人によって変わってて、その違いが面白い
うちの621(キヴォトスのすがた)も気に入っていただけると幸いです
ガタンゴトン、と揺れを感じ、私の意識は覚醒した。
朧げな視界に捉えるのは、狭い天井。
「──ぁ…」
自分の体は寝かされていることに気付く。
背中から、振動と揺れを感じる。
乗り物の中、それも地を走る車両のものだと判別できた。
自分は気を失っていたのか。
そして、今の記憶が、気を失う前から連続していることを理解する。
「夢じゃ…なかったんだ…」
揺れと振動に掻き消されてしまいそうなか細い声。
そんな小さな声でも、狭い空間だからか、聞こえる人には届いたらしく、突如、視界に影が割り込む。
「あぁっ!!目が覚めたか!?」
・・・視界に飛び込んで来たのは、赤いフルフェイスのヘルメットだった。
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あたしは、この《カタカタヘルメット団》のリーダー。
メンバーからは、リーダーと呼ばれ、親しまれている。
チャームポイントはこの磨きに磨き抜かれた真っ赤なヘルメットだ!
毎晩、寝る前と、毎朝、仕事を始める前に磨き上げ、ピカピカにしてある!
っと、そんな余談はさておき。
あたしがこの少女を拾ったのは、偶然だった。
いつものように、“仕事”の打ち合わせをして、帰る道中だった。
今回の雇い主は、いつもより大物で、遠出しなければならなかった。
日も暮れた砂漠を部下が運転するオフロード車の助手席で眺めていると、ふと目に入った人影。
最初はロボットか何かの廃材か何かかと思っていたんだが、どうにも動いている。
風も吹いてはいるが、どうにも挙動が噛み合わない。
目を凝らせば、それは生身の人間のように見えた。
苦しむようにのたうち回っている。
一瞬、あたしは迷った。
何者か分からないし、それに今は“色々”と気を張っている。
けれど、あたしは放って見捨てる事がどうにも居心地悪くて、運転する部下に進路を変更させた。
結構、距離が離れていて、砂埃も舞って見失いそうになるが、頭の上に浮いてる“紅く煌めく”《ヘイロー》を目印に距離を縮めていく。
のたうち回っていた人影は、まるであたしらから逃げるように地面を這って移動し始める。
けど、そんな動きで進める距離は高が知れている。
当然、あたしらはその人物に追い付き、何人かと車を降りたあたしは徒歩で近付く。
近付いて気付く。
その人物──少女は、服すらも着ていない裸も同然の、全身包帯グルグル巻きにされたヤツだった。
頭の包帯からは、くすんだ長い白髪が溢れ、頭頂からは同じ色合いの犬科の動物を思わせる三角耳が覗いている。
キヴォトスには、こう言った容姿の人物が割といる。
体格も栄養不足か疑ってしまうかのように華奢だ。
しかも、どうにも立ち上がれないようだ。
声を掛けてみるが、反応がない。
というより、さっきから動きが止まっている。
意を決して近付き、体を抱き起こす。
肌に触れると同時に熱が伝わる。
その上、顔も赤く、汗に濡れている。
具合が悪かったのだと理解したあたしは、戸惑う部下に喝を入れ、車に乗せる。
後部座席に寝かせ、少しでも熱を和らげようと水筒で冷やした布を額に乗せる。
そうして、あたしらは自分らのアジトに向かって戻っている最中だった。
少女がか細い呟きを漏らして目を開けていた。
何と言ったのかはこの際どうでも良かった。
あたしが覗き込むと、少女は一瞬、戸惑ったようなキョトンとした表情を浮かべ、多分、飛び退こうとしたんだろうな。
勢い良く頭突きをかましてくれた。
更に、ここは狭い車の中。
彼女は頭突きの反動で仰け反ったと同時に後頭部を車の天井にぶつけ、頭を押さえてうずくまる。
顔を上げた彼女は鼻を赤く染め、後頭部を抑えながら、涙目であたしを睨み上げた。
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赤い謎のヘルメットが目に入り、私は反射的に飛び退いた。
飛び退こうとした。
だが、私は混乱していたのだろう。
ここが車の中という情報がすっかり抜け落ちた私は、盛大に目の前のヘルメットに顔面からぶつかった上で、後頭部を天井に強打した。
鼻と後頭部に痛みが走り、特に鼻にはツン、とした感覚が走る。
目が潤むのを感じながら、見上げるとヘルメットの全体像が目に入る。
ヘルメットを被っているが、その下は、まるで何処かの学校のような制服姿だった。
スカートを履いていることから女子生徒だろう。
学生がどうして車内でヘルメットを被っているのか?
そもそも、ここは荒野だったはず。
荒野の中に、謎のヘルメット女子生徒。
しかも、周囲に目を配れば、同じような格好の女子生徒が複数人。
目の前の赤のヘルメット、赤の制服の生徒とは違い、黒のヘルメットに黒の制服。
車を運転しているのも女子生徒と来た。
更に混乱は続く。
その女子生徒らは皆、頭部に謎の円環が浮かび上がっていた。
それはまるで、天使の輪のようだった。
天使と言えば天国。
ならば私は死んだのか?
ここは死後の世界なのか?
しかし、そうとも認め切れず、疑問と困惑の荒波に揉まれる。
「あー…取り敢えず、えっと、大丈夫か?体とか、苦しくないか?」
相手も困惑した様子で、声をかけて来る。
どうやら、私はこの集団に保護──確保されたようだ。
信用できるかどうかはまだ判断しかねるが、表面上だけでも応対するべきだろう。
そして、ヘルメットの彼女に言われて気付く。
先程、あれだけ苦しく、私を苛んでいた頭痛や全身の痛みと言った症状が、和らいでいる。
多少の痺れのような痛みは残っているが、のたうち回る程のものではない。
彼女たちの確保との因果関係は不明だが、取り敢えずは感謝しておこう。
「…大丈夫。問題ない…」
今は少しでも情報が欲しい。
「幾つか質問させて欲しい」
この状況、この場所、そして何より、目の前のヘルメット集団についての──。
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????????????????
質問し、回答を受け、情報は手に入った。
だが、何一つとして理解できない。
意味不明。
謎の単語、専門用語の羅列。
《キヴォトス》?
《アビドス》?
《カタカタヘルメット団》?
《ヘイロー》?
果てには、私の容姿まで、かつてとは全く異なるものへと変化していた。
赤のヘルメット少女──リーダーと名乗った少女は、鏡を見せてくれた。
そこに映ったのは、白の長髪に病的なまでに白い肌、赤い円環が浮かぶ黒い瞳、果てには人としての耳に加えて、犬のような耳が頭に生え、その上には、リーダー達のような天使の輪──彼女曰く、《ヘイロー》が浮かんでいた。
彼女達と違うのは、私のヘイローは、まるで心電図のように波打った、或いは、歪んでいるとでも形容すべき、波形が形を為す深紅の円環だったことだ。
そして、私のヘイローは常に同じ色ではなく、明滅を繰り返し、煌めいていた。
まるで、“コーラルのように”。
彼女の話を纏めると、ここは《キヴォトス》と呼ばれる世界で、その中でも今いるのは《アビドス砂漠》という地域であるという事。
リーダー達は、《カタカタヘルメット団》というアビドス砂漠を根城としている武装“不良”集団。
いわゆる、ならず者だ。
ヘイローは、全てではないが、キヴォトスに生きる多くの人々に備わっているのだという。
現状、簡単にではあるが、問答を繰り返した末に得たのが以上の情報だ。
もっと知りたいことは多々あるが、今はこれらを噛み砕くので精一杯だ。
不調の後遺症もある。
続きは、また別の機会に聞くとして。
私はリーダーに最後の質問を投げかける。
「私をこれからどうするつもりだ?」
はい、というわけで、621を救助してくれたのはカタカタヘルメット団の皆さんでした
アニメにもやられ役として出て来たあの子達ですね
こちらの621は、初対面の気心がしれない相手には威圧的態度と口調になります
気を許すとかなり砕けます
お気付きかもしれませんが、犬耳は猟犬要素、ヘイローはエア要素が入っています
レイヴン要素も隠されていますが、それは直に判明します
お楽しみに!