BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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続きました。
アビドス3章でございます。

シナリオを見返してると、某掲示板とかでいろいろ言われてたのがちょっと分かった気がします。
色々投げっ放しじゃんねコレ!?
絶対ホシノとヒナの殴り合いがやりたかっただけだよねコレ!?
すっごいカッコよかったけど!!


アビドス3章
46.New Composition


 ブラックマーケットのどこかから、いくつもの破裂音と怒声が響き渡る。

 それだけであれば、ブラックマーケットはおろかキヴォトスではごく普通の光景だ。

 流れ弾を貰わないように、銃声から離れるだけでいい。

 ただ違うのは、誰かから恨まれた不運な奴らがいた、という事か。

 

 「クソッ!!連中がカラスを雇ってるなんざ、聞いてねぇぞ!!」

 

 「もうすぐあの女が来る!それまで持たせろ!!」

 

 銃座に据え付けられた重機関銃の弾幕を、左手で掴み上げた生きた盾に任せ、脇に回り込もうとする連中をハチの巣へ作り変える。

 3人をLMGで落とした後は、盾を構えて銃座に向けて突進。

 ソ連規格の12.7mm弾に叩かれる盾が呻いている気がするが、気にせず全力疾走。

 銃手の隣にいた1人がグレネードのピンを抜き、投げつけんと腕を振り上げるが、グレネードが手から離れる前に盾を置き去りにして飛び上がる。

 空中で体をひねりながら、LMGで銃手を、ショットガンでグレネードを撃ち抜いて無力化。陣地の背中側へと着地する。

 残りは、怯え切ったギャングが5人。楽勝だ。

 

 『敵増援が1人、急速に接近中。手早く片づけましょう。』

 

 銃をベルトに引っ掛けて、身を屈めながら急加速。銃座の盾に足をかけ、重機関銃のグリップを掴んで強引に引き剝がす。

 相手は制圧射撃を諦め全員遮蔽に隠れたが、50口径の前では無意味な事。

 ゆっくりと前進しながら、木やコンクリートの遮蔽物ごと1人1人撃ち抜いていく。

 重機関銃特有の重厚な反動が両腕の中で暴れるが、それを銃身を上から握る事で押さえつける。

 多少熱くなるが気にしない。もしグローブが溶けていたら、交換すればいいだけの事。

 

 「これでも食らいな、クソアマァ!!!」

 

 何処から取り出したのか、隠れていた最後の1人がロケットランチャーをこちらに向けてきた。

 もはや攻撃警告が出る前に、重機関銃を捨てて左へ回避。

 そもそも狙いも甘かったのか、弾頭は置いてきた影の右肩をかすめるように飛翔し、コンクリートにぶつかって爆散した。

 逃げようとする一歩目が踏み出される前に、顔面を左手で掴んでコーラルを充填。

 群知能に干渉して指向性を持たせ、コーラルの雷を左腕に沿わせて放つ。

 コーラルによる干渉を逃げ場も無く喰らったギャングはびくりと痙攣した後、全身から力が抜けて、握っていたランチャーを落とした。

 威力を絞っていたとはいえ、数分の記憶は飛んでいるかもしれない。己の不運を恨めと、心の中で言葉を贈る。

 そのまま手を離し、こちらに近づいてくる1人に備え、両手にLMGとショットガンを握る。

 

 『敵勢力の殲滅を確認。あとは、ブルー・マグノリアを。』

 

 その警告の直後、天井の採光窓を突き破って現れるマグノリア。

 SMGの弾幕を後方に飛び退きながらかわし、両手の銃を向けてマグノリアの動きを待つ。

 ごく普通に立ち上がりながら、悪意はなく純粋に闘気に満ちた目線を向ける彼女。

 キヴォトス事変以来に出会ったマグノリアは、静かに微笑んでいた。

 

 「久しぶりね、レイヴン。あの戦争以来かしら。」

 

 「確かに、久しいな、マグノリア。だが、お前がここに居るという事は……。」

 

 「……決着をつけましょう。ここなら邪魔も入らないわ。」

 

 俺とマグノリアが最初に出会った時、その決闘の決着はマーケットガードの横やりが入ってついていなかった。

 依頼を出してまで戦おうとすることは無かったが、心残りではあったらしい。

 俺が請け負っている依頼は、指定ポイントの敵勢力の掃討。今ここに居る彼女もまた、排除対象だ。

 

 「……良いだろう、遊ぼうか。」

 

 「そう来なくちゃ……!」

 

 銃を軽く下ろして構えを取った瞬間、マグノリアの闘気が一気に殺意へと変わり、殺意が圧力としてのしかかってくる。

 今の所、彼女以外からは感じることの無い、強烈なプレッシャー。

 互いに睨み合いながら、相手の動きを予測し、どう対処すべきかを考える。

 武装はリニアライフルとSMG。1度へし折った左腕は健在。恐らく仕込まれているランチャーも。

 機動力を生かす戦術は変わっていないだろうが、ともすれば全盛期の技量を取り戻しているかもしれない。

 永遠に近い約3秒の睨み合いの末、先に動くことを選んだのは俺だった。

 左腕を持ち上げ始めた瞬間、チャージされたリニアライフルを向けようとするマグノリア。

 あとコンマ1秒で引き金が引かれ、殺し合いが始まる。オープン回線から通信が入ったのはその時だった。

 

 『そこまでだ、マグノリア。奴と戦う必要は無い。撤退しろ。』

 

 「彼女は逃がしてくれるような相手じゃない。それでも背を向けて逃げろと?」

 

 『そうだ。既に味方部隊は壊滅している。これ以上の戦闘は無意味だ。撤退しろ。これは依頼主としての命令だ。』

 『安心しろ、報酬は支払う。』

 

 「……了解、撤退する。」

 「決着はまた今度よ、レイヴン。それじゃ。」

 

 マグノリアは渋々リニアライフルのチャージを解除し、大きくため息をつきながら帰っていく。

 相手が撤退した以上、俺や依頼主が戦う理由はないので、覇気が消えて少し小さくなった背中を見送った。

 こういう事は、傭兵同士だとたまにある。

 特に、依頼主が傭兵同士の潰し合いを目的に二重依頼を出している時などは、傭兵が手を組んで違約金の徴収に向かう事だって珍しくない。

 

 『奴らは全員撤退したようだな。レイヴン、よくやってくれた。』

 『しかし、意外だな。君が戦わずに相手を逃がすとは。』

 

 「マグノリアの実力は理解している。まともに戦えば、お互い無事では済まない。俺は出来るだけ、無事でいたいだけだ。」

 

 『少なくとも感傷ではない、か。見事なプロ意識だな。私も見習わなくては。』

 『依頼はこれで完了だ。1度戻ってきてくれ。報酬を用意してある。』

 

 「了解した。そちらに向かう。」

 

 辺りを見渡せば、沢山の弾痕が刻まれた瓦礫と、ピクリとも動かない死体の山。

 依頼主が満足しているなら、俺もこれ以上働く必要は無い。

 依頼主が待っているバーに向かい、酒を呷っていた当人から、現金一杯のブリーフケースを受け取る。

 一緒に酒も勧められたが、フィーカの方が好きだと丁重に断った。

 バーを出た後、エアが操縦するストーカーに乗り込み、1杯のフィーカと共に積み込んでいるレーションを食べ、簡易ベッドで眠りにつく。

 独立傭兵レイヴンの何でもない日は、こうして終わる。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 目が覚めてまず認識するのは、窓から差し込む日の光と鳥のさえずり。

 今日もいつも通り、日の出から少し遅れて起床する。

 ストーカーは何処かの空き地に停めているのか、揺れやエンジン音も感じない。

 カバーと呼んで差し支えない毛布を剥がし、体を起こす。

 

 『おはようございます、レイヴン。よく眠れましたか?』

 

 「ああ、おかげさまでな。何か連絡は来ているか?」

 

 『先日の依頼達成に、感謝のメッセージが届いています。律儀な依頼主ですね。』

 『それと、指名依頼が複数届いています。ただ、一部は罠の可能性が高いため、弾いておきました。』

 

 「いつも通りの朝だな。」

 

 エアの報告を聞きながらバーナーで湯を沸かし、ステンレス製のマグカップに粉末のフィーカを入れる。

 ミルクが多めの、少し甘いフィーカ。お湯を入れマグカップを軽く回してフィーカを溶かす。

 溶け残っていてもまた回して溶かせばいい。

 簡易ベッドに腰掛けてフィーカを1口すすった所で完全に目が覚めた。

 それと同時に、視界の端のメッセージ欄に、見慣れない差出人が映っていた。

 

 『……もう1つ、アビドスから知恵を貸して欲しいとメッセージが届いています。』

 

 「奴らから?依頼ではなく?」

 

 『はい。どうやら、また企業絡みの問題が発生しているようです。』

 

 「確認する、表示しろ。」

 

 差出人は、アビドス廃校対策委員会、奥空アヤネ。

 内容をまとめると、カイザーが債権としてアビドスの土地や鉄道関連施設の所有権を売り出したが、取引開始から1分足らずでそれを全てネフティスが買い占めた。

 取引自体は公開されており、対策委員会もアクセスすることが出来たが、結果は前述の通り。

 同時にハイランダーが事前に告知をすることなく、アビドスで路線開発を強行。

 ハイランダーはネフティスからの業務委託を受けていると主張している。

 先生もこの状況を把握しているが、次の手を決めあぐねているとの事だ。

 

 「……ネフティスがカイザーの債権を買い付けた、か。」

 

 『事前に通知されていたとはいえ、買い付けが早すぎます。何より、ネフティスがアビドスの土地を買ったところで、活用できるとはとても思えません。』

 

 ネフティスは元々、キヴォトス有数のメガコーポだったが、アビドスでの事業失敗を機に規模を大きく縮小。

 それでもグループとしての体裁を保てる程度には大きい企業ではある。

 そんなネフティスが、死にかけのライバル企業が売り出した、何の利益も見いだせない土地と設備に対して、莫大な資金を投じている。

 短期長期を問わず、利益を上げる事を命題とする企業が、文字通り金を砂漠に捨てるような真似をしたのだ。

 異常事態と見て間違いない。

 まず頭に浮かぶのは、何故この取引が行われたのかという前提。

 

 「……談合か。」

 

 カイザーが売る債権を、ネフティスが全て買い取る事が事前に決められていた、という事。

 カイザーはキヴォトス事変後の復興を請け負ったことで倒産自体は回避したものの、信用が地の底に沈んだことで経営は火の車。

 アビドスをやるから金をくれと、ネフティスに無心したのだろう。

 そしてネフティスは、その提案に何らかの利益を見出しているはず。それも恩などといった、決して安い利益ではない。

 

 『ネフティスが債権を全て買い付けたとなれば、そうみて間違いないでしょう。同時に、ハイランダーがアビドスで活動を始めたのも――』

 

 「ネフティスがハイランダーのスポンサーとなっているからか。奴らはネフティスの手駒だな。」

 

 ネフティスの警備員を直接動かせば、アビドスだけでなく世間からも怪しまれる。

 少なくとも、アビドスに対する直接的な責任を回避するために、ハイランダーに業務委託を行ったのだろう。

 だが問題は、ネフティスが買い取った土地は、カイザーが放棄した拠点にほど近いのだ。

 ハイランダーがカイザーの拠点群に接近すれば、カイザーがアビドスに戻ってくる理由などいくらでもこじつけられる。

 もしカイザーがハイランダーに対し攻撃すれば、スポンサーであるネフティスも安全確保を理由に動くことが出来る。

 

 『レイヴン、どうしますか?シャーレが介入すべき問題だと思いますが……。』

 

 良い方に考えるなら、アビドスというパイを分け合うための盛大な茶番劇。

 悪く考えるなら、アビドスを戦場とする企業同士の全面戦争。

 どちらの想定も、互いのトップが怒鳴り合いながら、机の下で固い握手をしている事は共通している。

 

 「シャーレに連絡を取る。エア、アビドスに向けて飛べ。」

 

 『了解。ストーカー、エンジン始動。離陸します。』

 

 ストーカーのタービンエンジンが唸りを上げると同時に、僅かに冷め始めたフィーカを一気に呷る。

 マグカップを足元に置いて先生に通信を繋ぎつつ現在地を確認。

 今はゲヘナ外れの空き地に停まっている。ここからアビドスの校舎まで、おおよそ4時間で行けるはずだ。

 

 「シャーレ、こちらレイヴン、聞こえるか。」

 「……シャーレ、こちらレイヴン、応答しろ。」

 

 先生との通信は繋がったものの、ゴソゴソと音がするばかり。

 少し考えてから今が夜明けから間もない時間である事を思い出したが、この際なので無視して声を掛け続ける。

 いよいよ『起きろ役立たず!』と怒鳴りつけてでも起こそうかと考え始めた時、ようやく先生の眠たげな声が聞こえてきた。

 

 『”うぅん……。おはよう、クロハ……。どうしたの?”』

 

 「シャーレ、アビドスからのメッセージを確認した。十中八九、カイザーとネフティスの談合だ。奴らがアビドスに何を求めているのかは分からないが、放っておくと面倒な事になるぞ。」

 「俺は今アビドスに向かっている。そちらの状況は?」

 

 『”メッセージ、見てくれたんだね!クロハがこっちに来るってみんなに伝えるね!”』

 

 「話が早い、そうしてくれ。あと4時間でそちらに向かう。」

 

 『”分かった、気を付けてね!”』

 

 通信を切る直前にバタバタという音が聞こえてきたので、先生の方も完全に目が覚めたのだろう。

 意図せずしてモーニングコールとなったようだ。

 ベッドの下から携帯レーションが入った弾薬箱を取り出し、中からさらに箱を取り出して、中に入っている硬い棒状のビスケットをかじる。

 岩でもかじっているかのような硬さで、決して食べやすいとは言えないが、腹持ちが良くカロリー密度も十分。

 ビスケットをガリガリとかみ砕き、一口目を飲み込んだ所で、ストーカーが宙に浮き始めた。

 

 「全く、カイザーの次はネフティスとは……。」

 

 『私は何だか慣れてきました、レイヴン。』

 

 「ああ、俺もだ……。」

 

 神を信じているわけではないが、アビドスは1度、浄化の儀式でもした方が良いと考えてしまう。

 何かが引き寄せているのでない限り、こうもトラブルが寄り付くことがあるものか。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ストーカーを校舎近くの空き地に停めて、外に出る前に装備を確認。

 LMG、ショットガン、リボルバー。フラッシュバンとスモークグレネードが3つずつ。

 新品の防弾ジャケットとグローブ。予備のマガジンも給弾済み。

 普段通りの、持てる道具を満載した装備。いつでも戦える状態である事を確認してから、後部ハッチを開けて外に出る。

 校舎に入って階段を上り、3階にある対策委員会の部室に、特にノックなどはせずに入る。

 既に対策委員会のメンバーが全員集まってると知らされているためだ。

 扉を開ければ、確かに対策委員会の5人と、書類上は直属の上司である、シャーレの先生がいた。

 

 「アビドス、全員居るようだな。」

 

 「クロハちゃん、久しぶり!」

 

 「こんな状況じゃ無ければ、みんなでご飯を食べに行くんですが……。」

 

 ノノミがそう呟くのに合わせて、ホシノは小さくため息を吐く。

 状況をまとめようとしたか、先生が口を開こうとした直前にセリカが俺に詰め寄ってくる。

 この場にいる全員が、カイザーとネフティス、そしてハイランダーの真意を知りたいと思っているのだろう。

 机に広げられた地図には色分けがされており、僅かだが、確かに空気がピリついている。

 

 「ねえ、カイザーとネフティスが談合してるって本当なの?あいつら、何でそんな事するわけ?」

 

 「でも、それで間違いないと思うよ、セリカちゃん。ネフティスの動きが早すぎるもん……。」

 

 『恐らく、取引を公開していたのは、公正である事を証明するためでしょう。あなた達が取引の存在を知ること自体が、企業にとって想定外だったのかもしれません。』

 

 「気になるのは、どうして今ハイランダーも一緒に動いてるのか。もし本当に、カイザーとネフティスが談合をしてたとしたら、どうしてそんな事をしたのか、なんだよね。」

 

 「クロハ、どう思う?」

 

 アビドスに向かっている途中で考えていた仮説。

 ネフティスはカイザーとの直接衝突を避けている。少なくとも、今の所は。

 仮に茶番だとしても、わざわざアビドスを舞台に選んだ理由があるはず。

 カイザーとネフティス、双方に利益を生み出す方法があるとするならば、最も大きい可能性が1つ。

 

 「……企業冷戦かもな。」

 

 ”どういう事?どうして、カイザーとネフティスが?”

 

 『カイザーはクーデター計画のリークと、実質的最高責任者が逮捕された事で、経営難に陥っています。空中分解していない事が不思議なほどです。』

 『ネフティスはそれを好機と捉えたのでしょう。今回の談合で、カイザーは資金を得て、ネフティスはアビドスの土地を確保しました。』

 『そこで、ネフティスはまずハイランダーを派遣して開発を行い、カイザーはそれを妨害。当然ネフティスも応戦するでしょう。』

 『どちらも自衛を言い訳にアビドスへと進出し、基地を構えて睨み合い、強引に需要を作る事で利益を生み出そうというのでしょう。』

 

 「要するに、奴らはアビドスを劇場にした芝居をしようとしているのかもしれん。戦争は金が良く回るからな。」

 

 「……それって、私達が企業を抑える力がないから、わざわざアビドスを選んだって事だよね?」

 

 「そうだろうな。観客は少なく、警備員も最小限。クサい芝居をするなら最適の場所だ。」

 

 仮に本当に衝突することになっても、適当に殴り合ったあと、双方のトップが和解して、アビドスから撤退すればいい。

 カイザーとネフティスにとって、欲しいものはアビドスそのものではないのだから。

 残るのは、戦争で傷ついた者達と、誰も片づけないゴミの山だ。

 

 「あいつら!そうまでして金が欲しいわけ!?やるならせめて他所でやんなさいよ!」

 

 「ナメられてる……!」

 

 シロコは眉間にしわを寄せ、両の手を固く握り、セリカに至っては今にも地団太を踏みだしそうなほどに沸騰している。

 怒る元気があるのは結構だが、その体力はこれからのために取っておいて欲しいものだ。

 

 「それじゃあ、砂漠横断鉄道を買い取った事も……。」

 

 『ハイランダーが動く理由を作るためでしょう。ネフティスが直接動けば怪しまれますが、ハイランダーなら違和感なく動くことが出来ます。』

 

 「じゃあ、カイザーも、ネフティスも、ハイランダーも、全員グルって事!?」

 

 ”……どうだろう。少なくとも、ハイランダーはそこまで知らないんじゃないかな。”

 

 「同感だ。ネフティスにとって、ハイランダーは駒だろう。そして、駒が盤面全体を理解している必要は無い。」

 

 アヤネからの報告を信じるなら、ハイランダーはただ砂漠横断鉄道の開発業務を委託されたのみ。

 企業の連中が、実際の政治的なあれこれを、生徒に任せるとも思えない。

 チェスプレイヤーにとって、自分の意志で勝手に動くポーンなど、邪魔でしかない。

 勝負が八百長であれば、なおさらだ。

 

 ”ハイランダーは、ネフティスに巻き込まれただけかもしれない。情報が無いから、断定はできないけどね。”

 

 「無論、企業冷戦は予想に過ぎん。わざわざアビドスを選んだ以上、何を考えていてもおかしくは無いが。」

 

 「……クロハちゃん。実は今日、ハイランダーの監督官が来る予定なんです。もしかして、その子が……。」

 

 「……何とも言えん。だが、警戒するに越したことは無い。」

 「以降、ハイランダーの人間を見たらそいつはネフティスだと思え。奴らに情報を渡すなよ。」

 

 俺の言葉に対して、全員が何も言う事なく静かに頷いた。

 今の状況がどれだけ異常なのか、全員が分かっているからだろう。

 以前のカイザーに続き、ネフティスとも戦わねばならない対策委員会が、政治と戦争に慣れ始めているのを感じた。

 

 『それで、どんな話をする予定ですか?』

 

 「その、砂漠横断鉄道について、と言ってましたけど……。」

 

 『……ノノミ、何か言いたい事が?』

 

 エアがノノミに声を掛けた瞬間、全員の視線がもの憂い気な顔で目を伏せるノノミに集まった。

 そして俺以外の全員の目が、心配の色に染まっている。

 

 「……私は、元々ネフティスの人間なんです。しばらく、戻って無いんですけどね。」

 「もしかしたら、私から言えば、鉄道を取り戻せるかもしれません。ネフティスに帰ってもらう事だって――!」

 

 「それは得策じゃない。お前が今ネフティスの人間でないのなら、お前はアビドスの1人として数えられているだろう。戻った所で体よく使われるだけだ。」

 

 「……そう、ですよね。」

 

 思い出すのは、アビドスの身代わりに自身を差し出したホシノ。

 その時でさえ、アビドスに手を出さないという約束は守られず、むしろ直接侵攻してきたのだ。

 ノノミもそれを思い出したのか、大人しく引き下がった。

 時と場所が変わろうが、企業の人間がやる事など、欲に飲まれた人間がやる事など、変わらない。

 

 「でも、カイザーがアビドスを襲った時も、空が赤くなった日も、皆で乗り越えてきた。ノノミ、今回だって、きっと上手く行く。」

 

 「……そう。そうですよね、シロコちゃん!」

 

 「また企業がらみの話なんて、本当やんなっちゃうね。クロハちゃんはどう?」

 

 椅子に座ったまま机に上半身を預け、ぐでーっと伸びているホシノ。

 俺も机に両手をつき、体の力を抜く。

 

 「慣れてはいるが、最近は食傷気味だな。」

 

 「やっぱり?実はおじさんもでさ~。胸やけが酷くって~……。」

 

 「それじゃあ、話が終わったら、みんなでご飯を食べに行きましょうか!」

 

 ”良いね、賛成!”

 

 ふっと空気が緩んだタイミングで部室に響く、ベルを模した電子音。

 それが鳴るのは、校門に取り付けられたインターホンが押された時。

 再び全員の緊張の糸がピンと張られ、俺は部屋を出て窓から校門を確認する。

 そこに居たのは、藍色の制服を着た3人の生徒。ヘイローが見えているから間違いない。

 その後ろにキヴォトス人がもう3人。かっちりとした服を着てはいるが、現段階では識別不明。

 

 「チャイム?ずっと使って無かったのに、一体誰が……。」

 

 『噂をすれば、ハイランダーが3人、校門前にいます。加えてもう3人、こちらは所属不明です。』

 

 ”……お客さんだね。”

 

 「招かれざる奴も居るようだがな。」

 

 この6人が、恐らくネフティスの使い。何を要求してくるにせよ、こちらに答える道理など無いはずだ。

 エアに全員のスマートフォンのハッキングを依頼しつつ、何度も鳴らされるチャイムの電源ケーブルを引きちぎった。




存在そのものが企業殺しことレイヴンですが、今回はケツにいるのがあの老人ですからねぇ。
何だかよく分からないネフティスの役人とか、ハイランダーの監督官とか、動きが読めない奴らが多いのがレイヴン達にとってネックですかね。
まあ何とかなるやろガハハ!!!

――――――――――――――――――――――――――――――――

コーラルアーク

アサルトアーマーを発展させた、純コーラル攻撃。
コーラルの群知能に高度に干渉することで、コーラル爆発に指向性を持たせ、雷として放つ。
機械の電子回路や、生物の神経系に直接作用するため、絶縁装備や電磁波防護が意味をなさない。
アサルトアーマーと異なり、攻撃をかき消す事は出来ない。
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