反省も後悔もしていない
矛盾とか間違いがあったらこっそり教えて欲しいです(小声)
プロローグ/燃えた翼、千切れた鎖
《コーラル》。
《惑星ルビコン3》という惑星で発見された物質・資源であり、エネルギー、食料、情報導体にもなると言う驚異的な代物だった。
だが、どんなものにも長所と短所はある。
先に挙げたものがコーラルの長所、その反面、短所は、麻薬のような依存性があること。
それだけでなく、増殖する性質を持っていたことだった。
脅威なのはその増殖速度。
一定量に達した瞬間、指数関数的に爆発的な増殖を巻き起こすとされ、その果てに何が起こるのか、専門家にも予測出来ない。
確実に言えることは、人類種の破滅を齎すと言うことだけだ。
だからこそ、そのコーラルを──一定量にまで増殖していたコーラルを焼き払う必要があった。
火を付ける必要があった。
かつて、同じように増殖したコーラルを焼き払い、それでも尚、燃え残ったコーラルに。
その全てを今度こそ焼き尽くす為に。
そして、それは亡きハンドラー・ウォルターの願いであり、頼みだった。
協力者であるウォルターの友人、シンダー・カーラと、その腹心たる“AI”、チャティ・スティックと共に、その実現の為に、戦った。
立ちはだかる者全てを薙ぎ倒して。
例えそれが、共に激戦を潜り抜けた“戦友”だろうと、数多の戦いを支えてくれた“友人”だろうと。
だが、その果てに、仲間たちもまた、その命を散らした。
チャティも、カーラも、二人とも、居なくなってしまった。
けれど、それが私の“選択”。
私自身が選んだ“答え”。
未練も、後悔も無い。
みんな、みんな、いなくなった。
ウォルターも、エアも、ラスティも、カーラも、チャティも。
みんな、みんな、私が殺した。
直接的、或いは、間接的に。
「ひとりに、なっちゃったなぁ…」
火を付けた果てに辿り着いた星、その荒野で独り言ちる。
夜空には無数の星々が瞬いていた。
生き延びた。
ひとりだけ。
これからどうするべきか。
何をしたら良いのか。
思い返して見ると、私には何も無い。
行くべき場所も、目指すべき目標も。
何も無い。
「ウォルター…私にはあなただけが…」
あなたこそが、私の導きだった。
暗闇に差し込む、月明かりだった。
今はもう、何も見えない。
月光も見えず、ただただ、闇に呑まれ、深淵に沈むだけ。
「…それも良いか…」
生きる意味も、意義も、何も見えない。
聞こえない。
それならば、このまま闇に身を任せ、深みへと沈んでしまおうか。
私は荒野を歩き続けた。
行く当てもなく、まるで心を喪った亡者のように。
どれだけの時間が、日にちが過ぎ去っただろう。
ただただ荒野を歩き続け、昼と夜が繰り返される。
幾ら強化人間でも、補給も無しに生命を維持し続けることは出来ない。
けれど、私にはその気力も残ってはいなかった。
このままではいずれ、この名も無き辺境惑星の荒野で人知れず力尽きる事だろう。
でも、それでも良いよね。
何だか、疲れた。
ウォルター、私、頑張ったよね?
もう、休んでも良いよね?
そう思った直後、私はあり得ないものを見た。
見上げた夜空。
そこには満天の星空が広がっていた。
だが、それだけでなく。
星々の瞬きの中に、深紅の煌めきが見えた。
それは見慣れた、嫌と言うほど目にした、コーラルそのものだった。
何故、どうして。
関係ない。
残っているのならば、また燃やすだけだ。
ウォルターの遺志を果たす。
その使命感が、亡者のように枯れ果てた心身に火を付ける。
私の中に僅かに燻っていた残り火を燃やす。
私は近くの岩山の天辺へと上り、そこからアサルトブーストで空を目指す。
上空を漂うコーラルは目に見えて増えており、潮流を織り成していた。
コーラルは、鳥や魚に似た群知能を有している。
コーラルは、何処かへ向かっている。
ルビコンに於いては、コーラルは集まろうという習性があり、コーラルの潮流の果てに、多くのコーラルが地下に眠っていた。
だが、良く考えるとおかしい。
ルビコンの外に、コーラルは無いはずだ。
仮にあったとしても、これ程のコーラルが群れを成して向かう程の量がある筈がない。
それだけの量があるならば、ルビコンに於ける企業との争奪戦は何だったのか。
コーラルの潮流は、もはや空を赤く染め上げる程にまで流れを増している。
気付けば、周囲にコーラルが満ちており、私が何かするよりも先に、私は自身の駆る機体ごとコーラルの潮流に飲み込まれた。
かつてない程のコーラルの勢いに、機体を動かす事もままならない。
機体の装甲が瞬く間に削られて行くのを感じる。
そして、蝕まれるのは機体だけで無く、私自身の肉体、精神も同じ。
かつて、コーラルのウォッチポイントで浴びたコーラルの逆流。
それと同等──それ以上のコーラルの奔流が“私”を。
──
なんだっけ?
もうなにもわからない。
なにもかんじない。
わたしはだれで、なんなのか。
でも、もうどうでもいい。
つかれた。
わたしのからだがきえていく。
そんなきがする。
ほら、いしきもだんだん、わかんなくなって。
ねむくなって。
ねむい。
おやすみ、─────。
レイヴンは果たしてどうなってしまうのか!?
早くも主人公存亡の危機!!
ウチの621は、割と表面上は平然と取り繕うけど、その反面、内部は徐々に崩れ落ちて行ってる系の子です。
ウォルター、エア、ラスティ、カーラ、チャティといった親しい人たちを失い、泣きも喚きもしませんが、その心は徐々に…と言った感じですね。
自分は平気と思って動いているが、ある日突然、糸が切れたように動けなくなる。
因みに今のところは男でも女でもどっちの可能性もあります。