ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

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あらすじ

ヒフミ登場
レイヴンがペロロ様の精神汚染で発狂(MADNESS)

阿慈谷ヒフミ…恐ろしい子…!レイヴンすら下してしまうとは…!



EP-32 阿慈谷ヒフミは断れない

「──という訳で、グッズを買いに来たのですが、先程の人たちに囲まれて…皆さんが居なかったら、どうなっていた事やら…」

 

ひと段落ついた私たちは、阿慈谷の事情を聞いていた。

私はどうやら正気を失っていたようだが、今は落ち着いている。

 

私は何故、あんなキモ──…独特なセンスに刺さるようなモノを可愛いと思ってしまったのか。

 

ペロ──ダメだ。

名前を思い浮かべただけでまた狂気が蓄積する感覚を覚える。

名を言うことすら憚られる“P”の残像を振り払い、私は阿慈谷の言葉に集中する。

 

[“何はともあれ、こうして保護できて良かったよ”]

 

「本当にありがとうございます。それで、皆さんはこの場所で何を?」

 

阿慈谷が問うと、アビドス対策委員会のメンバーは答えず、こちらに視線を向ける。

 

仕事のことを言うべきか言わざるべきか、判断を仰いで来ている。

 

「私たちは──」

 

と、そこで、私の猟犬の耳が複数の気配を感知する。

 

その後──。

 

『皆さん!大変です!四方から武装した人たちが向かって来ています!』

 

アヤネの焦った声がインカムから届く。

 

「何っ!?」

 

セリカが驚いた声を上げる。

 

先程、蹴り飛ばした不良連中の報復か。

 

「あいつらだ!」

 

「さっきは良くもやってくれたな!」

 

『完全に敵対モードです!』

 

「イヴ、どうする?」

 

シロコが横から戦闘の是非を問う。

 

さて、どうするか。

私は高速で思考を巡らせる。

 

降り掛かる火の粉は払うに越した事はないが、かと言って更に騒ぎを大きくしては、仕事に差し支える可能性がある。

 

かと言って逃げたところで、ここら一帯は連中の縄張りでもあるはず。

地形に関しては向こうの方が熟知している可能性が高い。

闇雲に逃げ回ったところで、この人数で振り切るのは至難だ。

 

「あ、あの!よく分からないんですけど、あまり大きな騒ぎを起こしたくない感じですか!?」

 

と、そこで意外にも助け舟を出したのは阿慈谷だった。

早口で彼女も焦っているのを感じる。

 

「ん?ああ、うん。そうだけど…」

 

「そ、それなら、最低限の撃退程度にして、この場から離れましょう!」

 

捲し立てるように言った阿慈谷の策に、それでは一時凌ぎにしかないのでは──と言い掛けたところで、私は一つの結論に辿り着く。

 

「…もしかして、ここの地形に詳しい?」

 

「えっ?まぁ、はい!ある程度は…!」

 

これは思わぬ拾い物をした。

まさか、ここの地形にある程度、知識がある人間と接触出来るとは。

 

ホシノに視線を向けると、私に気付き、片目を瞑ってみせて、自身の手柄を主張する。

確かに、彼女をホシノに任せて正解だった。

ファインプレーと言える。

 

「よぉし、じゃあヒフミちゃん!良さげな場所に案内してくれるかな!?後ろはイヴちゃん達が殿(しんがり)を務めてくれるからさ!」

 

ホシノが阿慈谷を先頭に立たせ、行き先を促す。

 

「あっ、はい!それじゃあこっちです!」

 

阿慈谷の指示に従って、一行が動き出す。

 

やり取りは淀み無く、素早い応答の繰り返しではあったが、ここまでの間に、不良は目と鼻の先まで迫って来ていた。

その数は、先程の三人から増えて十人程度に倍以上となっていた。

 

「ノノミは先生を!シロコ!私と一緒に連中の応戦を!セリカは私たちの援護を頼む!」

 

素早く的確、簡潔に指示を飛ばす。

 

「はい!お任せください!」

 

「ん、了解、戦友」

 

ノノミが先生を守るように盾になり、シロコが私の横に並走する。

 

「あんたに限ってそんなことは無いだろうけど、逃すんじゃないわよっ!?」

 

私とシロコの後ろ──と言うより、前方で、いつでも援護できるように銃を構える。

 

動き出した私たちに、不良──チンピラ集団が構わず特攻して来る。

 

シロコは以前と変わらず、まだドローンを使えない。

ヘルメット団とのアビドス襲撃に際して、私が破壊してしまい、その後も事件が立て続けに発生してシロコも用意する余裕が無かったのだ。

破壊した張本人である私が、どうにか弁償したいのだが、未だ新品のドローンを購入出来るほどの収入は入っておらず…。

 

だからこそ、私はこの依頼を完遂し、その収入でシロコのドローンを弁償したいと考えている。

 

向かって来るチンピラ生徒に、シロコは手榴弾を投げ付ける。

怯んだところにすかさず、私が右手のアサルトライフルを掃射する。

 

尚もチンピラ生徒たちが向かって来るが、シロコのARの斉射によって、その多くが薙ぎ倒され、唯一残った生徒には、私がトドメを刺す。

 

右手のARを背中のスナイパーライフルへと素早く持ち替え、狙撃する。

 

「ひ、ひぃ〜、ちくしょう!覚えてろぉ〜!」

 

捨て台詞を吐き、敵は私たちの追跡を止める。

 

『チンピラ集団、撤退して行きます!ですが恐らく…』

 

「仲間を呼ぶつもり?幾らでも相手をしてあげるけど…」

 

シロコが私に目配せする。

私はそれに首肯する。

 

「今は依頼優先だ。このまま撒こう」

 

降りかかる火の粉は払うが、目に見えて避ける手段があるのならば、避けるに越した事はない。

依頼外の事であれば尚更。

 

[“ノノミ、ありがとう。みんなもお疲れ様”]

 

先生も無事のようで何より。

 

「ちぇっ、運の良い奴らめ!」

 

何やらセリカが不満そうだが、その鬱憤は銀行襲撃で晴らしてもらうとして。

 

「はうぅ…良かったです…。ブラックマーケットで騒ぎを起こしたら、ここを管理してる治安機関に見付かってしまうかもしれませんからね!」

 

私たちは未だ油断は出来ないが、一先ず走る必要も無くなり、早歩きで進みつつ、合流する。

 

阿慈谷は心底から安心したように深く溜め息を吐く。

 

その発言に、阿慈谷以外の全員があからさまに目を逸らすが、本人は気付いていない。

私たちの仕事は、間違いなく、阿慈谷が危惧する“騒ぎ”になるだろう。

 

そんな私たちの内心など露も知らず、阿慈谷は言葉を続ける。

 

「あうぅ…そうなったら本当に大事になってました…」

 

安堵の溜め息を吐く阿慈谷をシロコが鋭い視線で見詰めている。

 

「ふむ…ここをかなり危険な場所だって認識してるんだね」

 

シロコの不意の質問に、阿慈谷はキョトンとした表情を浮かべる。

 

「えっ?と、当然です!連邦生徒会の手が届かない場所ですから…ブラックマーケットだけでも、学園数個分に匹敵しますし、決して無視はできないかと…」

 

阿慈谷の言が適当な出まかせのデタラメを言っていないのだとするなら、ブラックマーケットはかなり強大な力を持った組織だと言える。

 

それと同時に、仮にそれが本当だった場合、ある疑問に辿り着く。

 

「それだけじゃありません!ここ専用の金融機関や治安維持機関がある程ですから!」

 

なぜ彼女は、いくらトリニティという最大規模の学校の所属とは言え、これほどまでにブラックマーケットの事情に詳しいのか、と…。

 

やはり、彼女は平凡な一生徒ではないのかもしれない。

或いは、一般生徒に偽装したエージェントという可能性もある。

 

闇銀行や、警察紛いの治安維持機関がある事を私たちはカイザーからの依頼と、それに添付された資料で知った。

大企業すらも大っぴらに公開していない情報を単なる一生徒が保有しているなど、あり得るだろうか?

 

[“ヒフミ、随分とここの情報に詳しいんだね…”]

 

流石の先生もこれには苦笑いだ。

 

「えっ?そうでしょうか?危険な場所なので、事前調査をしっかりしていたからでしょうか?」

 

本当にそれだけだろうか?

何か惚けているのか?

私には伺い知ることは出来ない。

 

「…よし、決めたー。ヒフミちゃん、君を助けたお礼に、私たちの仕事を一緒に手伝ってもらおうかな〜」

 

ホシノはそう言って私に目配せする。

この土壇場で中々、無茶な要求をしてくる人だ。

 

だが、阿慈谷は腕っぷしは立たなそうだが、情報源としては利用価値がある。

上手く使えるかもしれない。

 

「えっ!?えぇえっ!?」

 

引き攣った笑みから、驚愕の表情へ。

阿慈谷は見ていて飽きない。

 

「わぁ☆それは良いアイディアですね〜!」

 

「なるほど、共犯だね」

 

「共犯ん〜!?」

 

シロコの悪ノリに、阿慈谷は飛び出るほど大きく目を見開く。

 

「別に私たちがやるのは犯罪じゃないでしょ!?」

 

セリカは相変わらずツッコミ担当だ。

 

「あら!あんなところにたい焼き屋さんがありますね!ヒフミさん、如何ですか?」

 

進む最中、進行方向にたい焼き屋の屋台を見付けたノノミが阿慈谷に勧める。

 

「えっ!?なんで急にたい焼き!?」

 

なるほど、食べ物を奢って断れなくする作戦か。

それにしても強引な気はするが。

 

「本当だ。あれは美味しそうなたい焼き。ね、ヒフミ」

 

シロコがほぼ無表情な顔を近付け、圧を掛ける。

 

「えぇっ!?ふえぇっ!?」

 

これには阿慈谷も涙目だ。

 

「こんなところにたい焼き屋さんがあるなんてねー。ヒフミちゃん、食べるでしょ?」

 

ホシノにも笑顔で詰め寄られ、最早、阿慈谷は白目を剥いてしまっている。

 

「ちょっと先輩!ヒフミさん困ってるでしょ!」

 

さすがのセリカも割って入り、ヒフミを救出する。

 

[“み、みんな、その辺にしてあげて…”]

 

「冗談はさておき、たい焼き買ってきますね〜」

 

たい焼きは買うんだ。

 

「ん、仕事前の景気付けってことで」

 

ノノミが全員分のたい焼きを買って来たところで、その匂いに釣られてか我に返る。

 

「はっ!?あ、そうだ!それで、皆さんは何をしにここに?仕事とは?」

 

復活したかと思えば、起きて早々に阿慈谷は私たちの目的を訊ねて来た。

 

先程と同じく、一同の視線が私に集まる。

 

「…阿慈谷、今更だけど、この話を聞いたら、もう後戻りは出来ない。引き返すなら今の内だよ。今なら、まだ辛うじて退路がある。それでも聞く?」

 

私は最大限、声を低くして、阿慈谷に警告する。

 

それに対して、阿慈谷は困惑し、頭を抱えるが、決意を固めたように顔を上げ、未だ怯えが浮かぶ表情ながらも私の目を見て口を開く。

 

「…それでも、私はアビドスの皆さんに助けてもらいました!私なんかが役に立てるか分かりませんが、私に出来ることで、お手伝いさせてください!このまま何もせずに帰るなんてこと、私には出来ません!お願いしますっ!それから、イヴさん!私のことはヒフミと呼んでください!」

 

そう言って、阿慈谷──改めヒフミは頭を下げる。

 

どうやら、覚悟は決まったらしい。

 

「…頭を上げて、ヒフミ。分かった。それなら話そう。私たちの仕事について。私たちが、このブラックマーケットで何を為そうとしているのか──」

 

ヒフミは、今まで以上の緊張した面持ちで喉を鳴らした。

 

そして、私はヒフミに話した。

 

闇銀行を襲撃し、制圧するという依頼を受けたことを──。




阿慈谷ヒフミは断れない→阿慈谷ヒフミは断らない

思いがけない新たな協力者──仲間が加わり、いよいよ、闇銀行襲撃に臨みます

アビドス対策委員会、先生、レイヴン、そこに便利屋68とファウ──ヒフミが加わり、もうこれで成功しないはずがありませんね!

勝ったな、ガハハ!
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