ウチのカタカタヘルメット団はただではやられへんでぇ!!
えー、カタカタヘルメット団の活躍、ご期待ください
カタカタヘルメット団の車両に乗せられたまま、私はその揺れに身を委ねていた。
赤ヘルメットのリーダーに、私をどうするつもりなのかを訊ねた。
返答によっては、この場で暴動も辞さない覚悟だったが、リーダーは逆に心配そうに行く当てがあるのかを聞いてきた。
私にそんなものがあるはずもなく推し黙ると、それならばと、カタカタヘルメット団に入るように促して来た。
所属するつもりは無くても、少しの間、このキヴォトスがどんな場所なのかを理解するまで、何処か行き場所が決まるまで団に置いてやる、それがお前さんを拾った自分の責任だと言ってきた。
どうするべきか悩むが、その瞬間の彼女からはどこか《カーラ》のような面倒見の良さを感じた。
まだ油断は出来ない。
だが、取り敢えずは彼女の元に身を置いても良いのではないかと思えた。
ひとまずは三日。
三日、ヘルメット団で過ごしてみて決めると私は告げる。
一週間でも一ヶ月でも良いと言われたが、それはまたその時に考えるということで保留となった。
車に揺られて運ばれる中、私は窓の外を眺めていると、リーダー以外のメンバーに声を掛けられた。
それまでもガヤの賑やかし程度には騒がしかったが、質問攻めにして来る様は、うるさく思いながらも、彼女たちの人の良さのようなものが感じられた。
それはかつて、ルビコンにおいて、時に協働し、時に対立した、企業《ベイラム》の傭兵部隊、《レッドガン》を彷彿とさせた。
だが、彼女たちの質問に、私はほとんど答えることが出来なかった。
具合を心配するような当たり障りの無い質問は兎も角、どうしてあの場所に倒れていたのか、や、何処から来たのか、などは、私自身も分からない。
答えることが出来ない。
やがて、病み上がりの私を気遣ってリーダーがメンバーを退かせたが、その時にリーダーはある結論を話す。
「もしかしたら、お前さんはキヴォトスの外からやって来たのかもな。外の世界の人間に、何でキヴォトスの人間の特徴が現れているのかは分からんが」
それに対して私は、不器用な愛想笑いしか返す事が出来なかった。
そうこうしている内に、私を乗せた車両は、とある廃墟に辿り着く。
廃墟と言っても、周囲には無数に天幕が張られ、秘密基地、或いはアジトという言葉がしっくりくるような外観だ。
適当な場所で止まった車から降りる。
自分でも意外な程、自然に私は地面の上に立つことが出来た。
全身の激痛が無ければ、荒野の時にも立ち上がることはできたのかもしれないが、今となっては詮無きことだ。
私が降りると、リーダーが思い出したように振り返る。
「あ、そう言えばお前さん、名前は?」
聞かれて、私は言葉に詰まる。
どう答えるべきか。
何と答えるべきか。
迷っていると。
「あー、もしかして名前も分かんない感じか?うーむ、それならあたしが名付けてやろうか?」
「えー?リーダー名付けなんて出来るんスかぁ〜?」
「ダメっすよリーダー。こんな可愛い子にサンタナとか付けちゃあ」
「お前らはあたしを何だと思ってんだー!!」
そんなやり取りを眺めていると、私は自然と口を開いていた。
「…《レイヴン》。今は、そう呼んで欲しい…」
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「はい!という訳で、一時的なメンバーの《レイヴン》でーす!!みんな、仲良くするよーにっ!!」
という訳で私は今、カタカタヘルメット団のメンバーの前で大々的に紹介されていた。
「リーダー…ついに他校から誘拐を…!?」
「違うわ!!」
全員、黒い制服に黒いヘルメットの少女ばかりだった。
リーダーだけ赤い制服だが、違う学校の生徒なのだろうか?
それとも、団としての規格が黒に統一されているのか。
そして、先程までは車に乗っていたから気付かなかったが、全員が火器を所持している。
ヘルメット、制服、女子生徒、銃器。
私は一旦、考えるのをやめた。
「レイヴンよろしく〜」
「よろ〜、レイヴン」
「よろしく!レイちゃんって呼んでも良い!?」
「レイちゃん!良いね!あたしもそう呼んで良い!?」
私は団員に詰め寄られ、囲まれた。
今までに無い経験に、困惑するが、悪い気はしない。
「はいはーい、お前ら、レイヴンが困ってるからそこまでー」
リーダーが割って入り、団員の波を掻き分け、私と分断する。
「レイヴンは病み上がりみたいなもんだから、今日は早く休ませる。質問攻めは明日以降にしなー」
リーダーが言い聞かせるように言うが、団員とは気心が知れる仲なのだろう。
団員はリーダーに向かって当たり前のようにブーイングする。
「お黙り!!さっ、レイヴン着いて来な。一時的とは言え、休むところが要るだろ?」
そう言うとリーダーは一つの天幕の中に案内してくれた。
「いやぁ、こんな貧相なレパートリーで申し訳ないんだが、取り敢えずはこれで我慢してくれよな」
天幕内には、シートが敷かれ、寝袋が折り畳まれて置かれていた。
私は首を振る。
「ううん、これだけで十分。ありがとう」
「そうか。なら良かった。ああ、あと一応、食事スペースとシャワー室にも案内しておこう」
リーダーの案内で、ヘルメット団のアジトに併設されている施設を回った。
リーダーは何かあったら自分を頼るように言い残し、立ち去った。
その後、私は猛烈に空腹を感じ、案内された食事場を改めて覗いた。
いくつかの弁当、サンドウィッチ、おにぎり、その為携帯食と言ったレパートリーが並んでおり、私はその中から携帯食を選んだ。
食事場にいたメンバーからはもっと食べるように言われたが、今はこれで問題ないと断った。
軽く食事を済ませた私はそのままシャワー室へと赴き、包帯を解いて身体の汚れを落とした。
裸になって気付いたことがある。
強化人間としての手術痕が、この身体には無かった。
着替えの事をすっかり失念していたのだが、団員の誰かが気を利かせてくれたのか、カゴの中にタオルと下着、赤色のジャージが入っていた。
サイズは若干大きいが、問題無く着れる範囲のサイズだった。
シャワー室から出た私はタオルで髪を拭きながら、アジトでリーダーを探す。
すぐに見付かり、私は着替えの礼を伝えた。
その後、私は自身に当てがわれた天幕に戻り、何をするでもなく、座る。
「…レイちゃん、か…」
まさかそんなあだ名で呼ばれるとは思わなかった。
この名前の元の持ち主である独立傭兵の集まり《ブランチ》の《レイヴン》には少し申し訳なく思わないでもないが、ヘルメット団の彼女たちにそれを知る術はない。
私としても、悪い気はしない。
腰まである長い白髪は、洗ったからだろうか、くすみが僅かに取れ、灰色っぽかった白色が純白に近付いた。
髪もあらかた乾かし終わった頃、自然と眠気が訪れ、私は寝袋に包まれ、目を閉じた。
強化人間には睡眠は必要ない。
必要に応じて休眠状態にさせられることはある。
だが、それは自発的な睡眠とは異なるものだ。
食事も、入浴も同様だ。
遥か昔に失われた機能を取り戻し、だが、どこかポッカリと穴が空いたように虚しい。
ここで過ごして行けば、いつかこの空虚さが晴れる時が来るのだろうか?
そんなことを考えている内に、私の意識は深く深く、沈んでいった。
621の名前をどうするか…
非常に悩ましい問題です…
ヘルメット団がやたら親切かのように思われるかもしれませんが、これはアレです
義理と人情的な
敵では無い一般人に危害を加える事はなく、敵には容赦しない的な感じのヤツです