絶望的蹂躙
シロコ覚醒フラグ
カタカタヘルメット団VSアビドス対策委員会戦はこれにて決着です
重なる。
シロコの姿が、想いが、かつて共に並び立ち、最終的に銃口を向けた戦友と。
彼もまた、自身の故郷を守る為に、私の前に立ちはだかった。
彼の力は、ギリギリで私には届くことはなく、力尽きた。
砂狼シロコ。
あなたはどうだ。
[“みんなっ!!”]
そこで現れたのは、パッとしないスーツ姿の男性。
声からして、どうやら彼が、彼女たちが“先生”と呼ぶ、人間のようだ。
対策委員がやられて行くのを見て、居ても立っても居られなくなったのだろう。
[“すまない…!みんながやられて行くのに私は、見ている事しか…”]
「ん、仕方ない。この人強いから。でも、もう大丈夫」
砂狼は私から視線を外し、“先生”に微笑みかける。
「“先生”が来てくれたから。“先生”の力があれば百人力!」
[“…うん!一緒に戦おう!!”]
「私もサポートなら任せて下さい!」
その会話に、奥空が加わる。
「それと、倒れた人を助けるのは私に任せてください!」
「ん、お願い、アヤネ」
改めて、砂狼が向き直る。
[“よし!それじゃあ行こうか!シロコ!!”]
「レイヴン、私はあなたに勝つ!!」
その光景は、今の私にはとても眩しくて。
「…砂狼シロコ」
もう、決して戻れない過去を追想する。
「…?何?」
“先生”と生徒たちの関係が、かつての私とウォルターのようで。
「…いや、何でもない。さぁ、始めようか」
“先生”が励まし、労い、生徒がその期待に答えようと奮闘する。
その関わり合いが、正直、心の底から羨ましい。
私が失った──手放したものを持っている彼女たちが、とても妬ましい。
私は地面を蹴って砂狼へと突進する。
[“シロコ!前だ!!”]
“先生”が指示を出し、その通りに砂狼が動く。
砂狼は私と同じように向かって来る。
そして、私は砂狼へと蹴りを放つが、彼女はそれをスライディングで潜り抜ける。
[“シロコ!ナイス!”]
「私も段々と慣れて来た!」
「躱してばかりじゃ私は倒せないよ」
蹴りの下を潜り抜けた砂狼へと、振り向き様にSGの弾丸をばら撒く。
しかし、砂狼は華麗な宙返りで散弾を躱し、不敵に笑った。
それと同時に、背後にドローンが現れ、間髪入れずに爆撃する。
舌打ちし、こちらに着弾するより先に、虎の子の手榴弾で相殺する。
その直後、背後から砂狼が迫って来ているのを感じる。
素早く振り向けば、砂狼は両手のARの銃口をこちらに向け、突進して来ていた。
間を置かず、引き金が引かれ、弾丸が殺到する。
ARの射撃範囲は、散弾と比べて狭い。
上半身狙いであれば、タイミングが合えばしゃがむことで簡単に回避できる。
しゃがみ込んだ体勢から地面を蹴り、姿勢を低くしたまま、砂狼へと突っ込む。
砂狼は距離を取るように飛び退くが、私は尚も食い下がり、追随する。
…先程からおかしい。
どうしても砂狼を捉えられない。
砂狼の動きは変わっていないように思える。
けれど、私の攻撃、行動の悉くが読まれているかのように失敗する。
今もそうだ、私の足元にはいつの間にかピンが抜かれた手榴弾が転がっている。
ピンの行方は、砂狼の指。
飛び退くと同時に、落としたのだろう。
私は咄嗟に砂狼の方向へと蹴り飛ばす。
手榴弾は私と砂狼の中間で爆発した。
爆風に煽られる中、私はずっと抱いていた疑問を口にする。
「“先生”…あなたは一体、何者だ?」
全ての違和感は、“先生”がこの場に現れてからだ。
“先生”が現れてから、歯車が噛み合わないように不調だ。
すると、先生はシャツの中から首にぶら下げたカードを見せる。
[“私は、連邦生徒会所属、独立連邦捜査部《S.C.H.A.L.E》の『先生』だよ”]
「連邦生徒会…独立連邦捜査部…?」
[“うん、《シャーレ》”]
[“ここ、アビドスには、対策委員会のみんなから依頼というかお願いを受けて、やって来たんだ”]
「…それなら、何故あなたは彼女たちと共に戦っている?無関係の外部の人間なんだろう?」
[“無関係なんかじゃないよ。私は先生で、彼女たちは一人一人が大事な生徒”]
[“生徒が困っているなら、大人として、放って置く事は出来ないよ”]
「…なら、私はあなたにとって大事な生徒を傷付ける存在という訳か」
[“違うよ”]
[“君も、私にとって、大事な生徒の一人だよ。レイヴン”]
「今更、何を言ってるんだ?見ていたんだろう?ずっと。私がアビドスの生徒を叩きのめして行く様子を。それを見ても、私が生徒だと?」
[“うん。何度、君が否定しようと、私は肯定し続ける”]
[“この世界にはたくさんの人が暮らしてる。その中で、衝突や争いが起きるのは仕方がないこと”]
[“大事なのは、例え一度はぶつかり合っても、相手を理解し、受け入れることだと思うよ”]
[“レイヴンも、まだまだ、やり直せる”]
「…やり直すことなんて出来ない。私は、多くの人々を傷付け、殺し、大事なものを奪った。私の手は、もう血に塗れ、穢れている…私は、大罪人なのだから…」
[“…”]
[“それなら、今度は奪った分だけ、多くの人々を救えば良い”]
[“困っている人を助ければ良い”]
「…私が、人を救う…?」
[“君が背負っている罪は、きっと逃れることは出来ないし、私が一緒に背負ってあげることも出来ない”]
[“けど、その罪を償おうとする君を手伝うことはできる”]
「私の、手伝い…?」
[“シャーレはいつでも困った生徒の助けになるよ”]
[“きっと、君にしか出来ないことがあるはずだ。そして、それがレイヴンの生きる『意味』に繋がるかもしれない”]
「…」
これは敵わない。
清々しいまでに、まるで無邪気な子供が描いたような理想。
それを大の大人が平然と言ってのける。
いや、寧ろ、大人だからこそ、なのだろうか。
私は、毒気が抜かれたような気分だった。
これが、先生。
私は一瞬だけ目を閉じ、思考を巡らせ、改めて、砂狼と向き合う。
砂狼は、自身の銃と仲間の銃、二つを握り、身構える。
「決着を付けよう。砂狼」
「ん、望むところ」
[“あれ!?”]
[“今の流れは和解する流れじゃないの!?”]
勝敗は決した。
私たちの仕事は失敗だ。
私の心は、もう敗北を認めている。
このまま彼らから、力を振り翳して勝利をもぎ取り、依頼を果たせたとしても、その瞬間、私は代償として、何か大切なものを失うような気がした。
人間として大切な意志のような、言い換えるなら、そう──“人間性”とでも言うべき、人としての矜持。
それを捨てるくらいならば、私が人として居られるならば、甘んじて敗北を受け入れよう。
「それはそれ。これはこれ、だ」
「ん、寧ろ、この流れは順当。和解するからこそ、決着を付けるべき」
「安心してくれ、先生。この戦いは、私たちの負けだ。今からの戦いで仮に勝ったとして、その事実を歪めるつもりはない」
[“それならわざわざ戦わなくても…”]
「先生、それはダメ。決着はキチンと付けるべき。このままじゃ消化不良」
「そう言う事だ。行くぞ!砂狼!!」
私は地面を蹴り、滑空するように突進する。
それと同時に、ARとSGを斉射する。
砂狼は、銃撃に晒されながらも、二丁のARで私を迎撃する。
私の銃撃が、砂狼の頬や手足を傷付けるが、それを意にも介さず、距離を詰めて来る。
私は砂狼へと突進の勢いを乗せた蹴りを繰り出すが、砂狼は上空へと跳躍し、私の上を取ると、二丁のARを斉射する。
「より高く飛ぶのは、私!!」
先生の影響もあるのだろうが、それだけでなく、砂狼自身も、この戦いの中で成長しつつある。
砂狼は、私の好敵手になり得る逸材だと確信する。
今はまだ荒削りだが、今後の活躍次第では、類稀なる強者として、覚醒する可能性を秘めている。
上空からの砂狼の銃撃をステップで範囲外に逃れるように回避し、砂狼が着地したのと同時に、再び距離を詰めるべく、疾走する。
だが、その背後から、音が届く。
振り返るまでもなく、砂狼の爆撃ドローンだ。
私はそれを利用させて貰うことにした。
地面を踏み締め、角度、方向、力加減を見定め、後方宙返りで舞い上がる。
その直後、私が立っていた場所にドローンから爆撃による爆炎が発生した。
爆撃を終えたドローンの上にまで飛び上がった私は、空中で姿勢を正し、ちょうど足元にあるドローンを砂狼へと蹴り飛ばす。
ブーストされた脚力によって蹴り飛ばされたドローンは、黒煙と火花を散らしながら砂狼へと迫る。
だが、砂狼はドローンに手榴弾を投げ付け、直撃する前に空中で爆散させる。
攻撃は失敗に終わったが、これでドローン爆撃という攻撃手段の幅を狭めるという結果を齎す。
「ん…私の大事なドローンだったのに。私が勝ったら弁償して貰う」
不満そうに砂狼は頬を膨らませ、空中の私を睨む。
「勝てなくても弁償するよ」
そう返しながら、私は着地する。
そして、即座に地面を蹴る。
砂狼もほぼ同時に駆け出していた。
互いに相手へと突進しながら、銃撃を躱す。
私と砂狼は互いに傷を増やして行く。
肉薄するような距離になった頃には、互いに弾薬を打ち尽くし、銃床による近接攻撃を振るう。
私の右手の銃床が砂狼の頬に、砂狼の右手の銃床が私の頬に直撃したのはほぼ同時だった。
互いに意識が飛ぶようなダメージによってよろめき、その手から銃が落ちる。
だが、私も砂狼も、意識を繋ぎ止め、向き合いながら獰猛な笑みを浮かべる。
「おおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「はあぁぁぁぁぁああああああああああああっ!!!」
最後は、泥臭い殴り合い。
互いの右手の拳が、相手の頬に打ち込まれ、何とか堪え、睨み合う。
だが、突如、糸が切れたように私と砂狼は、まるで示し合わせたかのようにその場に座り込んだ。
「…やっぱり、強いね…勝てる気がしないや…」
肩で息をしながら、砂狼は小さく溢す。
「そっちこそ…ここまで戦いの中で成長して来るとは思わなかった…」
今なら素直に認められる。
砂狼シロコ。
彼女は強い。
力や技ではない。
精神や心の在り方とでも言うべきものの強さ。
きっと、私が得られない強さを彼女は持っている。
「でも、このままじゃ決着付かないよね」
砂狼が何か思い付いたように意味深な発言をする。
彼女の言う事は最もだが、これ以上はもう体が動きそうにない。
すると、砂狼は私の右手を手に取り、胸の前まで持ち上げる。
そして、私の右手に何かを握らせ、両手で包む。
それは拳大の黒く武骨なーー。
私の顔から血の気が引くのを感じた。
青ざめるとは、この事だろう。
「取り敢えず、今回の戦いは引き分けってことで」
砂狼は、満足気に、見惚れてしまいそうな笑みを浮かべる。
そして、私と砂狼は仲良く、互いの手の中の手榴弾の爆発に包まれた。
アビドススナオオカミVSルビコニアンデスレイヴン
これにて決着です
先生の扱いが難しいですね…
原作ではどんな状況、相手でも、生徒を統率し、指揮する先生ですが、状況把握が追い付かないような目まぐるしい高速戦闘の中では、指示が追い付かないとして、取り敢えずこのような形に落とし込んだ結果となります
幾ら先生でも、初見は様子見から始めると思うんですよね
それで原作では、生徒も耐久力は高いですから、先生が状況把握して指示を出すまで持ち堪え、この後、反撃すると言った流れになると思うんですが、レイヴンにはそれを根底から覆して頂きました
とは言え、先生も今回のレイヴン戦で自身の欠点に気が付いたでしょうし、同じ轍を踏まないようにどうにかするんじゃないですかね
それではまた次回!!