京大霊長類研の研究資金不正訴訟、京大と元所長が和解 元所長が解決金支払い双方取り下げ
京都大霊長類研究所(愛知県犬山市、2021年度末で組織改編)などの研究資金を巡って不正支出があったとされる問題で、京大が元所長の松沢哲郎・元特別教授に約2億円の損害賠償を求めた訴訟など、両者の間で争われていた3件の訴訟が14日までに京都地裁で和解した。7日付。松沢氏の代理人弁護士が明らかにした。 【写真】元所長と和解した京都大学 訴状によると、松沢氏を代表者とする研究が10〜12年度、日本学術振興会の補助事業の対象となった。この研究ではチンパンジー用の飼育施設ケージの一般競争入札を実施。ケージの仕様策定に関わった業者が入札手続きに参加したため、同会は20年、入札妨害に当たるとして補助金交付を一部取り消し、京大に返還を命じた。 京大は、飼育施設に関するものをはじめ霊長研などに約5億円に上る研究資金不正があったとする調査結果を発表。松沢氏を懲戒解雇とし、霊長研は組織改編した。 22年、同会に返還した約3億6千万円のうち約2億円の支払いを松沢氏に求めて提訴。松沢氏側は、業者を排除する権限は事務職員にあり、松沢氏は責任を負わないと主張していた。 松沢氏の代理人弁護士によると、この訴訟と、松沢氏が解雇を無効として特別教授の地位確認を求めた訴訟、京大が松沢氏に退職金の返還を求めた訴訟の3件について和解が成立した。松沢氏側が解決金を支払うことを条件に和解し、双方が全ての訴訟を取り下げたという。解決金の額は明らかにしていない。 代理人弁護士は京都新聞社の取材に、「不正支出に関して松沢氏の非を認めたわけではないが、訴訟に長時間を要し研究活動に支障が出ることを懸念する本人の気持ちを尊重した」と述べた。京大は「和解は事実。詳細については回答を控える」とした。