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J/53  作者: 池金啓太
十一話「舞い込む誰かと連れ込む誰か」
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狂気と正気

静希は無線の調子を確認しながら鏡花と明利に繋がるかを確認する


陽太にも仮面と無線をつけさせて軽くストレッチする


「一応聞いておきたいんだけど、勝率はどれくらいよ」


「よくて五・・・いや六割くらいか」


今までの静希の案と比べると随分と弱気な確率だ


無理もないだろう、自らの能力が使えない状態なのだ、鏡花でさえかなり敗色の香りを漂わせているというのに


「最悪、陽太を盾にして強硬手段に出る」


「は?あんた正気!?今こいつは能力使えないのよ!?」


鏡花の言葉に知ってるよとさも当然のように返しながら静希は準備運動に熱を入れている


陽太の頑丈さは普段能力を使わなくても際立っているが、相手が使えるのは手加減のない悪意のこもった能力、いつも鏡花が冗談交じりに使う拳などではない、たった一撃で死に至ることもあるのだ


「ちょっと!あんたからも何とか言いなさいよ!」


「なんで?」


「なんでって・・・自分が盾扱いされてんのよ!?」


まるで他人事のように陽太も準備運動を続けこれから起こる戦闘に備えている


その顔には不満などかけらもなかった


「盾扱い上等、前衛からすりゃ褒め言葉だって、それに静希がそうするって言うなら、それは必要なんだろ、俺が口出すことじゃない」


考えるのは静希の役目だと言わんばかりに陽太は呑気に笑う、不敵とも取れるその笑みに鏡花は戦慄していた


自分の身が危険にさらされるというのに、自分が口を出すことではないなどと普通は考えられない


いくら前衛で身体を張ってきたからと言って、いくら考えることが苦手だからと言って、いくら長い間一緒にいた幼馴染だからと言ってここまで相手を信頼できるだろうか


否、鏡花ならできるはずもない


信頼関係などという次元を一つも二つも超越したものがこの二人にはあるのだ


「明利!あんたからも何とか言ってよ!こいつらおかしいわ!」


「えぇ!?えっと・・・静希君・・・死んだりは・・・しないよね?」


一瞬言うべきか迷うような視線を浮かべた明利の言葉に静希は僅かに目を瞑る


「もしこいつが死ぬような状況になったら、俺も死んでる、そうならないように尽くすよ」


当然のように自分も死ぬであろうと告げた静希


これから何が起きるのかわかっていないからこそ疑問なのだ


六割の確率でしか成功しない作戦にこうまであっさりなぜ自分達の命をかけられるのか


静希は今までもそういう節があった


自分の命をまるで駒か何かのように簡単に天秤にかける


そしてそれが当然であるかのように陽太もそれに従う


「そんなに気負うなって、静希の策なら何とかなるよ」


「・・・何とかって・・・」


「それにさ、今までこいつの策で何とかならなかったことないだろ?」


「それは・・・そうだけど」


今まで実習中は静希の指示に従ってきた、それは今いる戦力と状況から、解決への最適解を導き出せる能力を静希が持っていたからだ


事実そのおかげで鏡花達は今もこうして無事にいる、時には最優秀班として表彰もされた


静希の指揮能力は確かだ、それこそ学生の力量をはるかに超える


「だから今回もきっと何とかなる、こいつに任せて何とかならなかったことはない!」


自信満々にそう言ってのける陽太、早い話、陽太は考えていないのだ


どう行動するべきなのか、そしてどうなるか、そしてなにが重要なのかを


それは自分の命さえ、危険にさらしているというのに


陽太はその危険に気付いているのか、それとも気付いていながらこうして笑っているのか


「あんた・・・本当にバカなのね・・・」


「なにをいまさら、それにお前が言ったんだぞ、俺のバカは才能だって」


何の不安も感じさせないその笑みを見て鏡花は思い出す


確かに言った、陽太のバカは才能だと


そうだ、言ってしまったのだ


今更ながらに本当にその才能の恐ろしさを実感していた


理屈が通用しないというレベルを超えている


必要のないことを考えない


それはつまりいざという時、悩まないということでもある、迷わないということでもある


前衛にとって一番やってはいけないことは悩むこと、迷うこと


雪奈も言っていたが悩む前に、迷う前に攻撃する、それこそ前衛に必要とされる精神だ


そう考えると陽太はまさに前衛になるべく生まれてきたような人間だ


そして何より、鏡花はこの二人に恐ろしさを感じていた


何のためらいもなく、幼馴染を盾にすると言った静希に


何のためらいもなく、自分を盾にすると言った幼馴染を信用する陽太に


それは一種の狂気にも似た関係だ、鏡花からすればありえない


否、あってはいけない関係だ


「さて、行くか」


「おう」


やることは決まった、覚悟も決まった


後は実行するだけだ


先日と同じく私用が続いているので予約投稿


たびたび申し訳ありません


これからもお楽しみいただければ幸いです

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