●シリアスもコミカルもまかせて安心のオールマイティさ

――寺田さん的に、今回監修をしているなかでいちばん目に付いた部分はどこでしょうか。

寺田 『PXZ2』の参戦キャラクターになりますが、“せがた三四郎”登場のインパクトがすごかったですね。

森住 『サクラ大戦』と“せがた三四郎”は、切っても切り放せない関係ですからね(笑)。

寺田 東京ゲームショウ2015のバンダイナムコエンターテインメントさんのメインステージに“せがた三四郎”がいるのを見たときは、どこの会社のブースなんだろうって目を疑いましたよ(笑)。さくらと“せがた三四郎”の合体ワザとかも欲しかったですね。

森住 ゲームショウの件は奥成さんにも言われましたね(笑)。さくらと“せがた三四郎”の合体ワザはないんですが、CMの再現イベントはしっかりとやらせていただきました。桜の木の下でピンクの照明を当てて、ちゃんとボイス付きで再現しています。

寺田 「さくらさ〜ん」って言いながらやってくるんですよ、“せがた三四郎”が(笑)。ここまでやってくれるのかと、ちょっとビックリしましたね。

森住 真宮寺さくらと“せがた三四郎”が揃って登場するのに、あの場面を再現しなかったらゲーム開発者失格ですよ(笑)。

塚中 公開された当時は、かなりのインパクトがあったCMですからね。

寺田 見た瞬間、すぐにCMの再現だとわかりました。本当に必見のシーンですね。

森住 「あのときの感動を蘇らせる」というのは、『PXZ』シリーズのテーマのひとつなんです。『サクラ大戦』シリーズは、“せがた三四郎”が加わったり、ストーリーも深く掘り下げさせてもらったりと、『PXZ2』のなかでも大きなウェイトを占めていますね。

寺田 シナリオにもたくさん絡めていただいて、本当にありがたいことです。その分、監修量もかなりのものでしたが(笑)。

森住 さらに、提出が遅れてしまって、ゲームショウと若干被ってしまいましたよね。本当にすみませんでした。

寺田 ゲームショウに出展する自分のプロジェクトのロムをデバッグしている最中に、かなりのボリュームのシナリオが届きましたからね。しかも「二日で監修をお願いします」って感じで(笑)。

森住 前作を出し終わったあとに、ユーザーの方から「シナリオをもっと増やして欲しい」という要望をたくさんもらっていたので、今回はがんばりすぎました。そのしわ寄せが各監修の担当者に行ってしまったんですが、本当に申し訳ありませんでした。

寺田 本当にものすごい量がありましたけど、あれは全部森住さんが書かれているんですか。

森住 全部僕が書いています。複数のライターに振り分けると、書き手によって口調が変わってしまったり、前後のつながりの整合性も取れなかったりすることがあるんです。また、先ほど話に出た蘭丸の心情も、実際にゲームをプレイした人間じゃないとわからないですからね。全員が同じ作品をプレイし、同じ知識を共有するというのはかなりむずかしいので、結果的にひとりで書いてしまった方が早いんです。

寺田 終わったかなと思ったら次々と送られてくるので、もしかしたら終わりがないのかなって思いました(笑)。なかなか、あの量はひとりではできないですよ。本当に、すごいボリュームのある作品だと思います。

――森住さんは『PXZ2』を作るときに、当時のゲームは全部やりなおされているんですか。

森住 基本的には遊ぶようにしていますが、イベントシーンの確認などは、スタッフにムービーを撮ってもらい、それを見る場合もあります。

寺田 監修をしていて思いましたが、キャラクターの掘り下げが深いんですよ。本編で一回しか言ってないセリフまで引用してくるので、かなり深くやり込んでいるなと思いました。

森住 僕はプレイするときに、キーワードとなるセリフや単語をその都度メモしているんですよ。ストーリーのダイジェストも箇条書きでメモに書き込んでいます。各作品・キャラクター毎のファイルを用意しておりまして、プレイ中はずっと開いたままにして、「これはいいセリフだな」って思ったら、その場ですぐに書き留めるようにしています。いわゆる、備忘録というやつですね。キャラクターのシナリオを作るときはそのメモを開いて、引用させてもらいながら書いています。ジェミニの項目を見ると、“ステーキサンドが好き”とか“ステーキは強火であげて、あとは蒸らす”なんて書いてましたね(笑)。

寺田 そのメモが細かいんでしょうね。演出面でも、原作をしっかり再現されていますからね。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【第五回】_03

森住 重要な場面やアクションシーンはその場で録画するようにしています。その映像をもとに、バトル担当がアクションシーンとして起こし直しているというわけです。また、いまは『ナムコ クロス カプコン』を作っていた時代と違って、公式の動画などもたくさんありますからね。そういった情報も参考にさせてもらいながら、演出を作り込んでいます。

寺田 いまは調べものをするのも資料を探し出すのも、本当にやりやすい時代ですからね。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【第五回】_02

塚中 『サクラ大戦』シリーズ自体、いろいろな作品や関連書籍を出されていますし、メディアミックス展開もされているので、資料類に関して困ることはありませんでした。『PXZ2』のなかには、原作のゲームしか参考資料がない作品もありましたからね。

寺田 『PXZ2』の制作前に打合せができれば、『サクラ大戦』シリーズのボツネタとかも使ってもらえたかもしれませんね。

森住 そういった隠しネタ的なお話は、ほかのメーカーさんからもいただいたことがありました。ただ、ユーザーの方は発売されたゲームしか遊ばれていないので、そこを中心にピックアップしています。

塚中 ボツネタや裏話の部分は、公式で取り上げていただいたほうが、ファンの方もよろこばれると思いますからね。『PXZ2』は各メーカーさんにキャラクターをお借りしている作品なので、基本的に原作の領域を超えないようにさせてもらっています。

寺田 バトルシーンは原作を超えまくってますけどね(笑)。

森住 その部分は『PXZ2』の売りのひとつですからね(笑)。その場合もきちんと各メーカーさんへ確認は取らせていただいていますよ。「原作でやっていないことはやめてください」と言われることがなかったのは、本当にありがたかったです。

寺田 原作を忠実になぞられただけだと、見たことがあるものばかりになってしまい、ここまで楽しいものにならなかったと思います。シリアスもありながら、バラエティ要素もあったりと、遊び心で楽しくまとめてもらったほうがいいものができると思ったので、いろいろな提案を受け入れさせていただきました。

――そういえば、『サクラ大戦』シリーズって生身では戦っていないですよね。

寺田 『サクラ大戦』シリーズは、光武に乗って戦う部分が作品の特徴でもあるので、それを活かすためにも生身での戦闘はあえてゲーム内で行わないようにしています。『サクラ大戦2』で、敵が帝撃に進入するシーンがあったのを覚えていますか。あの場面で、生身の戦闘をやる話も当時あがったんですよ。ただ、生身で戦えるのなら光武に乗る必要性がなくなってしまいかねないので、取りやめになりました。ですので、『サクラ大戦』シリーズのキャラクターたちが生身で戦うシーンが見られるのは、『PXZ2』ならではですね。

森住 『ドラマチックダンジョン サクラ大戦 〜君あるがため〜』だけですよね。生身で戦っているのは。

寺田 あの作品はそういうスタイルのゲームでしたからね(笑)。

――そんな生身で奮闘するさくらたちに関して、シナリオ面では気を使った部分はありますか。

森住 ストーリー的には大神とさくらの出張物語として描いているので、巴里と紐育の部分を掘り下げています。先ほど話に出た“夜のシャノワール”以外に、復活した“オーク巨樹”のなかでの闘いや、紐育編にあった“リトルリップ・シアター”のまえで、押し寄せる敵たちの進入を防ぐ場面も再現しています。『PXZ』ではエリカが大神にアタックを仕掛けることもなかったですが、今回は『サクラ大戦3』をベースにしているので、積極的に仕掛けるようにもしています。

寺田 シナリオ面でいうと、原作の“体が勝手に……”ってやつがあるじゃないですか。『PXZ』でもメインシナリオ中はとくになかったので、今回もないのかなって思っていましたが、しっかり再現されていましたね。あそこまで本気でやられるとは思いませんでした(笑)。

森住 「本当の“体が勝手に……”を見せてやる」ですね(笑)。前作でもスキルとしては取り入れていたのですが、今回はシナリオで取り上げさせてもらいました。監修もしっかりとしていただきましたね。例のヤツを(笑)。

寺田 あんなに大勢を一気に見たのは初めてですね(笑)。

一同 笑

森住 すべて、大神の力によるものですね(笑)。

寺田 改めて「大神ってシリアスも、ギャグも、なんでもできておいしいキャラだな」って思いました。隊長として、いろいろなところに引っ張っていきますよね(笑)。

森住 そんな部分も含めて、『サクラ大戦』シリーズは『PXZ2』のなかでも大きなウェイトを占めてもらっていますね。せがた三四郎とのCM再現もあり、その後のシナリオもありと、見どころも盛りだくさんになっています。

寺田 髑髏坊のように、コメディ部分の再現もきっちりとしてもらっていますよね。

――ここまで話を聞いた限りでは、全般的にコミカルの比重が多い印象を受けますが。

森住 全編を通してコミカルなわけではなく、締めるべきところはきちんと締めています。ただ、『PXZ』と比べると、その割合が増えているということでしょうね。

――同じセガさんの作品でも、『Shinobi』の秀真にはなさそうな要素ですよね。

森住 秀真や、『ストライダー飛竜』の飛竜にはない要素ですね。このふたりのようにふざけたことをするべきでないキャラクターもいるなかで、『サクラ大戦』シリーズはシリアスもでき、コミカルもまかせて大丈夫というオールマイティさが魅力です。『サクラ大戦』シリーズのファンの方たちも、彼らがコミカルな活躍をしても納得していただけると思うんです。ジェミニも、大神とさくらとエリカの三角関係に茶々を入れるコミカルな役割もありますし、蘭丸とのシリアスな絡みも用意されています。

寺田 僕としては、そろそろ新次郎に出てきてほしいなと思っているんですよ。新次郎もいろいろなワザを持っていますからね。信長を呼び出したりとか。

森住 信長を呼び出しても大丈夫なんですか(笑)。

寺田 どうでしょう(笑)『PXZ』の次回作では、ジェミニ・新次郎のペアも見てみたいですね。

森住 ますます『サクラ大戦』シリーズのキャラクターが増えてしまいますよ。その場合、一郎叔父さんはお休みですかね(笑)。

寺田 一部、敵に回してしまえばいいんじゃないですか。

森住 さくらが滅・波動拳を打ち込まれるようなことになってもいいんですか(笑)。

寺田 大丈夫ですよ、打ち返すので(笑)。そういった部分は今後に向けてのお楽しみですね。

森住 もし、次回作を作ることがあったら、考えさせていただきます。『PXZ2』では、バトルには参加しないNPCとして登場するキャラクターもいるんですよ。『エンド オブ エタニティ』のガリジャーノンなどがそうですが、NPCとしてシナリオに絡んでくれるだけでも深みが増してくるというご意見もユーザーの方からいただいているので、そういったポジションで『サクラ大戦』シリーズのキャラクターを登場させるのはありかもしれないですね。今回もなんとかして、メルとシーだけでも入れられたらよかったんですけど。

寺田 『サクラ大戦3』をベースにしているのなら、登場してもらってもよかったですよね。

森住 でも彼女たちを登場させると、今度は『サクラ大戦』シリーズのキャラクターが多すぎるって声が出てくるかもしれないんです。

寺田 どのユーザーさんに対しても最適なバランスを取るのって難しいですからね。それならいっそのこと、森住さんが『サクラ大戦』のシミュレーション・RPGを作るというのはどうですか?

森住 それは『サクラ大戦6』ですよね。セガさんの仕事じゃないですか(笑)。

寺田 たしかにそうですね(笑)。もともとこちらのバトルもシミュレーションでした。

――ちなみに『サクラ大戦』シリーズで、今後の予定としてお話できるものはあるのでしょうか。

寺田 残念ながら、現時点でお話できるものはないんです。でも、私的にはいろいろなチャレンジをしていますので、いつか新しい形をお見せできればと思っていますね。

――寺田さん自身はいま、何を手掛けられているんですか。

寺田 ちょうどいまは、『PXZ2』のようにキャラクターがたくさん登場する2D対戦格闘ゲームの『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITION』を作っています。ですので、僕もどのキャラクターをチョイスするかという苦しみは痛いほどわかっています(笑)。こちらもお祭り的な賑わいを楽しめる作品なので、応援してもらえればうれしいですね。

――それでは、最後になりましたがユーザーの方たちにコメントをお願いします。

寺田 『PXZ2』のなかでは、『サクラ大戦』シリーズを非常に丁寧に扱っていただいています。ストーリーやバトルから、お楽しみまで、いろいろな部分で原作を再現してもらっているので、『サクラ大戦』シリーズのファンはもちろん、そうではない方もこの格好いい、そして可愛くておもしろいキャラクターたちに触れて、『PXZ2』を楽しんでいただければうれしいです。

『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』メーカーの垣根を越えた開発者クロストークインタビューを公開【第五回】_06

 『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』特設サイトでは、作中に登場する作品の原作とキャラクター紹介や、クロストークインタビューを随時更新しながら公開していく。製作時のさまざまなエピソードが飛び出したクロストークの第六回目は、11月11日15時に公開予定。『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』に関するニュース情報もまとめて見ることが可能となっているので、これからも要チェックだ。
『PROJECT X ZONE 2:BRAVE NEW WORLD』特設サイト


バンダイナムコエンターテインメント
メーカー バンダイナムコエンターテインメント
対応機種 3DSニンテンドー3DS
発売日 2015年11月12日発売予定
価格 通常版:6640円[税抜]、限定版“オリジナルゲームサウンドエディション”:9980円[税抜]
ジャンル シミュレーション・RPG
備考 開発:モノリスソフト/プロデューサー:塚中健介/開発プロデューサー:石谷浩二/開発ディレクター:森住惣一郎/パブリシティキャラクターイラスト:森岡聖人  CERO:B(12歳以上対象)