全1963文字

 北海道釧路市が発注した病院新築プロジェクトが頓挫。後始末を巡って市と設計者が裁判を争った「釧路病院訴訟」が、終結した。設計者側は2審判決を不服として2025年4月に上告していたが、最高裁判所が上告棄却と上告の不受理を決定した。

 決定は25年8月22日付。最高裁第1小法廷(裁判長=安浪亮介裁判官)の裁判官5人の全員一致によるものだ。これにより、設計者側へ約1億3800万円の支払いを命じた札幌高等裁判所24年11月29日判決が確定した。

 決定理由は、上告理由が民事訴訟法312条「原判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするとき」に合致しない、というものだ。加えて、1審2審判決は最高裁判所判例に反したり、法令解釈の重要な事項を含んだりしていないので、上告受理申し立ての理由(民訴法318条)にも合致しないとした。

最高裁判所による決定内容を示す調書(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
最高裁判所による決定内容を示す調書(出所:取材を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 一連の裁判を簡単に振り返る。市は15年9月に実施した公募型プロポーザルで、設計事務所2社の特定共同企業体(以下、設計JV)と設計業務委託契約を締結した。だが設計は難航する。基本設計は期間を1年延長してしのいだが、実施設計でも計画変更が相次ぎ、成果物の完成が期限に間に合わなくなった。

 市は設計図書の受領を拒否するとともに、設計者に責めに帰すべき事由があるという理由で設計契約を解除。加えて、18年7月、市は設計JVを相手取り、釧路地方裁判所へ提訴した。

 市が裁判で請求したのは、設計業務の途上に支払い済みだった設計料約1億400万円の返還と、違約金約3400万円の損害賠償だ。設計者側は契約解除の無効などを主張して全面的に争い、設計料返還を拒否するとともに、未払い報酬約1億円を請求する反訴を起こした。

 1審判決は22年3月22日。釧路地裁は市の請求約1億3800万円について、設計者側に支払いを命じる判決を下す。設計者側は札幌高裁に控訴したが、前出のように棄却を受けた。

 2度にわたる判決の根拠となったのは、釧路市建築設計契約約款だ。約款は「設計委託業者の責めに帰すべき事由により履行期間内に業務が完了しないと明らかに認められるとき」、市は契約解除できる、というものだった。この契約条項が最後まで尾を引いた。