便利屋68推参!
ヘルメット団は犠牲になったのだ…
今回は説明回です
[“いやぁ、すごく似合ってるよ、イヴ!いや、《連邦生徒会所属 独立連邦捜査部S.C.H.A.L.E直属 特務戦闘員 コードネーム レイヴン》!!”]
私は今、先生の活動拠点である、シャーレの事務所にいた。
「肩書き長過ぎ…《シャーレ専属傭兵》で良い」
長ったらしい肩書きが増えた私の格好は、ヘルメット団のアジトで貰った黒を基調とした服装ではなく、同じく黒を基調としているものの堅苦しい制服の姿だった。
白の長髪を後ろで纏めているのは変わらず、黒を基調に、銀や赤と黒、またはそのグラデーションの差し色が入った模様や装飾が施されたロングコート。
コートの胸には、黒地に映えるように、翼を広げた白い鳥のエンブレム。
コートの下は白のYシャツを着ている。
下半身はパンツスタイルであり、これも同様に黒色。
膝から下は黒地に赤と黒の紐が映えるロングブーツという出立ちだ。
他にも、細かいところでは、手には指先に行くに連れて赤くなる黒の手袋なども装着している。
[“分かってないね、特務戦闘員 レイヴン。長いからこそ、そこにはロマンと言うものがあるんだよ。分かるかい?”]
[“それに、こう言うのは形から入るのが大事なんだよ!”]
昨日から先生はずっとこの調子で、流石に辟易する。
「形どころか外堀が埋まっちゃってるんだよ」
このような状況になった事の始まりは、昨日の夕方、先生が私に話し掛けて来たところまで遡る。
[“イヴ、ちょっと良いかな”]
[“さっきの傭兵になる、って話なんだけど”]
[“もし、君さえ良ければ、シャーレに所属してみるのはどうだろう?”]
「それは…先生のところに所属するって事だよね」
[“うん。そう言う事になるね”]
[“イヴがどうしても嫌なら無理強いはしないけど”]
「……」
[“さっきのヘルメット団の子のお願いもあるし”]
[“それに、シャーレに所属するからと言って、ずっと縛り付ける訳じゃない”]
[“私も傭兵事業に関して、詳しいことは分からないけど、知名度が大事だと思うんだ”]
[“名前が知られなければ、仕事も来ない。そんな印象なんだけど”]
先生の言う事もあながち間違いではない。
実際に経験として、ルビコンでは、密航したと言うのもあるが、傭兵業を営むにあたって、身分証明書兼ライセンスが必要だった。
あの時は時間的余裕が無く、また場所が場所だっただけに、死人からライセンスを拝借し、成り済ますことで、名を得て、知名度を上げて行った。
このキヴォトスに於いては、そんなことが出来るはずもなく、地道に地味な旨みの少ない仕事から熟して行き、名声を上げなければ、やって行かねば、傭兵業など営めないだろう。
加えて、今、私にはオペレーターと呼べる存在がいない。
ルビコンではウォルターやエアがオペレーターとなって企業からの依頼を探し、見付けて来てくれたが、キヴォトスの私が仕事を受けるとするなら、自らの足で探し回らねばならない。
それはとても非効率であり、とてもじゃないが現実的ではない。
[“シャーレなら、公的機関と言うのもあって、キヴォトス中の色んな人たちから様々なお願いや頼み事が届くんだ”]
[“私がここに居るのも、対策委員会のみんなからの頼み事を受けての事なんだ”]
なるほど。
それならば先に挙げた問題を完全にクリアできる。
シャーレを拠点にして、届いた依頼を受け、結果を出す。
シャーレをルビコンに於ける傭兵支援システム、《オールマインド》のようなものだと思えば何と言うことはない。
[“もちろん、無理強いはしないし、イヴが希望する依頼をやってもらおうと思うんだけど、どうかな?”]
「そんなこと言って〜。イヴちゃんに仕事手伝ってもらって、少しでも減らそうって腹づもりなんでしょ〜?」
ホシノが先生を揶揄うように口を挟む。
[“ソンナコトナイヨー”]
まあ、先生の目論見は兎も角、条件は悪くない。
好きな依頼を受けながら、自身の名声も上げられるのだ。
公的機関であるシャーレへの依頼というのもあって、騙すような危険な依頼もほとんど無いだろう。
完全に無い、と言い切れないのは、見ての通り、シャーレという機関は、幾ら連邦生徒会というキヴォトス全土に影響力を持つ有力組織の所属とは言え、他所の自治区にまで干渉することが出来るほどの権力を持っているということから、相手次第では良く思われないこともあるかもしれないからだ。
それどころか、連邦生徒会内部で煙たく思っている連中が居る可能性すら考えられる。
・・・あれ、もしかして地雷だろうか?
とは言え、他に選択肢も、解決策も無い。
「…分かった。先生、あなたの言う通りにしよう」
私は、先生の下に、シャーレに所属することを決意する。
あれだけ言って私から毒気を抜いた人間だ。
これほどのお人好しは中々居ない。
悪いようには扱われないだろう。
[“OK!じゃあ早速、連邦生徒会の担当者に連絡するね!”]
その後、私は対策委員会に別れを告げ、先生に連れられてアビドスを後にし、シャーレのオフィスがある、ビルが立ち並ぶ都市──D.U.区に訪れた。
その頃には、すっかり夜も更けていた。
ルビコンとは違う、光り輝く摩天楼に目を奪われながらも辿り着いた、シャーレのオフィスだと言うビルに足を踏み入れる。
一階に併設されているコンビニエンスストアで先生の奢りで軽い夕食を購入。
購入する際に、アルバイトでありながら唯一の店員である金髪の少女、《ソラ》に軽く自己紹介をした。
その後、事務所で夕食を取りながら、先生は私がシャーレで活動するにあたっての要望を聞いて来た。
全て叶えられるかは分からないが、取り敢えず聞いておきたいという事で、私は思い付く限りの要求を出す。
とは言っても、そんな埒外の無茶な要求を出すつもりも無く。
要求は、事前に先生が提示したものも含めて以下の通り。
一つ、基本的に、私は先生の仕事に干渉しない事。
これは、先生が事前に提示してくれた、連邦生徒会やシャーレに縛り付けないという宣言から来るものだ。
シャーレ自体が連邦生徒会所属ではあるが、独立した機関であり、私もまた、そこから更に独立した要員である事を示すものでもある。
これにより、私の自由な活動が保証される。
一つ、基本的に、私は依頼の達成を業務として活動する事。
これは、私はシャーレに届いた依頼解決専門の要員だと言うことを示すものだ。
傭兵は傭兵らしく、依頼を受け、仕事を熟し、報酬を受け取る。
一つ、給料は依頼達成時の報酬金及び出来高歩合制とする事。
これは、依頼者からの達成時の報酬と、シャーレに届いた依頼をどれだけ消化し、貢献したかとして得られる報酬以外は受け取らないという意思を示すものだ。
これは私なりのケジメだ。
傭兵であるからには、依頼以外の金は受け取らない。
出来高歩合制についても、届いた依頼の解決を“シャーレからの依頼”として報酬を貰うと言った風に解釈してのものだ。
一つ、私が受領した依頼に関しては、全責任を私に一任する事。
これは、先生が私の不始末等で巻き込まれないようにする為だ。
シャーレに届く依頼と言っても、その全てが互いに衝突し合わないという保証は無い。
要は、敵対する組織からの依頼が重なる可能性も考えられる。
その際、片方の組織に協力し、もう片方の組織と私が敵対した結果、シャーレが報復されないようにと考えての事だ。
それでも、万が一を考えて、何か対策を練っておく必要があるだろう。
取り敢えず、大まかな取り決めは以上の四つ。
後は、連邦生徒会にこれを提案し承認を貰うだけだ。
だが、先生は、自身の権限を使ってでも、絶対に四つの取り決めは認めさせると息巻く。
[“さて、それじゃあ次は制服だね!何か希望とかはあるかな!?”]
そして、先生は突如としてイキイキと目を輝かせ始める。
私は、特に無いが、露出少なめで動きやすい格好だと助かる、と要望を出す。
[“了解!それならやっぱりロングコートとかが良いかな!あ!ブーツはマストだよね!やっぱりコスチュームは夢が広がるなぁ!!”]
[“コンセプトは、そうだな…裏の連邦生徒会という感じで、連邦生徒会の制服の色を反転させた感じで行こう!”]
その後の先生は、まるで何かに取り憑かれたかのように、不気味な表情を浮かべ、笑いながらデスクへと向かい続けた。
先生の奇声が気になってあまり眠れなかったので、銃のメンテナンスなどをして、仮眠を取りながら夜を過ごした。
そして、夜が明け、今に至る。
肩書きも、制服も、連邦生徒会の担当者が一晩で熟してくれたそうだ。
その人には頭が上がらない。
何かの縁で近くに寄った時にでも顔を出して感謝を伝えよう。
[“さすが我らが《リン》ちゃん!頼りになるぅ〜!!”]
先生は徹夜も重なって様子がおかしい状態になっていた。
先生も言っていますが、長い肩書きはロマンだと思うんです
シャーレ専属傭兵になるにあたっての取り決めなど色々、長々と書き綴り、説明しましたが、メタ的に簡単に要約すると、いつも通りの独立傭兵レイヴンだよ!と言うのを言いたかったのです
シャーレで依頼を受け、仕事をこなし、報酬を受け取る
専属オペレーターは未だ居ませんが、環境はおおよそ整っていますよ、という報告です
何なら、ルビコンでは依頼の報酬だけが給料でしたが、シャーレではブルアカゲームのミッションよろしく、達成した依頼数に応じてシャーレから報酬金が出るシステムとなっています