BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL- 作:Soburero
今回も長い上に、色々と情報が多いので、ゆっくり読んでくださいな。
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「(前略)――だが、分かるよ。秘密は甘いものだ。
だからこそ、恐ろしい死が必要なのさ。
……愚かな好奇を、忘れるようなね。」
Bloodborne DLCより 時計塔のマリア
36.告解
本日のD.U.の天気は、1日中大雨。
既に日も沈みかけ、出かけていた生徒達も家に帰ろうかという時間帯。シャーレビルに向かう、レインポンチョを羽織った1つの人影があった。
その人影はビルに入ると、ポンチョを脱ぎながら真っ直ぐエレベーターに向かい、執務室がある階に真っ直ぐ上がっていった。
エレベーターのドアをくぐり、執務室の扉の前に置いてあった傘立てに、適当に畳んだポンチョを置く。
赤いヘイローを携えた彼女が中に入ると、書類と向き合っていた先生が椅子から立ち上がり、彼女を出迎えた。
”レイヴン、来てくれたんだね。雨で体冷えてるでしょ。シャワー使っていいよ。”
「気持ちだけ受け取っておく。」
”そっか。じゃあ、コーヒー淹れるね。”
先生はソファーにレイヴンを座らせ、自身の眠気覚ましも兼ねた、濃いめのコーヒーを淹れる。
お盆を持って戻ってきた先生は、なみなみと注がれたコーヒーカップをレイヴンの目の前に、お盆はそのままテーブルの中央に置く。
レイヴンはミルクと砂糖を2つずつ、先生はブラックのまま、コーヒーをすする。
しかし、レイヴンの眼は鋭く尖り、その間には深いしわが刻まれている。
「……いやに歓迎してくるじゃないか。」
『先生。何かあったんですか?私達を呼ぶという事は、話があるのでしょうが……。』
”……そう、だね。ちょっと、君と話がしたくて。”
レイヴンからの指摘を受け、少し眉尻を下げた先生。
先生はカップを置き、一拍子おいてから話し始めた。
”君の、過去について。”
「……それを聞いてどうする。俺の正体はどうでもいいんじゃなかったのか?」
事実、約一ヶ月前のアリウス分校制圧戦にて、ベアトリーチェと対峙した際、先生はこう言い放った。
『レイヴンの正体など、どうだっていい。』と。
しかし、先生には彼女について気になる点がいくつも残っていたのだ。
何故彼女は、C4-621という番号で呼ばれたのか。何故彼女は、野良犬と呼ばれたのか。
何故彼女は、ベアトリーチェに過去を触れられることを、あそこまで嫌ったのか。
”うっ……。ま、まあ、確かにああは言ったけど、でも……。”
”……やっぱり、気になっちゃったんだ。どんな経験が、君を作ってるのか。”
「……連邦生徒会の差し金、って訳でもなさそうだな。」
”うん。ただ、君の事を知りたいんだ。”
『相変わらずですね、先生。だから生徒達から好かれるのでしょうか?』
”あはは。そうだったら嬉しいんだけどね。”
気恥ずかしそうに笑う先生に対して、怪訝な表情でうつむくレイヴン。
彼女はため息を1つついてから、表情を変えずに話し始めた。
「……悪いが、俺については話せない事が多い。」
”……話したくない?”
「違う。俺達が抱えている情報は、かなり危険なものだ。それこそ、このキヴォトスを一変させてもおかしくないくらいのな。」
『……レイヴン、話してもいいのでは?ここにはもう、私達しかいません。それに、相手は先生です。誰かに話すという事もしないでしょう。』
『私達の正体を明かしても、問題ないと思います。』
”その……。話したくなかったり、話せないことがあったら、無理に話さなくてもいいよ。そうまでして知りたいって訳じゃ無いから。”
「………………。」
エアの言葉を受けて、再びうつむくレイヴン。考え込んでいるのか、その眼は僅かに動き続けている。
お互い無言の時間の後、彼女は普段とは異なる空気を纏いながら、おもむろに口を開く。
「……いや、伝えておく。色々なトラブルに最初に対処するのは、お前だろうからな。」
「初めに言っておくが、この事は一切他言無用だ。どこにも漏らすなよ。いいな?」
”分かった。約束する。”
「まずは、俺達の本名からだな……。」
彼女の憂い気な雰囲気を受けた先生は、反射的に姿勢を正し、レイヴンとの約束に頷いた。決して気楽な話では無いと、直感で理解したのだ。
一瞬だけ目を伏せてから、レイヴンとエアは、自分たちの過去を紡ぎ始めた。
「第4世代強化人間、識別番号C4-621。これが、俺の本名だ。」
『そして、私はAIではなく、コーラルという物質の中で生まれた、1つの波形。』
『Cパルス変異波形、その1人です。』
”強化人間……?変異波形……?どういう事……?”
強化人間、変異波形、コーラル。余りにも自身の知識と異なるその答えは、先生の思考を凍り付かせるには十分すぎる衝撃を持っていた。
その様子を見たレイヴンは、唐突に自分の前髪をかき上げた。その額には、頭を1周する縫合痕の様な模様が、うっすらと残っていた。
「……見えるか?これが証拠だ。」
『第4世代は、脳深部コーラル管理デバイスを脳に直接埋め込み、コーラルによって知覚を増幅された強化人間。開頭痕は、その名残です。』
「……まだ続けるか?」
レイヴンの告白、そのあまりのおぞましさに、先生は吐き気を催していた。
先生は、レイヴンの頭にあるデバイスの存在を知っていた。デバイスについて彼女達に聞いたとき、その答えは、事故による脳の損傷を補うため。
よもや、健常な脳を切り開き、知覚を強引に強化するためなど。
既にコーヒーしか混ざっていないであろう胃酸を、口を押さえ何とか喉で押し留める。
”……うん。大丈夫。ちょっと、びっくりしただけ。大丈夫……。”
”……まず、強化人間って、何なの?”
「俺の居た“外”は、アーマードコアやマッスルトレーサーと呼ばれる人型兵器が、戦場を支配していた。」
「特にアーマードコアは、優れたパイロットが専用の機体に乗り込むことで、戦況を一変させるほどの効力があった。」
「だが、優れたパイロットの適性を持つものは限られてる。さらに、機体の負荷への耐性や、戦況を見極めるセンスを併せ持つものは極稀だ。」
「だから、優れたパイロットを人為的に作り出すというアイデアが浮かぶのは、ある意味では当然の話だ。」
”それが、強化人間……!”
「俺が居た当時でも、最新は第10世代。コーラル代替技術によって、強化による人体へのダメージをほぼ抑えることが出来ている。」
「俺が施されたのは、第4世代の強化手術。コーラルを全身に行きわたらせる、リスクの高い旧世代の技術。」
「特に俺は、手が入っていない所が無いと言っていいくらい、強化されていた。」
「俺の戦闘能力は、俺が強化人間であることが由来だろうな。」
強化人間が強化される場所は、脳だけではない。骨格、筋組織、臓器類、神経系、その全てを、アーマードコアの操縦のために最適化する。
中でも旧世代型は、人間本来の機能が損なわれやすく、特に脳をコーラルに浸す関係上、人格の破綻が激しい傾向にあった。
コーラルを使用する旧世代型の特権だった、強化によるACとの適合率も、第8世代で凌駕された。
レイヴンが強化人間となった時には、第4世代は既に枯れた技術だったのだ。
”何で……!どうしてそんな手術を……!”
「さあな。俺も覚えてない。強化人間になる前の記憶は何もないからな。」
「だがありがちなのは、借金のカタの実験体行きだ。俺もそうだったのかもな。」
”じゃあ、君の本当の名前は……!?”
「……無い。そもそも、大体は戸籍がない連中が実験体になる。その場から消えて、強化人間になった所で、誰も気にしない連中がな。」
「不思議なものでな、過去が何もないと、それが消えたことを嘆くこともないんだ。」
旧世代型はその特性から、こう表現されることがある。
『脳を焼かれたCPU』
旧型の強化人間に戦術的価値など無く、部品として消耗される境遇を、端的に表した言葉だった。
彼女も例外ではなく、コーラルに脳を焼かれたことで、全ての記憶を失っていた。
”それなら、レイヴンって名乗っているのも……。”
「借り物の名前だ。俺は受け継いだと勝手に思っている。先代もロクな奴じゃ無かったが、今思えば、俺も大概だな。」
「……懐かしいな。1対3で殺し合って、俺が勝って、レイヴンの翼を受け継いだ。先代はいい腕をしていたよ。」
レイヴンが目を細めながら思い出したのは、独立傭兵集団“ブランチ”との戦いだった。
シャルトルーズとキング、レイヴンは上位ランカー2名を相手取り圧倒。その後、ブランチの増援として駆けつけた、“先代”との一騎討ち。
炸薬によって加速された杭をかわし、パルスブレードをコックピットへ突き立てた事が決め手となった。
数々のおぞましい事実により、既に満身創痍であった先生は、震える声でエアに問いかける。
”……エア。レイヴンは、“外”でどういう仕事をしてきたの……?”
『……今とそう変わりません。ただ、誰かが死ぬのは当たり前でした。レイヴンも、例外ではありません。』
”何で……!どうしてそんな仕事を……!”
レイヴンは左手のグローブを外し、メスが入った後の残る手を回して、手のひらを空へと向ける。
すると、その上に赤い光が集まり始めた。その光は、互いに引かれあい、集まり、静かにスパークを放つ。
光が1つの小さな球体となった時、レイヴンはゆっくりと口を開いた。
「見えるか?これが、コーラルだ。辺境の惑星、ルビコンに存在した資源だ。」
「高いエネルギー密度に加え、情報導体としての特性や、人体との親和性も併せ持つ。」
「何より、コーラルは自ら集まり、自己増殖する特性がある。まさに、夢の資源だろう?」
「俺は、コーラル争奪戦の尖兵として、ある男にルビコンへ送り込まれた。」
”……まさか、その男って……!”
コーラルを指先で転がし、手のひらの上で1周り大きくした後、先生の問いを受けて、レイヴンはコーラルを握りつぶす。
彼女はコーラルを再び自身の体へと取り込み、怒りをにじませる先生に向き合った。
「ハンドラー・ウォルター。俺の、かつての主だ。」
「……お前の言いたい事は分かる。自分の富のために人を犠牲にしてきたのか、とな。」
「だがな、それだけを考えている男が、手駒にこんな言葉を掛けると思うか?」
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『この惑星でコーラルを手にすれば……。お前の様な、脳を焼かれた独立傭兵でも、人生を買い戻せるだけの大金を得られるはずだ。』
『よくやった、621。仕事は終わりだ。帰投しろ。』
『4脚タイプをやるか……。手慣れたものだな、621。』
『ストライダーの護衛は出来なかったが、今回は不可抗力だ。背景はこちらで洗っておく。621、お前は戻って休め。』
『戻るまでの指示を出す。しばらく休め。それがお前の、今すべき仕事だ。』
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エアによってハッキングされたモニターから、初老の男性の、嗄れ声が聞こえてくる。
冷酷な厳格さを纏いながら、誰かを思いやる心が滲む声だった。
レイヴンにとって、かつての主であり、恩人の声。エアにとって、自身の願いによって、パートナーに裏切らせてしまった人の声であった。
先生の険しい表情が、迷いのそれへと変わっていく。
「……それに、ウォルターの目的は、コーラルを得る事では無かった。」
「コーラルを焼却し、根絶する。たとえそれが、かつてルビコンを飲み込んだ、大火を再現することになったとしても。」
『ルビコンは1度、コーラルの炎によって燃えています。それが、“アイビスの火”。』
『その炎は、ルビコンだけでなく、周辺の星系までをも巻き込んだ、災禍の炎。もしウォルター達が、コーラルに火を付けていれば、アイビスの火以上の被害が出たはずです。』
『……ですが、私達はその選択肢を、拒絶した。人とコーラルの共生の可能性を、探ったのです。』
”待って、ウォルター達……?彼は1人じゃ無かったの?”
エアの言葉の一部の違和感、それに気づいた先生は、レイヴンとエアに問いかける。
レイヴンが常に放つ尖った攻撃性は鳴りを潜めており、ただ静かに、ただ穏やかに、己の過去を語っていく。
「……オーバーシアー。コーラルの危機を未然に回避するための、観測者たちの結社。ウォルターは、その生き残りの1人だった。」
「もう1人、シンダー・カーラと共に、無限に増殖するコーラルを焼却することで、コーラルによる全宇宙の汚染を、回避しようとしたんだ。」
「ルビコンに生きる者達全てを巻き込み、燃やすことでな。」
”そんな……。乱暴だよ!燃やさなくたって、もっと他に方法があったはず!”
『ウォルターやカーラも、きっとそう考えていたでしょう。しかしあの時は、コーラルを焼却する以外に、宇宙を守る道は無かった。』
『もしコーラルの増殖を抑えることが出来れば、その技術があれば、そもそも、アイビスの火すら起きていなかったと思います。』
「あの2人は、それが大罪である事を理解しながら、自分達の全てを支払いながら、友人達から受け継いだ使命を果たそうとしたんだ。」
「シャーレ、お前に同じことが出来るのか?自分がただ犠牲になるのではなく、むしろ自らの手で生徒達を殺し、このキヴォトスを守る事が出来るのか?」
レイヴンは先生に向けてそう問うた。以前のように、怒りを剥き出しにしてではなく、ただ静かに、先生の考えを聞こうとしていた。
先生は考えた。もし、自分が誰かを殺すことでしか、生徒達を助けられない時、自分は誰かを殺せるのか。
否、無理だ。自分は第3の選択肢を探ってしまう。誰も傷つかなくていい、第3の選択肢を。
しかし、ウォルターとカーラには、その選択肢を探る時間すら与えられなかった。故に、自分たちが、罪を背負う事を選んだ。
誰かのために死ぬのは、簡単だ。自分が死んでしまえば、それまでなのだから。
誰かのために殺すのは、難しい。自分が殺したという事実を、覚えていなければならないのだから。
先生は、自身と彼らの違いに、彼らの覚悟と自身の甘さに、うつむくことしか出来なかった。
「……あの人は、自分の猟犬たちを覚えていた。自分の使命のために死んでいった、猟犬たちをな。」
「あの人は、廃棄を待つだけだった俺に、意味を与えてくれた。部品として消耗されるはずの、旧世代型の強化人間を、1人の人間として扱ったんだ。」
レイヴンは、自分の首に下げられた、ドッグタグを眺めた。ウォルターの猟犬となった時、1枚だけ与えられたタグ。
もう1枚は、常にウォルターが持っていた。ウォルターが持っていたチェーンに、621のタグが吊り下げられた時には、既に何枚ものタグが残っていた。
彼のために殉じた者達のタグを、彼はずっと残していたのだ。
「……だが、俺はあの人を裏切った。別の選択肢を、選んだんだ。」
『それが、コーラルリリース。コーラルの増殖を抑えるのではなく、むしろ解き放つことで、宇宙全体をコーラルで満たす。』
『オーバーシアーが制御できない破綻と呼び、恐れていた選択肢です。』
『私達は、コーラルを解き放った先に、人とコーラルの共生の未来があると、信じていました。』
2人の言葉につられ、先生が顔を上げると、先生は初めて、レイヴンが悲しみの表情を浮かべる姿を見た。
うつむきがちに目は細められ、頭頂部の犬の耳も、ぺたりと倒されている。
いつもより低い、弱々しい声音で、自分の過ちをこぼしていく。
「……それは間違いだった。あれは、人とコーラルの共生などではない。」
「リリースの時、全身がコーラルで焼き溶かされるような感覚がした。コーラルを浴びるほど、体と意識の境目が、曖昧になっていった。」
「あれは、共生などではない。人とコーラルの、融合だ。」
「……すまない、エア。もっと早く伝えるべきだったんだろうが……。」
『……私はずっと、知っていました。あなたが、リリースという選択を、後悔している事を。』
『私も、あなたに謝らなければならない事があります。』
『私は確かに、人とコーラルの共生を望んでいた。ですが、このキヴォトスに来て、沢山の人に触れ、分かったことがあります。』
『私の本当の願いは、あなたと共に生きる事。私はそのために、人とコーラルの共存の可能性を探っていたんです。』
『ごめんなさい、レイヴン……。この願いにもっと早く気づけていれば、私は、あなたを大罪に誘うことは無かった……。』
2人は、よりよい未来を望んでいた。そのために自ら選び、レイヴンは恩人を裏切ってまで、エアもそれを理解してなお、人とコーラルの可能性を追求した。
そしてその果てに、2人は大きな罪を背負った。ただの人間が背負うには、余りにも大きすぎる罪を。
”……リリースの後、ルビコンはどうなったの……?”
「……分からない。だが、今までの世界ではない事は確かだろうな。俺達が知る形の人類は、残っていないかもしれない。」
『本来、リリースの後は、コーラルは私達の意識を乗せて、宇宙全体に広がるはずでした。しかし、何故かその後、私達はこのキヴォトスにたどり着いた。』
『あとは、あなたも知っていると思います。アビドスの砂漠に漂着し、ホシノ達に拾われ、そして、あなたと出会った。』
「それが、俺達だ。俺達は、1度世界そのものを焼いた、大罪人なんだ。」
『……通信ログが残っています。聞いてみますか?』
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『オマケである貴様には、一昨日空きが出た、コールサインG13を貸与する!』
『G13、復唱!』
『復唱したか!?では準備を始めろ!愉快な遠足の始まりだ!』
『君がレイヴンか。あのハンドラー・ウォルターの子飼いらしいな。』
『これも巡り合わせだ。』
『共に、壁越えと行こうじゃないか……!』
『ハンドラー・ウォルター……。その猟犬は、やめておけ……。』
『ビジター。私達は不幸な出会いだった……。あんたとは仲良くした方が賢明みたいだね。』
『上層に行くんだろう?案内しようじゃないか。』
『この、“灰かぶり”のカーラがね。』
『ルビコンに不法侵入した全ての勢力に告ぐ。直ちに武装解除し、封鎖圏外へと退去せよ。』
『これ以上の進駐は、惑星封鎖機構に対する宣戦布告と見なし、例外なく排除対象とする。』
『繰り返す。例外はない。』
『レイヴン……。その名に違わぬ、羽ばたくような戦いぶりだ……。』
『あるいはお前ならば……。』
『ルビコンの灼けた空を超え、まだ見ぬ自由を選べるのかもしれん。』
『RaDのチャティ・スティックだ。花火会場では世話になったな。』
『ボスはお前とつるんでいると楽しそうだ。これからも相手をしてやってくれ。』
『要件はそれだけだ。じゃあな。』
『ルビコンの脅威よ、我々の警句には続きがある!』
『“コーラルよ、ルビコンと共にあれ!”“コーラルよルビコンの内にあれ……!”』
『“その賽は、投げるべからず!!”』
『“レイヴン”とは、意志の表象……。相応しいのは、選び戦う者だけです。』
『621、準備は良いか。生きて帰る保証もない、深い探査となるだろう。だが……。』
『やり遂げられるとすれば、お前だけだ。』
『コーラルに、たどり着いて見せろ。』
『リリースに夢を見るのも、止めておけ。』
『味気ないレーションを食い、泥水の様なフィーカをすする……。』
『うんざりするが、それこそが人間だ。』
『流石だな……!だが、終わる訳には行かない……!』
『……戦友。』
『背景を手に入れろ、決着はその時だ……!』
『強化人間C4-621、レイヴン。』
『お疲れさまでした。これで、あなたは我々の一部です。』
『オールマインドへ、ようこそ。』
『AC!?識別不明!!』
『ここは、地獄か……!?』
『来るんじゃなかった、こんな惑星……!』
『こいつがッ、レッドガンに来てからだッ!!』
『死神がいる限り……!俺達の悪夢は終わらないんだッ!!!』
『おかしいな……?私はまだ、これから……。』
『旗色が悪いね……!こんな時ビジターがいれば……!』
『621は死んでなどいない。』
『……あんたもそう考えてたかい。』
『ザイレムをブロックする準備をしておけ。』
『あいつは選択した……。今や俺達にとって最大の脅威だ。』
『野良犬……。テメェには何度もやられたなぁ……。』
『俺ん中にも大勢いるぜ、テメェに殺られた残りカスが……!』
『教えてくれよ。』
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再びモニターから流れる、レイヴン達の過去、その数々の証拠。
1度全てを奪われ、ウォルターに拾われ、沢山の人と関わり、そしてその全てを捨てた。
目の前にいる彼女達の、余りに過酷な人生。既に、先生が受け止められる、悲劇の許容量を超えていた。
うつむいている先生を見据えながら、レイヴンは、自身の決意を言葉へと変える。
「……シャーレ、良く聞け。もしこのキヴォトスに、コーラルが蔓延したら、俺はコーラルを焼き払う。」
「たとえそれが、このキヴォトスを飲み込む炎となったとしても。」
”エア、君はそれでいいの……?レイヴンも、その友達も、君の仲間も、全部燃えるんだよ……?”
『……このキヴォトスには、コーラルの特性を知るものは、私達しかいません。そして、コーラルを制御する技術は、キヴォトスで作る事は難しいでしょう。』
『仕方の無い事です。レイヴンがその選択をする時は、既に破綻している時でしょうから。』
『同胞たちによってキヴォトスが滅ぶのは、私としても本意ではありません。』
レイヴンの耳はピンと立っており、その眼の奥には、炎が見えた。
1度大罪を背負いながら、なお自分達が罪を背負う。彼女たちはその選択肢を、自分の意志で選んだ。
先生の目の前に居たのは、未熟な子供などではなかった。
自ら選び、過ちを糧にし、自分の足で歩いて行ける、成熟した人間だったのだ。
”そっか、そっかぁ……!君たちは、私が思ってたより、ずっと強かったんだね……!”
”……私も、1つ話していいかな?”
レイヴンは何も言わず頷き、先生の言葉を待った。
今にも泣きだしそうな表情を、何とか笑顔に変えながら、先生は自身の過ちを口にした。
”……私はずっと、君たちを救いたいって、思ってたんだ。戦いから離れて、普通の人生を、送って欲しいって、思ってた……。”
”でも、思い上がりだったね。全部無くして、全部奪われて、罪を背負って、それでもなお、前を向いて歩いて行ける。”
”確かに、私の助けなんか、必要ないね。自分たちの力で、全てを乗り越えてきたんだから。”
”君たちは、本当に、強い子達だね……!”
『先生、あなたは……。』
口元を抑え涙をこらえる先生に、レイヴンは静かに声を掛けた。
厳格さを纏いながら、優しさが滲む声で、そっと声を掛けた。
「……シャーレ、俺はお前が嫌いなんじゃない。ただ、考えが合わないだけだ。」
「お前は誰かに手を伸ばし、助けんとする。その姿勢は正しい。」
「お前はそのまま、助けられる人間に手を伸ばせ。例えその手が、打ち払われたとしても。」
『きっと、あなたに助けられた人は、沢山いるはずです。あなたの様な人がいるからこそ、穏やかな日常があるのだと思います。』
『もしあなたの手に負えない事が起きたら、私達に伝えてください。私達が、あなたをサポートします。』
それは、レイヴンとエアからの、先生への赦しの言葉だった。
自身が考える幸福を、レイヴンとエアに押し付けようとした事を、2人は赦したのだ。
”……うん。ありがとう、レイヴン、エア。”
”もし私の助けが必要になったら、遠慮なく言ってね。すぐに行くから。”
「ああ、覚えておこう。」
『ありがとうございます、先生。』
話し始めた時から打って変わって、3人の間には穏やかな空気が漂っている。
レイヴンは少し温くなったコーヒーカップを手に取り、雨が叩く窓の方へと歩いていく。
「……それにしても、酷い雨だな。今日はずっとこの調し――」
”……レイヴン、どうしたの?”
その瞬間、レイヴンが持っていたはずのコーヒーカップは重力に引かれ、コーヒーとカップの欠片を床にぶちまける。
おぼつかない足取りで後ずさりした後、何かを探っていた左腕が書類の山を薙ぎ倒し、テーブルの縁を掴んで体を支えた。
彼女の右手は頭を押さえつけており、脂汗が顔中から吹き出ている。
「……何だ、この、色はッ……!?」
”レイヴン!?しっかりして!”
先生はレイヴンに駆け寄り、肩を掴んで彼女の眼を見つめる。
息は乱れ、眼球は激しく動き、その焦点はあっていない。
明らかに普通ではない状態の彼女を見て、先生は医療に関する脳内の引き出しをひっくり返し始めた。
『急に脳波が乱れて……!精神干渉!?』
「ジェリコの嘆き……?7つの、古則……?」
”レイヴン、こっちを見て!その色を見ちゃダメ!”
先生は彼女の肩を強く叩き、大声で意識を引き戻そうとするも、レイヴンは答えない。先生の後ろ、奥にある何かを見ている。
ヘイローには激しいノイズが走っていて、今にも消えてしまいそうだった。
目を覆えばいいのか、何とか目を覚まさせればいいのか。先生の引き出しには、レイヴンの症状に対する策は無かった。
『……もうこれしか……!』
『脳深部コーラル管理デバイスにアクセス!C4-621を強制休眠!』
エアがそう叫んだ瞬間、レイヴンの眼から光が消え、同様にヘイローも消失し、力を失った体が倒れこむ。
先生は咄嗟にレイヴンを支え、地面へゆっくりと下ろしていく。
”――ッ!?レイヴン!!エア、何をしたの!?”
『……一時的に眠らせただけです。じきに目覚めるでしょう。』
”はぁ、そっか……。なら、良いんだけど……。”
『どこかに寝かせてあげてください。バイタルは私が見ておきます。』
先生はレイヴンを1度地面に寝かせ、執務室の隣にある仮眠室のドアを開ける。
彼女の傍へ戻ったあと、半端に開いたレイヴンの瞼をそっと下ろし、背中と膝裏に腕を回して、平均よりずっと大きい体を持ち上げる。
レイヴンの体が引っ掛からないように、仮眠室へ慎重に運んで行き、中にある備え付けのベッドへと寝かせる。
レイヴンの姿勢を整え、布団を彼女の肩までかける。その時、先生の目に留まったのは、まだあどけなさの残る少女の寝顔だった。
しかし、彼女には誰の手も必要ではない事を思い出し、先生はそっと立ち上がり、部屋の電気を消して出ていった。
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日付も変わろうという時刻。未だ雨は降り止まず、先生は書類の山を片づけながら、レイヴンを気にかけていた。
その時、先生の後ろに音もなく現れた黒い輪を通ってくる、全身黒ずくめの男。
その男が来たことに気づいた先生は、手を止めて椅子から立ち上がり、招かれざる客を歓迎することにした。
「……やはり、見つけてしまいましたか。」
”……黒服。今はお前と話す気分じゃないんだ。”
ゲマトリアの1人、黒服。生徒を平然と実験に使おうとする、先生の天敵。
普段であれば飄々とした様子を見せる彼だが、今日は事情が異なるようだ。
普段より低い声音や、直接的な言い回しから、先生は彼の焦りを感じ取っていた。
「そうでしょうね。ですが、ゲマトリアとして、あなたに伝えておかなければならない事があります。」
「……色彩と、無名の司祭たちが、このキヴォトスを見つけました。C4-621を目印に、じきここへ来るでしょう。」
「先生、このキヴォトスを守ってください。さもなければ、この世界は終わりです。」
”……その話を、信じろって?”
「信じていただくほかありません。」
「……簡潔か、詳細か。どちらがよろしいですか?」
色彩、無名の司祭、世界の終わり。意味の分からない単語が2つ出てきたが、それがなぜ世界の終わりに繋がるのかが分からない。
何より、C4-621、つまりレイヴンが目印という言葉も気がかりだ。黒服がここまで焦っているのも気になる。
先生は、一先ずこの男の話を聞くことにした。
”……詳細に、全部話して。”
「かしこまりました。では、まずは無名の司祭から。」
「無名の司祭は、かつてこのキヴォトスの支配者だった者達です。今は、色彩の力を利用し、平行世界全てのキヴォトスを滅ぼそうとしています。」
「AL-1S、ミレニアムの天童アリスも、この司祭たちによって造られた兵器です。彼らは今、アトラ・ハシースの箱舟に乗って、こちらに向かっているでしょう。」
”アリスがそうなら、奴らはなぜレイヴンを目印にしたの?”
「単純に、彼らの制御を離れたからでしょう。何より、よりよい兵器が既にそこに居ますから。」
「“アレ”が先ほど見ていたのは、色彩でしょう。恐らくは、司祭たちが色彩を誘導し、その精神を捻じ曲げることで、手駒としようとしたのでしょうね。」
先生の前をゆっくりと歩きながら、解説を続ける黒服。さっきレイヴンがおかしくなったのは、色彩の仕業らしい。
しかし、黒服の言動、そのうちの1つが、先生の逆鱗に触れていた。
”……どうして、レイヴンを“アレ”と呼ぶ。”
「……純粋な、私の感情からです。アレを、同じ人とは認めたくないのですよ。」
”あの子には、人間としての意志がある……!お前達とどう違う……!”
先生はそう言いながら、黒い靄が集まったような顔を睨みつける。
しかし、黒服はそれに付き合う事はせず、代わりに、ある話を始めた。
「……先に、アレについてお話した方が良さそうですね。」
「先生、アレは、C4-621は、厳密には生徒ではありません。」
「あなたですら失敗した時に備えた、このキヴォトスの、最後の安全装置なのです。」
ここで黒服が言う“生徒”とは、ヘイローを持つ存在という意味だ。彼女はヘイローを携えながら、生徒ではないと黒服は言う。
謎に謎が積み重なっていくが、先生は1つづつ崩していくことにした。
”安全装置……?何でそんな役割があると言えるの?”
「……これを、見てください。」
黒服から手渡されたタブレットの画面には、棒グラフが映っている。
時間と書かれた軸が用意され、線がいくつか平行に走っている。
特に、先生がこのキヴォトスに来た辺りから、線の数が増えている。
「これは、平行世界の4次元軸、すなわち時間を観測したデータです。いくつもの時間が、並列に走っているのが見えるでしょう?」
「ですが、ある時期を境に、いくつかの平行世界の時間が止まりました。つまり、世界線そのものが消失しているのです。」
「そしてその時期とは、あなたがアビドス高校にたどり着いた辺り。すなわち――」
”……レイヴンが、キヴォトスに来た辺り。”
「その通りです。連邦生徒会長に“外”から連れてこられたあなたと、何の前兆も無く、アビドスに唐突に現れたC4-621。初めはとても興味深いものでした。」
「ですが、調べていくうちに、アレに干渉するべきではないと悟りました。」
「アレはキヴォトスの安全装置。キヴォトスを守る防衛兵器にして、キヴォトスが自決するための、特大の爆弾なのですから。」
”自決!?キヴォトスの自決って、どういう事!?”
決して穏やかではない言葉に、先生は声を荒げるが、黒服は態度を崩さない。
むしろ、言った本人すら、その情報にウンザリしているようにさえ見える。
今までとは大きく異なる黒服の姿勢に、先生はようやく、この事態がただ事ではない事を理解した。
「……先生、あなたは連邦生徒会長に、生徒達を、このキヴォトスを守るために連れてこられた、いわばこのキヴォトスの盾です。」
「対して、アレはキヴォトスの外敵を討ち払う剣。そして、他の世界線への影響が避けられなくなった場合――」
「世界線ごと焼却する事で、影響の波及を回避するための、剣なのです。」
世界を守るために、世界を燃やす。それは、レイヴンの恩人とその友人達、オーバーシアー達が選んだ選択肢。
世界は、その選択肢を、レイヴンに選ばせようとしている。そんな事、あってはならない。
それは、大人も子供も関係なく、選んではいけない選択肢だ。
”レイヴンが、このキヴォトスの、武器……。でも、どうやって……!?”
「……恐らくは、“ウトナピシュティムの本船”を使い、アレの身に宿るコーラルの力を増幅させ、焼却するのでしょう。」
「コーラルには、電子機器や、人とコーラルの境目だけでなく、あらゆる事象を侵食する力がある。それを利用すれば、世界を焼くことなど、そう難しい事ではないでしょう。」
先生は、レイヴンのある言葉を思い出した。
体と意識の境目が、曖昧になる。それが、事象の侵食だとしたら、黒服の話を信じなければならない。
先生は、黒服の話を信じたくは無かった。
それは、黒服への嫌悪からではなく、レイヴンが最期の引き金をためらいなく引いてしまう事への、恐れからであった。
「……これは私の推測ですが、C4-621は、あなたと同じく、連邦生徒会長に呼び出されたのでしょう。」
「そしてそのきっかけは、別の世界線のあなたが、色彩の嚮導者、プレナパテスとなってしまった事。」
「キヴォトスを守るはずの存在が、他のキヴォトスすら脅かす脅威と化した。それは、彼女にとって想定外の事態だったのでしょう。」
「故に、対抗策が用意されたのです。」
「その条件は、まず強く、死を恐れず、必要があれば友すら殺す。可能なら、色彩の汚染に対する耐性を持ち、あなたに安易に絆されない。」
「あれは、その条件に全て合致していた、実に都合の良い存在だったのですよ。」
「……だからこそ、私はアレが恐ろしい。私にとって、アレは核爆弾や生物兵器と同じです。」
「キヴォトスはおろか、世界を焼く兵器など、誰が愛せましょうか。」
レイヴンは、キヴォトスの兵器。あらゆる脅威に対する、最後の対抗策。
彼女はルビコンから離れ、ようやく人となったと思えば、兵器として呼び出されたに過ぎなかった。
この役割は、奇しくもアイビスシリーズと酷似していた。あれらもまた、コーラルを守るための、ルビコンの安全装置だったのだから。
先生は、正面から自分を見据える黒服に、タブレットを突き返した。
”……私に、どうしろって言うのさ。”
「……このキヴォトスを、守ってください。そうすれば、アレも世界を焼くことは無いでしょう。」
「必要な情報や手段は、ゲマトリアとして提供しましょう。キヴォトスが滅亡するだけならともかく、世界が消える事など、我々は望んでおりませんので。」
「一先ず、これをお渡ししておきます。詳細な情報が入っておりますので、上手く活用してください。」
タブレットの代わりに渡されたのは、小さなUSB端末。黒服と同じように、真っ黒なUSBドライブだった。
だが、先生はこれを受け取る事をためらった。黒服から何かを得ようとすると、必ず対価が求められる。
生徒の身柄といった、ロクでもない対価が。
”……対価は?”
「不要です。世界の危機ですからね。気になるというのなら、落ち着いてからお返しいただければ構いません。」
「……そろそろ、目覚めそうですね。」
「では、キヴォトスを頼みましたよ、先生。」
仮眠室の方向を一瞥してから、そう言い残して、再び現れた黒い輪の中に消えていく黒服。
先生の手元に残ったのは、黒いUSB端末。一先ず中を確認しようと、パソコンに近づいたとき、モニターからエアの声が響いた。
『……レイヴンが、キヴォトスを焼き払う、最後の安全装置……。だから、私達が……。』
”エア?どこまで聞いてたの?”
『……全て、聞いていました。だからリリースの後、私達はここに流れ着いたのですね。』
エアの声は、低く沈んでいた。無理もない。
自分のパートナーが、世界を守る兵器として呼び出された、なんて話を聞けば、誰だって冷静ではいられない。
先生は、エアに1つ頼みごとをすることにした。
”……エア。このことは、レイヴンには伏せておいて欲しい。きっと、あの子は……。”
『いえ、隠していても仕方の無い事です。私から伝えます。それに……。』
『レイヴンは、破綻を望んではいない。レイヴンなりに、このキヴォトスでの今を、愛しているでしょうから。』
その言葉は、パートナーへの、無条件の信頼。今を守るために、全力で戦うだろうという、絶対の自信。
ルビコンで繋がれた2人の絆は、このキヴォトスで、さらに固く結ばれたのだろう。
無用な心配だったと反省しながら、先生はエアに言葉を返した。
”……そっか。本当に、強い子だね、あの子は。”
”エア。1つお願いがあるんだ。”
”もしレイヴンが、この世界を焼こうとしても、あの子の傍にいてあげて欲しい。”
”私はきっと、レイヴンを止めるために、戦う事になる。そうなった時、エアまでいなくなったら、あの子は1人ぼっちになっちゃうから。”
『言われなくとも、そのつもりです。私は、レイヴンのパートナーですから。』
『レイヴンが戦い続ける限り、生き延び続ける限り、私は、レイヴンをサポートします。』
”ありがとう、エア。あの子を、よろしくね。”
先生はそう言うと、パソコンにUSBを差し込み、中のデータを確認し始めた。
世界の破綻を防ぐために。生徒達の未来を守るために。
レイヴンとエアに、これ以上罪を背負わせないために。
――――――――――――――――――――――――――――――――
「あなたを呼び出すつもりは無かった。」
タタンッタタンッ……タタンッタタンッ……
「認識が甘かったと言えば、それまでです。けれど、私は……。」
「このキヴォトスを、この世界を守りたかった。出来るだけ、血を流さないように。」
「私があなた達を呼び出せば、あなた達はもう一度大罪を背負う事になる。私の罪を、過ちを、たった2人に背負わせてしまう……!」
「本来は、私がやるべき事なのに、私は……!」
「……必要なんだろう?ならやるだけだ。」
「――ッ!どうして、あなたは……。」
「そもそも、破綻させなければいい。だが、それが難しければ……。」
「世界を守るために、世界を焼く。あの人達と、同じように。」
「俺達にしか出来ないというのなら、俺達が、やるだけだ。」
「……あなたは、自分の友達を撃つことになる。それでも?」
「ああ、分かってる。」
「……あなたは、世界の敵になる。それでも?」
「やってやる。」
「……あなたは、今度こそ、全てを失う事になる。それでも?」
「……覚悟の上だ。」
「………………。」
「……やっぱり、この仕事は、あなたにしか出来ない……。」
キキィー……
プシュー
「――――さん。どうか、このキヴォトスを……。」
「先生を、よろしくお願いします。」
コツッコツッコツッ……
プシュー
タタン……タタン……タタンッタタンッ……
「……ああ、任せろ。」
色彩周りが結構なご都合になっちゃいましたが、これで最終章への取っ掛かりは出来ました。
さーてこっから頑張って書ききるぞぉ!
次回
決起集会
会議は踊る、されど進まず。だが今回は違う……!
次回も気長にお待ちくださいませ……。