ブルーアーカイブ/灰の翼   作:空素(鴉ノ刃)

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あらすじ

受けるんじゃなかった、こんな依頼!

雇われ傭兵ちゃんズ、リタイア!!

彼女たちはきっと、レイヴンによって消えない傷を負ったことでしょう…

可哀想に…


EP-19 絆と後悔

一方、車に乗り、砂漠を進むアビドス対策委員会と先生御一行。

 

運転はアヤネが受け持ち、先生は状況を説明している。

 

[“セリカの居場所は、アビドス砂漠、カイザーPMCの前哨基地内だ”]

 

先生はタブレット端末で一帯のマップを表示し、その中の複雑な構造物が描かれた場所に、赤く明滅する光がある。

 

「カイザーPMC、ですか…?でもどうして…?」

 

ノノミが困惑して首を傾げる。

 

ホシノは暗い顔で俯いている。

それはどこか事情を知ってるような表情にも見えるが、この場の誰もその事には気付かない。

 

「この前のイヴたちの襲撃も、今回の便利屋の襲撃も、もしかするとカイザーからの依頼だったのかも」

 

シロコが考え込んだ末に、一つの予測を導き出す。

 

[“可能性はあるね。というか、私が聞き出しておくべきだったんだろうけど…”]

 

この二日間、イヴはシャーレに居たが、纏まった時間が取れず、中々、話し合うことが出来なかった。

 

「いやぁ〜、多分イヴちゃんは話さないんじゃないかなぁ〜」

 

そこに助け船を出したのはホシノ。

 

「ん、ホシノ先輩と同意見。イヴは雇い主の情報は明かさないと思う。それが例え、悪徳企業だったとしても」

 

シロコの意見に、実際に目の当たりにした皆は納得する。

 

「その当のイヴさんは一人で残って大丈夫でしょうか…?」

 

話を聞きながらも、目的地へ向かって運転していたアヤネが不安を溢す。

 

「イヴちゃんが強いことは分かってますけど、便利屋の皆さんも強かったですからね…」

 

皆が押し黙り、車内に沈黙が流れる。

 

「大丈夫。イヴなら、きっと勝つはず。だってイヴは、私の戦友だから」

 

そう言ってシロコは、まるで自分の事のように自信あり気に窓の外へと顔を向ける。

 

「戦友かぁ〜、青春だねぇ〜。おじさんにはちょっと眩し過ぎるかな〜」

 

「戦友は青春に含まれるんですかね…?」

 

[“あはは…あんまりそう言うイメージは無かったね…”]

 

「わぁ〜☆なんだかマンガやアニメみたいで素敵ですね〜♡」

 

「イヴは大丈夫。私たちはセリカの元に急ごう」

 

****************************

 

戦意を喪失した傭兵が居なくなり、私の前には便利屋だけが残された。

 

さて、連中はここからどう動く?

 

ここで逃げるなら良し。

私の目標は便利屋の足止めだ。

 

全滅させても良いが、諦めて逃げ帰ってくれるならそれはそれで手間が省ける。

と、そこで、周囲を舞う大ガラスが耳元で囁く。

 

戦え、潰せ、徹底的に蹂躙せよ、と。

 

そして、それとは別に、すぐ横に寄り添うのは機械仕掛けの犬。

 

コイツはカラスと違って好戦的ではなく、あくまでも目標の遂行を優先する。

 

その上で、邪魔立てする者には容赦はするな、と。

 

似ているようで、相反する二匹の言葉に、私は板挟みになる。

 

「まだよ…」

 

陸八魔がゆっくりと立ち上がる。

 

「ふふ…傭兵なんて所詮は駒よ…ええ…!あいつらなんか居なくたって、私たちで依頼を遂行すれば良いだけよ!私たちなら出来る!そうでしょ!?」

 

震えながら、今にも泣きそうな表情で、陸八魔は僅かに残る戦意の灯火を燃え上がらせる。

 

「私たちは便利屋68!金さえ貰えれば何でもするアウトロー!この程度の苦境で折れて溜まるもんですか!!」

 

正直、半ば心が折れかけている相手を叩き潰すのは忍びないが、既にカラスも猟犬も、臨戦体勢に移行している。

向かって来るならば、叩きのめすだけだ。

 

私たちには時間がない。

セリカの行方不明、そして、便利屋の襲撃は繋がっているはずだ。

裏で糸を引いているのは、カイザーPMCだろう。

恐らく、ヘルメット団への依頼が失敗した事で、便利屋にお鉢が回ったのだろう。

セリカの誘拐は、より成功率を上げる為の強硬策といったところか。

 

そして、カイザーPMCが相手とならば、今セリカ救出へと向かっているシロコ達も危ない。

早々に決着を付け、合流する必要がある。

 

その為には、速攻でコイツらを叩き潰す。

 

歯車を回すようなイメージで、指先から爪先、頭の上の耳の先端に至るまで、意識を高めていく。

 

「あー…社長、それは違うよ」

 

だが、奮起した陸八魔と違い、鬼方と浅黄は戦闘の意思が無さそうだった。

 

後ろの伊草だけは、ずっと後ろから呪詛を吐き続けており、陸八魔の指示でいつでも攻撃して来そうだが。

 

「ちょっとカヨコ課長!?ムツキ室長もなんでそんなやる気が無いの!?違うってどう言う事!?」

 

「アルちゃんは傭兵の子達のこと駒って言ってたけど、正しくは肉盾なんだよ?」

 

「へぇっ!?肉盾!?」

 

「わっ、私は皆さんの為なら幾らでも肉盾になってみせます!!」

 

私の後ろから伊草が前に飛び出し、主張する。

 

「ハルカ、そう言う事じゃないから。だからね、社長。今までは肉盾があったお陰で私たちは無事だったけど、今度は私たちが攻撃に晒されることになる」

 

「そっ、そんなの回避すれば──」

 

「社長、回避する自信、ホントにある?あんな人間離れした速度で飛んで来る攻撃、無傷で凌げる?」

 

「……」

 

陸八魔は鬼方からそっと視線を外した。

 

「だから、もう戦う前から私たちの負け、依頼失敗、テント生活に逆戻りって訳♪」

 

浅黄の決定的な発言を受け、陸八魔はまるで銃弾でも受けたかのように仰け反る。

 

「…なっ、なななーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんですってぇぇぇぇぇええええええええええええ!!?」

 

もう終わっただろうか。

 

便利屋の寸劇の間に、私の殺意はすっかり収まり、猟犬は再び眠りにつき、カラスは何処かへ行ってしまった。

 

「…もう邪魔しないなら行くけど、まだやる?」

 

白目を剥いて口半開きで地面に膝を突く陸八魔とそばのメンバーに近付く。

 

反応し、応対してくれたのは鬼方だった。

 

「ああ、もう良いよ。下らない茶番見せて悪かったね」

 

気を失っている陸八魔の頬を突っつく浅黄と涙目で名を叫ぶ伊草。

 

「ねぇ、最後に一つ良い?」

 

その光景を横目に、立ち去ろうとした私の背中に鬼方が訊ねる。

 

「セリカちゃん…とか言ったっけ。あの黒猫の女の子」

 

名前を知っている、と言うことは、何処かで面識があったのだろうか。

 

「…私たちが言えた義理じゃ無いんだろうけど、助けてあげてね」

 

面識があったのにも関わらず、それよりも依頼を優先した。

 

「…言われなくても。私からも一つ良いかな」

 

それは、人としては褒められたものではないだろう。

 

「何?」

 

しかし、例えどんな浅ましい理由であれーー。

 

「あなた達は、立派な傭兵(アウトロー)だよ」

 

それだけを言い残し、私はその場を後にした。

 

遠くから『黒猫ちゃんをよろしくねぇ〜』という浅黄の声が届き、軽く手を振って返し、私は対策委員会に合流すべく、駆け出すのだった。

 

****************************

 

セリカは、暗闇の中で目を覚ました。

 

違和感を感じ、その正体を探れば、それは口元を覆うテープ、後ろ手に拘束された両手、両足もまた、拘束されていた。

周囲に視線を向ければ、そこは暗く冷たく鉄と石の牢獄だった。

 

何故、自分はこのような場所に閉じ込められているのか。

 

記憶を探ると、それは柴関ラーメンのアルバイト終了後に遡る。

仕事を終え、帰路に着いたセリカは、ふと付き纏う気配を感じた。

 

振り払おうと入り組んだ道を進むが、その気配は徐々に多くなって行き、やがてそれはセリカの前に姿を現し、包囲する。

 

何者か訊ねるより先に襲撃され、抵抗虚しくセリカは銃撃と爆撃に晒され、気が付けばこの状況だった。

 

セリカはどうにかして拘束が外れないか、試してみるが、手足の拘束はビクともしない。

 

やがて、セリカはある結論に辿り着く。

 

即ち、自身の死。

 

この地の底の冷たい牢獄で、誰にも気付かれる事なく、知られる事なく、ひっそりと朽ち果てるのだと。

 

自身の運命に絶望する。

 

自然と涙が溢れる。

 

こんなことになるなら、もっとみんなと色んなことをすれば良かったと。

 

色んな場所へ行き、色んなものを食べ、色んな話をすれば良かったと。

 

先生とイヴ。

 

先生は親身に関わってくれて、偶にストーカーされたり、変なことを言う人だけど、もっと素直になれば良かった。

 

イヴは、学校を襲撃したヘルメット団の関係者ではあった。

けれど、最終的に謝ってくれたし、悪い人には思えなかった。

受け入れてあげれば良かった。

 

でも、どれももう、手遅れ。

 

全て、決して叶わない。

 

セリカは虚ろな表情で涙を流しながら、ただじっと冷たい床を見詰め続ける。

 

自身に終わりが訪れる、その時まで。




セリカちゃん大ピンチ!!

果たして彼女に救いは訪れるんでしょうか?

対策委員会と先生プラスレイヴンは彼女の救いとなるか!?
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