BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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ナイトフォールWithエア vs アバンギャルド君&飛鳥馬トキWith調月リオ
ROUND1 ファイッ! カ~ン!!

戦闘シーンの筆が乗りすぎたので長いです。
時間がある時にでもどうぞ。


24.天童アリス救出

 『流石ね、防空網を突破するなんて。でも想定内よ。』

 

 大量の自律兵器、AMASに向けてブーストで前進。

 それに反応したAMASが射撃を始めた。

 小口径の機銃だったため、太陽守と装甲で耐えながらさらに加速。

 同時にミサイルとガトリングを使いAMASの数を減らす。

 たがこいつら全員に構っていると弾が足りない。

 パルスアーマーを展開しながらアサルトブーストで突撃して、AMAS達を跳ね飛ばしていく。

 勢いそのままに高架橋の上に作られた道路に飛び上がり、タワーへと向けて道路沿いに前進していく。

 

 『お見事。ならこれはどうかしら。』

 

 突如として体に伝わる、衝撃と振動音。

 軽く横に目を向ければ、建物がこちらに向けて動き出している。

 

 『建物が……!いえ、都市そのものの構造が変化しています!』

 

 「リオめ、一体何を考えてる……!」

 

 建物を動かして壁にするなど、ザイレムでもやらなかったことだ。

 アリスに対処するためなら、ここまでの防衛機構は不要だろう。リオは何に備えていたんだ?

 前方の建物も動き出している。俺の道を塞ぐことが目的らしい。

 ブーストで一気に飛び上がり、ビルの屋上を飛び越える。

 当然対空兵器にロックオンされるが、それを前にクイックブーストすることで逸らし、直後に急降下して狙いから逃れる。

 地面のアスファルトを砕きながら着地した直後、多数のAMASからの制圧射撃。

 弾は装甲に任せながら再び跳躍、太陽守を展開して体に引き付けるように構える。

 左腕を下から上へと大きく振りぬき、アクチュエーターと太陽守のソレノイドによって大きく加速された爆雷は、縦一列に散布。

 地面やAMASに激突すると同時に爆発し、AMASの大軍のほとんどを焼き払っていく。

 太陽守を戻しながらクイックブーストで前進。再びタワーへ向けて前進する。

 

 『やはり半端な戦力では相手にならないわね……。けれど、そのためのアバンギャルド君よ。』

 

 そんなリオの声と同時に機体から警告が発せられる。

 内容は、通信障害。各レーダー使用不能。

 この警告が出る可能性は2つ。1つは活性コーラルによる干渉。もう1つは――。

 

 「――ッ!ECMか!?」

 

 『レイヴン、強力なECMがエリドゥ全域に展開されました。使える帯域と、発信源を探してみます。』

 

 「分かった、頼むぞ!」

 

 リオの狙いは、恐らく俺と先生達、そしてエアとの通信を断ち、孤立させること。

 実際先生達との通信は遮断されている。まあ、エアとは“交信”によって繋がっているため、無意味なのだが。

 前に立ちはだかったAMAS達を、再びパルスアーマーを張って跳ね飛ばす。

 構造変化によってその先は塞がっていたが、スキャンによって壁の薄い部分を発見。

 横にスライドして位置を合わせ、パルスアーマーの出力を引き上げながらアサルトブーストで突撃。

 鉄筋で補強されたコンクリートの壁を何枚もぶち抜いていく。

 そうやって再び大通りに出ることが出来たが、直後にエアから警告される。

 

 『レイヴン!敵性反応が1機、こちらに接近中!』

 

 敵性反応、この状況でこちらに突っ込んでくるとすれば、さっき名前が出ていたアレだろう。

 遠くからギャリギャリという履帯特有の音が近づいてくる。

 また周りの建物が動き出し、行く先を塞ごうとした瞬間、自分の真横の高架橋の壁が崩れた。

 そこから白い装甲と4本の腕が伸びた戦車が、俺を踏みつけようと降りて来る。

 それを横に急加速することで回避し急停止。

 周囲のビルによって逃げ道が完全に塞がれ、アリーナと化した空間で、オモチャの様な間抜け面と向き合う。

 

 「なるほど、お前がアバンギャルドか……!」

 

 『レイヴン、応戦を!』

 

 横に加速し、ガトリングで牽制。アバンギャルドはそれを右腕の盾で防ぐ。

 左腕のガトリングガンで弾幕が張られるが、機体を左右に大きく振ることで照準を逸らす。

 残りの2本の腕が握った武器がこちらに向けられた瞬間、クイックブーストで懐に潜り込み、そのまま軽く飛び上がって胴体に蹴りを入れる。

 勢いが付いた本気の蹴りが直撃したが、アバンギャルドは蹴りの勢いを利用して後退。

 その勢いのまま、3本の腕の武器を同時に撃つことで分厚い弾幕を展開する。

 横に急加速して相手の照準を振りながらミサイルを発射。

 するとアバンギャルドは、肩を軸に2本の右腕をぐるりと回し、上に構えたガトリングでミサイルを狙い始めた。

 残りのライフルと無反動砲で俺を叩き落そうとしてくるが、軽くフェイントをかけて左へ回避。

 照準が追い付く前にMORLEYの榴弾を叩き込む。

 砲弾はアバンギャルドに吸い込まれるように直撃。8発のミサイルの内、迎撃に失敗した2発も同時に着弾した。

 炸薬による煙がアバンギャルドを覆うが、直後に無数の曳光弾が飛んでくる。

 榴弾を盾で、ミサイルは装甲で受けきったらしい。

 

 『確かに、アバンギャルド君の性能では勝てないかもしれない。けれど、貴女の体力も無限ではないはず。』

 『レイヴン。貴女はナイトフォールの、その力の代償に、どれだけ耐えられるの?』

 

 リオの言葉を無視しながら、太陽守で視界を塞ぐように爆雷を展開。

 一瞬反応の遅れたアバンギャルドが、こちらに狙いを定めようとするが、それを懐に飛び込むことで回避し、跳躍。

 頭より僅かに上に飛び上がり、急降下して顔面にドロップキック。

 システムがこちらを捉える事が出来なくなった瞬間に、アバンギャルドの後ろへと回り込む。

 そのままMORLEYで履帯を破壊しようとした瞬間、アバンギャルドの姿勢はそのままに、腕と頭だけがぐるりと回り、俺を捉えてきた。

 射撃を中止して後退。アバンギャルドを中心に旋回しながら、ガトリングを叩き込む。

 アバンギャルドは俺から離れるように動き、腕と頭を元に戻した後、射撃を再開した。

 僅かな時間、7.62mmのガトリングガン同士の打ち合いが続く。

 

 警告、正面、榴弾砲。

 クイックブーストでアバンギャルドに向けて急加速、放たれた榴弾は俺の背後を吹き飛ばす。

 突っ込みながらミサイルを発射して、迎撃行動を誘発させて火力を削ぎ、ライフルの5.56mm弾を装甲に任せながら懐へ潜り込む。

 そして衝突する直前で横に向けて急加速、同時に太陽守から爆雷を地面に撒き、履帯にダメージを与える。

 反撃の榴弾砲を僅かなフェイントで直撃を回避しながらMORLEYを展開し、胴体に向けて発射する。

 アバンギャルドはそれを盾で受け止め、直後、それを握っていた腕ごと吹き飛ばされた。

 エンジニア部特製、遅延徹甲榴弾。砲弾の中に仕込まれた大型の鉄針が装甲に食い込み、僅かな間をおいて炸裂することで、装甲の内側を破壊する特殊弾頭。

 アバンギャルドへの切り札としてナイトフォールに積み込まれた代物だ。

 そろそろ、終いとしようか。

 

 破損を検知したアバンギャルドが大きく距離を取り始めた。

 だがここは即席のアリーナ。逃げる場所などどこにも無い。

 3丁の武器で展開される分厚い弾幕を、左右の細かいブーストでかわし、装甲で受け止めながら一気に距離を詰めていく。

 ミサイルを発射して行動を絞り、弾幕が薄くなった瞬間に、大量の爆雷を胴体目掛けて投げつける。

 アバンギャルドは爆雷の衝撃によって、ライフルとガトリングを取りこぼした。

 負けじと榴弾砲で反撃しようとするが、それをガトリングガンで弾き飛ばして阻止。

 同時に8発のミサイルが全弾直撃。攻撃手段を失ったアバンギャルドが、逃げの姿勢に入った。だがそうはさせない。

 胴体の胸あたりまで飛び上がり、両肩に足裏を合わせて急降下。バランスを崩したアバンギャルドはそのままひっくり返る事になる。

 異常を検知したアバンギャルドは体を起こそうとするが、ナイトフォールの質量がそれを許さない。

 パルスアーマーとMORLEYを展開して、頭に照準を合わせる。

 

 「確かに性能は悪くないが――。」

 

 榴弾を発射。本来上から撃ち込んで攻撃するための砲弾の直撃に、アバンギャルドの装甲が耐えられるはずもない。

 煙が晴れて視界が開き、ナイトフォールの足元に居たのは、頭部の4分の3が消し飛んだ、アバンギャルドだった。

 

 「見た目通りの、オモチャだな。」

 

 機能を停止したアバンギャルドから離れ、再びタワーへ向けて移動を開始。

 壁になっていたビルを大きく飛び越えて、高架橋の道路を進んでいく。

 AMAS達が待ち構えているということも無く、しばらくはスムーズに移動できるだろう。

 

 『回線を確保できました。通信開きます。』

 

 『”レイヴン、ネル。私達はこれから突入する。状況は?”』

 

 『問題ねぇ!いつでもいいぞ!』

 

 『こちら02。先生周辺に動きは無い。行くなら今だ。』

 

 「こちらレイヴン、アバンギャルドの対処が完了した。これよりタワーに向かう。」

 

 『分かった。私達も突入する!みんなも気を付けて!』

 

 作戦も第3フェーズに入った。残る脅威は飛鳥馬トキだが、それはネルが倒すことになってる。

 それが可能かはともかく、俺はタワーに入り込んでリオを落とすことに集中する。

 そうすれば、エリドゥが妙な動きをすることも無くなるはずだ。

 

 『……アバンギャルド君が、こうもあっさり……。』

 『……仕方ないわ。』

 『トキ、アビ・エシュフを使いなさい。主砲の使用も許可するわ。』

 

 『……リオ会長、それは――。』

 

 『これは命令よ、やりなさい。』

 

 『……イエス、マム。』

 

 「アビ・エシュフ……?エア、何か分かるか?」

 

 『いえ、何も。私が調べておきます。あなたはタワーに急いでください。』

 

 エアの言葉に従い、ブースターの推力を引き上げる。

 地上スレスレをアサルトブーストで飛びながら、道を塞ごうとする建物の間をすり抜けていく。

 もう少しで、アリスの元へとたどり着く。

 アリス、俺にここまでさせたんだ。俺の選択を、後悔させるなよ。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 ガトリングの激しい銃声と、無数の爆発音。

 通信から漏れ聞こえてくる音からでも、トキとの戦いが激戦である事を理解する。

 どうもアビ・エシュフが悪さをしているらしい。

 

 『クソッ!妙なモン使いやがって!!』

 

 『チートチート!!ズルじゃんそれ!!』

 

 『レイヴン、先生達がトキと交戦中!押されているようです……!』

 

 ここで戦力が削れれば、撤退が難しくなる。

 俺1人でもたどり着くことは出来るだろうが、問題はアリスを守りながら撤退出来るのか、という点だ。

 安全を考えれば、俺よりも先生達に任せた方が良いだろう。

 ネルには悪いが、トキは俺が仕留めるとしよう。

 

 「……助けるしか無さそうだな。」

 

 アサルトブーストで上空に飛び上がり、対空砲火をエアのジャミングで阻止しながら、マーカーに向けて急接近する。

 先生達の上空まで接近すると、既にC&Cと後発隊が合流してる。エンジニア部は離脱したようだ。

 問題は、トキが妙なパワードアーマーを装備している事だ。恐らくは、あれがアビ・エシュフだろう。

 見たところパイロットは剥き出しで、パイロットの動きを増幅するような構造になっているようだ。

 その他保護機能と思われる装備が搭載されているとは思えない設計だが、それを実践投入しているという事は、何か隠し玉があるという事だろう。

 ガトリングとミサイルで牽制しながら、先生達とトキの間に割り込むように急降下する。

 

 「お前の相手は俺だ、04!」

 

 攻撃を察したトキが、後退することで回避する。

 着地と同時に爆雷を撒いて視界を塞ぎ、無数の7.62mm弾をさらに叩き込む。

 その弾幕をトキは機動力でかわしていく。

 薄くなった煙幕越しに、一文字の青い眼と、無数の赤い眼が睨み合う。

 

 『……トキ、無視しなさい。先生達さえ抑え込めれば――。』

 

 MORLEYから焼夷弾をアビ・エシュフの足元に叩き込む。

 トキはそれを右に動くことでかわそうとするが、左腕を振り下ろして爆撃。

 直後にガトリングとミサイルで前と横への回避を潰すことで、後退を強制する。

 さらにクイックブーストで大きく距離を詰め、アビ・エシュフを全力で蹴り飛ばす。

 トキは左腕でこれを防いだが、これによって、俺達は先生達を大きく距離を離すことになった。

 

 「……分断されました。交戦するしかありません。」

 

 『仕方ない……!今AMASを――。』

 

 『させませんよ、リオ。』

 

 《エリドゥ管理システム、低級管理権限移行。》

 《オーナー、レイヴン。》

 

 突如動き出す建物たち。周囲の地形が変化し、俺達を囲むように動いていく。

 エアによって、即席のアリーナが作られようとしているのだ。

 

 『――ッ!ハッキング……!?一体何処から!?』

 

 『私達も勝負と行きましょうか、リオ。』

 

 『トキ、どうにか耐え――』

 

 「――ッ!?リオ会長!?」

 

 ビルによって逃げ道は完全に塞がれ、主との通信も断たれたトキ。

 俺と真っ向勝負するしかない事にも気づいたようだ。

 ゆっくりと両腕と、それに取り付けられたガトリングを構える。

 俺も姿勢を整え、太陽守を前に構える。

 

 「さて、やろうか。飛鳥馬トキ。」

 

 お前はその力の代償に、どれだけ耐えられる?

 

 先に動いたのはトキ。両腕のガトリングガン6門を一斉に撃ってくる。

 横にクイックブーストすることで照準を逸らす。

 ガトリングで反撃するが、相手も横に加速して回避しようとする。

 移動先に太陽守を合わせて爆撃、視界を潰してから急加速して蹴りこむ。

 だがトキはそれを後退することで回避。背中から細長い箱が2つ、大きく回るように展開される。

 

 警告、前方、レーザー。

 警告に従い右にクイックブースト。直後、左肩をかすめる青いレーザー。

 直後にミサイルを上空に放ち、ガトリングで回避を強要する。

 上空でミサイルが分裂、トキに向けて襲い掛かる。それを察知したトキが後退しながらガトリングで迎撃しようとする。

 その隙に飛び上がりMORLEYを展開。榴弾をトキのやや後ろに叩き込む。

 それに反応したのか、トキは大きく前進。同時にミサイルもトキの影を吹き飛ばす。

 さらに上空から大量の爆雷で追撃。反応が遅れたのか、爆雷はトキに直撃した。

 直後、爆炎の中からトキが離脱してきた。だがその顔に多少煤が付いた程度。

 どうも、アビ・エシュフに搭載された防御システムが、トキを守ったようだ。

 再び互いに動きを止めて睨み合う。

 

 『レイヴン、アビ・エシュフの解析が終わりました。』

 『製造目的は、“名も無き神々の女王”、アリスとの戦闘。パイロットの負担を軽減するため、マスタースレーブ制御が採用されています。』

 『エリドゥから動力と情報処理を受けることで真価を発揮し、弾道予測システムとそれを利用した弾道偏向スクリーンによって、パイロットを保護しています。』

 『ですが、その防護能力にも限界があるはず。エリドゥとアビ・エシュフの接続を切断します。それまでこらえてください。』

 

 やはりか。道理で、ダメージの通りが悪いと思ったんだ。

 だが、俺のやる事は変わらん。

 要は、常時パルスアーマーを張っているACと戦うようなものだ。なんてことは無い。

 鎧を剥がすか、それごと撃ち抜く方法さえあればいい。

 

 《エリドゥ管理システム、中級管理権限移行。》

 

 アナウンスと同時にガトリングを発射しつつ突撃。トキも後退しながらガトリングで応戦。

 機体を左右に細かく振ることで、偏差補正を利用して照準を混乱させる。

 背中のレーザー砲を展開しようと動いた瞬間、左に急加速しつつ爆雷を投げつける。

 被弾を受けてトキも左に加速。走りながらガトリングで弾幕を張ってきた。

 それを太陽守で防ぎつつ上昇、MORLEYの榴弾を叩き込む。

 それを前方に動くことで回避したトキの上空を、クイックブーストですれ違い、着地。

 

 直後、警告。

 足を止め、展開されたレーザー砲から光が放たれる。それを警告からタイミングを計り、クイックブーストで回避する。

 1発目、右。2発目、左。3発目のフルチャージ射撃を再び右に回避しようとした瞬間、ガトリングの弾幕が左右への回避を封じてきた。

 即座にアサルトアーマーを半分の出力で展開し、弾幕とレーザーの両方を相殺。

 その直後に榴弾をトキに向けて放ち、直撃させる。

 互いの間に漂う煙の中で、再びトキと睨み合う。

 

 今までの動きからして、さっきの榴弾は躱せても良いはず。しかし奴は動かなかった。

 否、動けなかったのだろう。両肩のレーザー砲、それをフルチャージで撃つと、一瞬だがアビ・エシュフはパワーダウンを引き起こす。

 外部から動力を受けることを前提とした設計の、致命的な欠点だ。

 

 『――トキ、す――離脱――!先生――ってき――!――かエリドゥの――を――』

 

 『決闘の邪魔をするのは感心しませんよ、リオ。』

 

 リオからのノイズ混じりの通信を、再びエアが遮断する。

 それを合図に、トキが動き出した。早期決着を狙ったか、弾幕を張りながらこちらに突っ込んでくる。

 上空へと跳躍し、ガトリングとミサイルで牽制。なお距離を詰めようとするトキの頭上ギリギリをすれ違う。

 着地して旋回、トキもガトリングで応戦。太陽守を展開しようとした瞬間、左肩のレーザー砲が展開された。

 放たれた光を左へ回避、直後にトキはアームの拳を握りしめて急接近。

 アビ・エシュフに向けてクイックブーストして、振りぬかれる拳の懐へ潜り込み、そのまま勢いの乗った膝をトキ本人にめり込ませる。

 衝撃でトキは大きく吹き飛んだが、すぐに姿勢を立て直しレーザー砲で反撃。

 1発目、左。2発目、上空へ。3発目がチャージされる前に、急降下してドロップキック。

 大きく後退したトキに向けて、追撃のMORLEY。これも回避が間に合わず直撃した。

 

 アビ・エシュフ、その防御システムの弱点が大体分かってきた。

 まず、大質量を伴った衝撃は緩和しきれない。つまり、蹴りや殴りが有効。

 次に、熱を伴う衝撃波を完全に逸らすことは出来ない。太陽守やMORLEYの被弾で火傷を負っているのが良い証拠だ。

 そして、弾とアビ・エシュフの距離が近すぎる場合、弾道を完全に逸らすことは出来ない。

 これは弾道を偏向させる技術の、共通の弱点だろう。

 やはり距離を詰めるのが最適か。

 

 ガトリングで弾幕を張りつつ急加速。トキもそれに応えるように、こちらへ向けて加速する。

 互いのガトリングの銃弾が、ナイトフォールの装甲を叩き、アビ・エシュフのスクリーンによって逸らされていく。

 そして衝突する直前、互いに右に急加速。円を描きながらガトリングを撃ち合っていく。

 トキが左手を握りしめ、大きく振りかぶった瞬間、上空へと逃れながらミサイルを放つ。

 その爆撃をトキはスクリーンに任せたのかかわそうとはせず、そのまま着弾。

 直後に警告、レーザー砲のフルチャージ射撃をパルスアーマーで受け止め、MORLEYで反撃する。

 爆炎から飛び下がる様に出てきたトキは、両腕のガトリングで弾幕を張る。

 それをパルスアーマーで無視しながら、太陽守で上空から爆撃。トキはそれをこちらに突っ込むように回避する。

 

 すれ違いつつ着地したら再びガトリングによる撃ち合い。

 トキは両肩のレーザー砲を展開しつつ、弾幕で左右への回避を潰してくる。

 警告が出ると同時にパルスアーマーを展開。青い光がナイトフォールへと浴びせられる。

 パワーダウン上等で俺を仕留めにかかったか、砲口からレーザーが照射され続ける。

 パルスアーマーの出力を限界まで引き上げ、アサルトブーストで一気に懐へ飛び込む。

 当然、ただのレーザーでパルスアーマーを張ったナイトフォールを止められるわけもなく、ナイトフォールとアビ・エシュフ、そのパイロットであるトキと激突。

 ブースターの推力によって、アビ・エシュフを建物へ向けて押し込んでいく。

 それを食い止めようと、トキは両方のアームで地面を掴むが、リミッターを外しさらに推力を引き上げたナイトフォールがそれを許さない。

 抵抗空しく、トキはアビ・エシュフごと、コンクリートの壁へと押し付けられた。

 それでもなお、推力を落とすことはしない。

 壁によって固定されたアビ・エシュフと、ナイトフォールのブーストによって、トキを押しつぶす。

 何とか反撃を、トキがそう考えた瞬間に顔面へと突き出される、ガトリングガンの銃口。

 顔面へ叩きつけた瞬間、アビ・エシュフのバイザーは砕け、回転する銃身から放たれる銃弾が、トキの意識を確実に削り取っていく。

 弾道予測システムが弾を認識した瞬間に、スクリーンが弾道を偏向しようとした瞬間に、弾丸はトキの頭部へと叩きつけられる。

 既に抵抗の意志を粉々に砕き、完全に意識を失おうとしていても、なお銃口を強引に押し込んでいく。

 そうして、トキにとっては永遠にも感じる数秒間の後、ガトリングを引き抜き、アビ・エシュフから離れる。

 トキの後頭部からヘイローは失われ、力を無くしたアビ・エシュフは、膝からゆっくりと崩れ落ちた。

 アビ・エシュフの両腕によって、辛うじて支えられているトキを、俺はただ見降ろしていた。

 

 《エリドゥ管理システム、上級管理権限の移行完了。》

 《オーナー、レイヴン。》

 

 『私が手を貸すまでも無かったようですね。流石です、レイヴン。』

 

 「お前の仕事も済んだようだな。よくやった、エア。」

 

 『先生達はタワー前で待ってます。合流しましょう。』

 

 建物が動いていき、アリーナから普通の街並みへと戻っていく。

 先が開いた道路を、タワーに向けて滑っていった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 タワー内部のエレベーターで、管制室へと上がっていく。

 箱の中には、ゲーム開発部と先生、そして俺が乗っている。

 C&Cは不測の事態に備え、タワー入り口で待機することになった。

 上がる前にネルからあーだこーだと言われたが、全部無視した。

 ベルが鳴り、ドアが開くと、俺達の正面に居たのは、今回の事件の張本人、リオだった。

 リオはゆっくりと振り返り、真っ赤な瞳をこちらに向ける。

 

 「……流石ね、先生、レイヴン。ハッキリ言って、想定以上だった。」

 「そうまでして、アリスを助けたかったの?ミレニアムを、キヴォトスそのものを滅ぼしうる、あの子を?」

 

 「そんなの知らない!アリスはアリスだから!友達が嫌がってたら、助けるのは当然じゃん!」

 

 「……あなた達は、トロッコ問題を知っているかしら。」

 「私は、1人の犠牲で大勢が救われるのなら、迷うことなく、レバーを引くわ。」

 「それが、私の使命。これは、私がやらなければいけない事なのよ……!」

 

 ”……リオ、これはそういう問題じゃ――。”

 

 目を僅かに細め、拳を握り、そう静かに語るリオ。

 その発言を咎めようとしたシャーレを、右腕で軽く制する。

 バイザーを引き上げ、直接目を合わせながら話し始める。

 

 「その1人には、お前の命も含めてるんじゃないか、リオ。」

 

 「――ッ!……どうして、そう思うの?」

 

 「お前と同じあり方をしていた人間を、知っているからだ。」

 「確実に未来を残すために、周りの罪を肩代わりして、そしてそのまま死んでいく。そういうあり方をな。」

 

 そう、ウォルターやカーラ、そして彼らの友人達も、きっとそうだったはずだ。

 アイビスの火で着火剤となったのは、“コーラルの守護者”アイビスシリーズ。

 最期にそれを制御していたのは、ルビコン調査技研の長、ナガイ教授。

 その人は、技研全員の罪を肩代わりして、そして、満足して死んだ。

 少なくとも、そう聞いている。

 どうもこいつからは、ウォルター達と同じ匂いがする。

 あの人達がここに居たら、リオとは仲良くできたんじゃないだろうか。

 

 「…………そうよ。それで世界が守られると言うのなら、安いものでしょう。」

 

 ”――ッ!それじゃ何の解決にも――。”

 

 『先生、静かに。ここは2人に任せましょう。』

 

 「やはりな、あの人と同じだ。」

 「……リオ、俺はお前が間違っているとは思わん。ただ、こいつらとは答えが違っただけだ。」

 「強いて言うなら、お前は、俺達は早計だったんだ。」

 

 「……私の考えを分かっていながら、何故、先生達に味方したの?こちらに付くことも出来たでしょう?」

 

 「……誰かさんの、ワガママのせいでな。だが、そいつの言葉で気づいたこともある。」

 「あいつには、アリスには、可能性がある。ただのアリスとして生きるか、破壊兵器となるかの、可能性がな。」

 「その可能性を試す時間は、十分にある。」

 

 「分からないでしょう!1歩でも間違えれば、キヴォトスが滅ぶのよ!そんな可能性のために、キヴォトスの運命を賭けるわけにはいかないの!」

 

 「もしアリスが破壊兵器になる事を選んだら、その時は俺が殺す。それが出来ると見越して、俺を雇おうとしたんじゃないのか?」

 

 「……ッ!どうして……!どうして、そこまで、分かっていながら……!」

 

 「リオ……。」

 

 リオにゆっくりと近づき、左手で肩に触れる。

 頭の中で、懐かしい声が響き、その言葉を、そのまま口にする。

 

 「1人で背負い続けて、疲れただろう。しばらく、休め。」

 

 こいつは、アリスの危険性を誰にも理解されず、ただ1人で、迫る危機に備え続けた。

 破滅を恐れ、要塞を作り上げ、それを守るための軍隊も組み上げた。

 尋常な労力では、無かったはずだ。

 リオの見開かれた瞳はゆっくりと伏せられ、左手を離すとそのまま後ずさりし、後ろのコンソールへ寄りかかった。

 

 「……こいつは俺が見張っておく。シャーレ、お前はアリスを回収しろ。」

 

 そう促すと、先生は少し迷った後、アリスが居る部屋へと向かっていった。

 俺とリオだけが残ったこの部屋は、空調や機材のファンの音しか聞こえてこない。

 

 「……どこにも、逃げたりなんか、しないわ。」

 

 「……セミナーの連中から頼まれてる。お前を、無事に連れ戻せ、とな。」

 

 「……あの子たちは、私を恨んでいたでしょう?でも、それで――。」

 

 「そうでもない。むしろ、戻ってこない事に腹を立てていたぞ。特に、ユウカがな。」

 

 「……そう。……そう、なのね……。」

 「……その人も、慕われていたの……?」

 

 「……ああ。その人のためなら、命を賭けられる奴が居る位にな。」

 

 「……強い人、だったのね……。」

 

 「……ああ。強い人だったよ。」

 

 強い人だった。使命のためなら、自らの死すら計算に入れるほど。

 そして、その人のために散っていった者達を、決して忘れなかった。

 俺も、あの人の事は、忘れられそうにない。少しだけ、過去が懐かしい。

 

 そう考えていると、突然鳴り響くブザーと、点滅する赤いランプ。

 ランプの近くの画面には『System Corruption』と表示されている。

 

 「……ん?何の警告だ?」

 

 「……マズい、Keyが目覚めてる!」

 

 その言葉と同時に、無数のモニターが一斉に警告を発した。

 内容はすべて同じもの。画面に映し出されたエリドゥが、タワーに向けて赤く染まっていく。

 

 『レイヴン、エリドゥがハッキングを受けています!尋常ではない速度です!』

 『発信源は……アリス!?』

 

 「それはただのハッキングじゃない!事象そのものを捻じ曲げようとしてるのよ!」

 

 「エア、システムを隔離して出来るだけ被害を押さえろ!コントロール出来る部分を残すんだ!」

 

 『今やってます!タワー周辺の制御を中心に切り離していますが、多数の敵性反応がタワーに向けて進行しています!このままでは……!』

 

 「クソッ!やはり殺すしかないか!」

 

 ガトリングを構え、アリスの元へ行こうとする俺を、部屋から戻ってきた先生が引き留めようとこちらに近づく。

 だがスピーカーから聞こえてきたヒマリの声によって、お互いに足を止めた。

 

 『どうして2人ともそうやって先走るんですか!リオ、あなた仮にもビッグシスターでしょう!ダイブ装置でアリスを起こして事態を鎮めるって発想は出てこないんですか!?』

 

 「ダメよ、危険すぎる!最悪戻ってこれなくなるのよ!」

 

 「ねえ!つまりアリスを起こせば、アリスは帰ってくるんだよね!?」

 

 「そうだけど、さっきの話を――!」

 

 ”ならやる価値はあるよ。”

 ”たとえ1%の確率しか無くたって、私はその可能性を信じる。”

 ”お願いリオ、手を貸して。”

 

 「先生!?一体何を言ってるの!?」

 

 「チッ!もう好きにしろ!ヴェリタス!シャーレ達のバックアップを頼む!最悪、アリスのデータを全て削除して切り離せ!」

 

 「レイヴン、貴女まで……!」

 

 「リオ!アリスを生かすにしろ殺すにしろ、このタワーが落ちたらお終いだ!違うか!?」

 

 「――ッ!そうね、その通りよ……!エア、使えるリソースを全て私に回して頂戴!私が制御を引き継ぐわ!」

 

 『分かりました、お任せします!レイヴン、私達は迎撃に向かいましょう!』

 

 画面のエリドゥに目を戻すと、大量の赤い点がタワーに向けて近づいてきている。

 カメラ映像に移っていたのは、以前アリスが暴走した時に近くに居た、タコの様な無人機。

 バリエーション違いと思われる個体も映っている。

 と、エリドゥに緑色の点が、いくつか唐突に表示された。

 

 『そういう事なら、この子の出番だね!』

 

 『はい!アバンギャルド君Mk.2!発進!』

 

 『東から来る奴らは任せて。この子には、宇宙戦艦用の武器を積んであるから。』

 

 『そうだ!私達が改造したこの子なら、あのヘンなの達だってイチコロさ!』

 

 『なら西は任せろ!レイヴンのせいで暴れ足りなかったんだよ……!!』

 

 『アハハッ!部長、やる気マンマンじゃん!』

 

 『当ッたり前だッ!!せっかくのリベンジのチャンスを奪いやがって!』

 

 『この血の気の多さ、頼もしいやら、恐ろしいやら……。』

 

 『ウッセェ!オラッ!C&C、行くぞッ!!!』

 

 「レイヴン、あなたは北側をお願い。南はAMAS達で何とか……!」

 

 「ならトキを起こして来る。戦力はそれで充分だろ?」

 

 ミサトに持たされていた、濃縮栄養剤が入った注射器。

 それは今、ナイトフォールの腰の部分に入っている。

 アドレナリン注射器の中身が、栄養剤に詰め替えられている物だ。

 曰く、エナドリの10倍は効くそうで、気付け薬としても使えるだろう、とのことだ。

 こんな形で使う事になるとは思わなかった。

 

 「……そうね、充分よ。頼んだわ!」

 

 「任せろ。」

 

 「……レイヴン!」

 

 開かれた緊急用ハッチに向けて走りだそうとした瞬間、リオに呼び止められる。

 顔こそハッキリとは見えなかったが、どこか穏やかな雰囲気を纏っていた。

 

 「……ありがとう、私を認めてくれて。」

 

 「……礼は生きて帰ってからにしろ。」

 

 顔を向けることなく答え、ハッチから地面へ直接飛び降りる。

 一瞬視界に移った大量の光が、その全てがこちらを見ているような気がした。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「オイ起きろ。」

 

 トキの胸に注射器を突き刺し、栄養剤を流し込む。

 その瞬間に、トキは大きく目を見開いて息を大きく吸い込み、ゲホゲホとせき込み始めた。

 荒い息はそのままに、顔を俺に向けて質問を飛ばす。

 

 「……レイヴン……?一体、何が……?」

 

 「Keyが起きやがった。ヘンなのがタワーに群がってきてる。お前も手を貸せ。」

 

 「……分かりましたが……。あなた、人使いが荒いって言われませんか……?」

 

 「生憎初めて言われたな。南側を頼む。俺は北に行く。支援が必要ならリオに言え。」

 

 「ええ、もう少し、落ち着いたら行きます……。」

 

 後は放っておいても立ち上がるだろう。トキから離れ、アサルトブーストで空に上がる。

 対空砲火は、今のところリオの制御下にあるが、それがいつ崩れるかは分からない。

 リミッターを外して全速で飛んでいく。

 軽い耳鳴り。頭に響く僅かな息遣い。エアが何か伝えたい事がある時の、前兆だ。

 内容も大方想像がつく。

 

 『……レイヴン、ワガママを言っても良いですか?』

 

 「どうした?」

 

 『……ダイブ装置は、そう上手く行くものではないでしょう。あのままでは、アリスは消えてしまう……。』

 『ですが、アリスだけではなく、Keyにも働きかけることが出来れば、アリスを守れるかもしれません。』

 

 「……その根拠は?」

 

 『アリスだけでなく、Keyにも自我があるようなのです。もし、Keyを説得することが出来れば――。』

 「もういい。」

 

 エアの言いたい事は大体分かっている。Keyを説得するために、アリスの元に向かいたいのだろう。

 その間、俺達の交信は途絶えることになる。

 この状況は、エアの選択も原因だ。

 

 「……行ってこい。お前の選択だ。」

 

 だからこそ、俺はそれを否定する気にはなれない。

 俺達は選び続けてきた。この選択だって、その1つというだけだ。

 オーバーシアー達がそうであったように、俺はその選択を、否定はしない。

 ここまで来たんだ、とことんまでやってしまえばいい。

 

 『……ありがとう……!すぐに戻ります!』

 

 やや大きい耳鳴りの後、ごく小さな何かが欠けたような感覚。

 それを感じながら着地し、既に道路を埋め尽くす大軍として押し寄せてきた無人機と向かい合う。

 

 弾幕によって装甲が削れているナイトフォールのバイザーを下ろし、連戦で残弾が心もとない武器たちを構え、無人機たちに向かって、ブースターを全開で吹かした。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 先生達はアリスを引き戻そうと、あの手この手で説得しようとしているが、その効果は芳しくない。

 

 「……アリスは、帰れません……。だって、私は……!」

 

 アリスは、自らが犯した罪に、押しつぶされていた。

 それでも、先生達は彼女に手を伸ばす。それ以外の方法を知らないから。

 

 ”アリス、君は魔王なんかじゃない。魔王になる必要だって無いんだよ。”

 

 「でも、アリスは……!モモイも、ネル先輩も……!いろんな人を、傷つけて……!」

 

 「アリスちゃん、私達は怒ってないよ。ほら、みんなと一緒に帰ろう?」

 

 「……まだ分からないのですか?王女は――。」

 

 突如、Keyは話を止めて、先生達の右側を見つめ始めた。

 今まで何もなかったはずの空間には、白を基調とし、薄い桃色がアクセントに彩られている、技研製のACが居た。

 それは、コーラルが持つ生命体との類似性に着目して造られた、無人制御を前提とするAC。

 

 「……Cパルス変異波形、エア。あなたですか。」

 

 「ええ。また会いましたね、“ケイ”。」

 

 エフェメラ《ECHO》。オールマインドとの戦いの際、エアがレイヴンと共闘するために操っていた機体である。

 武装は取り外され、大きさも2m程まで縮んでこそいるものの、その姿は当時のままであった。

 

 「……私はKey、鍵です。名前すら正しく呼べないのですか?」

 

 「……エア、さん……?」

 

 ”その姿は、一体……?”

 

 見たこともない姿で唐突に現れたエアに、あっけに取られる先生達。

 Keyとエアは、先生達の疑問を余所に話を続ける。

 

 「……何故来たのです?あなたには関係の無い事でしょう?」

 

 「ありますよ。レイヴンがアリスを、あなたを助ける選択をしたのは、私のワガママのせいなのですから。」

 

 「えっ……?エアさんが……?」

 

 「……私達は、ずっと選択を続けてきました。そのための犠牲を、払い続けました。その犠牲を、誰かに押し付けて、生きてきました。」

 「選択を後悔したこともあります。もっと良い選択肢が無かったのかと、考えたこともあります。でも……。」

 「戦わなければ良かった。そう考えた事は、ありません。」

 

 「……何を言っているのです?王女よ、耳を貸す必要は――。」

 

 「私達は、戦い続けてきました。死にかけたことも、1度や2度ではありません。」

 「それでも、戦う事は止めなかった。それこそが、私達が前に進む方法だったから。」

 「私達は選び、戦い続けてきました。アリス、私達と戦った時、それはあなたの、あなた自身の選択でしたか?」

 

 「……アリスは、誰も傷つけたくありません……!レイヴンさんとだって、本当は仲良くしたかったです!」

 

 「……それが聞けて良かった。」

 「アリス。力は、それだけではただの力です。それを握る者の意志によって、その意味が変わります。」

 「力を握る者が、決めなければいけないんです。力の意味と、戦う理由を。」

 「アリス。今あなたは、何にでもなれます。それこそ、勇者にでも、魔王にでも。あるいは、ただの天童アリスにも。」

 「自分の意志で決めるからこそ、意味があるんです。私達はそれを、尊重します。」

 

 「何を……!我々が何のために造られたのかも知らずに……!」

 

 AL-1Sは、キヴォトスを滅ぼすことを目的として、無名の司祭たちによって造られた。

 アリスは集団に紛れ込むための偽装であり、Keyはアトラ・ハシースを起動するための鍵である。

 本来の目的は、そうだったのだ。

 

 「ずっと不思議だったんです。どうして、キヴォトスを滅ぼす兵器に、心を持たせる必要があったのか。」

 「ですが、せっかく心を与えられているんです。ケイ、あなたも自分の意志で選んでみては?」

 

 「余計なお世話です……!我々には不要です!」

 

 「……では、ここで消えても良いと?」

 

 「――は?」

 

 「私は、誰も犠牲にならない選択肢があるのなら、それを選びたい。その選択を、レイヴンと共に、歩んで行きたいです。」

 「……それは、あなたも含まれていますよ、ケイ。」

 

 エアのその言葉をきっかけに、アリスの瞳に光が灯り始める。

 ミレニアムのコートを握りながら、アリスは願いをこぼし始めた。

 

 「……アリスが、みんなと一緒に、ずっと冒険が出来る選択も、ありますか?」

 

 「ええ、きっとあります。友人たちと共に、探していけばいいんです。」

 

 「王女よ!この者の戯言に耳を貸しては――!」

 

 「アリスが、勇者でいられる選択肢もありますか?」

 「ケイも一緒に、みんなで一緒に居られる選択肢も、ありますか!?」

 

 「ええ、きっと。私はそう信じます。」

 

 ”……うん、きっとあるよ。みんなが一緒に、笑っていられる選択肢が。”

 

 「――ッ!私は、アリスはっ――!」

 

 「そうだよ!エアさんの話は、よく分かんないけど……。でも、アリスはゲーム開発部の勇者じゃん!それは変わんないよ!」

 

 モモイは、そもそもアリスを恨んではいなかった。

 

 「アリスちゃん。またみんなで一緒に、沢山遊んで、一緒にゲームを作ろうよ。」

 

 ミドリは、姉を傷付けたアリスを、許した。

 

 「うんっ。みんなで、このゲーム開発部で、一緒に……!」

 

 ユズも、自身の数少ない友人であるアリスを、許した。

 

 「……アリス、選択すべき時があるとするなら、それはきっと、今です。」

 

 ”さあ、アリス。君は、何になりたい?”

 

 この場でアリスを憎んでいる者は、Keyを含めて、誰も居なかった。

 

 「――ッ!私はっ!みんなと一緒に居たいです!モモイも、ミドリも、ユズも、先生も、エアさんも、ケイも!!」

 「みんなと一緒に、ずっと冒険がしたいです!!そのためならアリスは、勇者じゃなくなっても良いです!!」

 

 アリスはそう叫ぶと、台座に突き立てられた勇者の剣へと走り出す。

 何が起きるのか察したKeyが、アリスを引き留めようとするが、彼女は振り返ろうともしない。

 

 「王女よ、お待ちください!それだけは!!」

 

 「アリスは、本当のアリスになるんです!!」

 

 そして、引き抜かれた剣は光を集め、その光は空へと放たれる。

 暖かな光が、荒れ果てた部屋を満たしていった。

 

 「光よーーー!!!!」

 

 勇者は使命の檻を壊し、自由となったのだ。

 

 「何故です、王女よ……。」

 

 

 

 

 

 「……我々の、使命が……。」

 「……お前達さえ、いなければ……!」

 

 「……こんな言い方も変ですけど、せっかく失敗して、使命から解放されたのですから、自由に生きてみては?」

 

 「……我々に自由など、ありません。造られたものに、自由など……。」

 

 「ありますよ。たった今、アリスの選択によって、あなたにも与えられたんです。」

 

 「……理解、不能……。」

 

 「……理解する必要もありません。ゆっくり味わっていけば、良いんです。」

 「私が、そうだったように。」




これにてパヴァーヌ編、本編は完結です。
ただ、まだ書きたい事があるので、多分もうちっとだけ続くんじゃ。

やっぱみんなパヴァーヌは思う所がたくさんあるのね……。
みんなの意見が見れて楽しかったですよ。

エデン編も書くつもりなんで、気長にお待ちくださいませ……。
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