BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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エルデンリングDLC、ついに来ましたね。
これから私も影の地に行ってきます。
全員こんな小説読んでないでエルデンリングをやれ!!!


21.違法兵器工場強制監査

 『独立傭兵レイヴン、これは連邦生徒会防衛室からのミッションです。』

 

 『D.U.近郊に存在する、違法工場の強制監査を支援してください。』

 

 『この工場は、通常の機械加工工場として登録されていますが、実際は多数の違法兵器の製造、保管を行っています。』

 

 『我々はまず、ヴァルキューレ当局による強制監査を行います。貴女はトラブルの発生に備え、後詰めとして控えてください。』

 

 『戦闘となった場合、違法兵器を使用しての抵抗が予測されます。十分注意してください。』

 

 『これらの兵器がキヴォトスにばらまかれた場合、その損害は計り知れません。正義のため、貴女の力を貸してください。』

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 D.U.地区郊外、住宅街から少し離れた場所に位置する産業地帯。

 普段であれば、辺りからは機械が動く音や合図のための叫び声が聞こえたり、商品を運ぶためにトラックが道路を走っている。

 だが、今日は少々様子が異なるようだ。

 

 「ヴァルキューレ公安局だ!これより連邦生徒会防衛室からの要請に基づき、強制監査を行う!武装を解除して投降しろ!」

 

 「……ダメです。反応がありません。」

 

 「全く、一体どうなってるんだ……。」

 

 ヴァルキューレ公安局長、尾刃カンナはメガホンを握り、工場に向けて叫ぶ。

 だが隣に立っていた部下が双眼鏡で中を覗くと、人が動く様子はおろか、人の気配すら感じない。

 これはカンナの経験からしても異常事態であった。

 そんなカンナに近づいて敬礼をする者が2人。

 

 「カンナ局長!周辺一帯の住民の避難、完了しました!」

 

 ヴァルキューレ生活安全局1年生、中務キリノ。

 

 「よし、次の命令まで待機しろ。」

 

 「了解しました!」

 

 「いや~、違法武器を作っちゃうなんて、どうしてそんな面倒くさいことをするかなぁ?」

 「いつかこうやって突っ込まれる事なんて分かってると思うんだけどねぇ。」

 

 同じく生活安全局1年生、合歓垣フブキ。

 こういった仕事では本来、生活安全局は不測の事態に備え待機しているものなのだが、市民の誘導のためにと彼女たちも召集されていた。

 

 「それだけ需要があるという事だ。D.U.の近くに工場が作られる程にはな。」

 「そして、その需要と供給両方を潰すのが我々の仕事だ。」

 

 「はいはい、分かってますよ局長。」

 

 「はいは1回だ!何度言えば分かる!はぁ……。」

 

 顔に手を当ててうつむくカンナ。

 この2人にとってこのようなやり取りはほぼ日常なのだが、せめて大仕事の時くらいシャキッとしてほしいものだ。

 そんな考えを振り払いながら、バンに座っている通信担当、ミナミに顔を向ける。

 

 「あの傭兵はまだか?突入までもうすぐだぞ。」

 

 「まもなく到着するとのことです。……ん?」

 「……来ましたね、あのヘリです。」

 

 ミナミと同じ方向を見ると、1機の大型ヘリがこちらに近づいていた。

 かなりの低空まで高度を落としたと思ったらヘリが急上昇。

 先ほどまでヘリが居た場所には、1機のパワードアーマーが残っていた。

 パワードアーマーは逆噴射しながらヴァルキューレの部隊と衝突する直前で着地。

 姿勢を整えたのち、バイザーを引き上げながらこちらに近づいてきた。

 

 「独立傭兵レイヴン、現着した。状況は?」

 

 「……お前はもう少し静かに来い……!全く……。」

 

 カンナは再び顔に手を当ててうつむく。

 カンナは、傭兵はこんな奴らばかりなのかと考えたが、今まで関わってきた傭兵は状況を聞こうともしなかったことを思い出す。

 こうして話を聞く気はあるようだし、噂通りの実力ならとりあえず使い物になるだろう。

 気を取り直して、カンナは顔を上げて口を開く。

 

 「既に2度警告を行っているが、相手からの反応がない。3度目の警告の後に反応が無ければ、突入して被疑者と証拠物件を確保する。」

 

 「既に無人という可能性は?」

 

 「それは無い。人が出入りしている事を確認してから包囲している。裏口と思われる場所も封鎖済みだ。」

 「いまこの工場には、ネズミ1匹出入りできないはずだ。」

 

 「……封鎖してからどれくらいだ?証拠を処分していないとも限らんぞ。」

 

 「我々をバカにしているのか?それも想定内だ。最悪、被疑者を確保し、工場の生産を停止できればいい。」

 「この工場自体が証拠のようなものだ。」

 

 「なら、いよいよいつ突入するかの違いでしかない、という事だな。」

 

 建物をスキャンして内部の様子を確認すると、確かに人影が30人ほど。

 問題は、そいつらのほとんどが既に武器を握っており、それ以外の者も何かを捨てているかのような動きをしている事。

 どうにか中の様子を確認できないかと考えていると、カンナが再びミナミに指示を飛ばす。

 

 「そういう事だ。おい!監視カメラ映像はまだか!?」

 

 「今やってますよ!思っていたよりプロテクトが分厚くて……!」

 

 ミナミはラップトップを膝に抱えて、工場のセキュリティシステムと格闘しているようだ。

 その様子を見かねたエアがラップトップのシステムに干渉し始める。

 

 『……私にやらせてください。』

 

 「えっ誰!?ってちょっと!?」

 

 『……なるほど、この方式ですか。少し強引に入ってしまいましょう。』

 『プロテクトを回避、ファイアウォールを無効化、通信系統からメインシステムに侵入……。』

 『……完了。カメラ映像を共有します。侵入は検知されましたが、管理者権限を確保しました。これで彼らは何も出来ません。』

 

 「……よくやった、オペレーター。裏の人間の方が優秀とは、どういうことだ……?」

 

 『まあ、餅は餅屋に、と言いますから。』

 

 「まあいい、これから最終警告を行う。お前も準備しろ。」

 

 カンナがハンドサインを送ると、盾を構えた部隊が工場の前に出て陣形を組み始めた。

 それを見ていたレイヴンも部隊の後ろに下がって様子を見ることにした。

 カンナがメガホンを握り工場に向ける。

 

 「最終警告だ!これより強制監査を行う!武装を解除して投降しろ!さもなくば突入――。」

 

 『――ッ!レイヴン、回避を!!』

 

 工場の周りに建てられていた壁の上から人が現れ、その全てがこちらに銃口を向けてくる。

 反射的に機体を後退させながら太陽守でむき出しの顔を守りつつ、バイザーを下ろす。

 他のヴァルキューレも遮蔽物に隠れるなどで対処したようだ。

 

 「クソッ!発砲された!これより突入する!レイヴン、お前の出番だ!行ってこい!」

 

 「了解、突入する。」

 

 「総員突入!私に続け!」

 

 壁をブーストで飛び越えて工場の敷地に侵入。

 着地と同時に敵部隊の横を滑りながらガトリングを浴びせていく。

 ヴァルキューレは盾を構えた部隊を壁にしつつ、後ろから射撃を浴びせていく堅実な戦術をとっている。

 味方の動きを邪魔しないように、部隊の前かつ敵の横からミサイルを叩きつけることで戦力を削いでいく。

 と、敵の1人がこちらに手榴弾を投げつけてきた。

 反射的にクイックブーストで爆発から逃れようとするが、想定よりもはるかに広い爆風が機体を包み込む。

 ナイトフォールのおかげでダメージ自体は軽微だが、もしこの爆発を生身で喰らえばタダでは済まない。

 

 『この爆発、サーモバリックです!レイヴン、直撃は避けてください!』

 

 手榴弾を投げつけてきた奴にMORLEYを叩き込んで排除。

 ふと建物の上を見ると、無反動砲を構えた連中が3人。

 あれもサーモバリック砲弾が装填されているのだろう。

 建物の屋上まで飛び上がって、3人の眼前で太陽守を展開。

 砲口を向けようとしていたが、砲弾が飛んでくる前に爆雷が着弾する。

 建物の正面を避けて着地するが、その瞬間に壁から飛び出してきたキャタピラが、こちらを踏みつぶそうとして来た。

 クイックブーストで急加速、キャタピラの下に潜り込むようにして回避する。

 

 「これは、多脚戦車か……。」

 

 普通の戦車のキャタピラからさらにキャタピラが伸びており、それを足として使えるように改造されているようだ。

 砲塔にはガトリングガンが2機増設されている。

 

 『こちらレイヴン、多脚戦車を確認しました。既存の戦車を改造した物と思われます。レイヴンが対応します。』

 

 戦車の周りをブーストで回りつつ、ガトリングで牽制していくが、装甲に阻まれて効力はほぼ無い。

 戦車も歩きながらガトリングガンで弾幕を張ることでこちらの動きを制限しようとしている。

 主砲の旋回能力も強化されているらしい。

 警告、正面の主砲が火を噴こうとした直前で跳躍、上空から装甲の薄い上部にミサイルを直撃させる。

 戦車は立てていた足を延ばして加速、こちらから大きく距離を取った。

 

 「こいつ、カタフラクトを思い出すな。アレほど固くは無いが。」

 

 戦車は立ち上がり、再びガトリングで弾幕を展開、それを太陽守と装甲で防ぎながら急接近。

 再び主砲を放とうとしてきたが、横にクイックブーストすることで回避。

 戦車の砲塔の回転が追い付く前に太陽守の爆風で視界を塞ぎMORLEYを展開、砲塔とキャタピラの隙間を狙って榴弾を叩き込む。

 着弾した榴弾は装甲を溶かし、戦車の中に大量の破片をまき散らす。

 破片が戦車に乗せられていた砲弾に突き刺さり誘爆、その熱は燃料に火をつける。

 結果、戦車は轟音と爆風と共にスクラップとなった。

 

 『多脚戦車、撃破。』

 

 『よくやった、こちらも被疑者の確保がほぼ完了した。オイ動くな!』

 

 レイヴンが戦車と戦っている間にヴァルキューレは建物に突入、中の人間を確保していたらしい。

 仕事の速さにレイヴンは舌を巻いていた。

 ただここでエアがカンナに声をかけた。

 

 『カンナ、1つ伝えたいことが。』

 

 『どうした、オペレーター?』

 

 『この工場ですが、大きな地下室が存在します。この工場の敷地とほぼ同等の広さです。』

 『構造は把握していますが、中がどうなっているかは、直接確かめるしかありません。』

 

 レイヴンの視界の端に、工場の見取り図が映し出される。

 どうやら建物の中に隠し階段があり、そこから地下に入れるようだ。

 エアの話から僅かな間の後、カンナが無線で指示を飛ばす。

 

 『……了解した。レイヴン、内部を調べろ。慎重にな。キリノ、フブキ!お前達はレイヴンに付いて行け!』

 

 『了解です!フブキ、行きましょう!』

 

 『え~!レイヴン1人で十分でしょ~!?』

 

 『つべこべ言わずさっさと行け!』

 

 『は~い……。』

 

 カンナの指示に従い、建物に入り赤いコンテナの前に立つ。

 このコンテナが地下に入る階段を隠している。

 レイヴンは先にコンテナの前で待っていたキリノとフブキに顔を向ける。

 

 「入り口はここだ。準備はいいな?」

 

 「はい!いつでもいいですよ!」

 

 「いいよ、パパっと終わらせよっか。」

 

 当然カギがかかっているので、レイヴンがドアを蹴り飛ばしてこじ開ける。

 まずレイヴンが階段を降りていき、キリノとフブキはレイヴンを盾にして進む。

 中は照明こそ点いているが、コンクリート打ちっ放しの雰囲気も相まって薄暗い。

 階段の先は小部屋になっており、テーブルには理科の実験でよく見た機材がズラリと並んでいた。

 

 「誰も居ませんね……。全員捕まっているのでしょうか?」

 

 「それなら楽でいいがな。少なくとも、この先には誰も居ない。」

 

 「何で分かるの?もしかして超能力とか?」

 

 「アーマーにスキャン機能が付いている。真っ暗闇の中でも動けるようになる優れものだ。」

 

 レイヴンはフブキの質問に、顔を向けることなく答える。

 本当はレイヴン自身の能力なのだが、それを正直に話すと面倒になりそうだったので伏せたのだ。

 

 「おお~、それで全部丸わかりってわけか。」

 

 『キリノ、状況を報告しろ。』

 

 「こちらキリノ、今のところ人影はありません。部屋の中には、何かを作るためと思われる機械が並んでいます。」

 

 キリノはカンナの指示に、進む先から目を逸らすことなく、左肩に取り付けた無線機で答える。

 

 『了解した。捜索を続けろ、慎重にな。』

 

 「了解しました!」

 

 「はぁ~、これがドーナツを作る機械だったら良かったんだけどなぁ。」

 

 銃を下ろしてそう呟くフブキ。

 キリノは怪訝な顔をしながら、壁際に置かれていた箱状の機械に近づいた。

 今も動いているようで、ゴウンゴウンと大きな音を立てている。

 

 「……これ、何を作るための機械なんでしょうか?武器ではなさそうですよね?」

 

 「あ~、言われてみると。何だろその機械?」

 

 「進めば分かるかもしれん。行くぞ。」

 

 再び3人で地下室の奥へと進んでいく。

 道中でいくつか部屋があったものの、今までと同じく何かを作るための機械が並んでいるばかりであった。

 そして、行き止まりの扉の前で、エアの通信が耳に入ってくる。

 

 『ここが最後かつ、最も広い部屋です。十分に注意を。』

 

 最初と同じように、レイヴンがドアを蹴り開け、レイヴンを盾に3人で進んでいく。

 まず3人の目に入ったのは、ドアの正面にある円筒状の3つのタンクだった。

 

 「……タンクか?」

 

 「でっかいなぁ。何が入ってるんだろ?」

 

 辺りを見渡せば、部屋の中にはたくさんの機械が置かれている。

 これまでと違うのは、それぞれが多数のパイプで繋がっており、最終的にはタンクに伸びていることだ。

 機械たちも金属ではなく、液体や気体を処理するためのそれに見える。

 と、唐突にキリノが鼻を動かし始めた。

 

 「……ん?フブキ、何だか変な臭いがしませんか?」

 

 「ん~?……あ~、確かに。なんか、ちょっと苦い臭いがする。」

 

 「臭い?どういう事――。」

 

 ナイトフォールは気密構造のため、レイヴンに臭いは分からない。

 キリノ達に聞き返そうとレイヴンが振り返った瞬間――。

 

 『全員、タンクから離れてください!!!』

 

 「――ッ!エア、どうした!?」

 

 エアの声に驚いたレイヴンが反射的にブーストで後退する。

 他の2人もエアに従い、ドアの方向へ数歩下がっていった。

 エアはこちらの問いかけに答えることなく、この工場に居る全員に向けて叫んだ。

 

 『こちらレイヴン、地下室の最奥にタンクを3つ確認!』

 『全て中が毒性ガスで満たされています!!』

 

 「えぇ!?まさか、この臭い!」

 

 「やばいやばい!!今すぐ上に戻るよ!!」

 

 「フブキ、ハンカチで口を押えてください!出来るだけ吸わないように!」

 

 キリノとフブキはドアから地上に向けて駆け戻っていく。

 それとほぼ同時に、レイヴンの頭上でエンジン音が響き始める。

 

 「――ッ!何の音だ……!?」

 

 『何だ!?トラックが動いてるぞ!!』

 

 『運転手!すぐに車を――うわぁ!?』

 

 通信から聞こえてくる声、ガラガラという音と衝撃から、ただ事ではないことを嫌でも理解する。

 

 「こちらレイヴン、状況を報告しろ!何が起きている!?」

 

 『レイヴン、お前も戻って来い!説明は後だ!』

 

 地下室入り口の階段まで駆け戻った後、ブーストで階段をひとっ飛び。

 勢いそのままにブーストでカンナの元まで近づく。

 他のヴァルキューレも被疑者を放って忙しなく動いていた。

 

 「カンナ、何が起きた!?」

 

 「無人のトラックが1両、建物の中から急に発進した!おい!アレの行先は分かるか!?」

 

 カンナの指示を受けたミナミがラップトップを叩いてトラックの位置を追跡しようとしている。

 およそ20秒ほどで位置を捉えた。

 

 「えーっと……!居た!幹線道路を東に向かっています!その先は……。」

 「……ぁぁああ、マズいマズいマズい!」

 

 「どうした!?」

 

 「アレの行先はD.U.地区中央、セントラルタワーです!!」

 

 「何だとッ!?トラックの積み荷は!?見えた者はいるか!?」

 

 「分かりません!荷台が閉じられていて……!」

 

 「クソッ!」

 

 現場の空気が一気にピリついていく。

 当然だ。この工場に居た連中は、連邦生徒会に対し、白昼堂々テロを仕掛けようとしているのだから。

 レイヴンはもちろん、カンナにとっても経験にない事態であった。

 

 『……トラックの解析が終わりました。荷台から、地下室の毒性ガスと同じ反応を検出しています。つまりこれは……!』

 

 「……毒ガス満載の車両爆弾か。」

 

 「――ッ!!連邦生徒会と周辺住民に避難勧告!!セントラルタワー周辺から急いで退避させろッ!!!」

 

 ミナミはセントラルタワーとの通信を初め、他のヴァルキューレも緊急事態に対応するため動き始めた。

 話を聞いていた警備局の1人が被疑者に近づき、胸倉を掴み上げて激昂する。

 

 「テメェら!!一体何考えてやがるッ!!そんなに人を殺してぇのか!?」

 

 「……ククッ、ククククッ……。」

 

 「何がおかしい……!言ってみろよォ!!」

 

 「……分からないか?これが、俺達の覚悟だ。革命とは、まず上に立ってる連中を皆殺しにするんだ。」

 「腑抜けの連邦生徒会と、その飼い犬のお前達とは違うんだよ。」

 

 「――ッ!このッ、イカレ野郎どもがッ……!!」

 

 「後にしろ巡査!!トラックを止めた後に好きなだけ聞き出せ!!」

 

 カンナにたしなめられた巡査は、被疑者から渋々手を離した。

 その間にミナミが本部と連絡を終えたようで、通信から受け取った内容をカンナに向けて叫ぶ。

 

 「局長!交通局に幹線道路の封鎖を要請しました!ヘリの出動要請も出しましたが、到着まで15分かかります!」

 

 「分かった!可能なら道路周辺の住民も避難させろと伝えろ!決してトラックに近寄らせるな!」

 

 「どうすれば止められる……。下手に攻撃すればガスが漏れるぞ。」

 

 「何か大事になってきちゃったなぁ……。どうしてこんなことに……。」

 

 状況が整理された今、残る問題はトラックを止める方法である。

 まず運転手はそもそもおらず、自動運転システムによって制御されている。運転手の無力化によって停車させることは出来ない。

 トラックに銃撃し、もしキャビンに被弾した場合、そこからガスが広がってしまう。

 スパイクベルトでタイヤをパンクさせるのは一見安全な方法だが、もしトラックが横転した場合ガスタンクが散らばってしまう事も考えられる。

 手詰まりか。そんな空気がヴァルキューレ達の間に漂い始める。

 

 「……エア、どれほど接近すれば、アレの制御に干渉できる?」

 

 『10m以内なら、問題なく侵入できるはずです。それだけ近づければ、強制的に電源を落とすことも出来るはず。』

 

 エアからの提案。現状最も被害を抑えながらトラックを止められる方法だった。

 カンナはレイヴンに顔を向ける。彼女の眉根にはしわが寄っていたが、その瞳には覚悟がこもっていた。

 

 「……お前達に頼むしかないのか。」

 「レイヴン、オペレーター。あのトラックを止めてくれ。」

 

 「了解した。行くぞ、エア!」

 

 「総員!被疑者を確保、搬送した後、この工場周辺を封鎖する!特に、地下室には誰も近寄らせるなよ!」

 

 レイヴンは赤い翼を広げて空へと飛び立ち、少し遅れて大型ヘリがそれを追いかける。

 工場に残ったヴァルキューレは一帯を封鎖するために動き始めた。

 

 「……ハッ、まさかヴァルキューレが傭兵の手を借りるとはなぁ。これくらいの事態に自分たちで対応すら出来ないとは、笑えるぜ。」

 

 カンナは胡坐をかいていた被疑者の顎を掴み顔を引き揚げさせる。

 他のヴァルキューレは、その様子をただ見ていた。

 

 「……貴様らには聞きたいことが山ほどある。楽しみに待っていろ。」

 

 そう言われた奴の顔はいびつに歪み、真っ直ぐな瞳が爛々と光っていた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「どこだ、どこにいる……。」

 

 幹線道路上空を、ナイトフォールの全速力で飛んでいく。

 道路は既に封鎖が済んでおり、レイヴンから見える範囲で車は1台も居ない。

 5分ほど飛び続けているが、中々トラックが視界に入ってこない。

 と、道路前方に点滅する赤い光が見えた。

 

 『……ッ!いました、あそこです!』

 

 2台のパトカーがトラックを追跡していたようだ。

 見つかりさえすればこちらのもの。

 レイヴンはブースターのリミッターを外し、あっという間にトラックの上空に近づいた。

 

 「こちらレイヴン、トラックを追跡中のパトカー、聞こえるか。」

 

 『こちらPC403、どうぞ!』

 

 「こちらはトラックの上空を飛行中。これから奴の前に回り込んで強制停車させる。」

 

 『強制停車!?そのアーマーでぶつかって停める気か!?』

 

 「そうだ。お前達はトラックを横転させないように、リヤタイヤの両サイドから挟み込め。オペレーターがシステムをハックして停止させる。」

 

 『聞きしに勝るバカ野郎だよお前は……!どうせそれくらいしか方法が無いんだろ?やってやるよ!』

 

 返事を合図にレイヴンは急加速、トラックの真正面に着地し、太陽守を前に構えて腰を落とす。

 パトカー達もトラックの両側に回り込んだ。

 

 『衝突まで、3、2、1!』

 

 激突。同時にブースターを全開で吹かし、パトカーはリヤタイヤを挟み込む。

 トラックのタイヤが悲鳴を上げ、白煙を噴き上げる。

 フロントガラスは粉々に砕け散り、ナイトフォールは歪んだバンパーの中にめり込んだ。

 

 「ぐぅぅ……!」

 

 両足を支えるアスファルトがガリガリと削れていく。

 ナイトフォールのフレームもギシギシと悲鳴を上げる。

 それを動かしているレイヴンも、ブースターの推力とトラックのエンジンパワーに押しつぶされようとしている。

 

 『止まれェェエエ!!!』

 

 強引に減速させられてもなお、タイヤはトラックを前に進ませようと地面を蹴り上げる。

 パトカー達はタイヤにはじき出されないように、トラックに向けてハンドルを切って車体を押し付ける。

 だが、パトカーのフロントがトラックのタイヤに巻き込まれかけたその時。

 タイヤの回転と、エンジンの唸り声が収まった。

 トラックの動きが、完全に止まった。

 

 『自動運転システム、強制停止。何とか、上手く行きましたね。』

 

 エアのハッキングがうまく行ったのだ。

 交通局によるロードブロックまで後1㎞という、寸での所であった。

 レイヴンはめり込んだ体をトラックから剥がし、パトカーに居たヴァルキューレ達もほっと一息。

 すると、ヴァルキューレの校章が描かれた2機のヘリがレイヴンの上空で止まり、ロープを4本ずつ下ろしてきた。

 ロープを掴んで降りてきたのは、黄色い防護服を纏った重装備の部隊。

 

 「よくやってくれた!後は私達が引き継ぐ!」

 

 「お前達、SRTか。」

 

 防護服の左肩には、己の部隊を表すであろう、サイとライオンが描かれている。

 きっと、彼女たちにとっても、SRTである事は誇りなのだろう。

 例えヴァルキューレに編入されたとしても。

 

 「そうだ!よく気づいたな!」

 

 「そのエンブレムで分かる。あのトラック、恐らく大量の毒ガスタンクが積まれてる。扱いには注意しろ。」

 

 「もちろんだ!後は私達に任せてくれ!RHINO、LION、ついてこい!」

 

 8人全員が迷いのない動きでトラックの荷台に回り込み、中を確認していく。

 次第に装甲車やパトカーが集まっていき、周辺一帯の封鎖が進んでいく。

 パトカーに乗っていた者達も既に外に出ており、後から来た者達に介抱されていた。

 後は彼女たちに任せれば問題ないだろう。

 

 『お疲れさまでした、レイヴン。今迎えに行きます。』

 

 「お前もな、エア。よく止めてくれた。」

 

 『……想像以上の大仕事でしたね、しばらく休息をとりましょう。』

 

 「ああ、そうさせてもらう……。」

 

 『……念のため、この事件をシャーレにも伝えておきましょう。今頃ひやひやしているでしょうから。』

 

 「ハッ、そうだな。頼んだぞ。」

 

 疲れから空を見上げると、クロノスの校章が描かれたヘリが、太陽の中を飛んでいる。

 この状況をのんきに生中継しているであろう彼女たちに対して、つい口をついて出そうになった悪態を、レイヴンはグッと飲み込んだのだった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 後で分かったことだが、あの工場の主は、反体制勢力《リリアナ》。

 ブラックマーケットすら追われた、かなりの過激派連中だ。

 ここ最近になって急速に勢力を拡大していたらしく、防衛室の頭痛の種だったそうだ。

 聞けば、俺が雇われたトリニティ防衛戦で不良連中に武器を渡したのは、こいつらだそうじゃないか。

 今回の件で、頭目を含めた幹部クラスの人間を複数捕らえる事ができたので、一掃できるまでそう時間は掛からないだろう、とのことだ。

 こいつらを掃除するときは俺を呼べとシャーレにメールを送り、俺は再び深い眠りについた。




本当はレイヴン視点で書きたいのに事前の状況を説明しようとすると三人称視点にならざるをえないとかいうジレンマ。
一貫して三人称視点で書ける人ホント凄いと思います。(小並感)

次回
命のカタチ
マリオネットは青き春の夢を見るか

次回も気長にお待ちくださいませ……。
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