かわすみかずみ

山口県にあるＩ社は、元請けである住建トレーディングの3次下請けとして、休憩所1、2の工事を請けた。1次は、住建トレーディングから、直接依頼を受けた大阪の（株）商建であった。Ｉ社は、協力関係にあった2次下請けE社の依頼で、1次下請けである（株）商建の下で、「工期の厳しい、大工工事を手伝ってほしい」と言われ、休憩所2の工事を手伝った。

休憩所2は、石の休憩所パゴーラで、クレーンで大きな石を吊り上げるなど、危険な現場状況であった。

工事に入ると、一般的な工事ではあり得ない状況だった。元請けが手掛けた基礎工事の精度が悪く、水平がとれていない、また型枠の強度が弱く、水平面も側面も水平垂直が、デタラメであった。そのよう状態でもＩ社は、手直しを加えながら工事を進めた。また、設計変更も多く手待ちになる事も多かった。

水平取れない基礎·素人同然の現場

当初は休憩所2を仕上げるだけの予定であったが、「休憩所1が間に合わないので行ってほしい」と言われた。休憩所1の工事も手伝う事になった。

現場では、休憩所1、2とも、元請けが作成するはずの施工図面は作られていなかった。図面上で打ち合わせをしながらミスが無いようにするのが建設現場のセオリーである。その上、元請けの住建トレーディング、設計を行なった工藤浩平設計事務所の仕事は遅れていて、ドアの資材が入ってきたのは昨年12月だったと、Ｉ社はいう。住建は現場の段取りができていない上、休憩所2では施工体系図も設置されていなかった。施工体系図は元請けから末端の下請けまでの名前などが書かれたもので、事故などの際に責任の所在が分かるようにしているものだ。

Ｉ社が建物を建てる段になって、基礎工事の状況を確認した。基礎は水平が取れていなかった。また、上に建てる建物の幅に合わせて作るはずの基礎が、建物からはみ出す形になっており、建物を基礎に合わせて変えないといけなくなった。
また、本来は商建が用意するはずの釘などの必要品もＩ設計が自腹で調達。元請け、一次共、現場経験のない素人のやり方だったと、Ｉ設計はいう。休憩所2は竹中工務店が安全確認などの見回りをすることになっていたが、これらの状況を見逃していたのではないか? とＩ設計は語る。

未払いが起こるとは思っていなかった

万博協会が発注者だったこともあり、トラブルが起きることなどないと思っていた。しかし、商建は、Ｅ社に8月，9月、10月の支払いを行なったものの、11月から12月までの支払いはなかった。未払い額は400万円を越えた。休憩所の工事に入った職人には事情を話して支払いを減額して待ってもらった。Ｅ社はＩ社に債権を譲渡。Ｉ社が商建と交渉することになった。

万博協会に相談にいくと、「元請けに、言っときますね」と言ったきり音沙汰なかった。商建と交渉したが進展はなかった。その上、「住建さんとのやりとりはしないでください」と言われた。Ｉ社が商建に「お金払ってください」と詰め寄ったところ、「これも商売やからな。弁護士を使って払わなくて済む方法あるんや」と開き直ったという。Ｉ社は（儲けさえ出れば何でもいいのか? 情けない）と思ったそうだ。未払い金について住建トレーディングに相談しても、商建の肩を持ち相手にされなかった。また、国交省に相談しているが、解決には至っていない。

筆者は株式会社商建に事実確認をするため電話した。事務員と思われる女性が出た。「担当者をお願いします」というと、「担当者っていうのはどういうことか分からないので、どうしていいか分かりません」という。「それってどういう意味ですか? 」と聞くと、「社長という意味か、現場担当者という意味か分からないので」というので、「社長をお願いします」と指定した。事務員らしき女性は、「社長は今いません」と言う。「いつ帰ってくるんですか」と聞くと、「分かりません」と答えた。

元請けを訴える

Ｉ社は今年7月、住建、商建を山口地裁に訴えた。工事代金406万円の支払いを求めてのものだ。9月4日が被告の出頭日となっていたが、被告は8月21日に「管轄の裁判所が違う」という理由で移送申し立てを行い、期日を引き延ばそうとした。山口地裁はこれを認めず、山口での口頭弁論を行うことになった。第一回口頭弁論は、11月6日に決まっている。

Ｉ社は、「万博協会の中に、工事中の不正を取り締まるところや監督指導する部署がなかったため、協会が逃げ回っている。これを改める機会にしてほしい」という。工事の不正については、今後も追及していきたいと述べた。