ブラックマーケット編もフラグ乱立中…
アビドス及び先生、レイヴンは、果たしてこの依頼をやり遂げることが出来るのか!?
さて翌日。
私と先生は、アビドス対策委員会と共に、ブラックマーケットに訪れた。
ただし、アヤネは後方支援兼オペレーターとして、学校に残っている。
この場にはアヤネのドローンが来ており、そのカメラの映像を介して、状況を確認している。
便利屋はこの場にはいない。
今朝、ギリギリの段階で、簡潔に依頼参加の意思を確認し、現地集合と相なった。
「ここがブラックマーケット…」
セリカが辺りを見渡しながら、感慨深そうに呟く。
「すごい賑わってますねぇ〜☆」
ブラックマーケットらしく、周囲では露天商が銃を販売していたり、不良生徒が溜まり場にしていたり、アビドス自治区やD.U.区内ではあまり見られない光景が広がっている。
[“D.U.の近くに、こんな場所があったなんてね…”]
「連邦生徒会の手が届かないエリアで、これだけの裏社会が広がってたなんて…」
一応、私も昨日、便利屋に訪問するに当たって、付近には来ていたが、中に入るのは初めてだ。
市場というからには、もっとひっそりと展開しているものだと思ったが、規模で言うと一つの街に匹敵する。
「…あはは、私たちはアビドス学区内にばっかいるからねぇ〜」
殺伐とした雰囲気を漂わせながらも、そこには確かに活気があった。
「先輩、ここに来たことあるの?」
「んにゃあ、おじさんも初めてだよぉ〜」
襲撃前とは思えない、緊張感の無い会話だが、彼女ららしい光景ではある。
と、闇銀行に向かって歩いていると、突然、銃声が響き渡る。
「銃声だ」
シロコがいち早く反応する。
「うわ〜ん!着いて来ないでくださぁ〜い!!」
誰かが、不良生徒に追い掛けられ、こちらに向かって走って来る。
「はわわっ!?そっ、そこ退いてください〜」
アビドスとは違う、煌びやかな制服を身に付けた、鮮やかなクリーム色のお下げの少女だった。
[“生徒が追い掛けられてる!”]
仕事の前に、あまり目立つのは良くない。
何処で誰が見ているか分からず、足が付く可能性があるからだ。
放っておくのが吉なのだが──。
「大丈夫?」
走って来た少女をシロコが優しく抱き止める。
「はへっ!?あ、あの、えっと!ごごごっ、ごめんなさいっ!?」
「大丈夫じゃなさそうだね。追われてるみたいだし」
そこへ、少女を追いかけていた不良生徒たちが追い付く。
「何だ?お前らは!どけ!あたしらはスケバンだぞ!!」
「あたしらはその《トリニティ》の生徒に用がある。痛い目見たくなけりゃ、大人しく渡しな」
《トリニティ》──《トリニティ総合学園》か。
数千の学園都市からなるキヴォトスに於いても、《ゲヘナ》と並んで最大規模の学園と称されるお嬢様学校の生徒が、何故こんな場所に。
当の本人は、シロコの腕の中で縮こまっている。
「はぅう〜…わたしの方は特に用は無いんですけど…」
シロコが解放すると、その影に隠れてしまう。
まるで小動物のような生徒だ。
だが、こんな場所に居る以上、只者では無いはずだ。
『トリニティ!?キヴォトスいちのマンモス校の一つ、トリニティ総合学園!確かに、制服も資料と合致します!』
インカムからのアヤネの説明で、彼女が本当にトリニティ生徒であることが証明された。
「そういうこった!そして、トリニティと言えばお嬢様学校!だから拉致って身代金をたんまり貰おうって寸法よっ!」
・・・発想は悪くないが、計画内容があまりにも杜撰すぎる。
拘束の段階で対象に認知され、逃げられ、騒ぎになっている時点で、もう失敗しているも同然だ。
それを覆すには、相応の戦闘能力が無ければ──いや、今はこんな事に思考を割いている場合ではない。
「拉致って交渉!なかなかの財テクだろぉ?」
「どうだ?お前らも興味があるなら計画に乗るか?身代金の分け前は──」
[“君たち!拉致なんてものをやっちゃ──”]
先生が何か説得を試みようとしたが、それより早く私は一気に距離を詰め、不良三人をまとめて蹴り飛ばす。
不良三人は、それぞれ真ん中左右斜め方向に、放射状に分かれるように飛んで行き、地面を跳ねて壁にぶつかった。
[“…遅かったか…”]
先生がガックリと項垂れる。
「……」
唖然とした表情で固まった少女。
「今はこんな連中に構ってる暇はない。進もう」
まだ作戦開始時間には余裕があるが、早めに到着しておくに越した事はない。
「うっわ。容赦無いわね、アンタ…」
セリカが呆れた表情を見せているが、今更だろう。
「悪人は懲らしめないと、ですからね☆」
「ん、イヴ、ナイス」
ノノミとシロコが私にサムズアップを向ける。
私もそれに適当に返す。
「…はっ!?あっ、あのっ!えっと、ひとまず、助けてくれてありがとうございました!」
トリニティ生徒の少女は、勢いよく頭を下げる。
[“何か起こる前に助けられて良かったよ”]
「はい…皆さんが居なかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした…」
頭を上げた少女は、引き攣った笑みを浮かべていた。
それはまるで、何かやましいものを隠しているかのように。
「私…こっそり抜け出して来たので、何か問題を起こしたら……あうぅ…想像しただけでも…」
この間だけで、少女は明後日の方向に眼を逸らし、かと思えば、頬を両手で挟んで青ざめ、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
これが百面相というものだろうか。
どうやら彼女はかなり表情豊かな少女のようだ。
「それで、えーっと、君はー…」
「あっ、紹介が遅れてしまい申し訳ありませんっ!私、《
「ヒフミちゃんかぁ。えーっと、それでどうしてヒフミちゃんみたいなトリニティのお嬢様がこんな危ない場所に居るの?」
ホシノの指摘は最もだ。
だが、今はそんなことをしている場合ではない。
「ホシノ。今は──」
「まぁまぁ、イヴちゃん。ちょっとここはおじさんに任せなって」
ホシノが私に片目を瞑って促す。
私は、小さく溜め息を吐きつつも、身を引くことにした。
ホシノなりに何か考えがあっての事か。
かく言う私自身も、仕事を優先したいだけであって、トリニティの生徒が何故この場所に居るのか、その理由は気になる。
「それで?」
改めて、ホシノは阿慈谷に先程の答えを求める。
「あ、あはは…えっと、それはですね…実は、探し物がありまして…もう販売されていないので買うことが出来ないものなのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしく…」
もう販売されていない、表の流通では買う事が出来ないもの…。
つまり、何かしらの理由で規制され、裏にだけ出回っているような曰くのある物品を求めて来た、と。
しかも、それをトリニティの生徒が。
ただならぬ気配を感じ、私は生唾を飲み込む。
「それって…もしかして戦車とか?」
「もしくは違法な火器とか…」
「化学兵器とかですか?」
何故か、シロコとホシノ、ノノミが眼を輝かせて阿慈谷に詰め寄る。
最近知ったが、これは悪ノリというやつだ。
「へ?──…えっ!?い、いいえ!?違います!えと、《ペロロ》様の限定グッズなんです」
三人が発した物騒なラインナップを前に、阿慈谷は一瞬、真顔になる。
私もシロコたち程、極端ではないがそういった方向性だと思っていたので、思いがけない阿慈谷の発言に一瞬、思考がフリーズする。
「ペロロ?」
「“様”です!“様”を付けてくださいっ!」
首を傾げるセリカの発言に、速攻で阿慈谷が訂正を入れる。
「限定グッズ?」
シロコも疑問を浮かべている様子だ。
「はい!これです!」
そう言って阿慈谷は満面の笑顔で携帯端末の画面を見せる。
そこに映っていたのは──なんと言うべきか…。
ニワトリのような白い鳥のマスコットキャラクター。
パーツ単位で見れば、デフォルメされていて確かに可愛いと思うのだが、それらが合わさる事で、名状し難い、不快感を催す異形の存在と化している。
それが、鮮やかな青色のチョコミントアイスを口にぶち込まれているような、独特で先鋭的かつ奇抜なデザインをしていた。
「ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!」
それを目にした私は、ペロロ──いや、“ペロロ様”と目が合った、その瞬間、私は何かを受け取った、否、交信した。
「限定生産で100体しか作られていない希少グッズなんですよ!ね?可愛いでしょう?」
先生、シロコ、セリカ、ホシノは引き攣った笑みを浮かべている。
「わあ☆《モモフレンズ》ですね!私も大好きです!ペロロちゃん可愛いですよねぇ。私はミスター・ニコライが好きなんです」
阿慈谷に共感を得たのはノノミだった。
「分かります!ニコライさんも哲学的なところがカッコ良くて!最近出たニコライさんの本、《善悪の彼方》も買いましたよ!初版で!」
二人はワイワイキャッキャとペロロ様──モモフレンズの話題で盛り上がっていた。
「いやぁ〜何の話だか、おじさんにはサッパリだなぁ〜。ね?イヴちゃん?」
「──…かわいい…」
私が無意識の内に呟き、それを聞いた取り残されていた四人は、仰天の表情を見せるのだった。
ファウ──ヒフミがついに登場!
やっぱりヒフミ可愛いです
書いてて楽しい
そしてレイヴンはどうやら大いなる意志と交信してしまい、啓蒙されてしまったようです
621、趣味は人それぞれだが、選んだ方がいい
ウォルターも心配しています