急成長を続けて、10兆円企業に向けて突っ走るユニクロ。なぜ業績が伸び続けるのか?その背景に、どんな経営戦略、組織戦略、育成戦略があるのか?同社の元執行役員で『ユニクロの戦略』著者の宇佐美潤祐氏に聞いた。 宇佐美潤祐 | 『ユニクロの戦略』著者 戦略コンサルティング業界を経てファーストリテイリングの...
チャプター
ファーストリテイリングが展開するユニクロは、日本経済に無視できない影響を与え、投資家からも圧倒的な成長期待を集める世界的な企業である。その驚異的な強さの秘密はどこにあるのか。元役員の証言や同社の取り組みを紐解きながら、その卓越した経営戦略と組織文化の核心に迫る。
ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、日経平均への寄与度が10%強を占めるなど、日本経済において絶大な影響力を持つ。これは単なるアパレル企業としてではなく、日本を代表する巨大企業として市場から認識されていることを示すものだ。
同社のPBR(株価純資産倍率)は日本の時価総額トップ10企業の中で最高値を誇り、特に将来の成長期待を表すPERは47倍と突出している。これは、市場がユニクロの現在の業績だけでなく、将来にわたって成長し続けるという揺るぎない信頼を寄せている明確な証拠と言えよう。
ユニクロの強さの根幹にあるのは「全員経営」という思想である。グローバルCEOの柳井正から店舗のスタッフ一人ひとりに至るまで、全従業員が「自分が経営者である」という意識を強く持ち、主体的に行動することを求めている。
「グローバル・ワン、全員経営」の理念の下、世界中で生まれたベストプラクティスを共有し、継続的に組織全体のパフォーマンスを高めている。各従業員が自営業者のようなマインドで課題に取り組み、全体の目標達成に貢献することが、巨大組織でありながら高い機動性を保つ秘訣だ。
ユニクロが志向する組織形態の一つに、米海兵隊をモデルにした「自律型フラクタル組織」がある。これは、組織全体とその各部分が同じ構造を持つ相似形であることを意味する。つまり、最下層の小さなチームや個人でも、全体の意図を理解し自律的に判断・行動できる。
柳井正CEOのグローバルな視点と、吉祥寺のウィメンズアウター担当スタッフの専門性が異なるように見えても、経営者として求められる原理原則は共通している。この「どこを切り取ってもユニクロのミッションが浸透している」構造が、環境変化への迅速かつ強靭な対応力と模倣困難な強みを生み出しているのだ。
かつての本部が店舗を指示・命令する「上位下達型」の関係から、ユニクロは「究極の個店経営」を標榜し、本部を「ストアサポートセンター(SSC)」と再定義した。本部はお客様に最も近い現場の課題解決を支援する役割を担い、権限構造は「逆三角形」となった。
店舗スタッフが主役となり、各地域のニーズやイベントに合わせて柔軟な売り場作りや商品構成を行う権限が与えられている。本部は彼らの活躍を支えるインフラ整備や、迅速な情報共有、そして「店舗課題解決ダイレクトミーティング」のような施策を通じて、現場の「困りごと」をスピーディーに解決する役割に徹する。この変化が、既存店の収益力向上に大きく貢献している。
「有明プロジェクト」は、商品企画から製造、物流、販売に至るまでのサプライチェーン全体をデジタルとデータで変革する、10年越しの最重要DX施策である。これまでの各部門がバトンを渡すようなリレー方式から、データとAIを核にすべてのプロセスが同時に連携し動く「コンカレント」な仕組みへと移行した。
このプロジェクトにより、店舗の在庫管理精度は飛躍的に向上し、欠品の劇的な削減や、RFIDタグを活用した自動レジ導入による顧客利便性と店舗業務の効率化を実現した。過去には物流面で混乱もあったが、継続的な改善の結果、営業利益率を7%から16%へと9ポイントも改善させる絶大な成果に繋がり、競争優位性の源泉となっている。
ユニクロは「組織を揺さぶり続ける」ことで、大企業病の発生を徹底的に阻止する。定期的な人事異動ではなく、変革の必要が生じた際に人や組織を即座に動かし、常に安住を許さない環境を作り出している。海外の事業責任者にも「3年以内の現地後継者育成」を義務付けるなど、常に次への挑戦を促す。
柳井氏自身が週末に店舗を抜き打ちで視察し、「現場・現物・現実」を直視した結果を月曜の会議で厳しく追求するなど、超高速なPDCAサイクルが組織全体に深く根付く。また「計画1割、実行9割」というアジャイルな思考が徹底されており、完璧な計画よりもまず実行し、修正しながら進むことで、他に類を見ないスピードで変化に適応する文化が形成されている。
ユニクロでは未来のリーダー育成を最重要課題と位置づけ、「サクセッションプランニング」を通じて後継者候補を選抜し、若手に対しても意図的に「試練(タフアサインメント)」を与え、早期の成長を促す。現社長の塚越氏もこのプロセスを経て育った一人である。
管理職の評価基準として「利益責任50%、育成責任50%」を明文化しており、業績と同じ重みで部下の育成責任を課す。これにより、自身のキャリアにおいても「常に後継者を育て次の挑戦へ向かう」姿勢が求められ、組織全体として人材育成を最優先する文化が深く根付いている。
急成長を続けて、10兆円企業に向けて突っ走るユニクロ。なぜ業績が伸び続けるのか?その背景に、どんな経営戦略、組織戦略、育成戦略があるのか?同社の元執行役員で『ユニクロの戦略』著者の宇佐美潤祐氏に聞いた。 宇佐美潤祐 | 『ユニクロの戦略』著者 戦略コンサルティング業界を経てファーストリテイリングの経営者育成機関FRMIC担当役員に。 その後アクセンチュアの責任者を経て現職。 ▼参考書籍 『ユニクロの戦略』 https://amzn.to/4h3zFx9 ※このリンクはAmazonアソシエイトリンクを使用しています サムネイル 写真:iStock
急成長を続けて、10兆円企業に向けて突っ走るユニクロ。なぜ業績が伸び続けるのか?その背景に、どんな経営戦略、組織戦略、育成戦略があるのか?同社の元執行役員で『ユニクロの戦略』著者の宇佐美潤祐氏に聞いた。 宇佐美潤祐 | 『ユニクロの戦略』著者 戦略コンサルティング業界を経てファーストリテイリングの経営者育成機関FRMIC担当役員に。 その後アクセンチュアの責任者を経て現職。 ▼参考書籍 『ユニクロの戦略』 https://amzn.to/4h3zFx9 ※このリンクはAmazonアソシエイトリンクを使用しています サムネイル 写真:iStock