『藤沢と江戸の出版事情 蔦屋重三郎と絵師たち』(藤沢浮世絵館)
江戸中期の版元である蔦屋重三郎(1750〜1797)をフィーチャー。浮世絵というと広重や国貞(三代豊国)なんかの歌川派の作品を観る機会が圧倒的に多いんですが、今回はもう少し前となる18世紀後半、たとえば喜多川歌麿や東洲斎写楽、葛飾北斎やその師匠である勝川春章、北尾重政といった絵師が中心。歌川派はその元祖である歌川豊春がようやく登場しはじめたぐらいの時代です。
こうして観ると、確かにこの時代の画面て色感もそれほどなくて、全体的にさっぱりした印象もあるんですけど、そのさっぱりさ加減にこそむしろ現代芸術的な洗練されたテイストを感じていたりもします。歌川派が足し算の美学であるとするなら、この時代は引き算の美学といったところでしょうか。個人的には歌麿の画面に惹かれていました。
もちろん豊春の「浮絵」、一点透視図法を用いて描かれた作品もなかなかおもしろいです。こういう描きこんだ絵が描けるのはこういう技術的な背景があってこそで、豊春と歌麿が同じ時代に同居していたのは、ここが時代のターニングポイントだったのかなとも思いました。重三郎は版元として、貴重な時代に対峙していたんだなと。
今回は版元をフィーチャーした展覧会ということもあり、浮世絵のみならず絵草紙なども展示。写真のように、複数のページをコピーしたものが壁に貼られておりました。大手の展覧会でもぶっきらぼうに1ページだけめくってあって…みたいなのが多いなか、相当数のコピーを使って、できるだけその中身を見せようという姿勢は素晴らしいなと思いました。
富士山の位置に注目。
以下、おまけ
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