ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

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あらすじ

レイヴンの言うことを聞かない生徒たち(+先生)

今回はレイヴンの無双回!!
一騎当千、鎧袖一触の活躍、ご期待ください!!


EP-35 百の軍勢と孤高の狩人

私は今、ビルの屋上に登り、眼下に広がるブラックマーケットの街を眺めていた。

 

その街中の主要道路も脇道も、余す所なく埋め尽くすように、マーケットガードが進軍している。

 

歩兵、戦車、武装ヘリ、それらが向かう先はただ一つ。

アビドスのメンツ+αと便利屋がいる闇銀行。

 

早めに逃走指示を出したが、果たして間に合うだろうか。

いや、私がここで食い止め、間に合わせれば良い。

 

それにしても、私が他人を助ける為に、逃して足止めをする日が来るとは、私も随分と、このキヴォトスに来て丸くなったものだ。

 

それにしても、百の軍勢か。

 

ミシガン付きのレッドガン部隊とどちらが厄介かな。

 

──殺せ(たたかえ)ば分かるか。

 

私の側に、漆黒の大鴉と機械仕掛けの猟犬が寄り添う。

鴉は、闘争心と殺意に満ちた深紅の瞳を私に向ける。

猟犬は、任務の遂行と背負ったものを果たすことを私に訴える。

 

そうだね、彼女たちが逃げられるように足止めする、それが今の私の任務であり、背負っているもの。

言い換えれば、彼女たちの安全。

彼女たちの安全を確保する為に、私はこの任務を全力で全うする。

 

空を飛ぶ武装ヘリが、徐々に近付きつつある。

 

この空気感に、かつてのルビコンの戦場に近しいものを感じる。

 

私は回す、内なる“歯車”を。

 

“歯車”が回る。

 

ガリガリと、錆を削り落として。

 

それが、かつての、えずくような血と硝煙の匂いを思い出させる。

 

殺し、殺され、殺し合う、闘争の記憶を──。

 

自然と猟犬の耳が立ち上がり、鴉の眼が見開く。

 

私はビル屋上の床を蹴り、近くを通りがかった戦闘ヘリへと突っ込んだ。

その勢いのまま、ヘリを蹴り、“歯車”を回して“出力”を上げ、吹き飛ばす。

軽々と吹っ飛んだヘリは、制御を失って回転しながら、建物と建物の間を通過し、丁度通過していた戦車と激突し、爆炎を上げた。

 

突然の友軍の撃墜に、下で混乱が巻き起こる。

 

私は空中で絶賛、落下中だが、咄嗟に背中のスナイパーライフルへと切り替える。

近くを飛んでいたヘリが私を見付ける。

ヘリに備え付けられた機銃で狙いを付けるが、向こうが撃つよりも先に、私のSRが火を噴く。

 

“鴉の眼”で狙いを定め、放たれた銃弾は正面のガラスを突き破る。

ヘリの操縦者は混乱したようで、向こうの攻撃は中断され、その隙に私はSRを撃った反動でビルの壁に近付く。

 

窓の縁を掴み、落下を止めると、私は壁に足を付ける。

壁を踏み締め、力を蓄える。

“歯車”を更に回し、壁を蹴って溜めた力を解放する。

 

私は反対側のビルの壁へと弾丸じみた速度で跳躍し、更にそちらの壁も蹴って再び跳躍することで、瞬く間に元いたビルの屋上へと戻る。

 

そして、先程狙撃して、今は真下にいるヘリの割れた窓の部分に、手榴弾を投げ込む。

間も無く、爆発し、ヘリがそのまま墜落する。

墜落したヘリは、無数の歩兵とドローン、戦車を巻き込んで薙ぎ倒した末に爆発する。

 

騒ぎを聞き付け、他のヘリが飛んで来る。

 

ビルの屋上にいる私を斜め左右前方からそれぞれ現れると、すぐさま機銃を斉射する。

私は向かい側のビルの屋上へと跳躍して移動し、二機のヘリの背後を取る。

すぐに銃撃を止め、旋回しようとするが、それを許す訳もなく。

 

私は左手側の旋回しようとしているヘリの左側を取るように跳躍すると、空中で身を捻り、正面──つまりは、もう一機のヘリへと蹴り飛ばす。

 

二機のヘリ同士が激突し、プロペラが絡まり合い、制御を失った二機のヘリはそのまま重力に従って落ちて行き、派手な爆炎を上げた。

 

因みに私は、蹴り飛ばすと同時にその反動で後方宙返りで体勢を整え、何とかビルからせり出した看板に掴まり、今はぶら下がった状態だ。

 

これで、堕とした武装ヘリは合計で四機。

残りは、先程眺めていた限りだと二機の筈。

 

私は看板の上に登り、そのまま壁を蹴って再び屋上へと上がる。

 

そこへ飛んで来たのは、無数のドローン。

 

そして同時に、建物を登って来たと思われる多数のオートマタ。

 

「貴様、“シャーレの番犬”、レイヴンだな!良くもこれだけの事をやってくれたなッ!タダで済むと思うなよ!!」

 

“シャーレの番犬”、か。

先生に飼われてる気は無いが、まあ悪い気もしない。

ルビコンでも、猟犬、野良犬、駄犬、と犬呼ばわりは慣れている。

 

それでも、私にとっての飼い主──首輪を付けてくれたのは、ウォルターだけだ。

 

そして、遠くから残る二機の武装ヘリが近付いて来ている音がする。

早めに片を付けねば面倒そうだ。

 

背後のドローンと正面の歩兵部隊から銃撃が私へと襲い掛かる。

私はそれをクイックブーストの要領で床を蹴り、素早く横に滑る。

尚も追い縋ろうとする銃撃を前傾低姿勢で躱し、そのまま歩兵部隊へと滑空するように突っ込む。

 

肉薄の直前で身を捻り、オートマタを纏めて蹴り飛ばす。

 

「バカな!?あの弾幕を掻い潜るなど!?」

 

掻い潜ったと言うよりは、高速移動で振り切った、が正しい。

 

右手の銃を腰に納め、残っていたオートマタの顔面を掴み、“歯車”を更に回転させ、壁に叩き付けて黙らせる。

 

激しく頭が痛む。

灼け付くように。

 

飛んで来たドローンの銃撃を右手のオートマタを盾代わりにして防ぐと、銃撃が途切れたタイミングでドローンへと投げ飛ばし、纏めてヘイローから零れ落ちた真紅の光芒を纏うARで掃射する。

 

「この化け物がぁッ!!」

 

残っていたロケットランチャー持ちのオートマタが私に砲口を向ける。

 

撃たれる前に潰す事も出来たが、私は敢えて、オートマタにRLを撃たせた。

 

私はそれを身を逸らして躱す。

飛んで行った砲弾は、こちらに飛んで来ていた武装ヘリのフロントガラスの部分に直撃し、爆発した。

だが、まだ辛うじて制御を失っていない。

 

「は…?え…?」

 

RLのオートマタは呆然と立ち尽くす。

一気に距離を詰め、顔面を掴んで床に叩き付ける。

 

もう一機のヘリが到着し、私に機銃を斉射するが、私はオートマタを盾にして防ぎ、用済みの細工を仕掛けたオートマタを先程、爆撃を受けた方のヘリへと投げ付ける。

 

直後、再び爆発し、黒煙を上げてヘリは墜落する。

用済みのオートマタには、盾にした時点で懐に手榴弾を忍ばせておいた。

それが二度目の爆発にして、トドメだ。

 

再び、ヘリが私へと機銃を斉射する。

今度は盾は無い。

盾が無ければ、避ければ良いだけだ。

 

機械仕掛けの猟犬が駆ける。

 

銃撃の隙間を縫うように、空白地帯を教えるかのように、私をヘリの元へと導く。

 

漆黒の大鴉が舞う。

 

黒衣を纏う死神のように、喉元に突き付けられた大鎌のように、私と共に、死を齎す。

 

ヘリのフロントガラスを蹴りで突き破り、中の操縦者のオートマタへと、左右の銃の弾丸をありったけ叩き込む。

 

制御を失ったヘリは緩やかに落下し、私は激突の直前に飛び降りる。

 

着地した私の背後で、派手に爆炎が噴き上がる。

 

爆炎を背にした私の前には、今まで墜落した武装ヘリの残骸が転がっていた。

 

そして、周囲から音が近付いて来る。

 

それは地面を叩く足音であり、回転するキャタピラの音であり、空を行き交う駆動音。

私を包囲するように、まだ生き残っていたオートマタの歩兵、戦車、

ドローンが集結していた。

 

結構な数がヘリの撃墜とそれに付随する爆発に巻き込まれたと思っていたが、まだこれだけ残っていたとは。

ざっと見える範囲だけでも、歩兵は三十超、戦車は十台、ドローンは二十機ほど。

 

──関係無い。

全てを破壊し尽くすのみ。

悉くを滅し尽くすのみ。

 

“歯車”が回転する。

 

ギャリギャリと音を立てて。

 

錆を削り落として。

 

錆の奥から、白銀が顔を覗かせる。

 

回る、回る。

 

“歯車”が廻る。

 

例え、痛みを伴うとしても。

 

灼け付くような痛みが襲って来ても。

 

私は“歯車”を回し、戦い続ける。

 

それが、私の《仕事》だから。

 

それが、私の《意味》に繋がるから。

 

回れ、回れ、“歯車”よ、廻れ。

 

遺志を継ぎ、役目を果たす、その時まで──。

 

──“遺志”?誰の?役目とは?

 

全ては終わった事のはず。

 

歩兵の銃撃が全方位から襲い掛かる。

 

聴こえている、視えている、読めている。

 

猟犬が駆け出し、舞い上がり、空中で身を捻る。

私もそれに倣い、舞い“躍る”。

 

私たちの周囲を銃弾が過ぎ去る。

 

着地したところへ、RL持ちによる無数の砲弾が飛んで来る。

 

猟犬が砲弾の真下、左右を駆け抜ける。

私もそれに倣い、前傾低姿勢で駆け抜ける。

 

私たちの背後で複数の爆発が起こる。

 

爆風を背中で受け、私たちは更に加速する。

 

──ダメだ。

 

速度が速過ぎて、周囲を捉え切れない。

眼で追い切れない。

 

もっと、もっと、“歯車”を回せ。

 

暑い、熱い。

 

“出力”を上げろ。

 

身体が熱い。

 

感覚が鋭敏になり、“耳”と“眼”が受け取る情報が増える。

 

焼け付くように、頭が熱い。

 

押し寄せる情報の波を処理する為、体感時間が非常に緩やかになる。

 

脳が焼き切れるかのように、熱くて、痛くて。

 

引き延ばされた時間の中で、私はこちらに向く無数の銃口、砲口を視る。

 

それは歩兵やドローンの銃であり、RLであり、戦車の砲塔だった。

 

それらが立て続けに火を噴く。

 

銃弾が、砲弾が、殺到する。

 

私は地面を踏み締め、頭が熱くて痛くても、歯を食い縛り、飛び上がる。

 

空中で身を捻り、飛び交う弾幕を紙一重で躱す。

 

そして、全てを躱し切り、私は着地と同時に駆ける。

 

視界が白熱するような熱に苛まれながら、私は鴉と共に、軍勢へと肉薄し──。

 

軍勢の背後で派手な爆発が巻き起こった。




“シャーレの番犬”、か…
名前が増えたな、621…

それでもやはり、621にとっての飼い主はウォルターだけのようです

大いなる力には代償が伴う…

レイヴンもその“力”の代償からは逃れられません…

さて、レイヴンが攻撃しようとした最中に、軍勢の背後で巻き起こった爆発の正体とは!?
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