ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

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あらすじ

レイヴン無双

レイヴンを止めたければ、せめてミサイルは積まなきゃ…


EP-36 便利屋の意地

レイヴンに加勢するべく、アルを先頭に便利屋がブラックマーケットの街中を駆ける。

 

だが、アルは推定レイヴンが居るである場所に近付くにつれ、言い知れぬ不安を感じていた。

 

そして、それは先程から街中の至る所から響き、轟く爆音を聞くたびに肥大していった。

 

「アルちゃん!なんかさっきからヤバくない!?」

 

街の一方向から、頻りに聞こえる銃声と怒声、悲鳴、破壊音。

それらを頼りに、その場所にレイヴンがいると考え、その方角を目的地として進んで行く。

だが、それと同時に、それらの音が意味するものを考え、アルは背筋に冷たいものを感じた。

 

もし、もし仮に、これらの“騒ぎ”の元凶が、レイヴンなのだとしたら…。

 

どれだけの武力と対峙しているのかは分からないが、この治安の悪いキヴォトスに於いても、相当な暴れっぷりだ。

 

「百の軍隊、ってレイヴンは言ってたよね。それを相手取って、これだけの騒ぎを起こしてるって事でしょ?あの子、もしかすると“ヒナ”に匹敵するような実力の持ち主かもよ…」

 

ゲヘナ学園 風紀委員長 空崎ヒナ。

キヴォトスに於いて、最強との呼び声も高い、類稀なる強者の一角。

桁外れの肉体強度と圧倒的な制圧力を誇る攻撃力に加え、敏捷性・機動力に於いても申し分無い。

個でありながら、群を凌駕する異次元の力を持つ存在。

 

レイヴンがやっている事は、それに匹敵するとカヨコは考えていた。

 

今更ながら、アルはとんでもない人物に目を付けられたと身震いする。

 

「そっ、それでも!それが私たちが加勢しなくて良い理由にはならないでしょ!?」

 

「さすがです!アル様!!」

 

レイヴンは相当な騒ぎを起こしているようで、先程からオートマタのものと思える声などは聞こえても、その姿は一切、見られない。

 

どうやら完全にレイヴンに釘付けにされているようだ。

 

「私たちが巻き込まれる可能性もあるけどね、アルちゃん」

 

ムツキがそう言って悪戯っぽく笑う。

 

「ちょっ、やめなさいよね!?そうなったら本当に──」

 

と、そこで先頭を進むアルは立ち止まり、続くメンバーを静止させる。

 

道路の曲がり角部分で、建物の陰に隠れるように、身を潜ませる。

 

陰から向こう側を覗き込めば、マーケットガードのオートマタやドローン、戦車が急いで何処かへと向かっていた。

その方角は、アル達が目指している方向と重なっていた。

 

「あいつらに着いて行けば、レイヴンのところに辿り着くかもしれないね」

 

アルの下から覗き込んでいたカヨコが提案する。

 

「そうね…慎重にあとを追ってみましょうか…」

 

オートマタだけでなく、空にはドローンも飛んでいる。

あれに察知されてもダメだ。

 

「もういっそ爆破しちゃ〜う?」

 

追跡を面倒に思ったカヨコの下から顔を出すムツキが、好戦的な提案をするが、アルは即座に首を横に振って断る。

 

「良いわけないでしょ!?今は取り敢えず、レイヴンと合流するのが先決よ。連中を叩くのはそれからでも遅くはないはず」

 

「うーん、ざんねーん♪」

 

さすがに冗談だとは思うが、ムツキは割と好戦的なきらいがある。

冗談でも乗ったら、何をしでかすか分からない。

 

一先ず、ムツキを静止できて安堵したアルは、前に視線を戻す。

 

「あ、アル様、マーケットガードが進みました…」

 

ムツキの下から顔を覗き込ませているハルカの指摘通り、マーケットガード集団は、更に先に進んでいた。

今なら、ドローンも飛んでおらず、見付かる可能性は極めて低い。

 

「追いかけましょう!」

 

マーケットガード集団の前に姿を晒さないように、便利屋の四人は慎重に壁や遮蔽を伝いながら、マーケットガードの後を追う。

 

一定の距離まで近付いた。

 

そのタイミングで、かなり近くで爆発が起こる。

 

先程から、一体何の爆発なのか。

何が起こっているのか。

 

アルはマーケットガードの最後尾を追い、建物の陰から覗き込む。

その先は、より広い主要道路であり、開けた場所だった。

 

そして、周辺には、恐らくヘリコプターと思われる残骸が至る所に転がっており、炎と黒煙を上げていた。

 

「居たぞ!レイヴンだ!」

 

「アパッチ部隊が全滅だと!?あり得るのか!?」

 

「たった一人で!?バケモノめ!!」

 

マーケットガード部隊から怒号が上がる。

どうやら、この部隊の向こう側に、レイヴンが居るらしい。

 

「あっはは〜♪これ全部レイヴンがやったんだ〜すっごーい!」

 

ムツキは武装ヘリの残骸が転がる惨状を前に無邪気にはしゃいでいる。

 

「すごいとかそう言うレベルじゃないでしょ!?」

 

アルは確信する。

前回の敵対時の戦闘でもその片鱗は感じていたが、今回のこの惨状を目の当たりにして理解する。

レイヴンもまた、ヒナに匹敵するキヴォトス最強の一角に立つ存在なのだと。

 

「はぁ…どうやら、ヒナレベルってのは間違い無さそうだね…それでアル、どうする?」

 

「へ?」

 

「向こうにレイヴンが居るんでしょ?加勢に来たんだから、このまま攻撃するんだよね?挟み撃ち、って事だね♪」

 

ムツキやカヨコの言う通り、これで目的地には到達した。

あとは、レイヴンに自分たちの存在を教え、共闘するという事になる。

 

「あ、アル様、私が突撃しましょうか…?わ、私はいつでも特攻出来ますよ…?」

 

そう言ってハルカは両手に爆発物を持つ。

 

「危ないから仕舞ってなさい…そうね、ムツキ、“アレ”お願いしようかしら」

 

「アレ?…あぁ、アレね!オッケー!お任せあれ♪くふふ」

 

その後、便利屋のメンバーは速やかに準備を整え、位置に着く。

 

「それじゃあ──行くわよっ!!」

 

各々が、事前の作戦に従って、動き出す。

 

「さぁ!行くよっ!そーれぇっ!!」

 

ムツキが獰猛な笑みを浮かべた顔で、爆発物をマーケットガード集団の後方に投げ込む。

 

それは、地面との接触と同時に爆発し、無数の火柱を上げる。

 

「なっ!?なんだ!?」

 

「こっ、後方から襲撃!!」

 

「レイヴンに加えて新手が!?」

 

突然のバックアタックに、マーケットガード部隊が混乱する。

 

「動くな」

 

そこに、カヨコが姿を現し、単発の銃撃で気を引いたところで、静かに睨み付ける。

マーケットガード部隊の動きが鈍くなる。

 

「死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください!!」

 

いつの間にか静かに忍び寄っていたハルカが、近距離からショットガンの連射をばら撒き、多くのオートマタを吹き飛ばす。

 

だが、ハルカに上空のドローンが狙いを付ける。

 

「させないわ」

 

アルがドローンの一体に狙いを付け、狙撃する。

狙撃されたドローンは派手に爆発し、周囲のドローンを巻き込む。

 

「貴様ら!レイヴンの仲間か!?」

 

戦車の砲塔が狙いを付ける。

 

「あっ、そこ、既に仕掛けてるから気を付けてね♪」

 

その直後、戦車の足下が爆発し、無数の爆炎を立ち昇らせる。

ムツキがどさくさに紛れて地雷を仕掛けていたのだった。

 

「ぐっ…!貴様ら…こんなことをしてただで済むと──」

 

オートマタ最後の一体は、アルの狙撃によって倒され、その後の爆発が戦車を木っ端微塵に吹き飛ばす。

 

「さて、知ったこっちゃないわね。私は──私たちは金さえ貰えれば、他はどうでも良い、それだけの何でも屋だから。怖いのは、タダ働きと貧乏だけよ」

 

マーケットガードの一部隊を殲滅した便利屋68は、立ち昇る土煙を越える。

その先に居たのは、呆然と立ち尽くすレイヴンの姿だった。

 

「あなた達…どうして此処に…?」

 

「別に、大したことじゃないわ。仕事をしに来ただけよ」

 

そう言い、アルはレイヴンの横に並び立つ。

 

その向こうには、未だ健在のマーケットガードの軍勢。

向こうは、レイヴンを恐れてか、それとも便利屋を警戒してか、まだ攻撃して来ない。

 

「…逃げろと、言ったはずだけど…?」

 

俯き加減に、横からレイヴンが睨み付けて来る。

僅かな恐怖が込み上げるが、アルはそれを振り払って言い返す。

 

「なら言わせてもらうけど、別に私はそれを了承した覚えはないわ」

 

アルの言葉に、レイヴンは押し黙る。

 

「…どうなっても知らないよ…」

 

溜め息を吐き、不貞腐れたように、ぶっきらぼうに言い放つ。

 

「自分たちの身くらい、自分たちで守れるわよ」

 

だが、それをアルは鼻で笑う。

そして、それとは打って変わって、優しく、穏やかに微笑みかける。

 

「──だから、私たちにもあなたの仕事を手伝わせなさい。レイヴン」

 

ほんの一瞬、レイヴンは惚けた後、口元に笑みを浮かべた。

 

「物好きめ。分かった。それなら、とことん、利用させて貰う」

 

「えぇ、そうしてちょうだい。それで、レイヴン──」

 

そう言うとアルは不意に、前方を指差す。

 

「この状況、どうするの…?」

 

目の前の銃口と砲口を向けたマーケットガード部隊を前に、二人は顔を見合わせる。

 

「……」

 

「……」

 

「…ここは一旦、逃げるぞ…!」

 

「やっぱり、そうなるのね〜!?」

 

二人はほぼ同時に走り出す。

 

その直後、銃撃と砲撃が二人を襲う。

 

二人は咄嗟に身を投げ出すように飛び、その背後で爆発が起き、二人は地面の上を転がる。

 

だが、幸いにも、墜落したヘリの残骸が遮蔽となって、砲撃は兎も角、銃撃は届かない。

 

「アルちゃん、レイヴン、こっちこっち〜!」

 

声に釣られて振り向けば、遠くの建物の角からカヨコ、ムツキ、ハルカが顔を覗かせ、手招いていた。

 

遮蔽を使い、タイミングを見計らい、二人はどうにか三人の元へ合流する。

 

「あんた達!私たちが大変な時に、いつの間に安全圏に行ってたのよ!?」

 

合流後、五人はその場から離れるように走り出す。

 

「それはごめん。でも社長、何も私たちは何もせずにタダ逃げた訳じゃないよ」

 

カヨコがそう言うと、ハルカとムツキが怪しい笑みを浮かべる。

 

「えっ?どう言うこと?」

 

「あっ…あの、えと、お二人が話されてる間に、私たち三人で、その…爆弾を設置してまして…」

 

「あっ、ハルカちゃん、そろそろだよ」

 

「あっ、はい…」

 

ハルカは手にした爆弾のスイッチを押す。

 

背後で盛大な爆発が起こり、振り返ると、アルとレイヴンを追いかけて来ていたマーケットガード達がその爆炎に巻き込まれ、高々と宙を舞っていた。




便利屋が関わるとどうしてかギャグ寄りになる…

オチ要因に便利過ぎなんだよ…便利屋だけに…
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