BLUE ARCHIVE -SONG OF CORAL-   作:Soburero

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Q.ナイトフォールとブルアカ世界の兵器ってどのくらいの性能差なの?
A.AC6世界にAC4シリーズのネクストを持ち込んだくらいの差です。
 パワーバランス崩れちゃってます。


17.トリニティにて、烏が羽ばたく

 トリニティ自治区にて。

 白い椅子に腰かけて、ゆっくりと紅茶を啜る者が1人。

 灰色の髪に猟犬の耳、深紅のヘイローを携えた女が、カフェのテラス席でティーカップを傾けていた。

 カップ全体を掴んで持ち上げながら。

 

 ヒソヒソ……

 ヒソヒソ……

 

 (……レイヴン、私が黙らせてきましょうか?)

 

 (落ち着け、勝手に言わせておけばいい。)

 

 淑女の気品を重要視するトリニティにおいて、品性の無い行動はご法度。

 レイヴンもそれは分かっている。

 ただ、彼女がマナーなど気にするわけもなく、品性を欠片も感じさせない行動を堂々と取っている。

 その行動が周囲の注目を集め、こうして影口を叩かれるに至っていた。

 

 そも、何故彼女がトリニティに居るのか。

 早い話が、買い出しと休暇である。

 いくら上等な武器を用意したとしても、水と食料が無ければ戦えない。

 いくら優秀な兵士でも、休息を怠ればパフォーマンスは落ちる。

 この日は目ぼしい依頼が1件も届いておらず、ヘリの物資も底を突こうとしていた。

 それで買い出しついでに観光でもしようと、エアからの提案があったのである。

 その結果、レイヴンの周りが即席の見世物小屋と化してしまったのだが。

 

 ウェイターが水の入ったグラスをトレーに乗せ、こちらに近づいてくる。

 他の客の注文を届けようとしているのだろう。

 こちらの席の近くまで近づいた瞬間。

 

 「きゃあ!」

 

 急にウェイターがこちらに向かって倒れこみ、トレーの上のグラスは宙を舞い、レイヴンはグラスの水を盛大に浴びてしまった。

 グラスはそのままウェイターと共に地面に落ちて砕けていく。

 レイヴンは手で顔をぬぐってから立ち上がり、ウェイターにしゃがみ込む。

 

 「おい、ケガは無いか?」

 

 「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます。」

 

 「ならいい。」

 

 レイヴンが手を差し出すと、彼女はそれを受け取り、それを支えに引き起こした。

 彼女がレイヴンに引き起こされた瞬間、顔が急激に青ざめていく。

 自分が運んでいた水を被ってしまったことを理解したのだろう。

 ウェイターは腰を起点に綺麗に頭を下げ始めた。

 

 「大変申し訳ございませんお客様!私の不手際で……!」

 

 「気にするな。濡れる程度なら、乾くまで待てばいい。」

 

 「で、ですが……!お召し物のクリーニング代を負担させていただきますので、どうか……!」

 

 「気にするなと言っている。どうせ服は消耗品だ。それでも気にするというのなら……。」

 

 「は、はい……!」

 

 「フィーカ、コーヒーを一杯頼む。ミルクと砂糖も付けてくれ。それで補填とする。」

 

 「え……?よろしいのですか?」

 

 「構わない。いつも銃弾を浴びている身だ。水程度なら大した問題じゃない。」

 

 「……!かしこまりました。誠心誠意入れさせていただきます!」

 

 そう言って深々と礼をすると、キッチンへと戻っていった。

 ただ、濡れネズミとなったレイヴンを見て、静かに笑うものが少々。

 

 クスクス……

 ヒソヒソ……

 

 (あの人たち、わざとウェイターの足を……!ヘリで引きずり回してやりましょうか……!)

 

 (どうどう、エア、落ち着け。)

 

 前の席の生徒達が小さく笑っていた。

 周りを見ると、レイヴンよりも彼女たちを見て話をしているのが伺える。

 彼女たちがウェイターの足を引っ掛けたのだろう。

 レイヴンを辱める、ただそのためだけに。

 レイヴンも何も思わないわけではないのだが、阿呆に付き合ってるとキリがないことを考え、相手にしないことにした。

 と、ここでエアから報告が入る。

 

 (……ん?レイヴン、依頼が入りました。差出人は……。)

 (トリニティの、正義実現委員会……?)

 

 (意外だな。連中が傭兵に頼るとは。)

 

 (あるいは、それほど状況がひっ迫しているのかもしれません。依頼の内容も、防衛戦に対する救援要請です。)

 (詳細を確認しましょう。)

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 『独立傭兵レイヴン。これは正義実現委員会からの、緊急の依頼です。』

 

 『目標は、トリニティ本校舎の防衛です。』

 

 『ある不良集団が、私達に対する報復攻撃を計画しているという情報を掴みました。』

 

 『通常であれば、私達だけで対処するのですが……。』

 

 『直近に大規模な作戦を実行したばかりで、委員たちも疲弊しているのです。』

 

 『そこであなたには、今回の防衛戦に、協力していただきたいのです。』

 

 『前線を築く場所は3か所。それぞれ、A、B、Cポイントと呼称します。』

 

 『Aポイントの指揮は、委員長のツルギ。Bポイントは、副委員長である、私が担当します。』

 

 『あなたには、Cポイントをお任せします。イチカと協働して、対処に当たってください。』

 

 『また狙撃手として、後方にマシロを配置します。支援が必要なら、要請してください。』

 

 『以上が、今回の依頼の概要です。』

 

 『……あなたのような傭兵に頼るのは、私としては情けなさもありますが……。』

 

 『独立傭兵レイヴン。あなたの力を、このトリニティのために、私達が信じる正義のために、貸してください。』

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 不良集団の報復攻撃、この文字だけでもきな臭さが漂ってくる。

 普通、ただの不良が大規模な掃討を受けた後、治安維持組織に対して報復出来るほどの余力が残るはずがない。

 誰かの息がかかっている、と考えた方が良いだろう。

 

 (……妙にきな臭いな。何か情報はあるか?)

 

 (今はほぼありません。不良たちに直接聞いてしまうのが1番いいでしょう。)

 

 (同感だ。正実にすぐに行くと伝えろ。)

 

 レイヴンはポケットから紙幣を何枚か適当に取り出し、机の上に置いた。

 そして、椅子の下に置いてあった荷物を取り出し、肩にかけて立ち上がる。

 その様子を見ていたウェイターがレイヴンに駆け寄り引き留めようとする。

 

 「お、お客様!まだコーヒーが……!」

 

 「すまない、急用ができた。お代はそこに置いておく。」

 

 「そ、それは構いませんが……。あぁっ、お客様!せめてこのタオルを――!」

 

 レイヴンは呼びかけに答えることなく、テラスの柵を軽々と飛び越え、本校舎に向けて駆け出した。

 あっけに取られたウェイターは、遠くなっていく背中をじっと見ていることしかできなかった。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「……ハスミ先輩。そのレイヴンって、本当に信用できるんっすか?」

 

 仲正イチカ、Cポイントの指揮を任された小隊長。

 先輩から傭兵を雇ったと聞いていたが、その人物はキヴォトス全域で暴れまわっている曰く付き。

 イチカの心には一抹の不安がよぎっていた。

 

 『ええ、そのはずです。今回は十分な依頼料を積みました。寝返ることも無いでしょう。』

 

 「それならいいんすけどね~。」

 

 『イチカ先輩、そちらに向けて何かが近づいています!』

 

 無線から入るマシロからの報告。

 何か。目が良いマシロが珍しくはっきりしない言い方をしていた。

 マシロがいる場所を見つめながら聞き直す。

 

 「何か?何かって何っすか?」

 

 『その、何というか、空から人のような、何かが……!』

 

 『こちらレイヴン、上空から接近します。』

 

 「えっ上空?」

 

 ドォォン!

 プシュ~

 

 「うわぁ!?一体何なんすか!?」

 

 言葉につられて空を見上げると、こちらに近づいてくる赤い彗星。

 それは地面直前で逆噴射、ブースターから吹き出る煙と衝撃と共に地面へと降り立った。

 人だ。信じ難い話だが、確かに人が飛んでいたのだ。

 頭のバイザーが引き上がって後頭部に周り、深紅の瞳があらわになる。

 

 『独立傭兵レイヴン、現着しました。』

 

 いきなり現れたレイヴンに対し銃を向けるものも少なくなかったが、その言葉を聞いて、このアーマーの主が分かったらしい。

 向けられていた銃口はゆっくりと下ろされていく。

 

 『えっ?あれがレイヴン!?』

 

 『イチカ、マシロ、どうしました?』

 

 『は、ハスミ先輩!レイヴンがパワードアーマーを着ています!見たことがないタイプです!』

 

 「……お前がイチカか。」

 

 細く引き絞られた瞳と、底なしの深紅の瞳が向かい合う。

 アーマーのおかげでレイヴンの身長は2mを越えており、イチカが首を上げなければ目を合わせることが出来ない。

 

 「そ、そうですけど、あなたがレイヴンっすか?」

 

 「そうだ。救援に来たぞ。状況は?」

 

 「良かった、助かるっす!今のところ、辺り一帯は静かっすね。何か来そうな感じはしないっす。」

 

 「そうか。エア、どうだ?」

 

 『広域スキャン開始。確かに周辺に敵影はありませんが、離れた場所で部隊を編成しているようです。』

 『敵戦力には装甲車も含まれています。対戦車兵器を用意した方が良いでしょう。』

 

 エア、レイヴンのオペレーター。

 どうやらかなり優秀らしく、一瞬で敵部隊の情報を掴んでいる。

 調査班の報告通りだ。

 

 「了解っす。聞いてたっすね!何でも使って追い返すっすよ!」

 

 「任せてください、イチカ先輩!」

 

 後輩の1人が武器を取りに行くため、校舎に向けて走り出す。

 それと同時に、レイヴンが開けた道路に向き直した。

 敵部隊が進行してくると予想されている方向である。

 

 「俺は一足先に仕掛けて、連中の数を減らす。撃ち漏らしは任せたぞ。」

 

 「えっ、1人で行く気っすか!?無茶っすよ!」

 

 「問題ない。そのためのナイトフォールだ。」

 

 「ナイトフォール?ああ、そのアーマーの名前っすか。」

 

 『レイヴン、敵部隊が移動を始めました。各ポイントに向けて進行しています。』

 

 『分かりました。総員、戦闘配置!不義なる者に、私達の正義を知らしめなさい!』

 

 『キヒャヒャヒャヒャ!!ズタズタにしてやるぅ!!』

 

 『この1発に、正義の意志を……!』

 

 「あ~、もう始まっちゃうっすか。レイヴンさん!申し訳ないけど、お願いします!」

 

 「任せろ。」

 

 レイヴンがバイザーを下ろし、ブースターを吹かせて敵陣に突っ込んでいく。

 イチカも土嚢の後ろに入り、部下たちと一緒に銃を構えた。

 

 「全員、構え!あいつらは1人も通さないっすよ!」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「進め進め!正義だのなんだの吠えてる連中に、一泡吹かせてやるんだ!!」

 

 「何でそんなに張り切ってるんですかたいちょ~。ちょっかいかけるだけでいいって言われたじゃないですか~。」

 

 「ウッセェ!!アイツらには散々煮え湯を飲まされてんだ……。1発ぶん殴らなきゃ気が済まねぇんだよ!!」

 

 「あ~あ、頭に血が上っちゃってる……。ダ~メだこりゃ……。」

 

 「オラ行くぞ!!せっかく色々手配してくれる連中が居たんだ!それを無駄にすんじゃねえ!!」

 

 「……ん?何か暗――。」

 

 ドガァァァン!!

 

 太陽から撃ち下ろされた榴弾、それによって吹き飛ぶ装甲車。

 両隣に居た装甲車の運転手は、慌ててブレーキを踏んで状況を確認しようとする。

 

 「どわぁぁあ!!!なになになに!?!?」

 

 バァァァァン!!

 

 「ギャアアアア!!」

 

 間髪入れず降り注ぐ大量の鉛玉。

 一瞬の出来事に不良たちは逃げ惑う事しかできない。

 

 「パワードアーマーが、空飛んでるぅ!?!?」

 

 「何だよアレぇ!!?正実はあんなの持ってたのか!?」

 

 それは不良たちの目の前に降り立つと、いくつもの小さな眼が彼女たちを貫いた。

 恐怖ですくみ一瞬反応が遅れた隙に、レイヴンは加速。

 7.62mm弾をばら撒きながら装甲車に近づいていき、装甲車に取り付けられた重機関銃が撃たれる直前でクイックブースト。

 真横に回り込んで再度急加速。

 ブーストの勢いとアーマーの質量が伴った蹴りは、10tはあるであろう装甲車を容易にひっくり返した。

 

 ガァン!

 

 「ぅぎゃあ!!」

 

 「オイ装甲車がひっくり返ったぞ!?」

 

 「冗談でしょ!?!?アレ何トンあるんだっけ!?」

 

 「ンなことアタシが知るか!!」

 

 「どうするんだよ!!アレにどうやって勝てばいいんだ!?」

 

 「もう構うな!!とにかく突っ込め!!!」

 

 上空に飛び上がってミサイルをロックオン、ミサイルを放ちながら敵部隊の後方に着地。

 ミサイルが分裂すると左腕の太陽守のカバーを半分展開。

 左腕が降りぬかれ、ミサイルと爆雷が同時に爆発。

 不良集団の大半が吹き飛ばされる。

 爆風に紛れてMORLEYを構え、轟音と共に砲弾を放つ。

 最後の1両の装甲車は榴弾の直撃によって粉々に吹き飛ぶことになった。

 

 ドガァァァン!!

 

 「……装甲車、全部壊されたんだけど……。」

 

 「…………どうする?」

 

 「………………。」

 

 「「「逃げるかぁ!!!!」」」

 

 「は~い!こっちっすよ~!」

 

 ダダダダダッ!!

 

 「うわぁああ!!方向間違えたぁ!!!」

 

 「こんなのって……!」

 

 「こんなのって無いよ~~!!!」

 

 ドドドドォォン!!

 

 不良たちが逃げ出した先は、既に構えていたイチカ達の射程内。

 物陰に隠れようが、後ろからレイヴンのガトリングによってハチの巣になる。

 最後に残った不良は、己の不運を嘆きながら、ミサイルの爆風に飲み込まれた。

 

 『……Cポイント、敵部隊の殲滅を確認しました。』

 

 『なっ!?随分早いですね……!イチカ、本当なのですか!?』

 

 「本当っすよ。レイヴンさんが装甲車を壊して、残りを私達が仕留めた感じっす。増援も居なさそうですよ。」

 

 『……実力は本物、というわけですか……。』

 『レイヴン、Bポイントの援護をお願いします!イチカはそのまま持ち場を守りなさい!』

 

 「了解っす!レイヴンさん、ハスミ先輩を頼みますよ!」

 

 レイヴンは軽く頷くと、背中のカバーを開き、一気に空へと駆け上がった。

 赤い翼を大きく広げたカラスは、あっという間に見えなくなってしまった。

 

 「凄いなぁ、レイヴンさん……。あんなに強いんだ……。」

 

 「イチカちゃんもあれ乗ったら、あれぐらい強くなれそうじゃない?」

 

 「いや~、無理っすよ。アレはもう、素の動きが違うんで。ただ乗っただけじゃ、あそこまで強くはなれないと思うっすよ。」

 

 「どうかな~?案外適性あるかもよ?」

 

 「もう、からかわないでくださいよ。」

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 バババババッ!

 バァン!

 

 3台の装甲車の内、既に2台を破壊しているものの、不良たちの勢いが緩むことは無かった。

 それでいて何処からか現れている増援によって、少しづつ前線が押し込まれている。

 

 「クッ、数が多い……!」

 

 「まあまあ。撃ちまくってれば何とかなるでしょ!」

 

 「あなたは相変わらずですね、ルカ!まあ、今は頼もしいです!」

 

 「おっ?珍しく素直だね、ハスミン!終わったら、新作スイーツでも食べに行こっか!」

 

 「ハスミと呼びなさい!それと、お代は貴女が持ってくださいね!」

 

 「いや割り勘じゃないんかい!っと、カラスさんが来たね……!」

 

 真っ赤な尾を引くレイヴンが、不良と正実の間を塞ぐように着地。

 彼女のヘイローに集まった赤い光が、前線全体を覆うほどのバリアを作り上げた。

 

 「――ッ!?なにこれ!?」

 

 「……銃弾を防いでいる。まさか、バリア……!?」

 

 『今です。一斉に攻撃を。』

 

 「――ッ!一斉放火!!ならず者達を打ち払いなさい!!」

 

 バババババッ!

 ドゴォォン!

 

 バリアによって一方的な射撃となったことに加え、レイヴンの砲撃によって装甲車が破壊されたことで、不良たちも分が悪いと理解したのだろう。

 戦場に残っていた大多数の不良たちが逃げ出し、戦おうとした者は弾幕によって意識を刈り取られていく。

 

 『……敵部隊、撤退していきます。』

 

 「撃ち方止め!もう充分です!」

 

 「うわぁ~、蜘蛛の子を散らすってあんな感じかぁ……。」

 

 ハスミの指示で銃声が止み、レイヴンが展開したバリアも消え、次第にこだまも消えていく。

 レイヴンが現れてから十数秒で、トリニティ本来の静寂が取り戻された。

 ハスミがレイヴンに近寄って、軽く礼をする。

 

 「見事なものです。助かりました、レイヴン。」

 

 「それはいいが、Aポイントはどうなってる?」

 

 「ああ、ご心配なく。ツルギには、“歩く戦略兵器”の異名があります。それは伊達ではありません。」

 

 『こちらマシロ。Aポイントの鎮圧もほぼ完了したようです。流石はツルギ先輩ですね。』

 

 「……生身でよくやることだ。」

 

 「同感です。それでこそ、という気持ちもありますが。」

 

 「……で、これで仕事は終わりか?」

 

 「ええ。このまま増援が来なければ、貴女の仕事は終わりです。今、マシロが確認を――。」

 

 『こちらマシロ、総員に通達!敵の戦車が2両ずつ、北と南から接近しています!』

 

 「なっ、挟み撃ち!?」

 

 「うわ、マジか~……。今日は早く終われると思ったのになぁ……。」

 

 「なるほど、奴らは俺達を消耗させるための先遣、というわけか。」

 

 「猪口才な……!レイヴン!貴女はツルギの援護をお願いします!南はイチカと私達が対処します!」

 

 「了解した。」

 

 レイヴンはバイザーを下ろし、再び空へ飛び上がる。

 奴らの首に誰の鈴が付いているのか。

 戦場へと急行するレイヴンは、そんなことを考えていた。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「ウオオォォアアァア!!!ぶっ潰れろオオォオオォ!!!」

 

 「ビビるな!!“戦略兵器”とて人間だ!!戦車が簡単に負けるか!!」

 

 「ギヒヒヒヒッ!!!そんな物効かねえなぁ!!!」

 

 不良たちはツルギに苦戦していた。

 アサルトライフル、ショットガン、50口径を叩きこんでも動きが止まらない。

 壊滅は時間の問題化と思われた。

 だが、ツルギが攻撃を避けようと飛び下がった先は、不良たちが駆る戦車の正面だった。

 

 「今だ!!轢いちまえ!!」

 

 「――ッ!?」

 

 「ツルギ先輩ッ!!」

 

 ガァン!

 

 「のわぁっ!!何だ!?」

 

 戦車の横から突っ込んでくる何か。

 衝突の衝撃で戦車はそのまま横にスライド。

 それは背中からさらに大きな赤い炎を噴き上げ、戦車を建物へと押し込もうとする。

 

 バオオォォォ!!

 

 「ヤバい、お、押し込まれるッ!!」

 

 戦車の履帯を全力で回転させ、横から加わる力から逃れようとするも、すぐに履帯は剥がれ抵抗すら封じられる。

 自身の結末を察した戦車の乗組員たちが、ハッチからわらわらと離脱していく。

 最後の1人が離脱した瞬間、戦車は建物へと押し込まれ、支えを失った建物が、瓦礫となって戦車へと降り注ぐ。

 

 ガシャーン!

 ガラガラガラドガァン!

 

 「……レイヴンだな、助かったぞ。」

 

 「何よりだ。さて……。」

 「仕上げに掛かろう。」

 

 「……無理ゲーだよね、これ。」

 

 「…………後退いぃぃぃ!!!」

 

 「逃がすかあぁあ!!!」

 

 「ヒイィィィ!!!」

 

 ガァン!

 

 「レイヴンさん!?!?悪いけどちょっとどいて――!」

 

 戦車の後ろに回り込んだレイヴンが衝突、後退をブーストで阻止する。

 そして、動きが止まった隙を、ツルギが見逃すわけもなく。

 

 ガァン!

 

 「きひひひっ……!」

 

 「……あ、あの~。見逃して貰えたりとかは……!」

 

 ジャキッ

 

 「あっ無いっスか。そっスか。」

 

 「ギャァアハハハハッ!!!!!」

 

 「おわあアァァァ!!!!」

 

 ズドンッズドンッ!

 ゴォン!ガァン!

 

 ハッチから内部に飛び込んだツルギは、乗組員を次々と処理していく。

 ハッチから逃げ出そうとした者は、外に顔を出した瞬間、戦車の中へと引きずり込まれた。

 あっけに取られている不良たちにレイヴンは向き直る。

 

 「……で?お前達はどうする?」

 

 バッ!

 

 「賢明だ。」

 

 大半は銃を捨てて投降、ごく少数が逃げ出していった。

 その後、新たな増援が来ることは無く、戦いは速やかに終結した。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 被害状況の確認と戦闘の後片付けのため、正実委員たちが作業を進めている間、各ポイントを任されていた指揮官と狙撃手がミーティングを行っていた。

 レイヴンに向き合ったハスミが、深く礼をする。

 

 「お疲れさまでした、レイヴン。この戦いを乗り切れたのは、あなたのおかげです。」

 

 「それなら何よりだ。また必要なら呼んでくれ。」

 「ああ、それと1つ。」

 

 「ん?何でしょう?」

 

 「奴ら、規模に対してやけに装備が潤沢だった。それは気づいているか?」

 

 「……ええ、もちろんです。しかし、何処から仕入れたのでしょうか……。」

 

 「……これは予想だが、奴らの裏に誰かがいるかもしれん。」

 「トリニティを崩したい誰かが。」

 

 「――ッ!なるほど。それが誰なのか、見当はつきますか?」

 

 「分からん。奴らが話してくれるかもしれんな。」

 

 そう言ってレイヴンが顔を向けたのは、縛られて簀巻きとなっている不良たち。

 その視線の意味に、ハスミも気づいている。

 

 「……分かりました。ご協力に感謝します。またいつかお会いしましょう。」

 

 「そうだな、また味方で会おう。じゃあな。」

 

 待機していたレイヴンのヘリのエンジンが始動し、プロペラが回り始める。

 レイヴンがヘリに乗り込むと、ゆっくりとハッチが閉じていき、ヘリは地面から浮かび上がった。

 

 バババババッ

 

 「いや~、本当に良かったっすね~。あれだけ強い人が味方になってくれて。」

 

 「全くです。もしあの不良たちに雇われていたら、どうなっていたか……。」

 

 「ともあれ、これでトリニティの危機は去りました。しばらくは――。」

 

 「……危険だ。」

 

 ツルギの唐突な発言に、他の三人が一斉に振り返る。

 普段からは想像もつかない、静かな表情をしていた。

 

 「――えっ?」

 

 「どうしました、ツルギ先輩?」

 

 「……レイヴン、アイツは危険だ。」

 

 「そうっすか?確かにすごく強いっすけど……。」

 

 「……アイツの、目を見た。うまく言えないが……。」

 「……アイツの内には、何かが煮えたぎってる。」

 

 「……これまで通り、彼女には慎重に対応するべきですね。」

 

 「……レイヴン、お前は何だ……?」

 

 ツルギはそう呟くと、レイヴンが飛び去った空を、じっと見つめていた。




うーん難産。
ちょっと飛ばしすぎた気がしますので、投降頻度は落ちると思います。
エタらないように続けますのでユルシテ……。

次回
伝説の始まり
ソレ1人でやる仕事じゃないですよね?

次回も気長にお待ちくださいませ……。
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