引けを取らない。
それと同時に、私はこの戦車の爆走っぷりを見て、かつてルビコンで戦った《ジャガーノート》を思い出していた。
ジャガーノートと違い、この戦車は地雷をばら撒くことはないが、その代わり、車体全面を重厚な漆黒の装甲で覆っている。
この上からダメージを与えるのは、かなり厳しい戦いになりそうだ。
その上、この戦車は通常の砲撃による爆撃に加え、広範囲を巻き込むように無差別爆撃までして来る。
事前に分かりやすく停止し、溜めがある為、回避は難しくはないが、もし誤って直撃すれば、キヴォトス人の頑強さを持つこの体でもただでは済まないだろう。
その上、相手はこの戦車だけではない。
先程から、オートマタやドローンが周囲の脇道から現れ、横槍を入れてくる。
非常に鬱陶しいことこの上ない。
常時、“歯車”を一定以上の回転率で回し、高出力状態で立ち回ることで戦車の攻撃も含めた、周囲からの横槍も躱せているが、まともに攻撃を差し込む隙がない。
回避の合間にカウンター気味に差し込めなくもないが、それでは重装甲のこの戦車に対してはダメージが期待できない。
戦車の突進とドリフトを避け、砲撃を掻い潜り、無差別爆撃の隙間を縫うように駆ける。
砲撃や爆撃の方向をコントロールし、オートマタなども巻き込むように立ち回ってはみるが、キリがなく数が補給され、一向に数が減らない。
減ってはいるのだろうが、そうは見えない。
逆に、オートマタ達の攻撃を戦車に当ててみるが、弾かれるだけで効果は今ひとつのようだ。
こうなれば、反動を度外視して更に“歯車”の回転率を上げるしかない。
──そう考えた直後、横槍を入れていたマーケットガードの軍勢へと無数の手榴弾が投げ込まれ、爆発がオートマタを吹き飛ばす。
更に、銃撃が空中に浮く、ドローンを撃墜させていく。
オートマタにしろドローンにしろ、新手が補充されるが、それらは私ではなく、新たな乱入者へと敵意を向ける。
「イヴ!助けに来た!!」
その声は紛れもなく、シロコだった。
ただし、相変わらず覆面を被り、覆面水着団のブルーとしての姿だが。
この際、この場に残っている事には、もう何も言うまい。
私は戦車の突進を躱し、シロコに声を掛ける。
「シロコ!取り巻きの処理を頼む!私はコイツの気を引く!」
ここに来るまでに多くの手榴弾を消費してしまった為、残る在庫はたったの三つだけだ。
取り巻きのマーケットガードがどれだけ補充されるか分からなかった為、使えずにいたのだが、シロコならばその心配は無いだろう。
「了解、すぐに片付けて加勢する!」
シロコがマーケットガードの部隊へと駆ける。
アサルトライフルの銃撃で上空のドローンを薙ぎ払い、手榴弾でオートマタを吹き飛ばす。
「あなた達の相手は私。イヴの邪魔はさせない…!」
シールド持ちの大柄はオートマタは生き残るが、そこへシロコが突進からの蹴りを叩き込む。
左右をシールド持ちに囲われるが、シロコは軽々と跳躍し、空中で頭上から真下のオートマタ達へARの斉射を見舞う。
シロコが着地し、その背後でオートマタが崩れ落ちる。
シロコは新たに補充されるマーケットガードへと疾駆した。
シロコは問題なさそうだ。
それなら、私は私の仕事をするとしよう。
シロコのお蔭で、私は目の前の大型戦車に集中することが出来る。
ジャガーノートを彷彿とさせる勢いで、大型の戦車が突っ込んで来る。
私はそれをクイックブーストの要領でステップして回避し、すれ違い様にヘイローの真紅の光で強化された左手のショットガンを叩き込む。
貫通性能を持つ弾丸が火花を散らし、戦車の装甲を削るが、それをものともせずドリフトして振り向き、砲撃を繰り出す。
それを跳躍して躱し、そのまま私は戦車の砲台に乗る。
私を振り落とそうと、戦車がキャタピラを唸らせるが、それよりも早く、真紅の光芒を纏う右手のARを車体を縦断するように掃射する。
車体の天板に銃撃の跡が残り、その部分がヒビ割れて歪む。
振り落とされる前に私は飛び降り、左右の銃をリロードし、左手の銃を背中のスナイパーライフルと持ち替え、私を振り落とそうとして明後日の方向に突進した戦車狙いを定める。
“鴉の眼”で、装甲と装甲の隙間の薄い板金部分を狙い、銃弾を放つ。
さすがに撃ち貫く程ではないが、表面が歪んで凹み、着実にダメージと負荷が蓄積する。
戦車の砲塔が私に狙いを定め、砲身にエネルギーを溜めている。
これが、無差別爆撃の予兆だ。
周囲を見渡す。
シロコは私の邪魔にならないように、巻き込まれないように路地の奥で取り巻きを潰して回っているようだ。
これならば、撃たせても問題ない。
私はエネルギーを溜める砲身の口元目掛け、残り三つしかない虎の子の手榴弾を放る。
直後、無数の砲撃が放たれ、無差別に周囲を爆撃する。
だが、それと同時に、砲口の至近距離でも手榴弾と砲撃、二つの爆発が起こり、それにより戦車の砲身が僅かに歪み、欠ける。
私は爆撃の間を縫うように駆け抜け、再び戦車へと飛び乗り、上から至近距離で左右の銃の弾丸をありったけ叩き込む。
銃弾が板金を叩き、打ち付け、削り、穿つ。
ダメージに加え、負荷が蓄積し、負荷限界により戦車の動きが止まる。
その隙に左右の銃をリロードし、負荷限界でスタッガー状態の戦車へ、再びありったけの弾丸を叩き込む。
ARとSG、それぞれの銃弾が板金を叩き、削り、激しく火花を散らす。
戦車の天板部分は、銃撃によって歪み、破損し、ひび割れた状態だ。
それでも尚、まだ動こうとする戦車に、飛び降りる直前に手榴弾の置き土産を贈る。
戦車の真上で爆発が起き、砲塔があらぬ方を向いて曲がり、天板が完全に剥げ、吹き飛ぶ。
だが、これで私の手榴弾も残り一個となる。
戦車は最後の抵抗として、その巨体を活かした突進を敢行する。
だが、それは突如として襲い掛かった、横からの銃撃によって、邪魔される。
「イヴ、お待たせ」
そこには、銃を構えたシロコ──覆面水着団ブルーの姿があった。
動きが止まった隙に、私はSRに武器を切り替えると、ひび割れた装甲部分を撃ち抜く。
シロコの銃撃、加えてトドメの私の狙撃を受けた戦車は、黒煙と火花を上げ、完全に動きを止めた。
「シロ──ブルー、ありがとう。まさか、全滅させたの?」
私は銃を納め、シロコに近付く。
「ううん、ある程度倒したら撤退して行った」
そう言ってシロコは脇の路地を指差す。
そこには、シロコが倒したと思われるドローンにオートマタ、戦車までもが残骸となり、煙を上げていた。
「これで終わりかな?」
「…分からない。連中の事だし、まだ何か──」
その直後、私の耳が、ある音を捉える。
それは、風切音。
だが、ヘリの飛行音とは違う。
何か、円筒状に近い──。
そこで私は、その正体に気付く。
私とシロコは同時に顔を見合わせ、それぞれ外側へと飛ぶ。
その直後、私たちが立っていた場所に何かが落下し、爆発が起きた。
そして、その爆発がこの一ヶ所、この一回だけでは無いことを私の耳は聞き取っていた。
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少し時間を遡り、闇銀行前。
便利屋68の四人と、そこに合流したホシノとノノミ、もとい覆面水着団のピンクとクリスティーナの二人を合わせた合計六人が、マーケットガードの軍勢を相手取っていた。
通常の戦車の砲撃やロケットランチャーをホシノがシールドで受け、ハルカと共に、正面から敵陣に突っ込み、近距離でSGをぶっ放す。
アルの狙撃と、それに伴う爆発が広範囲の敵を巻き込み、ドローンもオートマタも戦車も関係なく吹き飛ばす。
更にそこに広範囲を薙ぎ払うノノミのマシンガンの掃射が加わり、次々と敵を薙ぎ倒して行く。
それでも残ってしまう敵をカヨコとムツキが銃撃で仕留める。
だが、数が数だけに、次々と押し寄せる敵を前に、半ば乱戦状態だ。
戦線も銀行の正面玄関前まで押し込められている。
彼女たちは知る由もないが、マーケットガードの軍勢は、イヴ、シロコ側より、こちらに集中していた。
だが、それをどうにかギリギリの位置で留めているのがこの六人だった。
周辺にはオートマタやドローン、戦車の残骸が散乱している。
それらを遮蔽に敵の銃撃を凌ぎ、アルが狙撃する。
「さぁ、どれだけ耐えられるかしら?」
狙撃そのものに加え、爆発が広範囲に広がり、オートマタを薙ぎ倒す。
だが、シールド持ちは生き残り、カウンターの掃射を繰り出す。
「残念、それは当たらないよっ」
「死んでください死んでください死んでください死んでください!!」
だが、それをホシノがシールドで防ぎ、その後ろに追随するハルカと共に、SGでシールド持ちを吹き飛ばす。
「クリスティーナ、行きま〜す☆」
シールド持ちの後ろから尚もオートマタが現れるが、それをノノミのMG掃射が薙ぎ払う。
「カヨコちゃん、右よろしく♪」
あぶれた僅かな生き残りは、カヨコとムツキが狙い撃ち、確実に倒す。
「了解」
着実に、敵は減って来ている。
補充される数も少なくなって来ている。
ここが踏ん張りどころだ。
だが突如として、向かって来ていたマーケットガード達が撤退して行く。
「あれ?どうしたのかな?」
撤退して行くオートマタを前に、ホシノが首を傾げる。
「お、終わったんでしょうか…?」
その横で、ハルカが不安そうに呟く。
「撃退成功、なんでしょうか…?」
銃を構えたまま、ノノミが呆然と立ち尽くす。
「なーんだ、思ったより呆気なかったね〜」
そう言いながら、ムツキは体を伸ばす。
「…そうだと良いけどね…」
カヨコは油断せずに警戒したまま、一先ず銃を下ろした。
「ふふっ、大したこと無かったわね!私たちに恐れ慄いたのよ!きっと!それはそうと、あなた達、助太刀には感謝するけど一体何者ーー」
アルは覆面を被ったノノミとホシノの元へと近付き、正体を追求する。
その直後、ホシノが何かに逸早く気付き、アルを抱き締め、押し倒す。
それまでアルが立っていた場所に何かが落下し、爆発した。
レイヴンサイド、便利屋サイド共に覆面水着団が加勢し、何とか防衛戦を乗り越えられましたね
さて、襲撃者は一体何者なのでしょうか…?