フェイクマミー 1話 感想
正直、三谷幸喜、岡田惠和、そして乃木亜紀子と、塚原あゆ子がそれぞれドラマを作っているこのクール、この手慣れ達を追いかけるだけで限界っすわという気持ちがないでもないんですが、水木と大御所も大御所が書かれている腰の座った話を見た後に、
このフェイクマミー、めちゃくちゃフレッシュな持ち味が緩急としてすごく刺さったのでこのドラマも毎週楽しみにせざるを得ないなあという状況になってしまった...
新人賞、そのままドラマ化
本作フェイクマミーは、TBSテレビが2023年に新設した、ドラマシナリオの賞である「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」の初回で大賞を受賞した園村三さんの脚本を基にそのままドラマ化したタイトルである。
他局にはなるが、フジテレビが開催している「フジテレビヤングシナリオ大賞」において、近年では乃木亜紀子や、生方美久が受賞した記憶が強いが、開設当初は坂元裕二、野島伸司、信本敬子に金子ありさと言った売れっ子中の売れっ子みたいな人達を輩出してきたいわば登竜門である。テレビ局がテレビドラマのシナリオを評価する賞というのは、もちろん質としての評価をされた上で、そのままチャンスに繋がりやすい傾向にあるため、非常に意味のある賞になるのだろう。「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」にも同じことを期待したい。
目まぐるしく回る、新しき怒涛の才能
同クールに大御所が何人もドラマを手がける中、園村さんの脚本はひときわ展開が早く、エンタメ性が強いので「もしがく」なんかと比較してしまうと、同じ連ドラでこんなに差が出るのかと、どっちが良い悪いではなく、純粋な現象として面白い。体感の話でしかないが、娘の中学受験という根幹の目標こそぶれていないものの、1話にして1エピソードに割く時間が5分を超えていた記憶がない。面接もメイン2人の出会い(2回目)も、サッカーの件も、ぼんやり見ているといつの間にかシーンが切り替わっている。
かといってごちゃごちゃしているかといえば全くそうではなく、各シーン繋がりしっかりしているし、場面場面の印象もしっかり残っているので、丁寧に作られている印象も受ける。
美麗なショット、洗練されたファッション
この目まぐるしい展開を下支えしてくれているのは間違いなく、映像美にある。本作、演出の一番上にクレジットされでいるのは、ジョンウンヒ。広告制作を主として行うAOI Pro.所属のディレクターで、cm製作が主なようだが、個人的に印象が強いのは「いちばんすきな花」「海のはじまり」と言った生方作品の演出陣の1人であるということ。何もドラマが起こっていなくても何か情緒性を感じさせる美術とショットの連携が非常に巧みな人であり、本作でも遺憾無く発揮されていた。
本作において特筆したいのは、ファッション面である。メイン2人の両極端ながらそれぞれ洗練されてパキッと整ったスタイリングは、それ単体でうっとりさせられる水準にある。
東大卒でバリバリのエリートである花村薫(波瑠)は、部屋着であっても生地が変わったくらいでどこかパキッとした落ち着いた色使いのコーディネイトであり、基本的に袖の細い服を着る傾向もあり、洗練された印象を与える。
それに対して叩き上げヤンママ社長の日高茉海恵(川栄李奈)とその娘いろは(池村碧彩)は、薫とは対照的に明るいピンクや、白ベージュ系などとにかく鮮やかな色、少しオーバーサイズな着こなしが多く、可愛い華やかさの中に少し力強さも感じさせる。男性陣も基本スーツ姿のキャラクターが多く、この親子によって、絵の彩りにシーン毎に緩急が与えられるので、絵を見ているだけで豊かな気持ちが湧き出る。
職業戦士共(あるいは多様性戦士)
1話から力強いパンチラインがあったのも非常に良い。日本企業で言えば間違いなく最上級である三ツ橋物産を薫が辞職した理由が語られるのだが、そこで語られたセリフが非常に力強い。
誰かを押し上げるために、別の誰かを犠牲にするような多様性を、私は受け入れることができなかった。
独り身でバリバリ成果を上げていた自分に対して、母ながらにして働く同僚の由実(筧美和子)が、先に昇進していく姿を見ての一言。
三ツ橋物産社内の空気感もコレじゃない感がふんだんにあってよかった。多様性を掲げてプロジェクトや成果を立ち上げれば、無条件で歓迎され評価される忖度。かといって各個人に納得感は薄いので、評価され拍手されるまでに生まれる謎の間。今の社会、どこにでも起こり得そうな空気感でなかなか悶々としてしまう描写だった。
まとめ
シンプルなエンタメ性にも長けた上で、時代への含意も期待できる意欲作。今クールであっても存在感を強くするポテンシャルを感じさせる。
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