BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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パヴァーヌ編のエピローグです。

だいぶ短いのでサクッと読めると思います。
これを前話に差し込まなかったのは、前話が長くなりすぎたからですね。
私のおバカ!!!!



25.事件の終わりと、その続き

 エリドゥ攻略戦から数日後、俺は購買のフィーカを片手に、エンジニア部のハンガーの壁に寄りかかっていた。

 目線の先はもちろん、ナイトフォールをいじっているエンジニア部達である。

 アバンギャルドとアビ・エシュフ、そして大量の無人機との戦闘でナイトフォールが大きく損傷していたので、せっかくだから改修しよう、という話になったのだ。

 無論、余計な事はするなと大きめの釘を刺しておいたが、それでも俺と奴らのロマンの定義が違う事だってあり得る。

 そろそろ引き渡しできるとのことで、こうして監視を兼ねて作業を眺めている。

 

 「レイヴン。」

 

 声の方向に振り向くと、事の発端の1人である、リオが居た。

 タブレット端末を片手に、俺の横に真っ直ぐ立つ。

 

 「ん?リオか。残ったんだな。」

 

 「ええ。ユウカだけじゃなくて、いろんな子達から叱られて、会長としての権限も剥奪されたけど。」

 「まさか、私の特許を全部没収されるとは思わなかったわ。」

 

 「首が残っているだけいい方だな。噂だと、エリドゥのために色々とやっていたらしいじゃないか。」

 

 互いにあまり顔を合わせず、ハンガーに置かれているアバンギャルドとアビ・エシュフを見つめている。

 どちらも、エンジニア部や他の部活によって、改修を施すために武装や部品が取り外されている。

 

 「そうね……。資金は横領で作ったから、ユウカに怒られたのはその事と、誰にも相談しなかったことね。」

 

 「都市を1つ作れるだけの横領か。随分巧妙な隠し方をしたんだな。」

 

 「……それが、それほど大した事はしてないのよ。」

 

 「……というと?」

 

 「セミナーにコユキという子がいるのだけれど、その子はギャンブルが好きで。」

 「ミレニアムの資金を、ギャンブルの軍資金として使っていたのよ。それに少しづつ紛れ込ませたの。」

 

 「ちょっと待て。エリドゥの横領を誤魔化せるだけの金が動いていたのか?」

 

 誤魔化すにしても、それなりの額でなければかなりの手間がかかるはずだ。

 それが紛れるぐらいの金を、しかも組織のための金を1人で使ったというのか?

 

 「そうよ。相当入れ込んでいたみたいね。お灸を据える意味も込めて、その話もしておいたわ。じきに連れ戻されるはず。」

 

 「……先に叱るべきなのは、お前じゃなくてそいつじゃないのか?」

 

 「確かに叱る必要はあるでしょうけど……。」

 

 「……どうした?」

 

 リオはタブレットを何回か叩いた後、こちらへ渡してくる。

 それを左手で受け取ると、画面にはアリスと思われるアンドロイドの解析結果が映っていた。

 

 「……アリスの精神構造の解析が終わったの。結論から言うと、アリスへの対処は不要、という判断になったわ。」

 

 「不要?ヒマリの奴が何か言ってきたのか?」

 

 「いいえ、私もデータを確認した上で、この判断を出してる。問題ないはずよ。」

 「……精神構造が、大きく変化していたの。アリスのプログラムの中に、Keyが完全に組み込まれていた。」

 「あの一件をきっかけに、アリスはKeyの制御を完全に掌握しているのよ。」

 

 「……つまり、アリスが望まない限り、Keyが動き出すことは無い、という事か。」

 

 「その通りよ。当然、肉体の拘束手段の開発も順調に進んでいるわ。特に、あなたのパートナーのエアが提供してくれた、スタンニードルの設計が参考になってるわね。」

 

 「何よりだ。アリスへの対策もそうだが、非殺傷兵器の使い道は多い。治安部隊が重宝するだろう。」

 

 「ええ。事実保安部でも、安全性と効力が実証出来次第、導入する話になっているわ。」

 

 「聞く限りでは順調だが、何を気にしてる、リオ……?」

 

 タブレットを返しながら顔を見ると、リオは目を細め、苦い顔をしながらうつむいていた。

 口を僅かに開いてから閉じる、という事をしてから、ゆっくりと語りだす。

 

 「……貴女の言う通り、私は焦っていたのよ。アリスは確かに兵器だったけれど、同時に1人の人間である事を、失念していた。」

 「……いえ、意図的に無視していたのよ。そうでなければ、あの子を殺すという罪に、耐えられなかった……。」

 「けれど、使命を押し通そうとした結果は、この通り……。あの場で最も非合理的だったのは、私だったのよ……。」

 

 「……むしろ、この結末を予想して動いていたとしたら、お前の頭の中を覗いてみたくなる。お前の判断は間違っていない。」

 「何より、最悪への備えは必要だ。誰かがやらなければならん。そういう意味では、お前はやるべきことをやったんだ。気にするな。」

 

 「……優しいのね、貴女は。」

 

 「……恩人からの、受け売りだ。」

 

 「……そういえば、エアはどうしているの?話に割り込んできても良いと思うのだけれど。」

 

 「ああ、あいつは今、ゲーム開発部と遊んでいるよ。新しい友人が出来たことが、嬉しいようでな。」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「ほらっ、そこ!いけいけ、ミドリ~!!」

 

 『させませんよ!そこっ!!』

 

 「エアさん、結構強いよねっ。負けないけど!」

 

 「う、うん。本当に上手。わたしも、ちょっとだけ本気で……。」

 

 『王女よ、ガード、いえダッシュからのアッパーです!それが1番ダメージが出ます!』

 

 「うわ~ん!ゲームは好きに遊ばせてくださ~い!」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「……Keyとエア、体を持たない者同士、話が合うところがあるのかしら。」

 

 「かもしれんな。だが何より、あいつは純粋に、人と関わる事を楽しんでいるようだ。」

 

 「良いことね。一人ぼっちより、気が合わずとも誰かが隣にいる方が、ずっといい。」

 

 「……そうだな。戦場に生きるのであれば、なおさらだ。」

 

 しばし沈黙が続く。目の前では、アビ・エシュフからナイトフォールへ部品を流用できないか、エンジニア部の話し合いが続いていた。

 作業場に響く、金属が触れ合う音。沈黙を破ったのは、リオだった。

 

 「……ねえ、レイヴン。興味本位で聞くのだけれど、貴女が知る“外”は、どんな世界だったの?」

 

 「……良い思い出は、あまりないな。そこは資源を奪い合う戦場で、誰かの手によって誰かが死ぬのが、当たり前の場所だった。」

 「俺も、大勢殺してきた。そうしなければ、生きられなかった。俺の経験や技術は、大半がそこで培われたものだ。」

 

 「という事は、貴女は資源戦争の尖兵だったの?一体何を求めていたの?」

 

 「……何のために、廃墟に現れた無人機の技術を使うなと言ったと思う。」

 「アレは、アレの存在そのものが、可能性と富そのものとして、人を狂わせる。事実あの世界は、その資源と、それを求めた者達によって壊れていった。」

 「あの無人機は、その可能性に狂わされた者が作った、遺産の1つだ。」

 

 そして、俺もそのうちの1つ。コーラルによって知覚を増幅された、強化人間。

 普通であれば、部品として使い捨てられる存在。それを人間として扱ってくれたのが、ウォルターだった。

 そして、俺が旧世代型だったからこそ、エアとの交信が実現できた。

 因果がどう巡るかなど、誰も知る由は無い。

 

 「……確かに、良い場所じゃなさそうね。」

 

 「全くだ。そこで恩人とエアと出会えたことは、幸運だったんだ。」

 

 「……その場所は、なんと呼ばれていたの?」

 

 「……ルビコン。何故そう名付けられたのかは、知らんがな。」

 

 「……貴女が生きてルビコンからキヴォトスに来たことも、また幸運だったのね。」

 

 「……そうだな、幸運だった。」

 

 どうしてリリースの後、このキヴォトスに来たのかは分からない。

 それでも、俺達が生きているのは確かだ。折角の命と自由を、投げ捨てる道理など無いだろう。

 その時が来るまで、俺は戦い、生きる権利を勝ち取る。もし戦いで死んだとしたら、その時が来たというだけだ。

 

 「……そうだ。レイヴン、実際にアバンギャルド君と戦った者として、あの子の改修に、何か提案はある?」

 

 「ん?そうだな……。」

 「……アバンギャルドとアビ・エシュフの武装を、そのまま入れ替えてやれ。あと、戦闘中の行動パターンをもっとシンプルにした方が良い。」

 「せっかくの強固な装甲があるんだ。一定距離を保ちながら弾幕を張られていれば、奴の対処にもっと苦労しただろう。」

 

 「そんなに簡単なものなの?もっと、高度なものが出て来るかと。」

 

 「無人機はシンプルに、特化させて仕上げた方が有効だ。俺の経験から言っている。間違いない。」

 

 「……誰よりも信用のある意見ね。参考にするわ。」

 「それなら、アビ・エシュフはどう?」

 

 「まず、剥き出しのパイロットをどうにかした方が良い。大型化して、操縦席を作ったらどうだ?」

 

 「なるほど、それなら――――――」

 

 そうして気の向くままに、互いの機体について改修案を話し合った。

 気づけば結構な時間が経っていたようで、リオを探しに来たユウカによって、リオはセミナーの仕事に戻っていった。

 作業場に目を戻すと、いつの間にか居たマキによって、ナイトフォールの胸にグラフィティが描かれようとしていたので、後ろから頭に手刀を軽く落として阻止する。

 エンジニア部と話せば、また余計な機能を搭載しようとしていたので、それは別の機械でやれと言ったところ、あれよあれよと設計会議に参加することになってしまった。

 いつの間にか、エアと共にゲーム開発部も合流し、みんなで何を作ろうかという話になっていく。

 友人達に振り回され、色々な事に巻き込まれようとしていたが、不思議と悪い気はしなかった。

 

 ハンドラー、普通の人生とは、こういう事なのですか?

 この場に、貴方や、その友人達も居て欲しかったと思うのは、ワガママでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 『もう一度言います、マダム。“アレ”には一切干渉しないでください。』

 『これは黒服ではなく、ゲマトリアとしての忠告です。』

 

 『何を言っているのですか?“アレ”こそが、私達ゲマトリアが求める対策にして、最良の手駒なのです!』

 『みすみす逃す手などありませんよ!』

 

 『……“アレ”を制御することなど、できません。“彼”ですら不可能だったのですよ。』

 

 『何を言うのかと思えば。たとえ一時でも、ただの老人に出来て、私に出来ない道理は無いでしょう?』

 『……まさか、怯えているのですか?ただの生徒1人に?』

 

 『………………。』

 『……その通りです、マダム。私は、“アレ”が持つ、神秘と恐怖が――』

 『“アレ”そのものが、私は心底、恐ろしいのです……。』




リオとケイの救済をもって、パヴァーヌ編、完結となります。

正直リオは報われても良かったし、ケイも創造主の命令には逆らえんだろうしで、誰にだって救いはあっても良いの精神でやったりました。
多分レイヴンがリオ側に付くことを期待していた人も多いんでしょうけど、それやると最終章が書きづらくなるのでダメです。
臆病な私を、許してくれ……。

エデン条約編もプロットが固まりつつあるんで、エタらないように書いていきます。
次回も気長にお待ちくださいませ……。
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