【記者日記】大阪·関西万博 石の休憩所の設計者は施工業者の息子?
かわすみかずみ
万博協会は2022年3月16日から「2025年日本国際博覧会休憩所他設計業務」として、若手建築家を対象に会場内のトイレや展示施設、休憩所などの設計者を公募した。休憩所2(石の休憩所パーゴラ)の設計者に選ばれたのは工藤浩平氏だった。選考は一次審査(書類審査)と二次審査(質疑応答)があり、「プロポーザル方式」で行われた。プロポーザル方式は企業や個人が企画提案を行い、行政などが採点して企画を決定する。各社の企画内容などがほとんど開示されず、談合や癒着の温床になりやすい。情報開示を求めると、行政機関などは、「企業や個人のノウハウに関わることであり、競争上の不利益になるため公表できない」と言うのが常だ。
不可解な入札
工藤浩平氏の父親である工藤源聖(げんしょう)氏は、秋田県で「住建(すみけん)トレーディング」という建設会社を営む。住建トレーディングは息子が設計した休憩所の建設を請け負った。2023年11月1日に開札された同業務は、入札が住建トレーディング1社で、予定価格である4億2千200万円で落札している。
住建トレーディングが下請けとして雇った株式会社商建は、住建とともに工事のずさんさや未払いで下請け業者から訴訟を起こされている。
秋田同友会と自民党の怪しい関係
秋田県選挙管理委員会によれば、住建トレーディングは2016年から現在まで、毎年自民党秋田県第一選挙区支部に12万円を献金している。同社は秋田経済同友会に加入している。同友会の代表幹事の1人であるユナイテッド計画(株)の代表取締役CEO·平野久貴氏は、2023年に個人名義で6万円の寄付をこの支部に行なっている。副社長の平野公貴氏も同時期に6万円を献金している。この他カローラ秋田会長の伊藤哲之氏(秋田経済同友会会員)も献金を行なっている。
秋田経済同友会は設立趣意書の中で「地方と地方、地方と中央の親密なパートナーシップづくりが極めて重要であります」と書いており、中央とのパイプを重視していることが伺える。
自民党秋田県第一選挙区支部の支部長は衆議院議員の富樫博之氏だ。富樫氏は2014年に衆議院議員に当選。第3次安倍政権時は2016年から総務大臣政務官を務めた。菅政権では2020年から自民党副幹事長を務め、現在は総務副大臣。万博の誘致期間は2014年から18年で、誘致に積極的に関わったのは、安倍菅政権だった。つまり、富樫氏が、万博を誘致し開催にこぎつけた重要人物と深い関わりがあることや、誘致期間や開催前に重要なポストにいたことは明らかだ。
秋田市議·工藤潤平氏は何者か?
工藤潤平という議員がいる。秋田市議会議員で現在2期目に入る。潤平氏は自身のフェイスブックなどで、三和建設に勤務後、富樫博之氏の秘書として活動し、秋田市議になったとプロフィールに書いている。
住建トレーディングは、敷地内で「秋田ロク·フットボールクラブ」を運営をする。会長兼代表は工藤源聖氏で事務局は住建で総務部担当者の長沼恵氏だ。同フットボールチームのブログには、チームの前身である南FCの卒団生の工藤潤平が『ワールドサッカーキング』という雑誌に載ったことが書かれていた。そこには、「工藤潤平(会長の次男坊!)」という記述があった。立正大学サッカー部の一員として写っている工藤潤平氏は、政治家の現在とはかなり違って、スポーツマンらしい感じだった。
万博会場の休憩所1,2を設計した工藤浩平氏と秋田市議工藤潤平氏が兄弟であることは、上記の事実から明らかだ。また、工藤源聖氏と秋田市議工藤潤平氏、衆議院議員富樫博之氏の関係性には、何か引っかかりを感じざるを得ない。


コメント