ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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もし対策委員会編から先を書くならなんらかの形でワカモを出したいと思っている
第2話です、お楽しみください


代理

「バケモノだーっ!?」

「化け猫に殺されるーっ!」

「ひいいいーっ!」

 

 

 

「………」チン

戦車を斬ったことで残る不良達は完全に戦意喪失に陥り、我先にと逃走。

これが帝国軍の戦争なら1人たりとも逃さないところだが…

 

「リン行政官、追撃は?」

『へっ、あーいやいらないです。そのままシャーレの部室に向かってください』

 

「…大丈夫か?」

『だいじょぶですから先に行ってください』私もすぐ行きますから

 

 

 

魔法?で映されたリンの様子が明らかにさっきとおかしい、何かあったのだろうか

 

まさか自分が原因とはつゆ知らず、消えたリンへの心配をよそにユウカ達を呼ぶ

 

 

 

「え………あの、あれ?今のあれ、なんですか…」

「さ、さぁ…」

「これがシャーレの先生の力、ということでしょうか?」

 

「ユウカ、伏兵は?」

「ええと…何人か居ましたけどみんな逃げちゃいました」

「分かった。我はこれからシャーレの部室に入るから入口を見張っててほしい

何かあれば呼んでくれ」

 

 

 

いつでも刀を抜けるよう身構えつつ建物の中へ

 

 

 

「………」

敵対者を撃退したのはいいが肝心の主犯格である狐坂ワカモがいなかった

外にいればユウカ達が気付いただろうから他に潜んでいるとすれば──

 

「あら…?」

「………!」

 

いた、狐面を被って素顔は見えないが細長い銃を手に部室内を物色している生徒を見つけた

 

 

 

破壊と殺戮の…いや破壊と略奪という度し難い趣味を持った生徒…

矯正局という牢屋に入れられていたのも納得だが肝心の戦闘能力はどうだろうか

 

狐面で表情や目線が読めず分かりづらい、矯正局が牢獄のような役割を持っているのなら少なくともそこから脱獄する力は持っているはずだが

 

 

 

「………」

「あら、あららら…」

 

 

 

未知の敵相手に手加減はできん、ハスミはああ言ったが我にも倒れられない理由がある

…奴の銃口がこちらに向かった瞬間、しっぷう突きを放って片腕貰──

 

 

 

「し、し、失礼いたしましたー!!」

 

 

 

目の前の敵を一撃で葬ろうと身構えていたギュメイだったが予想外にもその生徒は逃走、その逃げっぷりはまるでメタルスライムを彷彿とさせ一瞬で消えてしまった

 

…まぁ戦わないに越したことはない、今は戦いを楽しんでいる場合ではないからな

 

 

 

「お待たせしましたギュメイ先生

…? 何かありましたか?」

「リン行政官か、狐坂ワカモと思われる生徒と出会ったが逃げられた」

 

「撃退したと?」

「いや戦っていない、我を見るなり逃げていった」

 

外の戦闘を見て敵わないと感じて退いた…わけではなさそうだが

 

 

 

「戻ってこないうちに用事を済ませよう、我は何をすればいい?」

「待ってください…ふむ、良かった壊されてませんね。これを受け取ってください」

 

暗い室内で何かを取り上げたリンからその何かを受け取る

 

「? なんだこれは?」

「連邦生徒会長が先生に残した物、『シッテムの箱』です

普通のタブレット端末に見えますが詳細は一切不明で…」

「・・・タブレット端末とはなんだ?」

「え?」

「む。」

 

 

 

一瞬だけ嫌な沈黙が流れるも即座にリンが持ち直す

 

「…失礼ですが先生は携帯電話は持ってますか?」

「…?いや、持っていないし聞いたことのない名前だ」

 

「iPadは?」

「知らぬ」

「音楽プレイヤーやメモリーチップは…?」

「どちらも聞いたことがない」

 

「「・・・」」

 

 

 

まさか…このよく分からない板を我が使えないと混乱は収まらないのか?

 

「い、いえ大丈夫です!連邦生徒会長が選んだのですから大丈夫なはずです!」

ユウカじゃないがそれは無責任すぎでは…

 

 

 

「私たちでは起動すらできなかった代物ですが先生ならきっと…!」

「ヤケになってないか…?」

「はいそうですが!」

 

開き直ったな…

 

「では邪魔にならないよう離れておきますので」

言いたいだけ言ってリンは出ていってしまった

ともかくやってみるとしよう

 

 

 

リン達には悪いが仮に起動できなかったとしても果実捜索の道が絶たれるわけではない

それならそれで別の方法を見つけるだけだ

 

「………スイッチすら無いのか」ペタペタ

何かないかと画面や裏面をまさぐっているといきなり画面が光る

 

起動した…!

 

リンは『起動すらできなかった』と言っていたから少なくともそれよりは好転してるということか

 

 

 

《システム接続パスワードを入力してください》

「ぱす、わーど?」

 

 

 

画面中央に表示される空欄とその下に並ぶ文字盤…これを使って認証しろというのか?

だがなんの関わりも無いギュメイにそんなもの分かるはずもない

 

「…起動はした、一度リン行政官の元へ向かおう」

何か分かるかもしれな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『我々は望む、7つの嘆きを。』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

!!?

 

「誰だ!?」

 

 

 

「『我々は覚えている、ジェリコの古則を。』」

 

 

 

聞き覚えのない女の声に反射で刀を抜くが剣先が安定しない

どこから喋っている?背後からようで、上や前から聞こえるようにも…

 

「入力しなさい、ギュメイ()()

それでシッテムの箱は起動する」

「! 貴様何者だ!?」

 

ここに来てから我は一度も将軍だと名乗っていない

…来た時の記憶は曖昧だがリン行政官達の反応を見るに名乗っていないだろう

 

 

 

「本来そこに立つはずだった人間なら入力できたのでしょうが…あなたは違う

そしてその違いは後に運命を変える要因となり得る。入力しなさいギュメイ将軍」

「………」

 

 

 

色々と聞きたいことがあるがそれより先に気配が消えた

…逃げられたか

 

《システム接続パスワードを入力してください》

「………」

 

信用できるわけがない、だが手詰まりなのも事実。慣れない文字盤を使って言われた通りに文字を打っていく──

 

 

 

《接続パスワード確認。

現在の接続者情報は□□、確認できました》

 

知らない名前だ、おそらく前の持ち主の名前だろう

 

《生体認証及び認証書生成のため、メインオペレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。》

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

………ここは?

 

 

 

半壊した教室のようなところで1人の少女が机に突っ伏して寝ている

海みたいなものも見えるが塩の匂いはしない

 

少女以外に人はいないようだし教室の外には何故か出れない

気持ちよく眠っているところ悪いが起きてもらおう

 

 

 

ユサユサ

 

 

 

「んにゃ、む?…え?あれっ

この空間に入ってきてるってことは…まさか□□先生…?!」

 

またさっきの名前…だが生憎と人違いである

 

「いや以前の持ち主とは別人だ、我はギュメイ

キヴォトスの混乱を治めるためにシッテムの箱という端末を起動したらここにいた

状況がいまひとつ分かっていないのだが…」

 

「え?あ、確かに背も高いですし刀持ってますし獣人で獣耳と尻尾が生えてますしよく見たら別人でした!」

「・・・」

 

 

 

寝起きとはいえそこまで違って何故気付かなかったのか…うん?尻尾?

 

言われたまま見ると魔獣体として復活したばかりの時と同じ尻尾が生えてきていた

復活してすぐに切り落としたはずだったが果実の力で要らぬとこまで復元したらしい

 

正直切り落とす手間は掛けたくない。あの尋常ではない苦痛は自身の手足を切り落とされるよりも上だろう。が戦闘において掴まれたりする危険を考えればやむを得ない、時間と医療品が整ったら切っておこう

 

 

 

「とりあえず自己紹介から!私はアロナ!

この『シッテムの箱』に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!

 

私はここで先生をずーっと待っていたんです!

…まさか代理の人が来るとは思ってませんでしたが」

「すまぬが訳ありだ、後ほど説明する

今はサンクトゥムタワー制御権を掌握したい」

 

「分かりました!人も変わっているので生体認証から始めますね

ちょっぴり恥ずかしいですが手続きなので…

はい!では私の指に先生の指を合わせてください!」

「分かった」

 

 

 

ぴと

 

 

 

「………」

「………手を開いてもらってもいいですか?」

「? ああ」

 

 

 

ぎゅ

 

 

 

「………」

(毛深い、というわけではないですが見かけよりもモフモフっとしてて…)

 

 

 

もふもふぎゅ

 

 

 

「…アロナ?」

(それでいて触れるたびにモフモフの向こうから体温が伝わって…これいつまでも触っていられますね…)

 

「大丈夫か?」

「はい!とっても触り心地が良くて…あ。」

「先も言ったが急いでいる、もし終わっているなら…」

「は、は、はい終わってますすみません!

──というわけで生体認証終了です!」

 

「ありがとう、早速で悪いが」

「はい!サンクトゥムタワーの制御権ですね!

回収するので少々お待ちください…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…出来ました!今サンクトゥムタワーの制御権は私の統制下にあります!

今やキヴォトスは先生の支配下にあるも同然です!」

「こんなにあっさりと…?」

 

というか制御権1つで都市を支配下に置ける仕組みなのかここは…

 

「見かけによらず凄いな」

「えへへ…///」

 

頭を撫でられ照れる姿からはとても優秀そうには見えないが外見や年齢が実力と比例しないということは生前からよく知っている

 

…それを鑑みても生前のゲルニックのは殆ど詐欺だったが。

 

 

 

「回収した制御権を連邦生徒会に譲渡することは可能か?」

「できますけど…大丈夫ですか?連邦生徒会に権限を渡しても」

 

「何も知らない我が持っていても意味がない、子供に押し付けるようで気が引けるがその方がこの都市のためになるだろう」

「分かりました!」

 

 

 

よし、これでひとまず大きな問題は片付いただろうか

 

「…譲渡完了です!問題なければログアウトの準備をしますが…他に何か要件はありますか?」

「要件か…そうだ、アロナは管理者と言っていたがこの都市のことはなんでも知っているのか?」

 

「はい!…と言い切れるかはちょっと自信ないですが大体は。何か知りたいことが?」

「…金色に輝く果実について、何か知らないか?」

「金色の果実ですか?うーん…すみません、特にそういった食材が出回ってたりはしないですね」食べたいんですか?

 

「いや見かけは綺麗だが危険な物だ。問題が起こる前に回収したい」

「分かりました、詳細は分かりませんが私でもそういった果物が無いか探しておきますね」

「重ねて礼を言う、ありがとうアロナ」

「どういたしまして、です!」

 

 

 

 

 

 

「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました、これで連邦生徒会長のいた時と同じように行政管理が進められます

お疲れ様でした先生、キヴォトスの混乱を防いでくれたことを連邦生徒会を代表して感謝します」

「我は殆ど何もやってないが…」

 

実際苦労したのは我ではなくアロナだ

それに我1人ではパスワードは入力できなかったし…それにしてもあの女の声は誰だったのか…

 

「戻る前に連邦捜査部『シャーレ』の紹介をします」ついてきてください

「ああ」

 

 

 

 

 

 

「ここがシャーレのメインロビーです

長い間空っぽでしたがようやく主人を迎えることになりましたね」部屋にご案内します

 

 

 

「…そしてここがシャーレの部室、先生の仕事はここで始めるとよろしいかと」

「分かった。それで?我は何をすればいいんだ?」

 

ひとまず働き口が見つかったのはいいが何をすればいいのか具体的な説明はまだ聞かされてない

 

 

 

「うーん…シャーレは権力だけはありますが目標のない組織ですので何かしなければならないという強制力は無いんです

 

キヴォトスのどんな学園の自治区にも自由に出入り可能で所属に関係なく先生が希望する生徒を加入させることも可能なので…」

 

改めて聞くと本当にふざけた機関だ、自由に動けるのはありがたいが

 

 

 

「つまりなんでも先生のやりたいことをやっていい…というわけです」

「ふむ」

 

なら女神の果実を探す──と言いたいところだが果実の存在をおおっぴらにするわけにもいかない。さてどうしたものか

 

 

 

「ギュメイ先生、提案が。」

「なんだ」

 

「今キヴォトスは先生のおかげでなんとか保ちましたが依然としてあちこちで問題が起きているのは事実です

 

私たちも連邦生徒会長の捜索に全力を注いでいるためそれらの問題にも対処しきれない

目的無く時間の有り余るシャーレならそれらの解決もできるかもしれません」

 

「…それで?」

「その辺りに関する資料は先生の机に置いておきました。気が向いたら読んでください」

 

 

 

指し示された方にはこんもりと積もる書類の山

…今置かれた物ではないな、提案と彼女は言ったが実質的に『やれ』という意思表示だろう

 

「分かった、対処する」

 

ガナンに居た頃、書類仕事は殆どゲルニックに任せきりだったが今はそうも言ってられない

それに本命である果実捜索を隠す良いカモフラージュになる

 

 

 

「ありがとうございます、では必要な時にはまたご連絡致しますので」

 

部室を出ていくリンを見送り、深呼吸。

 

探すべき果実は7つ、この世界のどこかに…

「ひとまず手伝ってくれた生徒達にお礼と挨拶、あとは──アロナ」

『はい!なんでしょうか!』

「このキヴォトスに腕のいい刀鍛冶はいるか?」




ギュメイ将軍がガナサダイ陛下と出会う前は何をしてたんだろう…と思ってる作者のルルザムートです、ハイ。
ギュメイ将軍、シャーレ着任しました。パスワードを知っていた人物ですがオリキャラではないとだけ(むしろこれでオリキャラ出したら自分でもキレる)
次回からは対策委員会編として先生がアビドスに向かいます
ギュメイ将軍…いやギュメイ先生をカッコよく書こうと思うのと同時に二次創作ならではの伏線とかも使っているので考察などで楽しんでいただけると幸いです
(感想等で考えを送っていただいたりすると作者が興奮します、が。もし返信が無かったら図星だと思ってください…)
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